魔王の剣   作:厄介な猫さん

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一度下がると中々上がらないなぁ······
てな訳でどうぞ


狩人少女は元・○の手下

「私がこの地で魔法が使えるのは私の固有魔法、“適応力”の恩恵だ」

 

「お前限定かよ…………とりあえずその“適応力”ってのはどんな能力だ?」

 

 

この時点で狩人少女への用がなくなったが、あっちのウサミミ少女に関わる気がないので狩人少女への質問を続ける事にした。

 

 

「簡単に言えば“環境や状況に適していく能力”だ。例を上げれば、この峡谷で過ごせば魔力分解に対して耐性が生まれるといった具合だ」

 

「この世界の人間は固有魔法に目覚める事があるのか?」

 

 

向こうで「アバババババババババ!?」という声を無視しながらソウジは疑問を口にする。

 

 

「昔はそういう人間もいたが、私は人間ではない。クソ神によって造り出された人形だ」

 

「……おいちょっと待て。今お前なんつった?」

 

 

狩人少女のとんでもない爆弾発言を聞いたソウジは目を鋭くさせて先程の言葉を問い質す。

 

 

「私は人間ではないのところか?」

 

「その後の『クソ神によって造り出された人形』のところだ。どういう意味だこら」

 

「言葉通りの意味だ。私はこの世界のクソ神、エヒトによって造り出された存在なのだ」

 

「……色々とツッコミたいところだが、先に聞くぞ。つまりお前はそのクソ神の手先か?」

 

「あのクソとは八百年程前に決別している。ヤツの元に戻る気等微塵もない」

 

「ユエより年上かよ……じゃあ次の質問。お前がその神と決別した理由はなんだ?」

 

「……それは「―――ぺったんこじゃないですか!」…………」

 

 

“ぺったんこじゃないですか”“ぺったんこじゃないですか”“ぺったんこじゃないですか”

 

狩人少女の言葉を遮るように峡谷にそんな叫びが木霊した。狩人少女は絶壁……ゲフンゲフン、平らな自身の胸に無表情で手を当てる。

その言葉を浴びせられた本人であるユエが“嵐帝”の竜巻でウサミミ少女を天高く打ち上げ、ウサミミ少女は○神家のあの人のように頭部が埋まる形で墜落した。

そんなビクンッビクンッと痙攣し、見えてはいけないものが見えているウサミミ少女に、狩人少女は直径十センチ程の氷の杭を作って無表情のまま近づいていき―――

 

ブスリッ

 

ウサミミ少女のお尻の穴へと深々と突き刺した。力一杯刺し込んだ。

氷の杭を刺されたウサミミ少女は一際大きく痙攣し、再びビクンッビクンッと痙攣する。

 

 

「……他のやつらには十分にあるのに、あのクソは何故私の胸を……(ブツブツ)」

 

 

……狩人少女は相当ご立腹のようであった。その鬼の所業に一同は……

 

 

「……(グッ)」

 

「……(スッ)」

 

「ハァ……」

 

 

ユエはよくやった!っと非常にいい顔でサムズアップ、ハジメは狩人少女から目を反らし、ソウジは質問しづらくなった空気に溜め息を吐いており、ウサミミ少女への心配は微塵もなかった。

 

 

「……結局お前は何者なんだよ?」

 

 

だが、ソウジは狩人少女の立ち位置をはっきりさせる為にその空気を無視して切り込んでいく。

 

 

「先に言った通り、八百年程前にクソ神から離反し、名前を捨てた人形だ」

 

 

嫌悪感丸出しで神の人形と語った狩人少女の言葉に、ハジメとユエも警戒するように目を鋭くしていく。

 

 

「うぅ~、ひどい目に遭いました……こんな未来は見えなかったのに……」

 

 

いつの間にか地面から頭を抜き、お尻に刺さった氷の杭を抜いたウサミミ少女はお構い無しにハジメ達の下へと這い寄ってくる。

 

 

「ハジメ、そのウザウサギの相手はお前に任せる」

 

「おい!?」

 

 

ハジメに一方的にウサミミ少女を押し付け、ソウジは狩人少女の手を掴んでその場から少し距離を取る。ハジメ達から少しだけ距離が離れた場所でソウジは再び狩人少女への質問を再開する。

 

取り敢えず狩人少女の話を纏めるとこうだ。

狩人少女は神代時代に造られ、最初は神の命ずるままに行動していたが人と接している内に当時の在り方に疑問を抱き、神に意見した所、「我の玩具だから何をしようと自由」と返された。その時から徐々に神への疑問、自身の在り方、玩具と称した人の輝かしさに悩み始めていき、何時しか“感情”を得たそうだ。

そして決別となったあの日、狩人少女は神との交信でこう告げられたそうだ。

 

“感情を得た失敗作はもはや不要。精々足掻いて我を楽しませよ”

 

神がそう告げた直後、他の人形達が現れ狩人少女を強襲。神からの魔力供給を絶たれた狩人少女は深手を負いながらも追っ手を振り切ってこの“ライセン大峡谷”へと落ち延びた。

相当な深手だったそうだが、自身の固有魔法により自己修復力が高まり生き延びる事はできたが、代償に平均一万近くあったスペックの大幅な低下、当時使っていた弓は追っ手の分解攻撃により完全破壊、飛行能力にも制限がつき大きく弱体化した。

そして狩人少女は神と決別しこの峡谷に身を潜める選択をした。長い髪をばっさりと切り、銀色の髪も植物から得た染料で緑に染めた。峡谷に身を潜めたのは今の自分では他の人形に勝てないという理由もあるが……

 

 

「……一番の理由はいつか世界を見て回りたいからだろうな。知らない事を知りたいという思いからこうして生き延びる為に隠れる選択を選んだ」

 

 

その狩人少女の言葉にソウジは思案顔で何かを考えていた。

狩人少女の話を聞いて同情した……からではなく単純な損得から考えていた。

狩人少女との関わりは下手すれば連中への注意が早い段階でこちらに向く可能性が高い。だが、狩人少女の持っている情報は確実にこちらに有利に働くものである事は間違いない。

そこでソウジは狩人少女に取引を持ちかける事にした。

 

 

「狩人少女。オレと一緒に来い」

 

「……何?」

 

 

取引ではなく命令するようなもの言いでソウジはそのまま話を進めていく。

 

 

「お前の知っている情報は確実に膨大な上にオレらが有利になりそうな匂いがするが、ここで座って質問し続けるには時間がもったいないから旅に同行させて知ってる事を全部話してもらう。洗いざらい吐かせた後も肉壁としてそのまま同行してもらう。オレらの旅は目的の都合上、世界中を回るからお前の願いも叶うし決して悪い取引じゃないだろ?」

 

「……そんな話では普通は応じないだろう」

 

「……その『普通は応じない』という言葉は取引に応じると受け取らせてもらうぜ?」

 

「……人の揚げ足を取る辺り、本当に嫌な男だな。飾りがないから逆に信用できるのが癪だがな」

 

 

ソウジの言葉に狩人少女は何とも言えない表情で溜め息を吐く。

 

 

「取り敢えず呼び名がないと色々不便だからな、お前の事を“アタランテ”と呼ぶ事にするが異論はないか?」

 

 

名前を捨てたと言っていた事に配慮し、某純潔狩人の名前で呼んでいいかを狩人少女に聞く。

 

 

「別に構わん。クソ神が与えた名でなければ良いからな」

 

 

本人から了承を得たソウジは右手を狩人少女―――アタランテにへと差し出し―――

 

 

「空山ソウジだ。アタランテ」

 

「取引はしっかりと守ってもらうぞ、ソウジ」

 

 

アタランテはその手をしっかりと握った。

 

 

 




日常バージョン

「クソ神が与えた名でなければ別にいい」

「じゃあ、寿○無寿○無五刧~~·····長○命の長助でもいいのか?」

「········」

「それとも、パブロ・ディエゴ・~~·····トリニダードでも―――」

「最初のアタランテで頼む(怒)」

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