魔王の剣   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ。


名称が悪魔のゴーレム

二日目。オルクスの広場にて。

 

 

「……あのさ、南雲」

 

「なんだ、園部」

 

「この飛行船モドキは何なの?こんな大きいものも兵器なの?」

 

「そうだ。名前は“フェルニル・ビット”。居住性を全廃止し、戦闘面に全振りした巨大オールレンジ兵器だ」

 

 

見た目こそ大きさを半分にしたフェルニルにそっくりだが、砲身やミサイルコンテナがびっしりと搭載された三つの物体にハジメが自信満々に園部に答える。

 

フェルニル・ビットはビットという名称が付いている通り、感応石で外から動かす飛行兵器だ。ガトリングレールガンとミサイルはもちろん、広範囲に張れるビー○シールドモドキ、荷電粒子砲に自動迎撃式の分解機銃、連射式パイルバンカーに()()()太陽光レーザーも放てる優れものだ。加えて、疑似的な火力発電モドキも内蔵しているので、ガス欠の心配もないのである。

 

 

「コイツの運用はリリィに任せる予定だ。総司令だし、半自動制御だから上手く使えるだろ」

 

「これが上空で三機も暴れるのね……」

 

「“パルス・ヒュベリオン”や“カルト・ユミル”は先生に任せる予定だし、殲滅兵器が多数あれば幾ばくか楽できるだろ」

 

 

照射・チャージ時間だけでなく、それぞれの問題点を解決した太陽光収束レーザー兵器と冷気収束レーザー兵器も投入する気満々のソウジに、園部だけでなく遠藤も何とも言えない表情で苦笑いするしかない。

 

 

「お前たちも苦笑いしてないで、訓練を始めるぞ。とは言っても、午前中は新装備の慣らしに費やすがな」

 

 

ソウジは新装備―――装着型のクロスボウを左腕に装備した遠藤と、手甲型のグローブをはめた園部に新調した刀を肩に担いでそう告げる。

 

“星天空山”―――ギミックや特殊能力より、空間魔法、再生魔法、重力魔法、昇華魔法で耐久性を極限まで突き詰め、“纏雷”と“風爪”も付与した二刀一対の強靭なアーティファクトだ。

そんなソウジの言葉に、遠藤がそっちょくな疑問を告げた。

 

 

「何と言うか、意外だな。今日もてっきり、実戦形式で鍛えられると思ってたんだけど」

 

「それをやるのは最低限の慣らしからだ。ちなみに遠藤、お前は軽めの模擬戦でだ。そのアーティファクト“モイヒレリッシュ・ギフト”は連携が重要だからな」

 

 

遠藤に贈呈したクロスボウ型アーティファクト“モイヒレリッシュ・ギフト”は編成魔法をメインに組み込んだアーティファクトだ。このアーティファクトの中央にはアバドンが居座れるスペースが用意されており、そこに収まることで遠藤との意思疎通を円滑かつダイレクトに行うことができるようになっている。昨日遠藤が口にした通り、アバドン専用アーティファクトと言っても過言ではない。

 

他にも生成した毒を保管・保持するための小型の“宝物庫”に、“蓄雷”と“変換回復”による疑似魔力タンクも搭載。魔力操作ギミックで展開できるアザンチウム製の刃には“放炎”が付与してあるので、刀身を赤熱化したり切っ先から熱線を放つこともできる。無論、毒を滴らせることも可能であり、クロスボウとしても普通に使える。

 

 

「後は瞬光サングラスと“風爪”付与の小太刀、魔力回復効果と身体能力強化効果のある暗緑色のローブだ」

 

「……なあ、空山。これを羽織ったらコスプレになる気がするんだけど」

 

 

サングラスと小太刀は素直に受け取ったが、暗緑色のローブだけは受け取らずに遠藤は問いかける。オタクではないが、某有名な作品に登場する緑茶様を知っていたからだ。ただでさえ、左腕のクロスボウと毒を扱う点で似てきているのだから、そこにこのローブを羽織れば完全に緑茶様のコスプレとなってしまう。

そんな遠藤に、ソウジは有無を言わさぬ表情で告げる。

 

 

「つべこめ言わず着れ。これを着れば、分身しても苔で押し通せるんだからな」

 

「分身して苔扱い!?さすがに酷いんだけど!?」

 

「なら黒い服装のままで行くか?そうなれば、台所の黒い悪魔の烙印を押される可能性が高まるが」

 

「……苔の方でお願いします」

 

 

黒いアレと同列扱いされる精神ダメージから、遠藤は涙目で苔扱いされる暗緑色のローブを着る選択をした。ハジメも黒い遠藤が大量に分身する光景を想像してか「確かに黒いアレだわな」と頷いて同意した。園部はススゥ……と遠藤から地味に距離を取った。

 

ハジメと園部によって更なる精神ダメージを受け、ガックリと項垂れた遠藤にモイヒレリッシュ・ギフトに収まったアバドンがどこか香ばしいポーズで遠藤を慰めた。

 

 

「『案ずるな、我を孤独の闇から救いし盟友よ。我と共に踊れば、そのような蒙昧な認識は溶かされるだろう』……言動がめっちゃ香ばしいんだけど」

 

「……どちらにせよ、お前はソイツとの連携を高める為の模擬戦だ」

 

 

遠藤が思わず口にしたアバドンの香ばしい言動には触れることなく、ソウジは専用アーティファクト“アイス・ヴァッヘ”を装備した園部に向き直った。

アイス・ヴァッヘは“凍鎧”をメインに組んだ武器製造アーティファクトだが、“生成魔法”も組み込んだアーティファクトを製造できるアーティファクトでもあるのだ。

 

本来、生成魔法による生成魔法の付与は不可能に近い。例えるなら、右を見ると同時に左を見るようなものだ。しかし、それは生成魔法の使い手が一人だけならの話。同じく生成魔法を得ているソウジとユエの協力により、限定的な生成魔法を使えるアーティファクトが実現できたのだ。

 

その効力は、アーティファクトに同じく付与された魔法を氷で作り上げた武器への付与。同時に組み込まれた“風爪”、“纏雷”、“魔衝波”、“嵐陣”、“分解”などを生成魔法で氷の武器に数秒で付与することができる。現時点では複数同時付与や複合はできないが、使い捨ての強力な武器の作り上げが可能な為、園部との相性は決して悪いものではないだろう。もちろん、熱耐性や火属性無効、空間魔法を利用した強度の上昇も組み込み済だ。

 

 

「園部、お前はアワークリスタル(仮)部屋で付与の練習をしろ。彼処なら、時間を掛けて精度を上げられるからな」

 

「……どうして私だけその部屋に?理由があるのは分かるけどさ」

 

「一言で言えば方向性だ。遠藤の場合は連携重視だが、お前の場合は臨機応変の対応重視だ。その為には迅速に動く必要があり、付与の時間を短縮しなければならない。理想は一瞬だが、今は数秒の付与でいい。もちろん、ナイフ以外の形状の武器も形成してな」

 

 

その説明に園部は成程……と納得する。使える手札が増えるのは確かに強みにはなるが、その使用に時間が掛かっては意味がなくなってしまう。

 

 

「個人的な観点からだが、槍を作れたら上々だ。槍投げは飛距離が長そうだからな」

 

「投げ方は違うけど……力いっぱいは投げれそうね」

 

「後、その部屋にはアタランテ達がいるが、講師には全く向いてないから助言なんて期待しない方がいいぞ。説明が擬音だからな」

 

「そうだな。何事にも、向き不向きがあるからな」

 

 

何せ、「ここで“グッ”として、“そーい”と放つ」、「“ビビっ”と来た瞬間に、“ドンッ”と解放する」なのだ。香織もこの説明を理解する辺り、同類と見て間違いない。

思い出して遠目となったハジメとソウジの姿に、園部は苦笑いするしかなかった。

 

 

「ハジメさーん!」

 

 

そうこう話し込んでいる内に、設置していたゲートホールからシアが飛び出て来る。そのまま流れるように、シアはハジメへと抱きついた。

 

 

「戻ったか、シア。ミレディの方はどうだった?」

 

「はい!お目当てのものはちゃんと手に入れてきたですよぉ!」

 

 

シアは上機嫌でそう告げると、背負っていた荷物袋をハジメへと渡す。ハジメはさっそく物色すると、刃渡り二十センチほどの短剣を取り出した。

 

 

「こいつが神殺しのアーティファクトか」

 

「はいですぅ。ミレディさん曰く、“神越の短剣”だそうです。実際に使ったことはないので、どこまで効果があるか不明だそうですが」

 

「ちなみにアルヴには効くのか?ヤツも一応“神”だし」

 

「私も気になって聞いてみましたが、そっちには効果はないそうです。何でも神殺しの概念が中々出来ない中、全員がべろんべろんに酔った際に『エヒト死ね!クソ野郎!!』といった感じの罵倒大会をして、いつの間にか出来ていたそうですので」

 

 

神越の短剣の誕生経緯が酒の場での罵倒だったことに、ハジメとソウジはもちろん、園部と遠藤も何とも言えない表情となる。そんな経緯だから、純粋なエヒト殺しにしか使えない品物なのだろう。

 

 

「……まあ、それでも十分だろ。ヤツを殺せる手札は一つでも多い方がいいからな」

 

「欲を言えば、さっさと渡しておけば悲願が叶ったかもしれないのにな」

 

「……それを言ったら、めちゃくちゃ煽ってきやがりました。“神殺しなんて面倒なこと、わざわざしないんじゃなかったのぉ?クソ野郎共の一味だったぺったんこちゃんが一緒にいるのに、そんな危険人物たちに大事なものを渡せると思う?頭、大丈夫?ねぇ?頭、大丈夫?ねぇねぇ”でしたから……」

 

 

正論ではあるが、一々ウザい態度で話したであろうミレディにハジメとソウジはうんざりするしかない。ミレディを知らない園部と遠藤は反応に困っていたが。

その仕返しに、部屋を再度ぶっ壊されて涙目となったそうだが。シアもちょっとした愚痴程度で小馬鹿にするように煽られれば、頭にくるだろう。真面目に告げずにおちょくったミレディの自業自得である。

 

 

「後、最後の概念“界越の矢”という【神域】への道を開くアーティファクトは敗戦時に失ってもうないそうです。残っているのは劣化版だけで、【神域】への扉を開くには力不足とのことでした。クリスタルキーがあるので全く問題ないですけど」

 

「だな。ちなみにミレディの反応は?」

 

「あれは間違いなく真顔でしたね。“え?場所さえ分かれば自由にそこへの扉を開けられる……え?え?”でしたからねぇ」

 

 

再びミレディの下りでした、悪どい顔をするシア。またしても黒シアが出現したが、それもすぐに引っ込む。

 

 

「情報の方は、見事に空振りましたね。ミレディさんも【神域】のことや眷属神、神の使徒については私たち以上のことは知らないそうです。むしろ、直接対峙した私たちやエヒトから直接知識を吸い出したユエさんの方が詳しいだろうと仰ってました」

 

「そうか……ミレディ本人の助力はどうだ?」

 

「あの領域からそう簡単に出られないそうで、事前に合流はできないそうです。もちろん、決戦にはゴーレムを引き連れて参戦してくれるそうですが」

 

「あっ、シアお姉ちゃん!お帰りなさいなの!」

 

 

シアが報告を終えたタイミングで、建物から出てきたミュウがシアをお出迎えする。十体のゴーレムと共に。

十体の内、七体は多脚多腕に武装多数。三体は二足歩行の二腕だが、妙な背負い物に加え携帯式の武器まで搭載されている。十体ともメタリックの輝きを持ち、厳つい迫力を持っている。

 

 

「えっと、ミュウちゃん、そのゴーレムらしきものは……」

 

「パパに貰ったの!“べるちゃん”と“さーちゃん”、“るーちゃん”と“まーちゃん”に“あーちゃん”、“れびちゃん”と“ばるちゃん”、“ばえちゃん”と“ぐーちゃん”と“ばるばちゃん”なの!」

 

 

ミュウの紹介に、サソリモドキの技術の応用で作り出した生体ゴーレムたちはそれぞれ香ばしいポーズを取る。ちなみに正式名称は“べるふぇごーる”、“さたん”、“あすもでうす”、“るしふぁー”、“れう゛ぃあたん”、“ばあるぜぶぶ”、“ばえる”、“ぐしおん”、“ばるばとす”らしい。名付けはもちろんミュウであり、悪魔の名前にハジメとソウジの頬が引き攣ったのは言うまでもないだろう。

 

 

「そ、そうですか……ちなみにあの三体は……」

 

「ガリ男のレポートを利用した生体ゴーレムだ。魔法知識ではなく、戦闘技術を学習させた、な」

 

 

ハジメがそう答えると、“ばえる”は双剣を、“ぐしおん”はライフル二丁を、“ばるばとす”は身の丈を越える大剣を見せつけるように掲げる。ゴーレムなのに武器持ちなのには、もちろん理由がある。

 

実は、遠藤がマキアスの研究部屋をハジメに伝えた際、ハジメは強盗犯の如くその部屋にあった資料を全部回収したのだ。当然、空間魔法を会得した研究内容のレポートも手に入れており、それをガッツリと利用したのである。

その三体が名前だけでなく、得物まで似ていることに疑問を感じているが、中身については真剣に調べる必要があるだろう。ミュウが変なものに目を付けられていないかで。

 

 

「ちなみに、その戦闘技術は……」

 

「当然、オレとハジメだ」

 

「ですよねー」

 

 

大罪戦隊デモレンジャー七体とは別の意味で凶悪そうなゴーレム三体に、シアはどこか達観したように返すのであった。

 

 

 




「こいつが空間魔法を覚えられたカラクリか……」

「これはそのまま使えそうか?」

「……無理。最低でも、大迷宮攻略者じゃないと耐えられない」

「仮に強硬したらどうなる?」

「……頭が香織になる」

「ちょっとユエ。それはどういう意味かな?」

ディすられたことで、分解砲をすてんば~いする香織さんの図。
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