魔王の剣   作:厄介な猫さん

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盛大に原作のネタバレを投下していくなぁ····私は····
てな訳でどうぞ


心情

互いのバイクで馬車を牽引し、【ハルツィナ樹海】を目指す中、ハジメの前に座っているユエが口を開く。

 

 

「……どうして二人だけで戦ったの?」

 

「「ん?」」

 

 

ユエが言っているのは帝国兵との戦いだ。あの時、ユエも戦おうとしたのだがそれをハジメが制止し、結果、ハジメとソウジだけで戦った。結果は変わらなかっただろうが、その後のハジメがどこか物思いに耽っているような気がし、ソウジも似たような感じだったので気になったのだ。

 

 

「ちょっと確かめたいことがあってな……」

 

「その為に必要だったからな……だからオレとハジメだけで戦った」

 

「……確かめたいこと?」

 

 

ユエが疑問顔で聞き返す。

 

 

「これから先、街中で戦う事があるかもしれない。レールガンだと敵だけじゃなく背後の民家や住人まで吹っ飛ばしかねないし、人々を無差別に殺す殺人鬼になるつもりは毛頭ないからな。どの程度の炸薬量が適切なのか確かめる必要があったからな。ソウジも似たようなもんだろ?」

 

「ああ。後、実際に人殺しをしてどうなるのかも確かめたかったのもある。結果としては、人を殺した事には“特に何も感じなかった”」

 

 

ソウジのその言葉にハジメは無言、質問したユエとソウジ達の会話に聞き耳を立てていたシアとアタランテはソウジの言い回しに疑問を感じていた。

 

 

「だけど、以前のオレから大分変わっちまったと思ったし、オレの家族がオレの両親を殺したヤツと同じ事をオレが躊躇いもなくやったと知ったらオレを拒絶するかもしれないと思ってな……」

 

「……確かに随分と変わっちまったな、俺も奈落で得た価値観が強固に染みついているのが分かったし……」

 

「……大丈夫?」

 

 

ユエが心配そうに二人に問いかける。

 

 

「ああ、何の問題もない。ちゃんと戦えると確認できたからな」

 

「心配するな。変わったからといって、可能性に恐怖して足踏みする気は微塵もないからな」

 

「…………」

 

 

ハジメとソウジは軽い感じで返すも、ユエの心配げな表情は晴れない。そんなユエにハジメは微笑みながらユエの頭に手を乗せる。

 

 

「心配ならいざというときに頼らせてくれ。ユエが傍に居るだけで俺は大丈夫だからな」

 

「……ん」

 

 

ハジメのその言葉でユエは先程の表情が嘘のように微笑んで返す。桃色空間全開にソウジは人生何度目か分からない吐糖をしていると。

 

 

「……家族か……私には家族と呼べる存在が居ないから、お前達が少し羨ましいな」

 

 

アタランテからそんな呟きが聞こえてくる。その呟きにソウジは少し気になっていた事をぶつける事にした。

 

 

「そういえばアタランテ。他の使徒に関する話を聞いて少し気になっていたんだが、何でお前の固有魔法は他のやつらとは違うんだ?」

 

 

アタランテの話では自分以外の使徒の固有魔法は“分解”で統一されている。アタランテだけ固有魔法が違う理由が何なのかハジメとユエも気になっていたのだ。

 

 

「簡単に言えば“実験”だな。ヤツの肉体に関するな」

 

「……実験?どういう事だ?」

 

 

そこからアタランテは理由を話し始める。

神代時代から神―――エヒトは魂だけの存在であり、魂だけだと特殊な領域内しか存命出来ない事。使徒を創造したのも自身の肉体を造る為だったが肉体が自身の存在に耐えられず自壊、その後も悉く失敗していた事。この世界の多種多様な種族もその一環であり、突然変異のようなものを期待していた事。アタランテの固有魔法も、長い時間を掛けて様々な環境に“適応”させ、自身に耐えうる肉体を“育て上げよう”としていた事。そして……

 

 

「それも思うように進まず、私が感情を得た事で失敗作と見切りをつけ、私が足掻く様を楽しもうとした……その気になれば私の機能を停止させられるのだからな」

 

 

アタランテからもたらされたエヒトに関する情報に一同は……

 

 

「家から出られない引きこもりなら、ソイツが直接オレらにちょっかい出しに来る可能性は低いか」

 

「……私の身体、狙われるかも」

 

「大丈夫だユエ。その時はちょっかい出した事を後悔する程、ソイツに地獄を見せてやるからな」

 

「ハジメ……」

 

「ユエ……」

 

「あれ!?この場合、普通はアタランテさんに同情するんじゃないんですか!?」

 

 

ソウジは軽く流し、ハジメとユエは冗談混じりに会話しつつ二人の世界を形成、泣いていたシアは三人の反応にツッコミを入れていた。

 

 

「……何故だろう。無性にイライラが募ってきたのだが」

 

「不幸自慢の話に興味なんかねぇよ。お前から得られる情報はすごく有意義だけどな」

 

「……」

 

 

アタランテは無言で自身に身体強化の魔法をかけ、その状態でソウジの身体に両腕を回して締め上げにかかる。対するソウジは“金剛”を使ってあっさりと防ぐ。

 

 

「あ、あの!良ければハジメさんとユエさん、ソウジさんの旅の目的とか、今まで何をしていたのか教えてくれませんか!?」

 

 

シアはこの状況を打開するため、元々気になっていた事を聞く事にした。元々隠す気が無かった事と、樹海に到着するまではまだ時間がかかる事からソウジ達はこれまでの経緯を語り始めた。

結果……

 

 

「ぐすっ……自分がなざけなざすぎますぅ~。皆さんの方が私よりよっぽど……」

 

「魔物の肉を食べるとその魔物の固有魔法を得られる場合があるのか……」

 

 

シアは自身の情けなさに大号泣。アタランテは先程の仕返しのつもりか軽く流していた。

 

 

「……そういえば、お前は何を食べていたんだ?」

 

「……ソウジとハジメと同じ魔物の肉だ。最初は腹痛が襲ったが、それ以降は普通に食べれていたし、お前達のような変化もなかった。“適応力”で魔物の肉を食べる事に適応したのだろう」

 

 

アタランテの言っていた狩りの目的が食料目当てだった事に、いまだにメソメソと泣いているシア以外の三人は苦笑いのような気分になる。そんな中、シアが突如、決然とした表情で顔を上げ、拳を握り元気よく宣言した。

 

 

「私決めました!私も旅に着いていきます!私たちは数少ない仲間!共に苦難を乗り越えましょう!」

 

「現在進行形で守られている脆弱ウサギが何言ってんだ?」

 

「イヤ、戦闘を妨害しただけの迷惑ウサギの間違いだろ」

 

「……然り気無く『仲間』に格上げするな、厚皮ウサギ」

 

「一人で勝手に決めるな贅肉ウサギ」

 

 

シアの宣言は一同は冷めた視線と反応で返された。

 

 

「そもそもお前、一族の安全が確保できたら、アイツらから離れる気なんだろ?その理由に俺達をダシに使うつもりなんだろ?」

 

「……ッ!……そ、それは、それだけではなく、私は本当に……」

 

 

ハジメが呆れながら言った言葉にシアはギクッ!と強張らせ、その事を認めつつもしどろもどろになる。

 

 

「別に責めている訳じゃない。だが、俺達の目的は七大迷宮の攻略だ。本当の迷宮じゃお前は瞬殺されて終わりだ」

 

「実際、奈落は化物の巣窟だった。外の魔物に手も足も出ないお荷物を抱える気は微塵もない」

 

「だから、お前の同行を許すつもりは毛頭ない。わかったか?」

 

 

ハジメとソウジの二人がかりの口撃にショボーンッと指同士をつついて落ち込む。ユエとアタランテも特に気にしていないのが落ち込みに拍車をかける。

 

 

「……っと、そうこうしている内に見えてきたな」

 

 

そう言いハジメが視線を向けた先には、鬱蒼とした森―――【ハルツィナ樹海】が見え始めていた。

目指すは樹海の最深部にある巨大な一本樹木―――“大樹ウーア・アルト”だ。

 

 

 




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