てな訳でどうぞ
ソウジは光を諸に受け、視界が明暗状態に陥っていた。
視界が回復して目に映った光景は、見馴れた教室ではなく大聖堂と呼べるような大広間だった。周りには法衣服のようなものを身に纏った人間が三十人近くおり、全員祈るように手を組んでいる。
その中のトップらしき老人がこちらに歩み寄り。
「ようこそ、トータスへ。私はイシュタル・ランゴバルドと言います。以後、宜しくお願い致します。勇者様、そしてご同胞の皆様」
イシュタルと名乗った老人は微笑を浮かべながらそう言った。
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イシュタルの案内により十メートル以上ありそうなテーブルが幾つも並んだ大広間に通された一同はそこで事情を説明された。
この世界はトータスと呼ばれ、人間族、魔人族、亜人族と大きく三つの種族に分けられており、人間族と魔人族は何百年も争っているそうだ。
その魔人族が、本来使役できない筈の魔物を大量に使役し始め、人間族側が劣勢となった。
そんな中、この世界の神“エヒト様”が自分達という“救い”を送るという神託があったそうだ。
イシュタルは“エヒト様”の御意志の元、魔人族を打倒し人間族を救ってくれという。
“神の意思”を嬉々として従うこの世界に、ソウジが顔を険しくしていると。
「ふざけないで下さい!」
我らが愛子先生がイシュタルに猛然と抗議する。自分達を元の世界に帰すように言うも、イシュタルは“エヒト様”が召喚したのだから、自分達では帰せないというと、愛子先生は脱力したように腰を椅子へと落とし、周りの生徒達もパニックになる。
ソウジはそういった本も読んでいた為、比較的落ち着いてイシュタルを観察していると、天之河が立ち上がり、持ち前のカリスマで皆のパニックを沈め、全員が戦争に参加する流れを作ってしまう。
イシュタルにまんまと利用された天之河に、ソウジは頭が痛くなる思いになる。
正直、戦争には参加したくはない。皆を先導したあのバカは絶対に気づいていないだろう。自分達は人殺しに参加するという事に。
だが、もうこの流れは変えられないし、家族の元に帰るためにはそれ以外の選択も今の所存在しないため、苦い気分を抱いたまま、家族の元へ絶対に帰るという決意をした。
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異世界召喚された次の日。
騎士団長のメルド・ロギンスから全員に銀色のプレートが配られた。
「今全員に配ったのはステータスプレートと呼ばれる、自分の客観的なステータスを数値化してくれるものだ」
メルド団長はステータスプレートに関する説明をしていき、アーティファクトについても説明していく。
ソウジはメルド団長の説明通り、自身の血をステータスプレートに擦りつける。
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空山ソウジ 17歳 男 レベル:1
天職:剣士
筋力:14
体力:12
耐性:7
敏捷:18
魔力:4
耐魔:5
技能:剣術・縮地・言語理解
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メルド団長がさらにステータスプレートについて説明していく。
レベルは潜在値で百が限界値、天職は“才能”、戦闘系は千人に一人、非戦系は百人に一人の割合で天職を持っており、魔力光の色もステータスプレートに色彩として表示されるそうだ。ちなみにステータスプレートに表示されたソウジの魔力光は紫である。
メルド団長から各ステータスの平均が十くらいと笑いながら言った瞬間、ソウジの内心はひきつった。
(平均だよな?俺のステータス……)
名称からして、いくら戦闘系の天職とはいえ、平均では召喚された意味がないのではないか?そんな疑問が胸中を支配していくなか、メルド団長の呼び掛けで他の皆は次々とステータスプレートをメルド団長へと見せていく。
天之河はチート性能の最上位。報告していく他の連中も十分チートだった。しかも技能も三つ以上ある。
ソウジは重い気分のまま、メルド団長に自身のステータスプレートを見せる。
ソウジのステータスプレートを見たメルド団長は目を瞬かせ、軽くプレートを叩くも見間違いではないと分かり、微妙な顔でプレートをソウジに返した。
「剣士は……先程、説明した通りの天職だ……その、なんだ……」
「その気持ちだけで十分です」
歯切れ悪く言うメルド団長に、ソウジはそう言い、メルド団長から離れていく。
「空山君。随分疲れた顔をしているけどそんなに酷かったの?」
同じ天職持ちの八重樫が話しかけてきたので、ソウジは嘆息と共に自身のステータスプレートを八重樫に見せる。
ソウジのプレートを見た八重樫はその平凡なステータスに苦笑いするなか。
「その、何だ。錬成師というのは、言ってみれば鍛治職のことだ」
またしてもメルド団長から歯切れ悪い説明が聞こえ、そちらを向くと、ちょうど南雲がステータスプレートを見せていたようだ。
鍛治職という名称からして非戦系天職の可能性が高い。
さらに南雲に敵意持つ、檜山ら小悪党四人組によってステータスが平均ということをはっきりと伝え、南雲をバカにしていく。
ソウジは、今の自分では返り討ちに合う事を承知で南雲の元へ行こうと一歩踏み出した、その時。
「こらー!!仲間を笑うなんて先生許しませんよ!!」
愛子先生が精一杯に怒りを表現して動き出し、檜山らも愛子先生に毒気を抜かれたかのように南雲にプレートを返す。
愛子先生は自分も似たようなものだと南雲に自身のプレートを見せるも、愛子先生のステータスプレートを見た瞬間、死んだ魚のような目をした。
南雲に近づいていたソウジはそのまま、愛子先生のステータスプレートを見ると、先生も十分チートだった事を知り、一気に身体を硬直させた。
その後、ソウジは南雲に自身のプレートを見せ、南雲に羨ましがれながらも互いに固い握手を交わした。
こんなんで大丈夫かなぁ·····?
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