魔王の剣   作:厄介な猫さん

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眠いなぁ······
てな訳でどうぞ


約束は違えぬのが道理である

「……なるほど。試練に神代魔法、それに神の遊戯か……」

 

 

現在、ソウジ達はフェアベルゲンでアルフレリックが用意した場所で話し合っていた。フェアベルゲンは、周辺に“フェアドレン水晶”と呼ばれる霧と魔物避けのアーティファクトが設置されており、自然を利用した建物と相まってとても綺麗な場所である。

その場所でアルフレリックに話した内容はオスカーから聞いた話、ハジメとソウジは異世界の人間であり、故郷へ帰るために七大迷宮の攻略を目指している事等だ。

この話を聞いたアルフレリックは特に顔色を変えなかった。理由は「この世界が亜人族に優しくないから今更だ」からだそうだ。

そして、アルフレリックからフェアベルゲンの長老に就いた者のみが知る掟を聞く。それは、大樹の根元には七つの紋章が刻まれた石碑があり、その紋章を持つ者が現れたらどのような者であれ敵対しない、そして、その者を気に入ったのなら望む場所に連れて行くことという抽象的な口伝だった。

 

 

「お前さんの持っていた指輪はその紋章の一つだった。故に敵対せず招待したのだが―――」

 

 

その直後、扉が乱暴に蹴破られた。

 

 

「アルフレリック!!どういうつもりだ!?人間と忌み子を招き入れるなど……」

 

 

そう言いながら部屋に入って来たのは大柄な熊の亜人だ。その表情は怒り心頭であり、部屋にいるハジメとソウジ、ユエにアタランテ、シア達兎人族、アルフレリックでさえも睨み付けている。

熊の亜人が蹴破った扉の向こう側にも長老らしき亜人達がおり、全員、熊の亜人と似た雰囲気を発している。

対するアルフレリックはどこ吹く風といった様子で答えていく。

 

 

「なに、口伝に従ったまでだ。お前達も長老の座に在るなら事情は理解できる筈だ」

 

「口伝だと!?そんな眉唾物に従ったというのか!?こんな人間族の小僧共が資格を持つ、敵対してはならない強者だと!」

 

「そうだ」

 

「ふざけるな!!ならば、今、この場で―――」

 

 

熊の亜人が殴りかかろうとした瞬間、風切り音が鳴り渡る。そして、発生源であろう足下には、部屋の壁と壁を繋ぐ程の、一筋の線が刻まれていた。

 

 

「こいつは忠告だ。もし、今のままその線を越えれば、その瞬間からソイツを敵と見なし、迎撃させてもらう……その時の命の保証は一切しない」

 

 

ソウジは何時の間にか抜かれていた炎凍空山の切っ先を彼らに向けて、睨みながらそう伝える。ソウジのその物言いと、刀で床に線を刻んだであろう、先程の行動が目で追うことが出来なかった事に、その場に居る殆どの亜人が息を呑む。

 

 

「ふ、ふざけるな!!そんな脅しに屈したりはしない!!」

 

 

だが、熊の亜人は激昂したままソウジが刻んだその線を踏み越え、そのままハジメへと殴りかかる。熊の亜人のまさかの行動に周りの亜人達が息を呑む中、ハジメは熊の亜人の拳をあっさりと義手で掴み止めた。

 

 

「……ぬるい拳だな。しかもソウジの忠告を聞いた上でこうしたんだ。覚悟は出来ているんだろ?」

 

「……ッ!は、はな―――」

 

 

熊の亜人は危機感から反射的に口にするも、ハジメは聞かず、熊の亜人の腕を義手の握力でへし折る。

 

 

「ッ!?」

 

 

熊の亜人は痛みと驚愕で硬直し、ハジメはその隙を逃さず、正拳突きのように引き絞った義手の拳を、“豪腕”と義手の肘に内臓したショットガンの推進力で容赦なく熊の亜人の腹を殴り飛ばした。

殴り飛ばされた熊の亜人は身体をくの字に折り曲げ、背後の壁を突き破って虚空へと消えていった。

 

 

「で?お前らは俺の敵か?」

 

 

ハジメのその言葉に、頷けるものはいなかった。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

あの後、アルフレリックの取り成しでハジメ達による蹂躙劇は回避された。ハジメに殴り飛ばされた熊の亜人は一命は取り留めたようだが、二度と戦士として戦うことが出来ない、再起不能の身体となった。

 

 

「それで?お前達はどうするんだ?こっちは大樹の下へ行きたいだけで、その邪魔をしないなら敵対しないんだが」

 

「だが、()()()としての意思を統一してくれないとな。殺し合いの最中、敵味方の区別に配慮する程、お人好しじゃないぞ」

 

「こちらの仲間を再起不能にしておきながらそれか……それで友好的になれるとでも?」

 

 

ハジメとソウジの言葉に、土人族のグゼが苦虫を噛み潰したような表情で呻くように呟く。

 

 

「アホか。わざわざ忠告してやったのに、殺意持って先に仕掛けてきたのはあの熊だろうが。返り討ちになったのも、再起不能になったのもヤツの自業自得だ」

 

「き、貴様!ジンは、いつも国のことを!」

 

「それが初対面の相手を問答無用に殺していい理由になるとでも?」

 

「そ、それは!」

 

「いい加減にしろよ?こちらは()便()にしようとしたのに、あの熊はそれを踏み倒したんだ」

 

「あれのどこが穏便だ!ただの脅しではないか!」

 

 

グゼは堪らず椅子から立ち上がりソウジを睨み付ける。

 

 

「あんたらは口だけで納得するのか?」

 

 

だが、ソウジのその言い分に、グゼは言い返せず身体をプルプルと震わせる。グゼはおそらくジンと呼ばれた熊の亜人と仲が良かったのかもしれない。だから、頭では理解できても心が納得していないのだろう。そんな心情を汲み取る気は微塵もないが。

 

 

「グゼ、気持ちはわかるが、彼らの言い分は正論だ。この件に関しての非はこちらにしかない」

 

 

アルフレリックの諌めの言葉に、グゼは表情を歪めたまま、ドスンッと音を立てて座り込んだ。

狐人族のルアはソウジ達を資格者と認め、翼人族のマオと虎人族のゼルも相当含むところはあるが、同意を示した。

それを確認したアルフレリックは、彼らを資格者と認め、可能な限り手を出さないよう末端の者にも伝えると同時に、報復に動くであろう同胞達を殺さないで欲しいと頼み込む。

ハジメは殺し合いで手加減するつもりもなく、そちらの事情も関係ないから、そうならないように死ぬ気で止めろと伝えると。

 

 

「ならば我々は、大樹の下への案内を拒否させてもらう」

 

 

ゼルがそう口を挟み、続いてハウリア族の処刑は長老会議で決定していると伝える。

シアは再考を嘆願するも、カム達は元から覚悟していたと言い、ゼルも既に決定したことだから覆すつもりはないと切り捨てる。

 

 

「そういうわけだ。これで、大樹に行く方法がなくなったわけだが、運良く辿り着く可能性に賭けてみるか?」

 

 

ゼルのその言葉にハジメとソウジは……

 

 

「お前、アホだろ?」

 

「人の話、ちゃんと聞いてたのか?」

 

 

何でもない、むしろ、呆れた感じで返していた。

予想と全く違う反応にゼルの目がつり上がる中、ハジメははっきりと口にする。

 

 

「俺は、お前らの事情は関係ないって言っただろ?俺らからコイツらを奪うってことは、結局、邪魔しているのと変わらないだろ。コイツらを俺らから奪おうってんなら……」

 

 

ハジメは長老達を睥睨しながら、シアの頭に手を乗せ……

 

 

「覚悟を決めろ」

 

「……フェアベルゲンから使いを出すと言っても?」

 

 

ハジメの言葉と揺るぎない瞳に長老達が息を呑む中、アルフレリックが報復に動く者の助命を引き出すためのカードを切るが、ハジメは案内はハウリアだと一切譲らない。アルフレリックはどうして彼らに拘るのか聞く。

 

 

「約束したからな。案内と引き換えに助けると」

 

「……約束か。それならもう果たしたと考えていいのではないか?報酬を渡す者が変わるだけで問題はなかろう筈だ」

 

 

アルフレリックのその言葉に、ソウジが口を挟む。

 

 

「悪いが案内するまで安全は保証すると約束したんだ。だから、いい条件が出たからってそんな事したら、筋が通らないだろ?」

 

 

殺し合いに一切の躊躇いがなくなったハジメとソウジだが、殺し合い以外の守るべき仁義くらいは守るべきだと考えている。それすら出来なければ本当に唯の外道であり、二人は進んで外道になるつもりはなかった。

彼らが一切引く気がないと悟ったアルフレリックは、少しの沈黙の後、ハウリア族全員を彼らの奴隷という事にし、奴隷として捕まったと確定した者は死んだ者扱いとされる掟を利用した屁理屈で、ハウリア族を見逃す提案を出した。

その提案にゼルは真っ先に抗議の声を上げるも、ハウリア族を処刑すれば、確実にハジメ達と敵対し、最悪の場合、フェアベルゲンが滅ぼされる可能性があるとアルフレリックに言われ、何も言えなくなってしまう。

 

 

「すまんが、早々に立ち去ってくれるか。漸く現れた口伝の資格者を歓迎できぬのは心苦しいが……」

 

「気にすんな」

 

「全部譲れないこととは言え、相当無茶を言っている自覚はあるんだ。むしろ理性的な判断をしてくれて有り難いくらいだよ」

 

 

ハジメとソウジはそう言って扉に身体を向け、それに合わせてユエとアタランテは立ち上がる。未だ呆然としているシア達ハウリア族はハジメの呼びかけで漸く我に返り、あたふたしながら付いていく。

 

 

「全く、ずいぶんと思い切った言動だったな。本当に国全体を相手どるつもりだったのか?」

 

「ハッタリと思ってたのか?」

 

「…………」

 

 

何てことのない感じのソウジの返しに、アタランテは本気だったと悟り、言葉を失った。

 

 

 




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