魔王の剣   作:厄介な猫さん

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完成!投稿である!
てな訳でどうぞ


町についたら

町が見え始めてから少しして、ソウジ達は町の方からギリギリ視認できない辺りでバイクをそれぞれの宝物庫にしまい、徒歩へと切り替えて町を目指していく。このままバイクに乗って町に着けば大騒ぎになるからだ。

 

 

「そういえばステータスプレートは身分証明にも使えるんだったよな?」

 

「確かにそう言っていたな。取り敢えずこれがあれば大丈……」

 

「「……あ」」

 

 

何気ない会話をしていたハジメとソウジだが、その過程で自分達のステータスを思い出す。次いで隠蔽しなければまずい事を思い出し、急いでステータスプレートの隠蔽機能を使い、ステータスと技能を隠蔽していく。

ステータスプレートの隠蔽を済ませた後、一行は再び町へと向かっていく。道中、シアが首輪を外して欲しいと文句を垂れるが当然スルー。そのまま町の門まで辿り着き、詰所らしき小屋から冒険者風の男が出てきてソウジ達を呼び止める。

 

 

「止まってくれ。ステータスプレートを。あと、町に来た目的は?」

 

「旅の途中で食料の補給がメインだ」

 

 

代表としてハジメが隠蔽を施したステータスプレートを取り出し、門番の男に渡す。

 

 

「成程な。そちらの……」

 

 

ハジメのステータスプレートを確認し終えた門番の男はソウジ達にもステータスプレートの提出を求めようとしたが、ユエ達を視界に納めた瞬間に硬直する。そのまま顔を赤め、焦点の合わない目で彼女達を見やる。ユエ達に見惚れて正気を失った門番の男に、ソウジは前に出つつわざとらしく咳払いしつつステータスプレートを取り出す。門番の男もそれで正気に返り、慌ててソウジのステータスプレートを確認していく。

 

 

「オレとコイツ以外のステータスプレートは今なくてな。連れの一人は魔物の襲撃で、もう一人は一人旅の時に盗賊に身ぐるみを剥がされた時に失くしたみたいでな。こっちの兎人族はわかるだろ?」

 

「そうか。そちらの方は災難だったな。彼らに助けられてよかったな」

 

 

ソウジの嘘に門番は納得しステータスプレートを返していく。

 

 

「それにしても白髪の兎人族を手に入れるなんて……意外と金持ちなのか?」

 

 

門番の羨望と嫉妬が混じった質問にハジメとソウジは肩をすくめるだけで何も答えない。

 

 

「まぁいい。通っていいぞ」

 

「どうも。おっと、そうだ。素材の換金場所って何処にあるんだ?」

 

「ん?換金場所ならここから中央の道を真っ直ぐ行った先に冒険者ギルドがあるからそこで聞くといい。簡単な町の地図もくれるからな」

 

「そうか。ご丁寧でありがとさん」

 

 

門番にお礼を言い、ソウジ達は門をくぐって町へと入る。この町はブルックというらしく、ホルアドほどではないが露店も並んでおり、それなりに活気が溢れる町だった。

こういう雰囲気は訳もなく気分を高揚させるもので、シアを除く一同は楽しげに目元を和らげている。だが、シアだけは涙目でプルプルと震えてハジメを睨んでいる。ハジメはその視線にうんざりしつつ、シアに視線を合わせる。

 

 

「どうした?せっかくの町で、上から超重量の岩盤を落とされて必死に支えるゴリラ型の魔物みたいな顔をして」

 

「誰がゴリラですかっ!?ていうかどんな倒し方してるんですか!」

 

「圧縮錬成の実験の時か。ハジメの実験が十分に終わった後、オレが“震脚”でそいつのバランスを崩してペチャンにしたんだよな」

 

「ん。あの時の『え?』という顔は傑作だった」

 

「……憐れなゴリラだな」

 

「ひ、酷すぎますぅ!ってそうじゃなくて!この首輪のせいで奴隷と勘違いされたんですよ!?ハジメさん、わかってて付けたんですね!ソウジさんもどうして誤解させるような事を言ったんですかぁ~」

 

 

シアは意図的に奴隷扱いされた事がショックだったようだ。

 

 

「あのなぁ、兎人族で容姿スタイルも抜群なお前が誰かの奴隷だと示さなかったら、十分で目をつけられ……ってなにクネクネしてるんだ?」

 

 

ハジメが理由を説明した途端、シア照れたように顔を赤らめイヤンイヤンし始めた。

 

 

「もうハジメさんったら。誰が容姿もスタイルも性格も抜群で、世界――」

 

 

コキャ。カクン。

 

シアが調子に乗り話を持った瞬間、シアの後ろから腕が伸び、一瞬で絞め落とした。

 

 

「……さっさと行くぞ」

 

 

冷めた表情でありながらどこか憎々しげな目でシアを絞め落としたアタランテは移動を促す。

下手に突っ込んだらシアの二の舞になるので、というかシアを黙らせた事に感謝しつつ、ハジメがシアの首根っこを掴んで引きずりながら、一行は冒険者ギルドを目指していく。

ギルドを目指す道中も、目覚めたシアがまた調子に乗り―――

 

 

「いつか、ユエさんとアタランテさんにない武器でハジメさんをッ!?」

 

 

全く懲りず成長していないシアは何度目かわからない喧嘩言葉を言い、今度はユエとアタランテのダブルラリアットで沈められる。

そんな風に仲良く?歩いていき、一行は冒険者ギルドにへと辿り着く。ギルドの建物の中に入ると、中は意外に清潔さが保たれており、入り口正面にカウンターがあり、左手は飲食店になっているようだ。

カウンターには笑顔を浮かべたオバチャンがおり、二次元のような美人が受付ではなかった。まぁ、現実では若い人より経験が豊富な人の方が対応力があるし当然だろう。

 

 

「三つも花があるのに、まだ足りなかったのかい?残念だったね二人共、美人の受付じゃなくて」

 

 

……やっぱりこのオバチャンは侮れないようだ。

 

 

「さて、改めて、冒険者ギルド、ブルック支部にようこそ。ご用件は何かしら?」

 

「素材の買い取りだ」

 

「了解。じゃあ、まずステータスプレートを出してくれるかい?」

 

「あれ?買い取りにステータスプレートの掲示が必要なのか?」

 

「おや?あんた達冒険者じゃないのかい?確かに、買い取りにステータスプレートは不要だけどね、冒険者と確認できれば一割増しで売れるんだよ」

 

 

オバチャンはそのまま、冒険者ならギルドと提携している店は一~二割引きしてくれること、馬車も高ランクなら無料で使えることも説明していく。

 

 

「う~ん、そうか。ならせっかくだし登録しておくか」

 

「だけど、持ち合わせがが今は全くなくてな。悪いが買い取り金額から差ッ引いてくれないか?」

 

「可愛い子三人もいるのに文無しなんて何やってんだい?上乗せしといてあげるから、その子達を不自由させるんじゃないよ?」

 

 

ハジメとソウジはオバチャンのご厚意を有り難く受け取りつつ、互いのステータスプレートを差し出す。オバチャンからユエ達も登録するかと聞かれたが、ステータスに関する面倒事を避ける為にやんわりと断る。

戻ってきたステータスプレートには転職欄の横に職業欄が出来ており、そこに“冒険者”とランクを表す青い点が付いている。

ちなみにこの世界の通貨は青、赤、黄、紫、緑、白、黒、銀、金と、左からいくにつれて金貨の値段は上がる。この冒険者ランクも金貨と同様に変化するから、この制度を作った初代ギルドマスターは絶対にいい性格をしているに違いない。

登録も終わり、あらかじめバックに入れ替えておいた素材をカウンターの受け取り用の入れ物に入れていく。素材は樹海で手に入れた魔物の素材だ。

 

 

「……!……とんでもないものを持ってきたね。樹海の素材は良質なものが多いからね、助かるよ」

 

 

オバチャンはそう言いつつ、素材の査定をしていく。オバチャンの反応を見る限り、やはり珍しいのだろう。

その後、素材を五十万ルタに近い金額で買い取ってもらい、オバチャンから手書きの地図も貰った彼らはギルドを後にした。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

ギルドを去ったソウジ達はオバチャンに渡された地図という名のガイドブックを見て、とある冒険者向けの店に向かった。そこにはある程度普段着もまとまっているからだ。そこでアタランテと、ついでにシアの服を買うつもりだ。

その店は確かに品揃え豊富、良品質、機能的で実用的、されど見た目も忘れずという期待を裏切らない良店だった。

ただ……

 

 

「あら~ん、いらっしゃい♪来てくれて、おねぇさん嬉しいわぁ~♪」

 

 

オカマがいた。身長二メートル強、筋肉隆々、顔も濃ゆい、化物と形容していいオカマが。

そのオカマにソウジ以外の面々は硬直する。ソウジも一瞬驚いたがすぐに平静を取り戻す。

ソウジは故郷の世界に居た頃、実家の店の手伝いをよくしており、店には()()な本が置かれていたので、足を運ぶお客も多種多様だった為、()()()()()にも見慣れていたのだ。

 

 

「あらあらぁ~ん?どうしちゃったの?せっかくのお顔が台無しになってるわよぉ~ん?」

 

「すまない。貴女のような御方と実際に会うのは他の奴らは初めてだから、驚いて硬直してしまっただけだ」

 

「あらぁ~、そうだったのぉ~♪」

 

 

ソウジがオカマという名の化物に普通に対応している光景を見て、ハジメ達は戦慄の表情を浮かべてソウジを見やる。

 

 

「ソウジお前……なんでこの化物を相手に平然と会話ができるんだよ……!?」

 

 

その瞬間、オカマが怒りの咆哮を上げた。

 

 

「だぁ~れが、伝説級の魔物すら逃げ出す、見ただけで正気度をマイナスに吹き飛ばし、吐き気を促す化物だゴラァァアアアアア!!!」

 

「そこまで言ってねぇ!!!」

 

 

ハジメは後退しながらツッコミを入れる。ユエとアタランテも後退り、シアはその場でへたり込んでしまう。

 

 

「ハジメ、この人に謝っとけ」―――“ああいう人は怒らせたらいけない人種なんだよ”

 

“た、確かに怒らせてはいけないヤツだった……”―――「その……悪かった……」

 

 

念話を交えた会話でソウジはハジメに謝罪を促し、ハジメも納得してオカマに謝罪する。

 

 

「いいのよぉ~ん。私も怒鳴って悪かったし、お互い様という事にしましょ~う?それでぇ?どんな商品をお求めかしらぁ~ん?」

 

「衣服を探しに来た。そこの彼女とへたり込んでいるウサギのな」

 

「任せてぇ~ん。二人にぴったりの服を見繕ってあげるわぁ~」

 

 

オカマはそう言うやいなやアタランテとシアを担いで店の奥へと入っていく。その時のアタランテの目は裏切り者を見つめるような目で、シアの方は食肉用に売られていく豚さんのような目で彼らを見つめていた。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

結論から言うと、オカマ改め店長のクリスタベルの見立ては見事の一言だった。店長はシアが粗相した事、アタランテの髪色は染めたものだと気づいて、それぞれに場所を提供する為に店の奥にへと連れて行ったのだ。

肝心の服は、シアの方は前の服とあまり大差がない、露出の多い服を選んだ。本人曰く動き易いそうだ。

アタランテの方はキャミソールの上にバトルベスト、ホットパンツにミドルブーツと活発な冒険者を連想させる服に身を包み、本人の容姿と相まって見事にマッチしていた。髪も店長が緑の染毛剤でしっかりと染めてくれた事で、銀色が一切ない緑色の髪へと変わった。

ユエとシア、アタランテは店長にお礼を言い、ハジメとソウジは軽く店長に会釈して店を出た。

 

 

「いや~、最初はどうなるかと思いましたけど、意外にいい人でしたね」

 

「ん……人は見た目によらない」

 

「そうだな」

 

 

ユエ達が楽しく談話するのを尻目に、ハジメとソウジはガイドブックとにらめっこして今日の宿泊場所を検討していく。

 

 

「この“マサカの宿”が良さそうだ。他の宿より少し割高だがここがいいだろうな」

 

「だな。料理も美味く防犯もしっかりしていると書いてあるし、なりより……」

 

「「風呂に入れるとある!」」

 

 

満場一致で可決し、一同は“マサカの宿”に向かって歩いて行った。

 

 

 




日常バージョン

「何で普通に話せたんだよ」

「店には色んな本が置かれていたからな。BL、NL、GLとかSM·······理解の苦しむ本までな。そういった本を買いにくる客の中には黒人マッチョで○○○服を来たオカマとか、ハンサムなのにゲイな客もいたからな」

「·····お前ん家の本屋は魔界の巣窟だったのか·····」

「話の内容はよく分からんが、ソウジはとんでもない猛者だという事は理解したぞ」

ソウジの話にドン引きする一同の図


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