魔王の剣   作:厄介な猫さん

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原作の盛大なネタバレが含まれています。ご注意を!
てな訳でどうぞ


食事と風呂、ウサギは学ばない

「いらっしゃいませー、ようこそ“マサカの宿”へ!」

 

 

ガイドブックから宿泊場所を決めたソウジ達をカウンターらしき場所で十五歳くらいの女の子が元気よく挨拶して出迎えた。

 

 

「本日はお泊まりですか?それともお食事だけですか?」

 

「宿泊だ。このガイドブックを見てな」

 

「ああ、キャサリンさんの紹介ですね。何泊のご予定ですか?」

 

 

ハジメがオバチャン改めキャサリンのガイドブックを見せた事で女の子は合点がいったように頷き、テキパキと宿泊手続きを進めようとする。ハジメはオバチャンの名前がキャサリンだったことを知って何処か遠い目となっていたのでソウジが代わりに答える。

 

 

「食事付きの一泊だ。勿論、風呂も含めてな」

 

「お風呂は十五分百ルタです。今のところ、この時間帯が空いていますが」

 

 

女の子が時間帯表を見せ、ショックから立ち直ったハジメと共に時間帯表とにらめっこする。ゆっくり入りたいし、男女別なので二時間は確保したい。その旨を女の子に伝えると大層驚かれたが、こればかりも譲れないところである。

 

 

「そ、それでお部屋はどうされます?二人部屋と三人部屋が空いていますが……」

 

「ちょうどいいな。二人部屋と三人部屋、一つずつで頼む」

 

「……ん。確かにちょうどいい」

 

 

ソウジの言葉にユエが同意する。傍から見れば男女に別れて泊まるだろうという考えに聞き耳を立てていた客達、特に男連中は安堵した表情となる。勿論ソウジはそのつもりで言ったが、ユエは全然違っていた。

 

 

「ちょうどハジメと二人きりになれる。残りは三人部屋」

 

 

ユエの言葉に女の子は顔を赤め、周りもザワッと、男連中に至っては先程とは売って変わって絶望の表情となる。

 

 

「ま、待ってくださいですぅ!せめて私もハジメさんと同じ部屋に!!」

 

「……シアがいると楽しめない」

 

「た、楽しむって……こんな所で何いってるんですか!!」

 

「さりげなく私とソウジが同室なのは確定事項なのか……?」

 

 

ユエとシアの争いにアタランテはジト目でツッコミを入れるも二人には届かない。男連中は嫉妬の炎が宿った瞳をハジメとソウジへと向ける。

 

 

「だったら、私がハジメさんと二人きりで一緒に寝ます!!そのまま、ハジメさんと大人の階段を!!」

 

 

シアがそう宣言した瞬間、静寂がその場を包み込んだ。

 

 

「……今日がウサギの命日」

 

「ま、負けません!今日こそユエさんを倒してハジメさんの正ヒロインの座を奪ってみせますぅ!!」

 

 

ユエが絶対零度の瞳で尋常でないプレッシャーを放ち、シアも覚悟を決めた顔で大槌を両手で構える。まさに修羅場、一触即発の雰囲気に誰もが生唾を飲み込む中。

 

 

「やめろ。周りに迷惑だし、何より俺が恥ずいわ」

 

 

ハジメがユエの頭を叩き、シアの両ウサミミを引っ張って強引に収める。

 

 

「……ハジメの愛が痛い……」

 

「そ、そんなに強く引っ張らないでください……地味に痛いので……」

 

「自業自得だ」

 

 

ハジメは冷ややかな視線をユエとシアに向け、女の子の方に向き直る。

 

 

「騒がせて悪いな。部屋割りは俺達が三人部屋、ソウジとアタランテは二人部屋で頼む」

 

「結局、私とソウジが一緒なのは確定事項なのか」

 

「どうせ男女に分けても、あの二人が部屋に突撃するのは目に見えているからなぁ……こうした方がまだマシなんだろうな……」

 

 

ハジメの言葉にアタランテがツッコミ、ソウジが嘆息とともにそうなった理由を説明する。

女の子はハジメの言葉に完全にトリップ状態となっており、女将さんらしき人にズルズルと奥へと引きずられて行った。

手続きは女の子の父親らしき男性が手早く行ってくれ、鍵を渡しながら娘の事で謝罪するも、瞳には「男だもんね?分かってるよ?」という嬉しくない誤解の色が宿っていた。

鍵を受け取ったハジメはシアとユエを肩に担いで、三階の部屋に逃げるように向かった。ソウジとアタランテは……

 

 

「せっかくだしメシにするか。時間もちょうどいいし」

 

「あの後で何故平然と食事を取ろうと思うのだ……」

 

 

部屋に向かわず先に食事を取ろうとしていた。アタランテは呆れてはいるが止めようとしない辺り、食べる気満々である。

周りが喧騒するのを無視し、ソウジとアタランテは空いていたテーブルに座り、給士に来た女将さんに料理を注文していく。

運ばれてきたのは、クルルー鳥の照り焼き、魚のソテー、チャーハンモドキにトマトスープ、パン数本と色とりどりの料理達だ。

ソウジとアタランテは運ばれた料理を食べていくのだが……

 

 

「……やっぱりワイルドな食いかただなぁ……」

 

 

ソウジは対面で照り焼きを食べているアタランテに若干遠い目を向けていた。アタランテは魚のソテーを()()で完食し、続くクルルー鳥の照り焼きも半分に切って、その半分を先程と同じく一口で食べたのだ。アタランテは元・神の手先だったのに加え、サバイバル生活が長かったから、上品な食べ方等知らず、大口で頬張る食べ方が染み付いているようだ。

 

 

「今まで食べていたものより断然上手いなソウジ!!あ、このパスタとミートパイとやらを追加で頼んでいいか?」

 

「まだ食うのかよ……」

 

 

そんなソウジの心情等知らないアタランテは、子供のように顔を綻ばせながら料理を追加注文する。チャーハンモドキを食べているソウジは最早苦笑いするしかない。周りの客達もアタランテの食べっぷりに心なしか引いているように見える。

 

 

「当然だ!こんなに美味しいものを今食べないのは勿体無いからな!!」

 

「oh……」

 

 

腹ペコ王と化したアタランテはその後も食べ続け、アタランテが満足した頃にハジメ達が食堂に来て、ハジメ達はアタランテが一人で八千ルタ分に相当する量の料理を平らげた事に驚く。同時に食費に関して本気で悩むこととなった。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

ハジメ達も食事を終わらせ、ちょうど風呂の時間にもなったのでハジメとソウジは先に風呂に入っていた。

 

 

「やっぱり湯船ってのはいいな……」

 

「全くだ……」

 

 

ここら辺はまだ日本人なのだと思いながら風呂を堪能していると、入り口の扉が急に開く。二人は疑問に思いながらそちらに目を向けると。

 

 

「……は?」

 

「ユ、ユエ!?」

 

 

一糸纏わぬユエがそこに居た。

 

 

「……え?ハジメ、私に背中を流してほしい……?」

 

「一言も言ってないんだが!?」

 

 

相変わらずのユエにソウジが呆れていると。

 

 

「ユエさんずるいですぅ!私もハジメさんの背中を流します!!」

 

「全く、騒がしいな。少しは静かにしたらどうだ?」

 

 

シアとアタランテまで乱入してきた。アタランテの方はバスタオルを巻いてはいるが。

 

 

「お前ら……」

 

「ユエとシアはまだしも、何でアタランテまできてるんだよ……!?」

 

「ん?ユエが『あれは混浴していい合図だから大丈夫』と言っていたが違ったのか?」

 

 

アタランテのその言葉に、ハジメとソウジはユエに顔を向けると、ユエはプイッとそっぽを向く。

 

 

「……まぁ、貸切状態に近いからいいか……ユエ頼む」

 

 

ハジメは呆れながらもまぁ、いいかという感じで諦め、ユエに背中を流すよう頼む。頼まれたユエは上機嫌、シアはショックを受けた顔をする。ハジメはユエに勝てるわけないとシアに言うと。

 

 

「で……でも!胸なら私が勝ってます!ユエさんはアタランテさん程ではないですが、ペッタンコじゃないですか!!」

 

 

その瞬間、空気が凍った。ユエとアタランテの目が完全に据わったものとなり、シアも「あ……」っとやってしまった!という表情となる。

 

 

「……じゃ俺、先にあがるわ」

 

「風呂は十分に堪能したから、どうぞごゆっくり……」

 

「まっ、待ってください!!」

 

 

シアはハジメとソウジに助けを求めるも、シアの自業自得なので二人は当然スルー、入り口へと向かっていく。

 

 

「ご……ごめんなさい!つい口が……」

 

「「うるさい」」

 

「あーーーーーー!!!!」

 

 

シアは二人がかりのお仕置きで、まるで洗濯機の洗濯物のように、湯船から巻き上げた渦によってもみくちゃにされていく。ハジメとソウジはそれを尻目に風呂場を後にしようとしたが……

 

 

「「「…………」」」

 

 

入り口にトリップしていた女の子が覗き見ていた。三人はしばし無言となるも····

 

 

「「なにしてんだテメェ!!」」

 

「ひぃぃい!ごめんなさい!!」

 

 

その後、宿の女の子は女将さんに尻叩きされることとなった。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

次の日。朝食を終えたソウジ達はハジメ、ユエ、シアが寝泊まりした部屋に集まり、ユエとシア、アタランテに旅に必要なものの買い出しを頼んだ。(ちなみにアタランテの朝食の量はハジメとソウジと同じくらいの量に落とし込んでいた)

三人が買い出しに行っている間に昨日済ませる筈だった用事を済ませておくといい笑顔で言った途端、三人は阿吽の呼吸で話題を逸らし、買い出しに出掛けた。

 

 

「……あいつら、実は結構仲良いだろ」

 

「それは置いといてとっとと取り掛かったらどうだ?時間も限られてるし」

 

「それもそうだな」

 

 

ハジメはソウジの言葉に同意し、シア専用の武器の作成に取り掛かっていく。ソウジは本来であればユエ達と行動するのだが、とある話をするためにわざと残ったのだ。

その話とは―――ユエに関する話である。

 

 

「ハジメ。あの時は冗談混じりだったが、実際はどうなんだ?」

 

「……真剣に捉えている。アタランテのあの情報を前提に考えれば、ユエを殺さず封印した理由に一応の説明がつくしな」

 

「今のところ、そうなった時の対策を打てないのが痛いところだな。クソ神の実力がどれ程のものなのかはアタランテも知らないようだし」

 

「今出来るのは大迷宮の攻略だな。名称からして魂魄魔法を手に入れれば万が一の対策が打てるようになるかもしれないからな」

 

 

ハジメはそう締めくくって作業に没頭していく。ソウジも話をそこで切り上げ、以前思いついた事を実行する事にした。

 

シア専用の戦槌―――“ドリュッケン”が完成する頃、ソウジの試み―――氷の短剣に魔法を付加する試みは九割の失敗で終わった事で、要鍛練と意気込みを新たにするソウジがそこにいた。

 

 

 




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