魔王の剣   作:厄介な猫さん

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ライセン大迷宮攻略開始!
てな訳でどうぞ


ウザイ・タチが悪い・腹立たしいの三拍子が揃った大迷宮:前編

シアがあの石板を破壊しつくし、アタランテが怒りの咆哮をあげた後、ソウジ達は道なりに通路を進み、とある巨大な空間に出た。

そこはレゴブロックを無造作に組み合わせたような場所であり、規則性もなく、本当にめちゃくちゃな構成だ。

 

 

「こりゃ、迷宮らしいと言えば迷宮らしい場所だな」

 

「……迷いそう」

 

「ふん、流石は腹の底まで腐ったヤツの迷宮ですぅ。このめちゃくちゃ具合がヤツの心を表しているんですよぉ!!」

 

「腐っているかはともかく、ヤツの心を表しているのには大いに同意だな」

 

「気持ちは分かるが落ち着け。頭に血がのぼったままだとヤツの思うツボだぞ」

 

 

未だ怒り心頭のシアとアタランテをソウジが宥める。この大迷宮は谷底よりも遥かに強力な分解作用が働いており、この地で最たる戦力になるのは、身体強化に特化したシアと分解作用に耐性があるアタランテなので、二人には落ち着いて頑張って貰わなければならない。

その間にハジメが固有魔法“追跡”で各所に魔力を直接添付してマーキングしながら進んでいく事を決め、一行は長い通路を進んでいく。

ソウジはハジメ同様“魔眼石”で周囲にトラップがないか確認しながら進んでいると。

 

ガコンッ

 

突然、そんな音がハジメの足元から聞こえてきた。ハジメを含めた全員が一斉にハジメの足元を見ると、ハジメが踏んでいるその部分のブロックが沈んでいた。

その瞬間、シャァアアア!!という音と共に左右の壁のブロックとブロックの隙間から丸いノコギリ状の巨大な刃が高速回転・振動した状態でそれぞれが腰と首の高さで迫って来ていた。

 

 

「回避!」

 

 

ハジメは咄嗟にそういいながらマトリッ○スのように後ろに倒れ込んで回避し、ユエもしゃがむだけで回避する。ソウジはアタランテの服の襟を掴んでハジメ同様の方法で回避し、強引に後ろに倒されたアタランテもバランスを崩して床に倒れつつも回避した。シアはウサミミの先端の毛が切られたが何とか回避した。

二枚の刃はソウジ達を通過すると何事もなかったように再び壁の中へと消えていく。第二陣を警戒して、注意深く辺りをハジメとソウジは見回し、安心しかけると。

 

 

「“天絶”!!」

 

 

アタランテが急に光系の中級防御魔法“天絶”を頭上へと発動。光のシールドを複数枚展開する。直後、ソウジ達の頭上から無数の刃がギロチンの如く襲いかかる。その刃も先程と同じく高速振動しておりシールドを破っていっている。

ハジメはユエとシアを、ソウジはアタランテを回収して安全圏へと急いで離脱する。離脱した数秒後、光のシールドは全て破壊され、刃はバターの如く床にすっと食い込んだ。

 

 

「……完全な物理トラップか」

 

「よく考えれば魔法が分解されるこの場所で魔法トラップの設置は困難だよな。今までが魔法トラップだったから完全に油断してたな」

 

 

無意識の内に自分達の力を過信していた事に、ハジメとソウジは内心で反省する。

 

 

「アタランテ。さっきは助かった」

 

「私も最初に助けられたからな。お互い様だ」

 

「俺からも礼を言わせてくれ。さっきのあれはナイスだった」

 

「ん」

 

「確かにアタランテさんのお陰で助かりましたけど……それよりハジメさん!あれくらい受け止めて下さいよぉ!何のための義手なんですか!ソウジさんもあれくらいなら斬れるんじゃないんですか!?」

 

 

魔法でトラップに対処したアタランテに誰もがお礼言う中、シアはアタランテにお礼を言いつつハジメとソウジに文句を言う。

 

 

「いや、あれ相当な切れ味だと思うぞ?」

 

「アタランテ以外はマトモに魔法が使えない中、わざわざ装備を痛める行動を取ろうとは思わないだろ?」

 

「……そもそも死にかけたのは未熟なだけ。お漏らしウサギはもっと精進するべき」

 

「この旅は危険なものだと最初から聞かされているのに、文句を言うのもどうかと思うぞ」

 

「それはそうですけどぉ……それよりユエさん!さっきの言葉は撤回して下さい!幾らなんでも不名誉すぎますぅ!!」

 

 

シアの文句は全員に完膚なきまでに叩き伏せられ、ユエから不名誉な称号を送られたことでそれだけは撤回してもらおうと猛抗議する。

 

 

「でもまぁ、あれくらいなら問題ないか」

 

「シア以外はな」

 

 

ハジメの呟きにソウジが捕捉を加える。ハジメとソウジは魔物の皮を利用したコートに加え、その下にはプロテクターを各急所部分に着けている。ユエには“自動再生”があるし、アタランテは魔法が普通に使えるからトラップに対応しやすい。ソウジの言う通り、危ないのはシアだけである。

ハジメとソウジはシアに哀れんだ目を送り、それを受けたシアは不安に駆られることとなった。

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

ソウジ達はトラップに注意しながら進んでいたが……

 

 

「うぅ~、何だか嫌な予感がしますぅ」

 

 

その道中で三つの通路に分かれた空間に辿り着き、マーキングを施してから階下へ続く階段がある一番左の通路を選んで進んでいると、シアがウサミミを忙しなく動かしながら不穏な言葉を口にした。

 

 

「お前、変なフラグ立てるなよ」

 

「全くだ。そんなこと言ったら『ガコン』……」

 

「……」

 

「わ、私のせいじゃないですぅッ!?」

 

「……フラグウサギッ!!」

 

 

会話の最中で嫌な音が響き、いきなり階段の段差が消え、傾斜のキツイスロープにへと変わる。しかもご丁寧に地面に無数の小さな穴からタールようなよく滑る液体が一気に溢れるというオマケつきで。

 

 

「このっ!!」

 

「チィッ!!」

 

 

ハジメは咄嗟に靴底の鉱石をスパイクに錬成、義手の指先からもスパイクを出して堪える。ソウジは義足のふくらはぎの左右に取り付けられている魔力ギミックによるスライド式の刃を展開、地面に深々と突き刺し、座り込む形でバランスをとり、滑り落ちないようにする。ユエは咄嗟にハジメに飛びつき、アタランテは咄嗟に飛行能力を使い、翠に輝く翼をはためかせ、滞空して難を逃れる。

だが、シアだけは何も出来ず転んで転倒。悶えている間に液体まみれとなり滑落。そのままハジメとユエを巻き込んで滑り落ちていく。

 

 

「くそッ!」

 

 

ソウジは舌打ちして義足の刃を収納、ハジメ達同様に滑り落ちていき後を追いかけるが、間が空いた上に三人まとめてであるがゆえ、速度もハジメ達の方が早く距離を詰められない。

 

 

「アタランテ!落下速度を早める事は出来るか!?」

 

「風系統の魔法を使えば可能だがどうするつもりだ?」

 

「ハジメ達に追い付いた後、刀を突き刺して強引に止める!」

 

「分かった!」

 

 

追いかけていたアタランテはソウジの考えを聞いて素直に頷き、魔法を使い一気にソウジの滑落速度を加速させる。

滑落速度が上昇したソウジはみるみる内にハジメ達と距離を詰め―――

 

 

「ハジメッ!!」

 

「――ッ!ソウジ!!」

 

 

ソウジが差し出した手をハジメがしっかりと握る。ハジメの手をしっかりと握ったソウジは、既に抜いていた炎凍空山を地面に突き刺し、合わせて炎凍空山に付加されている“凍鎧”を全開にし、液体を凍らせて強引に滑落を止める。結果、ソウジ達はスロープが終わる直前で停止する事が出来た。

 

 

「まったく、随分無茶なことをするな」

 

「ここで脱落されると迷宮攻略の大きな支障になるだろ」

 

 

互いに皮肉を言いつつも微かに笑みを浮かべるハジメとソウジ。その後、アタランテが追い付き、無理をして全員同時にスロープが終わった先の空間にある安全地帯に運ぶのだが……

 

カサカサカサ、ワシャワシャワシャ、キィキィ、カサカサカサ

 

“彼等に致死性の毒はありませんが、麻痺はします”

 

“存分に可愛いこの子達との添い寝を堪能して下さい、プギャー!!”

 

その空間の下には大量のサソリ、天井にはふざけた言葉が刻まれていた。

一同は沸き上がる苛立ちを何とか抑え、その空間の安全地帯であろう横穴に降り立つ。

全員を運び終えたアタランテは翠翼を解除すると、その場でへたり込んだ。

 

 

「さすがに無理をさせちまったか?」

 

 

使徒の飛行能力はほとんど制限なく飛行できるようだが、アタランテはその飛行能力に大きな制限が出来ており、連続で飛行できるのは数十分、しかも誰かを抱えての飛行は負担がかかるといった状態なのだ。

 

 

「少し疲れたが問題ない。飛行能力は暫く使えないがそれ以外は大丈夫だ」

 

「一応ここで少し休むか?」

 

「だな。少し落ち着いておかないと精神的にキツイし、丁度腹も空いてきたしな」

 

「ん。ハジメに従う」

 

「なら私が作りますね!ここに来てから足を引っ張ってますし……」

 

「……すまないな」

 

「謝る必要なんてないだろ。むしろ一番活躍しているのに謝られると困る」

 

 

アタランテが謝ってくるが、ソウジは呆れた感じで答える。

 

 

「そうか。なら遠慮なく休ませてもらおう」

 

 

アタランテもソウジの言葉を素直に受け取り、この場で休む事にした。

暫くしてシアお手製の料理が出来上がり、一同はこの迷宮のウザさを一時忘れて食事を楽しんだ。

 

 

 




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