てな訳でどうぞ
食事が終わり、攻略を再開したソウジ達。そんな彼等に次に襲いかかってきたトラップは……
「今度は吊り天井かよ!?」
「んぎぃいいいいいい―――ッ!!」
辿り着いた部屋を少し進んでからの吊り天井のトラップである。奥の通路までは距離がありすぎる上に、前きた通路は天井が落ちてくると同時に壁が降りて封鎖するという悪辣すぎる仕掛けだ。
咄嗟にハジメとソウジ、シアが膂力で天井を支え、その隙にハジメが天井を錬成し穴を開けて難を逃れる。当然普段の錬成より速度も範囲も低下し、消費魔力も数十倍にはね上がっている。それでもハジメは錬成を駆使して穴を掘り、密着状態で出口の方へ向けて脱出した。
そして、ハジメが魔力回復薬を飲み干したタイミングで、何時ものウザイ文字を発見した。
“ぷぷー、誰かさんの胸のような天井に焦ってやんの~、ダサ~い”
……どうやらこのウザイ文は全てのトラップの場所に設置されているみたいだ。
「あ、焦ってませんよ!断じて焦ってなどいないですぅ!!」
「…………」
「……相手にするな、相手にするな、相手にするな……」
そのウザイ文にシアが反論、ユエは無言で睨み付け、アタランテは必死に自らに言い聞かせて我慢しようとしている。もし本人が生きていたら「いいカモが来た!」、「ザマァッ!!」とほくそ笑んでいるに違いない。
その後も、進む通路、辿り着く部屋の尽くで罠が待ち構えていた。その後には例のウザイ文付きで。
例えば、全方位から飛来する毒矢では……
“やられちゃった?貧乳の状態異常を付加された魔力矢に劣るのに?精々悔しがりたまえ……プッ”
「「「「…………」」」」
「ハハハ!残念だったな!全て魔法で防いでやったぞ!逆に悔しがるがいい!!」
硫酸らしき、物を溶かす液体がたっぷり入った落とし穴では……
“一部の贅肉は消えたかな?それとも骨になっちゃったかな?”
“安心して。骨はちゃんと拾ってあげるよ”
“あっ、そもそも骨ごと溶けるから意味ないか。キャハッ♪”
「「…………」」
「贅肉じゃないですぅ!!」
「「……チッ!」」
アリ地獄のように床が砂状化、その中央にワーム型の魔物が待ち受ける部屋では……
“この子は無機物しか食べません”
“丸呑みにされると思って焦っちゃったのかな?もっと余裕を持ちたまえよ。やれやれ”
「「「「…………」」」」」
「飛んで普通に通過してやったぞ!残念だったな!」
針山地獄のように大量の刺が敷き詰められていた、多数の落とし穴では……
“この落とし穴は一定の重さで起動します”
“起動した人はどんな理由で重かったのかな?装備?筋肉?それとも贅肉?一部の脂肪の塊?”
“まぁ、ぺったんこには関係ないかな?無駄な脂肪がついてないし……魔法が効きにくくなっていったクソ人形のように”
「「「…………」」」
「「……グスッ」」
スロープ状の通路で迫りくる岩で出来た大玉には……
「―――ラァッ!!」
ストレスの限界からソウジがその大玉をバラバラに切り裂くも……
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ
そのすぐ後に黒光りする金属製の大玉が、無数にある穴から溶解液を撒き散らしながら迫って来ていた。
「……うそん」
「早く逃げるぞチクショウ!!」
ハジメの叫び声に一同は一目散にスロープを駆け降りていき、そのまま駆け降りた通路の先の部屋に飛び込む。
そうして飛び込んだ出口の真下に落下すると……
「げっ!?」
「んっ!?」
「やべっ!?」
「なっ!?」
「ひんっ!?」
出口の真下にはヤバそうな液体で満たされたプールになっていた。
ハジメは壁にアンカーを撃ち込み、ユエを捕まえて落下を防ぎ、ソウジは炎凍空山を壁に突き刺して落下を防ぐ。アタランテは飛行能力であっさりと回避、シアは数本のナイフで衣服を縫い止められた事で難を逃れた。その後アタランテに運んでもらい、安全地帯の床に降り立つと。
“ビビった?ビビっちゃったのかな?”
“あのトラップは実は二段構えだったんだよね~”
“もし最初の大玉を破壊して、やってやったぞ!とか思っていたらスゴい滑稽だよね?プッークスクス!!”
その床にもウザイ文があった。先の行動を読んでいたかのようなウザイ文が。
「…………」
「……気持ちは分かるが落ち着け、ソウジ」
「……ん。気持ちは痛いほど分かる」
「本当に腐ってやがりますねぇ……」
怒りで拳を強く握りしめ、ワナワナと震わせるソウジをハジメが無言で肩に手を置き、ユエとアタランテが言葉で諌め、シアは改めてミレディのウザさに怒りを向ける。
そんな苛立ちを抑えて奥の通路を進んでいくと……
「なぁ……ここって……」
「……凄く見覚えがある部屋なんだが……」
「……激しく同意。特にあの石板」
「……どう見ても、最初の部屋、だな……」
「そうみたい、ですね?」
辿り着いた先の部屋はどう見ても一番最初の部屋である。その答えは、通ってきた通路の壁が閉まり、部屋の床に浮き出た文字が証明した。
“ねぇ、今、どんな気持ち?”
“苦労して進んだのに、行き着いた先がスタート地点と知った時って、どんな気持ちなのかな?”
“ねぇ、ねぇ、教えてよ?今、どんな気持ちなの?ねぇ、ねぇ?”
「「「「「…………」」」」」
その瞬間、全員から表情がストンと抜け落ちた。能面という言葉がピッタリと当てはまる表情だ。全員が無言で文字を見つめていると、更に文字が浮かび上がった。
“あっ、いい忘れていたけど、この迷宮は一定時間ごとに変化します”
“新鮮な気持ちで楽しんでもらえるようにしたミレディちゃんの心遣いです♪”
“嬉しい?嬉しいよね?好きでやってるだけだから、お礼なんていいよぉ!”
“ちなみに、常に変化するからマッピングは無駄だよ?どこぞのクソ人形の平べったい胸みたいにね♪”
“ひょっとして作っちゃった?残念!苦労が無駄になったね!乙!(ニコッ)”
“これからも頑張って攻略してね?プギャァー!”
「は、ははは」
「クハ、クハハハ」
「フフフフ」
「フハハハ」
「フヒ、フヒヒヒ」
壊れた笑い声が辺りに響く。その後、迷宮全体に届けと言わんばかりの絶叫が響き渡った。
その後も迷宮に挑み、様々なトラップに引っ掛かり続け……
「殺って殺ルですよぉ……絶対、住処を見つけてメチャクチャに荒らして殺ルですよぉ」
「辿り着いた住処にはお前を象った彫像を置いてやる。全裸で仁王立ちした、貧相な身体の彫像をな」
トラップの一番の被害者たるシアと、ウザイ文で散々傷つけられたアタランテが相当キレる結果となった……
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