魔王の剣   作:厄介な猫さん

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ついにあの二人が邂逅!
てな訳でどうぞ


思いがけない再会

相変わらず精神をガリガリと削られながら探索を進めていると、長方形型の奥行きのある大きな部屋へと辿り着いた。壁の両サイドには無数の窪みがあり、騎士甲冑を纏った、大剣と盾を装備した身長二メートルほどの像が並び立っている。部屋の一番奥には大きな階段があり、その先には祭壇のような場所と、祭壇の上には菱形の黄色い水晶のようなものが設置され、奥の壁には、奥へと続く通路がある。

 

 

「いかにもな場所だな。漸くらしい場所に来れたが·····この周りの騎士甲冑に嫌な予感がするのは俺だけか?」

 

「大丈夫だ。オレもそう感じている」

 

「……ん。お約束は守られる」

 

「それって襲われるってことですよね?」

 

「むしろ唯の飾りとして並べている訳がないだろう。今までの事を考えればな」

 

「だよな。つう訳で全員、耳塞いどけ。いや、ソウジはこれを使って手伝え」

 

 

ハジメがそう言い、宝物庫から二つの兵器を取り出す。

一つは十二連式の回転弾倉が取り付けられた長方形型のロケット&ミサイルランチャー:オルカンと、もう一つはオルカンと同じ弾頭を使う、単発式砲撃形態と大剣形態に変形する武器“轟天丸(ごうてんまる)”である。

轟天丸はハジメがハウリアの魔改造期間中に作り上げた武器であり、見た目にも拘ったロマン武器作品の一つだ。ただ弾頭そのものはハジメにしか作れないので轟天丸の所有はハジメ持ちである。

大剣モードの轟天丸を受け取ったソウジは魔力操作で轟天丸の左右の刃をスライド&折り畳みギミックを使い収納、刃で塞がっていた砲口を露にし砲撃モードにへと切り替える。一緒に出された弾頭も自身の試作型宝物庫に収納し、ソウジは轟天丸の持ち手とグリップをしっかりと握って固定する。ハジメもオルカンを脇に挟んで固定し、それぞれが壁に砲口を向け、引き金を引いた。

 

バシュバシュゥウウ!!

 

そんな音と共に、後方に火花の尾を引きながらロケット弾が発射され、騎士甲冑の像が佇む壁に直撃する。

次の瞬間、轟音、そして大爆発が発生し、部屋を激震させる。着弾箇所には大きな窪みが出来上がり、騎士甲冑の像達も原型をとどめないほどに破壊されている。

 

 

「ウサミミがぁ~!私のウサミミがぁ~!!」

 

 

一人だけ耳を塞いでいなかったシアがそんな事を言いながら悶えているのをお構い無しに、ソウジは魔力操作によるボルト式のようなスライド機構で薬室を開口。そこに試作型宝物庫から取り出した新しい弾頭を直接はめ込んで装填して薬室を封鎖、再び発砲する。ハジメも回転弾倉故に可能な連射で騎士甲冑の像を壁ごと破壊していく。暫く破壊し続けていると。

 

ガコン!

 

毎度お馴染みのあの音が鳴り、まだ破壊されていない騎士達の兜の隙間から見えている目の部分がギンッと光輝いた。そして、ガシャガシャと音を立てながら窪みから抜け出てくる。しかもそれだけではなく爆破した跡からも眼光と同じ光が一瞬宿り、欠片が独りでに集まり始めている。その上奥へと続く通路が扉で封鎖されるというオマケ付きだ。

 

 

「やっぱりお約束だったな」

 

「しかも破壊しつくしたのに、破壊しつくした跡から、こいつらと同じ形になっていってるぞ」

 

「その上部屋に閉じ込めるとは……」

 

「……ん。いい性格している」

 

「ど、どうするんですか!?」

 

「「もちろん……」」

 

 

聴力が復活したシアの質問に、ハジメとソウジは言いながら砲口を閉じた扉の方へと向け、ロケット弾を発射。着弾した扉は大爆発。黄色い水晶諸とも木っ端微塵に破壊された。

 

 

「「強行突破だ」」

 

「……ええ、わかってましたよ。お二人はそう仰ることくらいわかってたですぅ!!」

 

 

シアがそう言いながらドリュッケンを構え、襲いかかってきたゴーレム騎士にへと叩き込んで吹き飛ばしていく。

包囲されると面倒なので、ソウジ達は迷うことなく奥へと続く階段をかけ登り、そのまま奥へと続く通路へと入っていく。

逃げ切り勝ちだと思っていたが、ゴーレム騎士達は追いかけて来ており、壁やら天井やらを重力なんぞ知らんとばかりに走ってきている。

 

 

「ハジメ!“鉱物系鑑定”でどこまでわかっている!?」

 

「わかっているのは、あの騎士人形共は“感応石”とかいう遠隔操作できる鉱石で作られているという事だけで、周りの材質も既知のものばかりだ!」

 

「という事は重力は“自前”の可能性が高いなチクショウ!」

 

「ああ、全くだ!!」

 

 

この迷宮の神代魔法がお目当てのものでない可能性が出てきた事で意味がなくなってきたのだが、このまま帰るのは物凄く癪なので、追いかけて来るゴーレム騎士をハジメの銃撃とアタランテの爆裂魔法を付加された魔力矢、ユエが両手に持つ大型の水筒からから行使する水系の中級魔法“破断”で遠距離攻撃し、接近してきたものはソウジとシアがそれぞれの獲物で追い払い、足を止めずに先へと進んでいく。

そうして辿り着いた先は……

 

 

「全部()()()ますね、ここ」

 

「……ん。全部()()()()

 

 

様々な形、大きさで出来たブロックが浮遊してスィーと不規則に移動している直径二メートル以上ある超巨大な球場の空間だった。

 

 

「ここに、ゴーレムを操っている本体がいるってことかな?」

 

「だろうな」

 

 

ハジメの推測にソウジが同意し、アタランテも含めた三人で、“遠見”でこの空間を調べようとした瞬間、シアの焦燥に満ちた声が響く。

 

 

「逃げてぇ!!」

 

「「「「!?」」」」

 

 

シアの警告に、ソウジ達は咄嗟に数メートル先の他のブロックに離脱した瞬間。

 

ズゥガガガン!!

 

赤熱化する巨大な何かが先ほどいたブロックに落下してきて、そのブロックを木っ端微塵に爆砕した。

シアのファインプレーに一同がお礼を言いつつ隕石モドキが通過していった方を見やると、下から二十メートル弱はある、右手はヒートナックル、左手にはフレイル型のモーニングスターを装備した、超巨大ゴーレムが宙を浮いて彼らの前に現れた。明らかな親玉にソウジ達が身構えていると。

 

 

「やほ~、はじめまして~、みんな大好きミレディ・ライセンだよぉ~!」

 

「「「「「……は?」」」」」

 

 

巨大ゴーレムからやたらと軽い挨拶をされた。その事にソウジ達がポカンとしてしまっていると、巨大ゴーレムは不機嫌そうな声をだした。声質は女性のものだ。

 

 

「あのねぇ~、挨拶したんだからちゃんと返そうよ。それが最低限の礼儀だよ?全く·····もっと常識的になりたまえよ」

 

 

実にイラッとする話し方。道中散々見てきたウザイ文を彷彿とさせる。だが、“ミレディ・ライセン”は人間で、その上既に死んでいる筈なので、そこら辺を探る為にハジメが応答していく。

 

 

「そいつは悪かったな。だが、ミレディ・ライセンは人間で故人だろ?しかも、自我を持つゴーレムなんて聞いたことないからな……目論見通り驚いてやったんだから許せ。そして、そこら辺の理由を説明しろ。簡潔にな」

 

「あれぇ~、すんごい偉そうなんですけど、こいつぅ」

 

 

全く探っていないド直球の言葉に、ミレディを名乗るゴーレムは若干戸惑ったような仕草を見せる。が、直ぐに持ち直して、人間なら絶対にニヤニヤしているであろうと容易に想像付くような声音で話しかけた。

 

 

「ん~?ミレディさんは初めからゴーレムさんですよぉ?」

 

「しれっと嘘をつくな。オスカーの手記にお前の事が書いてあったし、お前が人間だと知っているやつもいる。どっちにしろお前は立ち塞がるんだろ?だからスクラップにされる前にさっさと吐け」

 

「おおう。こっちの子もすんごい物言い。久しぶりの会話に内心、狂喜乱舞しているのになんたる言い様。けどその前に……」

 

 

巨大ゴーレムはそう言ってアタランテの方に眼光を向ける。

 

 

「何でお前がここにいるのかなぁ~?クソ野郎共の一人のぺったんこちゃん?服装も髪の色も違うけど、その顔と貧相なものは誤魔化せないよ?」

 

「黙れミレディ・ライセン。貴様も似たようなものだっただろう。それと、無駄のないスタイルと言え。断じてぺったんこではない!!」

 

「あれぇ~?昔は微妙に顔をしかめる程度だったのに、このぺったんこちゃん、すんごい感情豊かなんですけどぉ?散々観察してたけど、本当にヌルと名乗ったあのぺったんこちゃんなの?口調も違うしぃ~」

 

 

巨大ゴーレムがアタランテの事をヌルと言った途端、アタランテは眉間にシワを寄せて言い放った。

 

 

「その名前はとうに捨てた。八百年前にヤツに失敗作と捨てられ、決別したあの時からな」

 

「……ふ~ん、名前を捨てた、決別した、ねぇ……」

 

 

巨大ゴーレムはアタランテの言葉を聞いて考える仕草をするが、ハジメとソウジは構うことなく話を切り出していく。

 

 

「考えてないでこっちの質問に答えろ。テメェの神代魔法の名称と、他の大迷宮で得られる神代魔法をな」

 

「お前の神代魔法が何なのかもう見当はついているが、万が一の可能性もある。だからとっとと吐け。吐かないならこのまま戦闘に入るぞ。俺達の目的は神代魔法だけだからな」

 

 

そう言ってハジメはドンナーを、ソウジは轟天丸をミレディゴーレムへと向ける。

 

 

「……神代魔法ねぇ、それって神殺しのためかな?オーちゃんの名前が出ていたから事情は理解できている筈だよね?」

 

「質問しているのはこっちだぞ。今までの会話からお前が本人であることは間違いなさそうだから、ゴーレムのカラクリをさっさと答えろ」

 

「それも簡潔にな。オスカーのようにダラダラした説明はいらないからな」

 

「確かに、オーちゃんは理屈屋だったから話が長かったねぇ~。お望み通り簡潔に言うよ。ゴーレムの不思議は勿論神代魔法!知りたければ見事、私を倒してみよ!以上!!」

 

「全く、説明になってないぞ……」

 

「そりゃそうだよ。攻略前に情報渡したら意味ないでしょ?もっと知りたいならぁ~、こっちの質問にも答えなよ」

 

 

最後の言葉だけ、声音が変わったミレディがその声音のまま、問いかける。

 

 

「目的は何?何の為に神代魔法を求めるの?」

 

 

嘘偽りは許さないという意思が込められた声音。ふざけた雰囲気が一切ないミレディの問いかけにハジメが代表して答える。

 

 

「俺の目的は故郷に帰ること。お前等の言う狂った神とやらに無理やりこの世界に召喚された。だから世界を超えて転移できる神代魔法の入手を目指している。だからこの世界のために命を賭けるつもりは毛頭ない」

 

「わかったら名称からして望みに近い魔法―――空間魔法が手に入る大迷宮を教えろ。オレらはさっさと帰りたいんだよ」

 

「……」

 

 

ミレディは暫く、ジッとハジメと会話に加わったソウジを見つめ、何か納得したように小さく頷いた。そして再び、軽薄な雰囲気へと戻る。

 

 

「ん~、そっかそっか。別の世界からねぇ~。大変だねぇ~、よし、ならば戦争だ!!望みのものが欲しければ、この私を見事、打ち破ってみせよ!!」

 

「「死ね」」

 

 

ミレディのふざけた返答に、ハジメとソウジはロケット弾をぶっぱなして返した。

 

 

 




「何なのあれ!?急いで起動しないと全部壊されちゃう!!」

ゴーレム騎士の部屋で行われている光景を見て慌ててトラップを起動するミレディの図

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