魔王の剣   作:厄介な猫さん

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毎日投稿、どこまで続くかな?
てな訳でどうぞ


不運ではなく故意である

深夜、誰もが眠りについている中、ハジメとソウジは畑山先生が泊まる部屋の扉の前に来ていた。二人が誰にも知られずに畑山先生が泊まる部屋を訪れた理由は、畑山先生にだけこの世界に関する話をするためである。

この話をわざわざ、天之河達を探して伝えようとは思っていない。クラスメイトの行く末に興味はないし、単純に面倒だからだ。仮に伝えたとしても、あの理想の正義に凝り固まった、ご都合解釈の塊である男が、ハジメとソウジの言葉を絶対に信じないと確信している。むしろこの世界の人達が崇める“神”を愚弄したと非難するだろう。

だが、何の因果か畑山先生と再会し、畑山先生の行動原理が生徒を中心にしていることをハジメとソウジは知っている。なので周りに流されず冷静な判断が出来、畑山先生の言葉なら天之河達も多少は耳を傾けるだろうと考え、畑山先生にだけ情報を開示することにしたのだ。

勿論、その結果の彼等の行動にどんな影響が出るかはわからないが、少なくとも神への不信感を植えつけられるので、“解放者”達がされたことを天之河達で再現させるのは簡単ではなくなる筈だ。期待は大していていないが。

そんな思いつきで訪れ、部屋へ入るために、ハジメがお得意の錬成で扉の鍵を開け、二人は音を立てずに室内に入る。部屋にいた畑山先生はまだ寝ておらず、凹んだり、眉を八の字にしたり、頬を緩めたりと表情がころころと変わっている。

 

 

「なに百面相してるんだ、先生?」

 

「ッ!?」

 

 

ハジメの言葉に畑山先生はギョッとしたように反応してソウジ達がいる方を向く。畑山先生は驚愕しながらも言葉を発していく。

 

 

「な、なんでここに?どうやって……」

 

「そんなのハジメが錬成を使ってドアの鍵を開けて入って来たに決まってるだろ?」

 

 

ソウジの説明に畑山先生は呆然としながらも、次第に眉をしかめて咎めるような表情となる。

 

 

「こんな時間に、しかも女性の部屋に無断侵入は感心しませんよ。……一体どうしたんですか?」

 

「そこは悪かったが、この訪問を他の連中に見られたくなかったからな」

 

「さっきは教会や王国の連中がいたから話せないことがあってな。その話をするために来たんだよ」

 

「話ですか?お二人は、先生達のことはどうでもいい他人では……」

 

 

畑山先生の目が期待するかのように輝かせていく。勿論、その期待は間違いである。

 

 

「期待しているようだが、戻るつもりはないぞ?」

 

「今から話す話は、先生が一番冷静に受け止められるだろうと思ったから話すだけだ。聞いた後、どうするかは先生の判断に任せるよ」

 

 

そうして、ハジメとソウジは畑山先生にこの世界の真実を話していく。

 

 

「―――まぁ、そういうわけだ。俺達が奈落の底で知った事はな」

 

「どうするかは先生の自由だ。戯れ言と切っていいし、真実として行動を起こすのもな」

 

 

ハジメとソウジの話を聞き終えた畑山先生は呆然としており、自らの考えに至るには、まだ時間がかかりそうである。畑山先生は二人におずおずと尋ねる。

 

 

「もしかして、二人はその“狂った神”をどうにかしようと……?」

 

「まさか。この世界がどうなろうと心底どうでもいい。旅は帰還の方法を探るためだ」

 

「先生に教えたのは、そうした方が都合が良さそうだからそうしただけだ。早く家族の下に帰るのにな」

 

 

その答えに畑山先生は微妙な表情となるも、問いかけていく。

 

 

「アテはあるんですか?」

 

「一応、大迷宮が鍵だな。興味があれば探索したらいい。オルクスの百階を越えれば、めでたく本当の大迷宮だからな」

 

「もっとも、あの程度の“威圧”に耐えられないなら論外だな。行っても直ぐに死んで終わりだ」

 

 

そこから暫く沈黙が続き、伝えるべき情報は全部伝えたハジメとソウジは部屋を出ていこうとする。ハジメが扉に手をかけた直後、畑山先生が再び話しかける。

 

 

「白崎さんは諦めていませんでしたよ……八重樫さんも」

 

「「…………」」

 

 

畑山先生からもたらされた予想外の言葉にハジメとソウジは足を止める。畑山先生は、背中を向けたままの二人にそっと語りかける。

 

 

「皆は君達が死んだと言っても、白崎さんは自分の目で確認するまで、君達の生存を信じると諦めていませんでした。八重樫さんも白崎さんに励まされて、同じ目的で今も戦っています。天之河君達は純粋に実戦訓練としてオルクス大迷宮に潜ってますが……」

 

「……ハァ」

 

「……白崎は無事か?」

 

 

ソウジは無言で頭をガリガリと掻いて溜め息を吐き、ハジメは白崎の安否を尋ねる。

 

 

「は、はい。順調に実力を伸ばして攻略を進めているそうです。時々届く手紙にそうありますよ」

 

 

喜色を浮かべて語る畑山先生に、ハジメは無表情で肩越しに振り返る。

 

 

「手紙のやり取りがあるなら伝えておくといい。あいつが本当に注意すべきは仲間の方だと」

 

「え?それはどういう……」

 

 

戸惑う畑山先生に、ハジメと同じく無表情で、肩越しに振り返ったソウジが言葉を口にする。

 

 

「今日のあいつらの態度で大体の事情は察している。オレとハジメが奈落に落ちた原因はベヒモスとの戦闘、または()()()()って事になってるんだろ?」

 

「そ、それは……はい。一部の魔法が制御を離れて南雲君に誤爆し……南雲君を助けようとした空山君は運悪く瓦礫の欠片が顔に当たったと……」

 

「誤爆?運悪く?違うぞ。あの魔弾は的確に俺を狙って誘導されたものだし、ソウジの方も欠片が自ら飛んできてぶつかったんだ」

 

「え?誘導?自ら?」

 

 

わけがわからないといった様子の畑山先生に、ハジメがハッキリと告げる。

 

 

「俺とソウジは、クラスメイトの誰かに殺されかけたんだよ」

 

「ッ!?」

 

「心当たりがあるのはハジメと白崎の関係くらいだ。嫉妬で人を確実に殺そうとしたヤツが近くにいるんだ。まだ無事なら後ろから襲われないように忠告しとけ」

 

 

ソウジがそう締めくくり、顔が真っ青となった畑山先生を尻目に、今度こそ二人は部屋を後にしていく。

 

 

「後、わざわざ会いに行く気はないが、あいつがホルアドに居て、オレらがホルアドに寄った時、書き置きを残すくらいは考えておいてやる」

 

 

ソウジは最後に背中越しで畑山先生にそう言い残して……

 

 

“随分八重樫を気にかけたな、ソウジ?”

 

“単に世話になった義理くらいは返すべきかと思っただけだ。それ以上でもそれ以下でもない”

 

“義理か……俺も考えておくか”

 

 

ハジメとソウジ念話で会話しながら、白崎と八重樫への義理について考えながら、互いの部屋へと別れていった。

 

 

 




「錬成を駆使して上手く立ち回ってるわよ」

「そうだね。空山君も一緒だから大丈夫だよね」

「····そうね」

「それに、南雲君の土下座も合わされば、魔物だって簡単に倒せるよ」

(おかしな方向に!!·····だけど、ありがとう、香織)

内心でツッコミつつも、お礼を言う雫の図

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