魔王の剣   作:厄介な猫さん

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再びオリキャラ投入です
てな訳でどうぞ


ジークリンデ・ドゥルス

「申し訳ありません!!私達のせいであなた様のお仲間を死なせてしまい、本当に申し訳ありません!!!」

 

「いや、あの……」

 

 

水色の髪を後ろで結い上げた女性の土下座しながらの謝罪に、二十歳くらいの青年は本当にどうすればいいのか困惑している。畑山先生達はあまりに予想外な光景に青年と同じように困惑する中、ハジメとソウジは関係ないとばかりにスルーして彼らの方に近づき、青年の両肩にそれぞれの手を乗せて、名前の確認をする。

 

 

「お前がウィル・クデタか?クデタ伯爵家三男の」

 

「えっ?えっ?君達は一体……」

 

「早く質問に答えろ。答え以外の言葉を話せば、その度に肩の手に力を込めていくからな」

 

「ひえっ!?」

 

「お前はウィル・クデタか?」

 

「は、はい!そうです!私がウィル・クデタです!!」

 

 

青年の肩に置く手に若干力を込めながらの質問に、青年は慌てて自らの名を名乗った。本当に本人のようで奇跡的に生きていたようだ。確認が取れたハジメとソウジは、ウィルの肩から手を放す。

 

 

「そうか。俺は南雲ハジメでこっちは空山ソウジ。フューレンのギルド支部長イルワ・チャングからの依頼でお前の捜索に来ていた」

 

「(オレらの都合上)生きていてなによりだ」

 

「イルワさんが!?そうですか……あの人にまた借りができてしまったようだ……有り難うございます」

 

 

ウィルの尊敬を含んだ眼差しとお礼をハジメとソウジは軽く流し、未だ土下座を続けている女性に目を向ける。

 

 

「とりあえずそっちの土下座しているヤツは誰だ?調査依頼を受けていた冒険者の一人か?」

 

「あ、いえ、実は……」

 

 

ソウジの質問に、ウィルはこれまでの経緯を含めて説明をしていく。

話を要約すると、五日前に、五合目の少し上辺りで、突然、十体のブルタールと遭遇し、撤退していたが、追いかけてくるブルタールの数がどんどん増えていき、気がつけば六合目の例の川に辿り着いたそうだ。盾役と軽戦士がブルタールの包囲網から脱出する際に犠牲となり、追い立てられながら大きな川に出ると、凄まじい光景がそこにあった。

そこでは漆黒の竜と、翼のない水色の竜モドキが激しく争っており、黒竜は黒色のブレスを、竜モドキは水色のブレスを吐いて応戦していたそうだ。だが、黒竜はウィル達に気づくと、彼等に向かってその特大のブレスを吐き、その特大のブレスを、同じくウィル達に気づいた竜モドキが身を挺して庇い、自分達への直撃を防いだのだという。黒竜との戦闘で大分ボロボロになっていたらしい竜モドキはそれがトドメとなったように、ウィル達を押し潰さないように地に伏して倒れ込んだ。

だが、一番驚いたのは、その竜モドキから水色の魔力が溢れ、繭のように竜モドキを包むと同時にどんどん小さくなっていき、魔力が霧散すると、そこには現在進行形で土下座している女性が気絶して倒れていたのだ。その光景にウィル達が茫然としていると、黒竜は再び特大のブレスを吐き、その攻撃でウィルとその女性は吹き飛ばされて川に転落。そのまま滝壺にへと流され、偶然見つけた洞窟に一緒に流された女性を背負って進み、空洞で彼女を乏しい知識で手当てをしながら身を隠していたらしい。

その女性は中々目を覚まさなかったが、ソウジ達が来る少し前に意識を取り戻し、ウィルから事情を聞いた瞬間、いきなり土下座をして謝罪してきたそうだ。

 

 

「わだじはさいでいだ。うぅ、皆のながでわだじだけが生き残っで……それを……よろごんでるわだじは……」

 

「すみません!本当にすみまぜん!私だちのせいで、あなた様に辛い思いを……ッ!!」

 

 

顔をぐしゃぐしゃにして、自らを責めるウィルに、例の女性はひたすらに土下座してウィルに謝り続けている。この女性は明らかに何かを知っている。ハジメとソウジは互いにアイコンタクトをし、自分達に少し境遇が似ているウィルにハジメが、土下座して謝り続けている女性にソウジが対応する。

 

 

「おい、土下座女。謝ってないでお前の知っていることを全て包み隠さず話せ。少なくともその黒竜とあんたは無関係じゃなさそうだからな」

 

「……はい……」

 

 

沈痛な面持ちで顔を上げた銀色の瞳の女性は、自らの名前を明かす。

 

 

「私の名はジークリンデ・ドゥルス……五百年前に滅びたと伝えられている竜人族の一人です……」

 

 

いきなり爆弾をかましつつ、その女性―――ジークリンデは知っている事を可能な限り話していく。彼女の話を要約するとこうだ。

竜人族は本来、表舞台に関わらないという種族の掟があるのだが、数ヶ月前に大魔力の放出と何かがこの世界にやって来たことを魔力感知に優れた同族が感知したそうで、議論の末にその来訪者の調査をすることを決定したそうだ。

その調査に赴いたのがジークリンデとティオという名の黒竜だそうだ。本来、調査は一人だけだったのだが、そのティオがジークリンデを無理矢理同行させたそうだ。

ジークリンデは約二百年前に生まれた竜人族で、その中で自身を“落ちこぼれ”と自虐していた。その理由は固有魔法の“竜化”が突然変異的な理由からか、竜化しても翼がなく、空を飛ぶことが出来なかったからだ。その分、鱗は数倍強固だったようだが、地を這うしか出来ないジークリンデはそれを引け目に感じていた。そんな自分にティオ“様”が自信をつけさせる為に一部の反対を押しきって通り、ジークリンデを乗せてこの山脈にやって来た。

この山脈に一端降り、ティオは竜の姿のまま休息を、ジークリンデはティオに美味しい食事を提供しようと、食料調達に山を駆け回っていた。ジークリンデは思わず丸一日かけて、食材を調達し、ティオの元に帰ると、そこには謎の黒ローブの男がおり、ジークリンデに気付いたその男はティオに排除するよう命令を下し、ティオはその男の命令に従うまま、ジークリンデに襲いかかってきたのだ。

突然の事態に、ジークリンデはその場を離脱し、その後、その時のティオの様子から操られていることに至り、何とか洗脳を解こうと、自身も“竜化”して操られたティオに戦いを挑んだ。そして、ウィルの話へと繋がる。

 

 

「ごめんなさい。本当にごめんなさい……私達の不注意で、ウィル様のお仲間を死なせてしまって……」

 

 

ジークリンデが再び土下座をしてウィルに謝罪する。一方、ハジメによって気を持ち直したウィルは複雑な表情を浮かべていた。本音としては黒竜には強い恨みがあるが、今頭を下げているジークリンデは自分達を助けようとしてくれたのだ。畑山先生達も複雑な表情を浮かべる中、ハジメとソウジは……

 

 

「取り敢えず、その黒竜が襲いかかって来るかもしれないな」

 

「襲いかかってきたら勿論……」

 

「「殺す方向で」」

 

 

物騒なことを平然と言ってのけていた。二人のその言葉に、ジークリンデが必死な顔となって嘆願し始める。

 

 

「お願いです!それは止めて下さい!厚かましいのは百も承知ですが命だけは……!せめて私が何とかしますので……」

 

「その黒竜に挑んで、ボロ負けしたのにか?」

 

「お前が殺られたら、その操られた黒竜はこいつを殺しに襲いかかって来るんだろ?こいつには生きてもらわなきゃ困るし、殺し合いで手心を加える気はない」

 

「…………」

 

 

二人の最もな正論に、ジークリンデは反論できずに俯く。だが、ジークリンデに思わぬ助け舟がもたらされる。

 

 

「……ハジメ。出来れば助けてあげたい」

 

「ユエ?」

 

 

ユエからのまさかのお願いにハジメは面食らった顔となる。その間、ソウジは改めて冷静にジークリンデの頼みを再検討していた。

もし、問答無用で黒竜を殺そうとすれば、目の前のジークリンデは思わずといった行動を取る可能性が高い。そのティオという黒竜を相当慕っているようだし、下手に横やりを入れられるのも面倒だ。なので、条件付きで了承する事にする。

 

 

「……なら、最初の方は無力化の方向でやってやる。ただし、無力化が不可能、もしくはこいつの安全が保証できなくなった時点で躊躇いなく殺しにいく……それが最低条件だ」

 

「……勝手に決めるなよ……まぁ、その条件を呑むなら一応は要望に答えてやる」

 

 

ソウジが勝手に出した条件にハジメは呆れつつもその思惑も察しており、ユエからのお願いもあって、了承の意を伝える。ウィルも複雑な顔だが特に抗議しないことからある程度は許容するつもりのようである。

 

 

「……ありがとうございます……本当にありがとうございます……」

 

 

ジークリンデも土下座しながらお礼を言っているので、その条件に異論はなさそうである。その光景にアタランテは何故かソウジを見て若干呆れていたが。

ひとまず、一同は下山する為に滝壺の外に出る事にしたのだが……

 

 

「グゥルルルル」

 

 

出て早々、低い唸り声とともに、漆黒の鱗で全身を覆い、翼をはためかせながら空中より金の瞳で睥睨する、体長七メートルの竜がいた。

その黒竜に、ハジメとソウジは速攻でロケット弾を叩き込んだ。

 

 

 




ご都合展開でしょうが、原作通りの展開だと討伐成功の光景しか浮かばないかったので·······
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