オルクス大迷宮から地上へと出たソウジ達を出迎えたのは。
「パパぁー!!お兄ちゃぁーん!!おかえりなのー!!」
元気な声を出してこちらに向かって来るミュウであった。ミュウはそのままハジメにへと飛びつき、ハジメもミュウをしっかりと抱き止める。
「ミュウ、迎えに来たのか?ティオとジークリンデはどうした?」
「うん。ティオお姉ちゃんとジークリンデお姉ちゃんが、そろそろパパとお兄ちゃんが帰ってくるかもって。だから迎えに来たの。ティオお姉ちゃん達は……」
「妾達は、ここじゃよ」
人混みをかき分けて現れたティオとジークリンデに、ハジメとソウジは非難の眼差しを送る。ティオがその視線に身悶えたのは無視して、ジークリンデに注意する。
「ジークリンデ。こんな場所でミュウから離れるなよ」
「すいません。目の届くところにはおりましたが、少々不埒な輩が現れたのでその対応に割いてしまいまして。凄惨な光景はミュウお嬢様に見せるわけにはいきませんので」
「……ほう?」
「それなら仕方ないが……ソイツらは今どこにいる?」
「落ち着いてください。ハジメ様、ソウジ様。その輩達は私とティオ様でしっかりと締めておきましたので」
「……そうか」
「……まぁ、いいだろう」
「……本当にお別れできるのでしょうか?」
暗い笑みを浮かべて犯人の所在を聞くハジメとソウジに、ジークリンデは若干困ったような笑みを浮かべながら諌める。
「……またしても放置プレイじゃな……ハァハァ……」
「……ティオ様?」
相変わらず恍惚な顔で息を荒げるティオに、ジークリンデは身震いする笑顔を浮かべティオの両肩に手を置く。当然ティオは更に体をくねらせるが……
「クラルス様?」
妙に迫力のある声色でジークリンデがティオの名字を言い、名字呼びは嫌らしいティオも背筋を正して真面目な顔になる。本人曰く、他人扱いされるから嫌だそうで、変態を一時抑える有効な薬となっている。
ソウジは、ジークリンデが凍てつくような雰囲気を纏う割合が大きくなってきたなと内心で思っていると、いつの間にか幽鬼の如くハジメに歩み寄っていた。
「……パパ?お兄ちゃん?ねぇ、ハジメくん。その子のパパ呼びはどっちに向かって言ったの?正直に答えて」
「?パパ、このお姉ちゃんは誰なの?」
ハジメが答えるより早く、ミュウがハジメをパパと呼んだ瞬間、白崎は目を見開くと同時にハジメへと掴みかかった。
「どういうことなのハジメくん!?本当にハジメくんの子供なの!?誰に生ませたの!?ユエさん!?シアさん!?アタランテさん!?それとも、そこにいる黒髪と水色の髪の女の人!?まさか、他にも――」
ハジメの襟首を掴んで、ガクガクと揺さぶりながら錯乱気味に詰問する白崎。そんな白崎の頭に、突如、手を置かれる感覚が襲う。
「なぁ、白崎。何アタランテを―――オレの女をハジメの女扱いしてるんだ?一回、頭を冷やそうか」
白崎の頭に手を置いている張本人―――ソウジは怖い笑顔を浮かべながらそう呟き、白崎の頭を(物理的に)冷やしていく。
ソウジの底冷えする声と、頭から伝わる冷たい感触に、白崎は一気に冷静となる。そして……
「~~~~~~~~~!!!!!!!!」
一気に羞恥心がマッハに襲いかかり、真っ赤な顔を両手で覆って、その場に転がって身悶える事となった。八重樫はそんな白崎を必死に慰めるのであった……
―――――――――――――――――――――――――――
ロア支部長に依頼報告をし、用事も終わったので早々に町を出ようと、ソウジ達は出入り口へと向かっている。どういう訳か天之河達も付いてきており、普通に無視して出入り口へと目指していく。
だが、出入り口付近の広場でまたしてもトラブルが発生する。
「おいおい、どこに行こうってんだ?俺らの仲間、ボロ雑巾みたいにしておいて、詫びの一つもねーのか!?」
十人ほどの、薄汚い格好の武装した男の一人が、いやらしい顔でティオとジークリンデを見ながらそんな事を言う。テンプレの展開にハジメとソウジが呆れていると、男達はそのいやらしい視線をユエ達にも向ける。
「おいガキども!!死にたくなかったら、女置いてさっさと消えろ!!なぁ~に、わび入れてもらったら返してやるよ!!」
「既に壊れてるだろうけどな~、ギャハハッ!!」
その瞬間、ハジメとソウジは問答無用で“威圧”を放ち、男達を一気に四つん這いにさせる。その大瀑布の如きプレッシャーに、男達はとんでもない相手に喧嘩を売ってしまったと気づくが既に遅い。
ハジメとソウジはプレッシャーを少し緩め、全員を膝立ちにさせる。続いてソウジが“冷気操作”を使って男の象徴を氷漬けにし、ハジメが容赦なく蹴り飛ばして粉砕するという、悪魔の所業を実行した。
男の象徴も骨盤も粉砕された男達は広場の隅っこに積み重なり、妙にすっきりした顔でハジメとソウジはユエ達の下へと戻ってくる。
「また、容赦なくやったのぉ~」
「見事に惨い末路を辿りましたね。同情はしませんが」
「やっぱりミュウちゃんが絡むといつも以上に怒りますねぇ~」
「確かにそのようだが……それ以外もあるようだぞ?」
「……ん、シアのことでも怒っていた」
「えっ!?そうなんですか?ありがとうございますぅ~」
「……ま、一緒に旅する仲間だからな」
「……やっぱりユエには直ぐに見透かされるな」
「……当然。ハジメのこといつも見てるから」
「ユエ……」
「ハジメ……」
「ああ、もう!またそうやって二人の世界を作って……!」
「お兄ちゃん!抱っこしてなの!」
「ハイハイ」
「すっかりお兄ちゃんが板についているなソウジ」
「これでも、もう一人妹がいるからな」
「そうか……」
「妾とジークは蚊帳の外とは……ゴクリ……」
「……ティオ様?」
実にいつも通りな雰囲気で話し合っていると、決然とした白崎がいつの間にかこちらへと歩み寄って来ていた。最初は見送りかと思ったが、白崎の纏っている雰囲気からして違う気がする。その答えは白崎本人からもたらされた。
「ハジメくん。私もハジメくんに付いて行くから、よろしくね?」
「「…………は?」」
決定事項のように伝えた白崎に、ハジメとソウジは目が点となって間抜けな声を出す。そんな白崎に、ユエが資格はないと言って突っぱねようとするも、ハジメへの想いなら誰にも負けてないと、白崎は平然と返す。
そして、白崎はハジメへと視線を合わせ……
「貴方が好きです」
はっきりとそう告げた。その覚悟と誠意のこもった眼差しに、ハジメははっきりとその気持ちには応えられないと告げるも、白崎は他にもハジメを想っている人が一緒だから、自分が加わっても問題ないよね?と逆に問い返す。
そのまま白崎は烈火のように燃えていると錯覚するほどの強い眼差しをユエに向け、その眼差しを受けたユエも、誰の目から見てもわかるくらいに不敵な笑みを浮かべた。
「……なら付いて来るといい。そこで私とお前の差を教えて上げる」
「お前じゃなくて、香織だよ」
「……なら、私はユエでいい。その挑戦、受けて立つ……香織」
「ふふ。負けても泣かないでね?……ユエ」
まさに修羅場。まさに二人の世界。背後に龍と般若の幻覚を出現させながらユエと香織は笑い合う。
とりあえず、ソウジ達は自然に収まるのを待とうとするも、白崎の意志に異議を唱える者が現れる。
言わずもがな、その人物は“勇者”―――天之河光輝である。
「般若は確か、哀しみを怒りで隠している顔の筈だが……」
「どう見ても怒りの度合いが強いよな?いや、般若としか表現できないのは確かだが」
「白い顔に角に牙、特徴がまんま般若だからな。白鬼にするには女性の面が強いし」
般若の由来について小声で議論するハジメとソウジの図。
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