てな訳でどうぞ
ランズィの案内で汚染されたオアシスにへと辿り着いたのだが、汚染されたオアシスは太陽の光を受けてキラキラと反射しており、その美しさは毒素が含まれているとは見えない程である。
「「……ん?」」
そのオアシスの底の方に魔力を発する“何か”をハジメとソウジの魔眼石が捉えた。
「……なぁ、領主。調査チームってのはどの程度調べたんだ?」
「……確か、資料ではオアシスとオアシスから流れる川、各所井戸の水質調査と地下水脈の調査だった筈だ。水質は聞いての通りで、地下水脈は特に異常は見つからなかったと報告書にはあった。オアシスの底はまだ未調査だ」
「オアシスの底には、アーティファクトの類いが沈められているのか?」
「?いや、警備と管理に使っている結界系のアーティファクトは地上に設置してあるし、オアシスの底には何もない筈だが……」
「つまり、このオアシスの底には、本来なら何もないんだな?」
ソウジの念押しに、ランズィは首を傾げながらも何も無いと再度伝える。
「じゃあ、底にいるあれはぶっ飛ばしても問題ないんだな?」
「……?ハジメ殿?」
話がまだ見えていないランズィ達を置き去りにしてハジメはオアシスに近寄り、ハジメのやろうとしている事を察したソウジは“凍鎧”の派生技能を使って、自らの頭上を中心に氷の屋根を形成していく。
氷の屋根を作っている間に、ハジメは五百ミリリットルのペットボトルような形の金属塊―――“特定感知”と“追跡”を付加した魚雷を魔力を注いでからオアシスに投げ込み、ユエの隣に戻ってくる。そして、氷の屋根が完成すると同時に。
ドゴォオオオオ!!!
凄まじい爆発音とともにオアシスの中央で巨大な水柱が噴き上がった。爆発で巻き上がり、小雨のように降り注ぐ水は氷の屋根が受け止め、ソウジ達には降りかからない。
「ちっ、意外にすばっしこいな。それとも、防御力が高いのか?」
再び顎がカクンと落ちて目を剥くランズィ達を無視して、ハジメはそんな事を言いながら更に魚雷をオアシスに投入していく。そして、数秒後にオアシスのあちこちで大爆発と巨大な水柱が噴き上がる。
「おいおいおい!一体何をやったんだ!あぁ!オアシスが赤く染まっていくぅ!」
「害獣退治だ。わかったら大人しくしてろ」
オアシスの景観が悲惨に変わっていく様に悲鳴をランズィに、ソウジは何て事のないように言い、静かにするように言うもランズィの耳には届いていない。
そして、ハジメが更に魚雷を投入しようとオアシスに進み出ようとした、その直後。
シュバ!
オアシスから風を切り裂く勢いで無数の水が触手となって襲いかかり、ハジメはドンナー・シュラークで、ソウジは炎凍空山で弾き飛ばす。ユエとジークリンデは氷結させて、アタランテとティオは炎で即座に蒸発させて防ぐ。
そして、オアシスの水面が突如盛り上がり、十メートル近い体長、無数の触手をウネウネとくねらせ、赤く輝く魔石を持った魔物―――スライム型の魔物が姿を現した。
「なんだあれは……?バチュラム……なのか?」
「―――“
呆然と呟くランズィをソウジは無視して、“冷気集束”と“衝撃変換”を複合させたオリジナル技―――“凍朧”をそのオアシスバチュラムに向かって放つ。
炎凍空山を振り抜くと同時に放たれた冷気の衝撃波は、瞬く間にオアシスバチュラムに直撃し―――オアシスバチュラムを容赦なく凍らせた。
「これなら撃ち抜くのは容易だな」
ハジメはそんな事を言いながらドンナーを構え直し、凍った事で動きを止めたオアシスバチュラムの赤い魔石に狙いを定め、寸分の狂いもなく撃ち抜いた。
レールガンの衝撃と熱量でオアシスバチュラムだった氷塊はバラバラに砕け散り、砕け散った氷塊はオアシスにプカプカと浮かぶ。
「……終わったのかね?」
「ああ、もうオアシスに魔力反応はねぇよ」
「浄化された可能性は限りなく低いが、元凶を倒した以上、これ以上の汚染はもうない筈だ」
元凶があっさりと撃退されたことに、ランズィ達はまるで狐につままれたような気分になるが、それでも、元凶が倒されたことに変わりはないので、改めて水質の鑑定を行う。
「……どうだ?」
「……汚染されたままです」
「……そうか。だが、ソウジ殿の言う通り、これ以上汚染される危険は去ったのだから、上手く汚染水を排出すれば元のオアシスに戻る筈だ」
オアシスの水が汚染されたままだという事実にランズィは落胆しかけるも、すぐに気を取り直して復興への意欲を見せる。そして、あのオアシスバチュラムの存在に首を傾げていると……
「おそらくだが……魔人族の仕業じゃないか?」
「!?魔人族だと?そう言うからには思い当たる事があるのだな?」
「ああ。見たことのない魔物にここ最近の事を合わせればな」
あのオアシスバチュラムは変成魔法で生み出した産物であるとハジメとソウジは推測しており、食料供給を一変させかねない愛子先生と、教会が召喚した勇者一行を狙ったのと同じ理由で、食料関係の要所と言えるアンカジを狙ったとしても不思議ではない。
神代魔法の事は(説明が面倒なので)伏せつつ、その辺りのことをランズィに話すと、ランズィは低く唸って苦い表情を見せる。
「魔物のことは聞き及んでいて、独自に調査していたが……見通しが甘かったか」
「流石に仕方がないと思うぞ。向こうには誰も把握していない新種の魔物がうじゃうじゃいるだろうしな」
「それに、勇者一行が襲われたのもつい最近だ。今頃、あちこちで大騒ぎだろうよ」
「いよいよ、本格的に動き出したということか…………ハジメ殿、ソウジ殿……貴殿達は冒険者と名乗っていたが……やはり香織殿と同じ……」
ランズィのその言葉に、ハジメとソウジは何も答えず肩を竦める。二人のその態度に、ランズィは何か事情があると察してそれ以上の詮索を止め、一番すべきことをする。
「アンカジ公国は貴殿達によって救われた。アンカジ公国領主ランズィ・フォウワード・ゼンゲンは、国を代表して礼をいう」
ランズィはそう言って、部下共々、恩人達に深々と頭を下げる。そんな彼らにハジメとソウジは……
「ああ、たっぷり感謝してくれ」
「この巨大な恩を絶対に忘れるなよ?」
満面の笑顔を見せ、清々しいまでに思いっきり恩に着せた。
アンカジの安全確保はハジメとソウジにとって必要な事ではあったが、せっかく感謝してくれているのでいざという時の味方は多い方がいいという考えから、しっかりと恩を売って言質を取ることにしたのである。
「あ、ああ。もちろんだ」
あまりにもど直球な言葉にランズィは戸惑いつつも、何かに納得したように苦笑いして頷く。
「だが、まだアンカジには苦しんでいる患者が大勢いる……それも、頼めるかね?」
「そっちも問題ねぇよ」
「元々、【グリューエン大火山】には用があったからな。どれくらい採取すればいいんだ?」
あっさりと依頼を引き受けた二人にランズィは胸を撫で下ろし、現在の患者数と必要な採取量を伝え、それも問題ないと分かったランズィは彼らとの出会いを感謝するのだった。
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