魔王の剣   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


大火山にて

【グリューエン大火山】を覆う巨大積乱雲のような砂嵐をブリーゼ・ハオスで難なく突入し、その砂嵐の中に潜む多数の魔物達をブリーゼ・ハオスから展開される搭載型シュラーゲンやメツェライ、四連ロケットランチャーやエレクトロン、そしてアタランテ、ユエ、ティオ、ジークリンデの外の砂嵐を利用した風魔法で難なく撃退して進んでいく。

 

 

『本当にすごいですぅ。ハジメさん、一体どれだけの機能が搭載されているんですか?』

 

 

ブリーゼ・ハオスに搭載された運転席の通信機から居住スペースにいるシアの声に、同じく居住スペースで武装を操作していたハジメが答えた。

 

 

『最終的には変形して人型汎用兵器―――巨大ゴーレムになる』

 

「『『『『…………』』』』」

 

「嘘をつくなよ。流石にブリーゼ・ハオスの変形は構造等の問題から断念しただろ……代わりに、別に合体ゴーレムを作って車の最後部に搭載で落ち着いただろ」

 

「『『『『ッ!?』』』』」

 

 

ソウジのもたらした言葉に、アタランテ達はまさか!?といった表情となる。それに対し、ハジメはニヤリと笑って感応石付きの腕輪を装着し、魔力操作を行ってブリーゼ・ハオスの最後部の扉を開く。

その扉の中から小さなスポーツカー、ブルドーザー、クレーン車、消防車、ステルス戦闘機が外へと飛び出していく。

そこからスポーツカーは胴体に、ブルドーザーは脚に、消防車は右腕に、クレーン車は左腕に変形し、胴体に変形したスポーツカーを中心としてドッキングする。そして、ステルス戦闘機は背中にドッキングして、頭部を接続展開した。

某戦隊ロボのように完成した、全長三メートル程のゴーレムは決めポーズを取った後、ブリーゼ・ハオスに追従するように上空を飛行していく。

そして、背後に合体したステルス戦闘機から展開した両肩のエレクトロンと同兵器の重火器を、前方にいたサンドワームに狙いを定め、荷電粒子砲で撃ち抜いた。

 

 

「『『『『…………』』』』」

 

「ちなみに飛行は重力石とスラスターモドキで行っている」

 

『あのゴーレム―――“アウトケーニヒ”の攻撃手段はさっきの荷電粒子砲に加え、高熱光線、冷凍光線、風の刃にミサイル、後はレールガンにパイルバンカーモドキだな』

 

「『『『『イヤイヤ、その説明は求めていない(ですぅ)(のじゃ)(ませんから)』』』』」

 

 

ハジメとソウジの説明に思わ声をず揃えてツッコミを入れてしまう一同。

 

 

「そうなのか?」

 

『だが、いい仕事をしたと思うぞ?アイディアをくれたソウジには感謝しないとな』

 

「単に現実的な案を言っただけだぞ?」

 

 

その内、本当に搭乗型の変形ゴーレムを作りかねないとアタランテ達は確信した。そして、ハジメとソウジは似た者同士だから友達になれた事も。

そんな彼女達の内心なぞ露知らずでハジメは展開した武装とゴーレムで襲いかかる魔物達を粉砕し、ソウジは迷宮の入り口を目指してブリーゼ・ハオスを【グリューエン大火山】の頂上に向かって走らせていく。

そして砂嵐を突破し、ブリーゼ・ハオスで行ける場所まで坂道を進んで行き、傾斜角に厳しくなったところでソウジ達は車から降り、徒歩で山頂を目指すのだが。

 

 

「……あ、あついですぅ」

 

「ん~……」

 

「確かにな。……こりゃあ、依頼関係なく、さっさと攻略したほうがいいな」

 

 

外に出た途端、ハジメ、ユエ、シアの三人は襲いかかった熱気にうんざりしていた。

 

 

「快適空間にいた弊害だな」

 

「水分を小まめに取りながら進むべきだな」

 

「妾は適温じゃが……熱さに身悶えることが出来んのじゃ」

 

「ティオ様……」

 

 

そんな中、ソウジとアタランテは平然としており、ティオとジークリンデも何時も通りだった。

 

 

「平然としているな、お前達は……」

 

「熱耐性の技能のおかげだな」

 

「私も既に“適応”しているから大丈夫だな」

 

「ずるい……」

 

「本当に、羨ましいですぅ……」

 

「マジであの三つ目猫を蹴り兎より先に仕留めて食っときゃよかった……」

 

 

熱気にうんざりしているユエは恨めしげに、シアは羨ましいげに、ハジメは本気で食べる順番を後悔するという三者三様の反応をする。

ティオとジークリンデはもちろん無視である。

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

【グリューエン大火山】の内部は、マグマが宙を浮いて川のように流れ、通路や広間のいたるところにもマグマが流れている。そのマグマも唐突に吹き出してくるから、まさに天然のブービートラップである。

そんな灼熱地獄と形容すべき場所でソウジ達は―――

 

 

「ソウジ、もっと冷気を出してくれ。まだ若干暑い」

 

「無茶を言うな。これが限界だ」

 

 

ソウジを中心として、ハジメ、ユエ、シアが少し汗をかき、アタランテ、ティオ、ジークリンデは変わらずに進んでいた。

ソウジがハジメ達三人のために、“変換回復”と合わせて“凍鎧”の派生技能“吸熱”“冷気操作”を使用して進んでいるのだが、この空間では効果範囲は四メートルと狭く、完全に適温には至らなかった。

一応、冷房型のアーティファクトも一緒に使用しているが、効果は望んだ結果でないのが現状であった。

 

 

「こりゃ、もっと改良しないとな……お?あれが静因石か?」

 

 

ハジメはアーティファクトの改良を考えていると、人為的に削られている壁の一部から薄い桃色の小さな鉱石を発見する。

 

 

「うむ。ご主人様よ、あれで間違いないぞ」

 

 

一番知識が深いティオの同意が得られたので、ハジメは“鉱物系探査”でこの辺りの静因石の有無を調べるのだが……

 

 

「ちっ……やっぱり小さいやつしかないか」

 

 

ハジメは舌打ちしながらも、簡単に採取できるもだけ“宝物庫”に収納したあと、ソウジ達を促して深部に向かって進んでいく。

そして、記録上の最高階層である七階層を越え、八階層へと降りた―――その瞬間。

 

ゴォオオオオオ!!

 

強烈な熱風に煽られると同時に、ソウジ達の眼前に巨大な火炎が螺旋を描きながら襲いかかってきた。

 

 

「“絶禍”」

 

 

その火炎に対し、ユエが、あらゆるものを引き寄せ、内部に呑み込む黒く渦巻く球体―――重力魔法“絶禍”を発動し、その火炎の砲撃を超重力の渦へと呑み込んだ。

そして、その呑み込んだ火炎を、放った襲撃者である全身にマグマを纏った雄牛に返すも、突進してきたマグマ牛は吹き飛ばされただけで、すぐに立ち上がって再度突進してくる。

 

 

「ここは私がいきます!!」

 

 

シアは新たに“衝撃変換”が加わったドリュッケンを手に鼻息を荒くし、一同にそう告げる。

ドンナーを抜こうとしたハジメは、最初は訝しんだが、魔眼石でドリュッケンを見たことで、新しい機能を試したいと察して、手をヒラヒラとさせて了承の意を伝える。同じく炎凍空山に手にかけていたソウジも同様に察して、柄から手を放している。

 

 

「おぉしゃぁーですぅ!殺ってやる、ですぅ!!」

 

 

許可を貰えたシアは気合いの声を上げた後、軽やかなステップでマグマ牛に向かって飛びかかり、空中で一回転して遠心力をたっぷり乗せたドリュッケンをマグマ牛の頭部に向かって振り下ろす。

振り下ろされたドリュッケンは狙い違わずマグマ牛の頭部に直撃した。その瞬間、直撃した部分からマグマ牛の頭部が音を立てて瞬く間に凍っていき、同時に淡青色の魔力の波紋広がり、次いで、凄まじい衝撃が発生。凍ったマグマ牛の頭部がまるで爆破されたように粉々に弾けとんだ。

 

 

「ハジメさん。やった本人の私が言うのもなんですが、この新機能との合わせ技、やばいですよ」

 

「ああ……なかなか凶悪な組み合わせだな」

 

 

元から組み込まれていた“凍鎧”と“衝撃変換”の同時使用という合わせ技に、やってのけた本人も含めて軽く引いてしまう。“衝撃変換”だけでも十分にも関わらず、“凍鎧”まで加えるとは……シアも案外鬼畜なのかもしれない。

 

 

「今、何か失礼なこと考えませんでしたか?って、無視して進まないでくださいですぅ!!」

 

 

そんなシアの質問を無視して、ソウジ達は奥へと目指して進んでいく。

 

 

空間魔法が手に入る大迷宮【グリューエン大火山】の攻略は、まだ始まったばかりである。

 

 

 

 




「蒼き焔よ、気高く刃に燃え上がれ―――“蒼燼(そうじん)”ッ!!…………本当に中二臭いわね……」


魔法陣が取り付けられた四皇空雲の機能を試しに使用した際、中二臭い名称に複雑な気分となる雫の図。

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