てな訳でどうぞ
ぴちょん………
その音と頬を伝わり口の中に水滴が流れ込む感触で、ソウジは徐々に意識を回復していく。
(……生きて……いるのか……?)
ぼんやりとした思考のまま立ち上がろうとするも、右脚の膝から先の感覚が無いため、バランスを崩して失敗する。
そこでソウジは右足を失ったことを思いだした途端、無い外の右脚から焼けるような激痛を感じた。その幻肢痛に顔を歪め反射的に右脚を抑えて気が付く。右脚の氷が無くなっており、折れた部分から肉が盛り上がって塞がっている事に。
「一体何がどうなって……」
沸き上がる疑問に頭を悩ませていると、再び水滴が口の中に入り、その瞬間、少し活力が戻った気がした。
「……まさか……この水が?」
ソウジは剣を抜き、“絶断”の呪文を唱え、水滴の流れる方向へとその突きを放っていく。
この空洞の広さは方向転換と蹲れる程度の広さ、そしてこの水滴は魔力も回復するようだったので、いくら魔法を使っても魔力が枯渇しないのですんなりと壁を切り取って進んでいく。
そして、その水源に辿り着いた。その水源はバスケットボールサイズぐらいの、青白く発光する鉱石だ。
ソウジはその鉱石に惹き付けられるように、その石を直接口につけると、幻肢痛以外の傷が瞬く間に治っていった。
それを実感したソウジはその場に横たわった。もうこの迷宮から脱出する気力はなくなっている。魔物の圧倒的な強さと、片足を失うという大きなハンデを背負ってしまったからだ。
(俺は……ここで……終わるのか……)
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(このまま……死ぬのか……)
あの日から四日経っているのだが、ソウジの時間感覚は既に狂っているためわかっていない。ソウジは飢餓感と幻肢痛に苦しみながら、何もせずに横たわり続けていた。
(このまま……家族に…会えずに……死ぬ……)
家族。
その思考が過った瞬間、ソウジの思考に変化が訪れる。
(……それでいいのか?)
(このまま、家族と一方的に別れたまま死ぬのか?)
(そんな理不尽を、俺はすんなりと受け入れるのか?)
(両親の死を受け入れたのにか?)
(両親の死を受け入れたのは、もうどうしようもなかったから)
(だが、俺はまだ生きている)
過去の理不尽も思い出しながら、ソウジは徐々に力を込め始めていく。それに連動するように表情も徐々に険しいものへと変わっていく。
(身勝手な都合でこの世界に呼ばれ、帰る手段もないのにか?)
(
(生きて家族の元に帰る為にはどうすればいい?)
(その為には迷宮からの脱出は必須だ)
(そして、オレの前に立ち塞がる理不尽、敵は全て斬るべきだ)
(その為に今出来る事は……)
(生き残る手段を確立する事だ)
ソウジはその思考の元に行動を開始する。
まずは右脚。右脚は剣の鞘を半分に切り、その二つを挟むように右脚にキツく括りつける。幸い間接部分は無事だったのでこれで移動は可能となる。
ソウジは例の水が溜まった窪みに直接口をつけて飲み、近くの床等に土属性の魔方陣を書いて、この部屋を歩き回れるように作り変えていく。
立って歩ける大きさに作り変えた部屋で、ソウジは即席で作った義足での歩行の練習を始めた。
―――――――――――――――――――――
あれから四日。
義足での移動に馴れ、出入り口を這いずって外へと出たソウジは辺りを警戒しながら進んでいくと、あの三つ目猫がちょうど獲物を仕留めて食事をしている所を発見した。
ソウジはその千載一遇の好機に狙いを定め、“爆縮地”を使い、その勢いを利用した突きを、三つ目猫の頭に目掛けて放つ。
突然の不意討ちに三つ目猫は対処仕切れずにその突きを見事にくらい、ソウジの持つ剣がアーティファクトの類いだったこともあり、剣は三つ目猫の頭に見事に突き刺さった。
三つ目猫は叫び声を上げたが、その後は力無く四肢をぶら下げた。念の為に頭を斬り落として、確りと始末する。
そして、左右を真っ二つにした三つ目猫の死骸をソウジは引きずって例の隠れ家へと戻っていく。
隠れ家に戻ったソウジは三つ目猫の肉を剣で斬り落とし、火属性の魔法を使って肉を焼こうとするも。
「ちっ!何で全く焼けないんだっ!?」
幾ら火をかざしても一向に焼けない三つ目猫の肉に、ソウジは苛立ちを露に吐き捨てる。
焼くのは最早不可能だと諦めたソウジは、生のまま三つ目猫の肉を貪り始める。
「不味いな、クソったれッ!!」
例の水で強引に流し込みながら三つ目猫の肉を食べ続けていると、ソウジの体に異変が起こり始めた。
「ん?―――ッ!?ぐあぁああッ!!」
突如全身に激しい痛みが襲いかかり、その痛みは時間が経つほど激しくなっていく。
咄嗟に例の水を飲むが、痛みが引いてしばらく、再び激痛が襲いかかる。
破壊と再生。それがもたらす激痛にソウジは必死に耐え続ける。
それを繰り返し、耐えているソウジの体に変化が現れ始める。
ソウジの黒かった髪の色はどんどん色が薄まっていき、筋肉と骨格も徐々に太くなっていく。
体の内側から紅黒い線が幾本と現れ初め、新たに現れた紫の線と混じりあい、互いの色彩が抜けるように蒼い線へと変貌していく。
ようやく痛みが収まった頃には、灰色の頭髪、しっかりとした体つき、その体の内側には蒼い線が幾本ほど走っていた。
「これは一体……?そういえば、魔物の肉は人間が食べたら死ぬんだったな……」
すっかり忘れていたことを自嘲気味にぼやきつつも、体の違和感の正体を確かめる為に失くしてなかったステータスプレートで確認してみると。
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空山ソウジ 17歳 男 レベル:10
天職:剣士
筋力:160
体力:310
耐性:105
敏捷:270
魔力:220
耐魔:250
技能:剣術・魔力操作・胃酸強化・縮地(+爆縮地)・放炎(+熱耐性)・言語理解
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「……何だよ、これ」
ステータスプレートの表示が明らかにおかしくなっていた。レベルが変動していないのにも関わらずステータスが軒並みで上昇しており、今まで上がらなかった魔力も五十倍ほど上昇している。その上本来増えない筈の技能まで新しく追加されている。
試しに“魔力操作”で右腕に集中させてみると、右腕から蒼い線が薄らと浮かび上がった。試しに“火種”を使って見ると、詠唱無しで火を起こせた。
「魔力の直接操作は魔物しか出来ない筈…………魔物の肉を食べたから出来るようになったのか?てかなんで蒼?」
ステータスプレートを改めて見ると、魔力光は以前の紫ではなく蒼い魔力光へと変化しているのが一目で分かる。
何故こうなったのかさっぱり分からないので頭の片隅へと放棄し、“
「ここは……あの三つ目猫がやっていたようなイメージでやってみるか」
右腕に炎を纏うイメージでやってみると、右腕からパチパチと炎が上がっていく。しかも全く熱くない。
「多分、名前の通り炎を放出する固有魔法なんだろうな」
少なくとも、三つ目猫があの時使った熱線はまだ使えないとソウジは判断する。あの熱線は派生技能の可能性が高く、これから“放炎”を使い続けていれば、使えるようになる可能性は十分にある。
最後の“胃酸強化”は文字通りと見ていいだろう。まだ残っている三つ目猫の肉を食べても痛みは何も起こらなかった。
その後、ソウジは新しい技能の練習に励み、没頭していった。
差分化の為とはいえ、自分で書いときながらこう思う·······酷すぎる!!
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