魔王の剣   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


神代魔法の使い手との戦い

突如現れた謎の鷹の魔物。

その魔物は上空から鋭い目付きでソウジとアタランテを睨み付けている。

 

 

「貴様ぁッ!!」

 

「よくもッ!!」

 

 

怒りを露に、アタランテがヤークトに魔力矢をつがえ、ジークリンデが右手を突きだして風魔法を発動させ、その鷹の魔物に攻撃をしかけるも―――

 

 

「キルルルルルルルゥ―――ッ!!」

 

 

咆哮を上げた途端、その魔物の周りに風、否、嵐が吹きすさび、アタランテとジークリンデが放った攻撃を明後日の方向に流してしまう。

 

 

「「シィアアアアアアッ!!」」

 

 

その嵐が止み、今度は尻尾の二蛇が奇声を上げた―――その瞬間。

 

 

「ぐっ!?」

 

「うっ!?」

 

「……んっ!?」

 

「な、なんじゃ!?」

 

「身体が……急に重く……ッ!?」

 

「それに、視界もボヤけて……!?」

 

 

アタランテ以外は急に身体に不調を感じ、ユエ達はその場で膝をついてしまう。その隙を付くように、今度は上空から縮小版の極光が豪雨の如くソウジ達に降り注いでくる。

 

 

「やらせはしない!!」

 

 

唯一動けるアタランテが直ぐ様連続で魔力矢を放ち、右手をかざす。途端、空を駆ける魔力矢から翠の光線が縦横無尽に迸り、魔方陣を瞬時に形成する。

 

 

「“黒嵐壁”ッ!!」

 

 

アタランテが魔法名を告げた瞬間、魔方陣が一際強く輝き、螺旋状に黒い円盤がソウジ達を守るように出現する。無数の少極光はその黒い円盤を難なく通過するも、通過した途端に違う方向に曲がってソウジ達には当たらずに壁に着弾。もしくはマグマの海に沈んでいく。

“黒嵐壁”。重力魔法と風系統の防御魔法を複合させ、攻撃の方向性を変える防壁。咄嗟に作り上げたアタランテのオリジナル魔法だ。本来なら直接展開する“絶禍”の方が最適なのだが、全員を素早く守るためには、このやり方が最適だった。

アタランテはさらに魔力を操作して、幾つかの小極光を旋回させて上空へと返していく。

さらに、ユエも気合いで目眩と全身を襲う倦怠感を捩じ伏せ、アタランテの防壁を補助するように重力魔法を発動。降り注ぐ全ての小極光を上空へと返していく。やがて掃射が終わり、魔力を大量に消費したアタランテとユエは肩で息をしながら、魔晶石で魔力を回復していく。

同時に、上空にいつの間にかいた、おびただしい数の竜と、それらの竜とは比べ物にならないくらいの巨体を誇る純白の竜の背にいる、赤髪で浅黒い肌、僅かに尖った耳を持つ魔人族の男から感嘆と呆れを含んだ声が降ってくる。

 

 

「……驚いたな。まさかエアノスの声を聞きながら、灰竜達の掃射を捌くとはな。そして、ウラノスとエアノスの攻撃を直撃させても殺しきれていない男達……やはり待ち伏せしていて正解だった」

 

 

魔人族の男は眼を剣呑に細めてソウジ達を睥睨する。

 

 

「先の掃射を捌いたそれは間違いなく神代魔法だな?その魔法、一体どこで手に入れた?」

 

「質問する前に、まず名乗ったらどうだ?」

 

「仮に名乗っても、答える義理は一切ないけどな」

 

 

そんな魔人族の質問に、ボロボロのハジメとソウジが不敵な笑みで答えた。

 

 

「ハジメ!」

 

「ソウジ!」

 

「ハジメさん!」

 

「ソウジ様!」

 

「無事か!ご主人様よ!」

 

 

ボロボロのハジメをユエが支え、同じくボロボロのソウジをアタランテが支える。シアとティオはハジメに近寄り、ジークリンデはソウジに近寄って気遣うように寄り添う。

そんな彼女達に、ハジメとソウジは大丈夫だと笑みを見せて、自分の足で立ち上がる。すぐに戦闘は出来ずとも、その闘志を衰えさせず、魔人族の男に不敵な笑みを再び送る。

 

 

「……これから死にゆく者に名乗る必要があるとは思えんな」

 

「全く同感だな」

 

「単にお約束に準じただけだ。そういえば、ウルで逃亡したやつの調子はどうだ?」

 

「……気が変わった。私の名はフリード・バグアー。異教徒共に神罰を下す忠実なる神の使徒であり、貴様達の存在を全力で否定する者だ」

 

 

フリードと名乗った魔人族の男は先程より幾分低くなった声色と共にハジメとソウジを睨み付ける。

 

 

「神の使徒……ね。そりゃあ、変成魔法を手に入れて強力な軍隊作れるなら、それくらい名乗れるだろうよ」

 

「しかもその鷹の魔物、複数の固有魔法を持ってるな?」

 

「ご名答だ異教徒よ。周囲に嵐を展開し操る魔法と、目眩等の状態異常を引き起こす奇声の魔法。それが私と同じく神代の力を得た同胞が作った《キライマスシリーズ》。そのNo.3・エアノスの能力(ちから)だ」

 

 

フリードのその言葉に、ハジメとソウジは魔眼石でエアノスと呼ばれた魔物を調べると、本来なら一つだけしかない筈の魔石がエアノスには二つある。

おそらく、キライマスシリーズという名称からしても、強引に固有魔法を一体に複数持たせるために生み出した魔物なのだろう。

 

 

「神代の力を手に入れ、直接語りかけて下さった“アルヴ様”の為に……貴様達をここで葬り去る!」

 

 

フリードはそう宣言すると同時に、複雑怪奇な魔方陣が描かれた大きな布を手に、ブツブツと詠唱を唱え始める。

その様子を見て、ソウジ達はフリードが空間魔法を使うのだと察し、ハジメはドンナーとクロスビットを、ソウジは不知火と紅雪を、ユエは“雷龍”を、アタランテは“緋竜槍”を、ティオとジークリンデはブレスを、シアは炸裂スラッグ弾でフリードに仕掛けていく。

しかし、その攻撃も灰竜と呼ばれた竜達が射線上に入り、正三角形が無数に組み合わさった赤黒い障壁で受け止めていく。よく見ると、灰竜の背中には亀型の魔物が張り付き、甲羅を赤黒く発光させている。おそらく、あの障壁は亀型の魔物の固有魔法なのだろう。

 

 

「「シィアアアアアアア―――ッ!!」」

 

 

その上、エアノスの尻尾の二蛇が再び奇声を上げ、目眩や眠気、倦怠感を引き起こしてソウジ達の攻撃を妨害していく。

 

 

「ぐっ……あの声がうざいッ!!」

 

「あの声のせいで意識を保つことさえキツい……ッ!」

 

「……ん。今展開している魔法の維持で精一杯……ッ!」

 

「あの魔物を黙らせれば解けるでしょうが……」

 

「あれを優先しようにも、あの障壁が邪魔で突破できん……ッ!」

 

「本当に厄介ですぅ……ッ!」

 

「ああ、本当に厄介な魔物だな……ッ!」

 

 

全状態異常耐性持ちのアタランテ以外は、エアノスが引き起こす状態異常に見事に苦しんでいる。

ハジメは反動の少ないオルカンに持ち代えてロケット弾を放つも、灰竜を吹き飛ばして終わるだけ。突破には至らなかった。

そうこうして手間取っている内に、フリードの詠唱がついに完成してしまった。

 

 

「“界穿”!」

 

「ッ!後ろです!ハジメさん!ソウジさん!」

 

 

魔法名が唱えられた瞬間、光輝く膜のようなものが出現し、フリードとウラノスという名の白竜、エアノスがそれに飛び込んで姿を消す。

シアの警告と、事前に得ていた情報から、倦怠感がなくなったハジメとソウジは背後へ振り返りながら、それぞれの武器を盾のように構えた―――その直後。

 

ズドォオオオオオオオオオ!!!

ビュガァアアアアアアアア!!!

 

ハジメとソウジの後ろの中間の位置で現れたフリードが乗るウラノスはハジメに向かって口内から極光を放ち、同じく現れたエアノスも眼前に展開していた嵐球を竜巻としてソウジに放っていた。

 

ドォゴォオオオオオオオオ!!!

 

 

「ぐぅう!!」

 

「がぁああ!!」

 

 

轟音と共に、それぞれ盾にした武器に攻撃が直撃し、彼らを水平に吹き飛ばす。その衝撃でハジメとソウジの止血していた傷口が開いて血飛沫が上がり、苦悶の呻き声が上がる。

その二人―――否、ソウジの姿に……

 

 

「……申し訳ありませんティオ様。私は……禁を破ります」

 

 

ジークリンデはティオそう言って魔力を高めていき、自身を水色の魔力で覆っていく。

そして、その魔力の繭が途端に大きくなり―――凄まじい冷気と共に吹き飛んだ。

 

 

「な―――」

 

 

突然の冷気に、追撃しようとしていたフリードは行動を中断してその発生源に顔を向け、それの存在を視界に収めた瞬間、言葉を失った。

水色の鱗に全身を覆った巨体に、強靭な長い四肢。

灼熱の場であるにも関わらず、燃えたぎるマグマを逆に凝固させてその場に佇み、身体中から放たれ続ける圧倒的な冷気。

翼こそないが、その銀の瞳孔でフリード達を睨み付けるその姿は―――まさに“竜”であった。

 

 

 




「……すぐそばに置いておくべきね。万が一の時に近くにないといけないから」

そんな言い訳をしながら自室のベッドに四皇空雲を持ち込む雫の図。

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