てな訳でどうぞ
例の変貌を遂げた日から数日が経過した隠れ家で。
「……ウサギ肉も美味しくないが、焼けるだけマシだな」
ソウジはこんがりと焼いたウサギ肉を食い終え、自身のステータスプレートを見る。
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空山ソウジ 17歳 男 レベル:15
天職:剣士
筋力:240
体力:330
耐性:175
敏捷:560
魔力:270
耐魔:300
技能:剣術(+刺突速度上昇)(+斬撃速度上昇)・魔力操作・胃酸強化・放炎(+熱耐性)(+熱閃)・天歩(+空力)(+縮地)(+爆縮地)・言語理解
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あの蹴りウサギの肉を食べた事でステータスは上昇した。しかも技能も変わっている。“縮地”が“天歩”という技能に上書きされ、新たに“空力”という派生技能を得た。
“放炎”も使い続けた結果、あの熱線を放てる技能―――“熱閃”が追加され、この蹴りウサギは“熱閃”で牽制しつつ、近づいたところをカウンターの要領で斬り裂いて勝利を納めることが出来た。
「この“空力”は多分、あの空中移動に関する技能なんだろうな……名称からして」
新しい技能について考察しながらソウジは剣を振っていく。
ただ振るだけではない。素早く、鋭く、紙のように敵を斬り捨てるように剣を素振りする。
そうやってソウジは鍛練へと励んでいった。
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「狼の肉を食って変化したのはステータスのみか……」
二尾の狼の肉を食べ終わり、ステータスプレートを見たソウジの第一声がそれだった。
“空力”の鍛練中に数匹の二尾狼に遭遇したが、“空力”と“爆縮地”による三次元高速移動からの炎を纏った辻斬りで二尾狼を全員仕留めた。
二尾狼は電撃を飛ばしてきたので、食べれば新しい技能が追加されると期待したのだが……
「考えられるのは、あの二尾狼が蹴りウサギより弱いくらいか?食べる順番も重要のようだが、倒した奴は時間をおかずに食うのが今の所は最善だな」
この死地でそんな悠長な事は出来ないので順番に関しては諦める事にした。
そしてソウジは隠れ家から出て、あの氷牛を探し始める。あの氷牛は一頭しかいないみたいなので放置してもいいが、アイツ以上に強い魔物がいないとも限らない。
遅かれ早かれあの氷牛とは衝突するなら早い方がいい。今の自分が通用するか、確かめる為にも。
“空力”と“縮地”を使って移動し、時々襲いかかる二尾狼や三つ目猫をすれ違い様に両断しつつ探していると―――見つけた。
氷牛はちょうど食事をしているようで凍らせた魔物の欠片をバリボリと咀嚼している。
ソウジは先手必勝と言わんばかりに“爆縮地”で氷牛へと肉薄し、“絶断”で切れ味をました剣をすれ違い様に振るい、氷牛の片方の角を斬り落とした。
「ブルオオオオオオ―――ッ!!!」
「そうだ怒れ。今のオレはお前の敵だ」
角を斬り落とされた事に怒りを露に唸る氷牛にソウジは不敵な笑みを浮かべて告げる。
その瞬間、周りの空気が一気に冷えていく。ソウジは咄嗟に横に飛ぶとソウジがいた場所から巨大な氷柱が生えてきた。
それだけではない。斬りおとした角の部分が氷によって補われて元の形に戻っていた。
「チッ!それがお前の能力かよ!!」
氷牛の固有魔法は氷を作り出す能力と見て間違いない。冷凍光線は派生した技能と見ていいだろう。
ソウジは舌打ちしながら今度は“放炎”を纏った剣で氷牛の氷に覆われた身体を斬り裂く。
「ブルオオオオオオ―――ッ!?」
氷の鎧が溶かされ、その下の黒い肌の肉に僅かに傷ができるも、その部分はすぐに氷によって塞がれていく。
「どうやらその氷の下にはふくよかな肉がある見たいだな?」
ソウジは笑みを浮かべて左手の人差し指から“熱閃”を氷牛に向かって放つも、熱線は氷牛に届く事なく消えていく。
氷牛は角の間に形成した球体を冷凍光線として放ってくる。
「チィッ!!」
ソウジは舌打ちしながら“放炎”を全身に纏いながら氷牛の冷凍光線をかわす。冷凍光線はソウジの右肩を掠めるが、身に纏っていた炎によって相殺される。
「やっぱり強いな……だが」
ソウジは闘争心を微塵も衰えさせず、“縮地”と“空力”の三次元機動で氷牛を錯乱させ、真上から“絶断”をかけた剣を氷牛の身体へと突き刺した。
氷牛の覆う氷を貫通し、肉の感触が伝わった瞬間―――
「燃えろぉおおおおおおおおおお―――ッ!!!」
全力で“放炎”を発動させる。その炎は剣にも宿っていき、氷牛の内部にへと到達する。
「ブルオオオオオオオオオオオオオ―――ッ!?」
中から焼かれる痛みから逃れようと全身を激しく暴れさせてソウジを背中から振り落とそうとするも、ソウジも必死に抵抗し離れようとしない。
壁に打ち付けられようと冷気が襲いかかろうと、例の水を飲んで必死に耐え続ける。
そして氷牛は遂に力なく地面へと倒れ、二度と動かなかった。
「勝てたな……」
そう口にするソウジの表情は然程喜びに満ちたものではなく、淡々とした表情だった。
あの戦いで剣が高温と低温によって使い物にならなくなったからではなく、やるべき事をやったという感じである。
そう、この戦いはソウジにとっては唯の通過点に過ぎない。
「オレの目標は家族の元へ帰る事…………そのためならどんな困難だろうが、理不尽だろうが、行く手を邪魔をするなら斬り捨てるだけ……」
ソウジは天井を見上げて、その決意を改めて心に誓う。
「この世界の事情に付き合う義理も義務もない。やりたきゃ勝手にやれ。オレはオレの望みを叶える為に前へと進む」
ソウジは独白のようにその決意を口にして告げ、氷牛の亡骸を隠れ家へと引きずって行った。
都合良すぎかな?この低脳にはこれが限界なのさ
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