「「殺れるものなら殺ってみなさい(みて下さい)」」
シアとジークリンデの不敵な宣戦布告に、ゴライアスの背に乗るミハイルは憤怒に顔を歪め、壮絶な憎悪を宿した瞳で円盤の上に佇む二人を射抜く。
「その余裕そうな顔、見ているだけで虫酸が走る。お前達の四肢を引きちぎって、あの男達の前に引きずって行ってやる」
「……あの~?何でそんな眼を向けているんです?カトレアって誰なんですか?」
どうも個人的な恨みがあるように見えるミハイルに、シアが訝しそうに眉をしかめて尋ねてみると、ミハイルは怨嗟の篭った声色で血を吐くようにその理由を告げた。
「カトレアは……貴様等が、【オルクス大迷宮】で殺した女は!俺の婚約者だ!!」
「そういうことですか……」
「ああ、なるほど……それで?」
目の前のミハイルがあの魔人族の女の恋人だと知ったシアとジークリンデは得心したように頷く。
どうやって知ったかは不明だが、ソウジが自分の婚約者を殺したことを知り、復讐に燃えているようである。最初の時計塔への攻撃も、仇を見つけたことで復讐心が昂ったからであろう。
「カトレアの仇は……マキアス様が授けて下さった、このゴライアスで討つ!!」
ミハイルが血走った目で告げると、それに呼応するようにゴライアスが角のレールガンを、シアとジークリンデに向けて再び放っていく。
ハジメのドンナー以上の威力を持った赤い閃光がシアとジークリンデに迫るも、二人はあっさりとかわす。
「コートリス部隊!上空から石針を奴らに向かって放て!ケルベリア達も奴らを食い殺せ!!」
ミハイルの指示に上空の黒鷲―――コートリス部隊は一斉に石の針を篠突く雨のように射出していく。二首の狼―――《キライマスシリーズ》No.7・ケルベリア達も猛然とした勢いでシアとジークリンデに迫っていく。
その上空に向かって、ジークリンデは魔法を発動させる。
「“凍界”」
ジークリンデがそう呟いた、次の瞬間。
パキィイイイイインッ!!!
コートリス部隊がいた空が、
氷塊に閉じ込められたとか、そんなレベルではない。文字通り、空が凍り、上空にいたコートリス部隊も、ジークリンデ達に迫っていた石針もその場で止まったように凍ったのだ。そして、ジークリンデが手を振るうと、凍ったもの全てが音を立てて砕け散り、ダイヤモンドダストのように降り注いでいく。
ジークリンデのオリジナル魔法“凍界”。氷魔法と空間魔法を複合させた、指定した空間内を瞬時に絶対零度にし、空間内の凍らせたものを破壊する凶悪な魔法である。
対象の選別等といった細かな設定が出来ず、連発も出来ない為、まだまだ鍛練が必要ではあるが、今の魔法によりジークリンデ達の上空にいたコートリス部隊は全滅した。
シアはケルベリアの群れに向かって炸裂スラッグ弾を放つも、ケルベリアは炸裂スラッグ弾の着弾地点から事前に離れてかわし、シアとジークリンデとの距離を詰めていく。
まるで四つ目狼を連想させる動きをするケルベリアの群れに、シアは“宝物庫”から新ギミックの赤い鉄球を取り出し、赤い鉄球の一部から伸びている鎖をドリュッケンの天辺の金具に取り付けて“剣玉モード”にし、ケルベリアの群れに向かって、信じられない速度で鉄球を打ち出す。
当然、ケルベリアは迫り来る鉄球をかわすも、鉄球に内蔵された軌道変更用ショットシェルによって軌道を突然変え、ケルベリアの一体を全身の骨を砕いて吹き飛ばしていく。
「うりゃりゃりゃりゃ!」
シアは雄叫びをあげながら剣玉モードのドリュッケンを振るい、ケルベリアを次々と葬っていく。ケルベリア達は迫る鉄球をかわすも、ショットシェルによる急な軌道変更にはついて行けずに鉄球の餌食となっていく。
そんなシアに、ゴライアスが尻尾の先端の標準を合わせ―――
「!」
―――ようとして急に角度を変え、そちらに向かってレールガンを放つ。そのレールガンの先―――ブレスを放とうとしていたジークリンデはブレスを中断して咄嗟に横に跳んで回避した。
その隙を狙い、シアが鉄球を手元に戻す間に、ゴライアスに向けて炸裂スラッグ弾を連発するも。
「ブォオオオオオオッ!!」
ゴライアスが咆哮すると、ゴライアスの全身から電撃が迸り、その電撃が迫っていた炸裂スラッグ弾に直撃して爆破させてしまう。さらにミハイルも無数の風の刃をシアとジークリンデに飛ばしていく。
そのミハイルが放った風刃をジークリンデが同じく風刃で相殺し、シアが跳躍し、上空から鉄球をゴライアスに向かって打ち出すも、ゴライアスが放った角と尻尾のレールガンによって軌道を逸らされてしまい、ゴライアスのすぐ横にめり込んだ。
「うーん……本当にあの魔物は厄介ですねぇ。スラッグ弾は電撃で爆破されますし、鉄球も軌道を逸らされますし、最初のガチの一撃も防がれましたし」
「ええ。それに、あの狼達も攻撃を先読みしているだけでなく、まるで全員が見ているものを共有しているかのように動いていますしね」
鉄球を引き戻しながら呟いたシアの言葉に、ジークリンデがケルベリアの能力を考察しながら同意する。
今の所、状態異常を引き起こすような能力は持っていないようだが、それでも厄介な事には変わりはない。
だが、
「なら、もう一つの新ギミックで殺ってやるですぅ」
シアはそう言って鉄球の鎖を取り外して“宝物庫”へと戻すと同時に、螺旋状の溝が刻まれた、五十センチ程の黒い金属の円錐が取り付けられている厚さ二十センチの円盤を取り出し、ドリュッケンの頭部に装着する。
シアが“ドリルハンマーモード”となったドリュッケンを振るうと、ギュンギュンと音を立てて、アザンチウム製のドリルが回転を始めていく。
そして、“仮定未来”でベストな攻撃方法を導き出したシアは、そのままゴライアスに向かって走り出していく。
「ブォオオオオオオッ!!」
ゴライアスはレールガンと前足から衝撃波を繰り出して、ミハイルは細分化した“雷槌”を発動させてシアを迎撃しようとするも、シアは“未来視”の派生“天啓視”と円盤を駆使して襲いかかる猛攻をヒラリヒラリとかわし、ゴライアスとの距離を詰めていく。
ケルベリア達も自身の能力を駆使してシアに襲いかかろうとするも、ジークリンデの魔法の援護によってシアに近づけず、ゴライアスへの接近を許してしまう。
それならば!と言わんばかりにケルベリア達は、シアを援護しているジークリンデに肉薄していく。当然、ジークリンデは連発重視で魔法を放ち、ケルベリア達を傷つけていくも、ケルベリア達は仲間の影に隠れ、もしくは盾となるように進んでいき、その内の一体が遂にジークリンデに辿り着き、ジークリンデの腕に噛み付いた。
「グゥッ!?」
「残念ですが、その程度では傷一つ付きませんよ?」
噛み付いたケルベリアの唸りに、竜鱗であっさりと防いだジークリンデはそう言って、ケルベリアを瞬時に凍らせた。
その光景を目の当たりにした他のケルベリア達は様子を窺うようにジークリンデを囲むだけに留まってしまう。
そして、シアの方も遂にゴライアスを目と鼻の先に捉え、猛烈に回転しているドリルハンマーモードのドリュッケンをゴライアスの頭部に向かって振り下ろす。
ゴライアスはレールガンが間に合わないと判断したのか、頭部から金属を噴き出していき、即興で作り上げた兜でドリルハンマーモードのドリュッケンの一撃を耐えようと構える。
だが、猛烈に回転するアザンチウム製のドリルに加え、ショットシェルの激発による推進、重力魔法による加重、“魔衝波”による衝撃波、シア本人の怪力によってその兜はあっさりと粉砕され……ゴライアスの頭部を容赦なく抉り潰した。
「なっ!?ゴライアスが!?」
ゴライアスが倒されたことにミハイルが目を剥いて驚いていると、シアは容赦なくドリュッケンをミハイルに向かって振るい―――その体を二つに分けて抉り飛ばした。
「ガァッ!?この……ごほっ!……化け物どもがぁッ!!」
「ありがとうございます!」
ミハイルの悪態をついた言葉に、シアは喜んだ声色で、良い笑顔でお礼を言う。
体を二つに分けられ、その場から吹き飛んでいくミハイルは己の最後を悟り、このままカトレアに会えるかなぁと、ぼんやりと考えながら地面を転がっていき―――そのまま永遠の眠りについていった。
「ふふ、ようやく化け物呼ばわりされる程に強くなれたようですぅ」
「では、化け物同士、まだ残っている狼達を駆逐してからアタランテ様達の下へ向かいましょうか」
「了解ですぅ!さっさと終わらせますよぉ!!」
ジークリンデの言葉にシアは力強く頷き、まだ残っているケルベリア達の殲滅を再開するのであった。
「やっぱりドリルはロマンだよな。ジェット機構も搭載するか?」
「ああ。全くだ。それだと現時点では機能が制限されるから無理だな」
エリセンの滞在中、議論しながら嬉々としてドリルを作っているハジメとソウジの図。
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