魔王の剣   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ

※ご指摘により凄まじい勘違いに気づいたので修正しました


吸血姫と狩人

「「殺れるものなら殺ってみろ(みて)」」

 

 

ユエとアタランテがフリードとマキアスに向かって不敵に宣戦布告をする。直後、ウラノスとトライドス、灰竜が極光のブレスを放ち、コートリス達も石針を飛ばし、コートリスに乗っている魔人族達もあらゆる魔法を一斉に放った。

 

 

「“界穿”」

 

 

ユエが神代魔法を発動させ、二つの光輝く巨大なゲートがユエとアタランテの頭上に出現した。フリードとマキアスは何故あんな座標に巨大なゲートを開いたのか訝しんだが、ユエとアタランテがゲートに飛び込んだ事で漸く気づく。

 

 

「しまっ!?」

 

「総員、回避せよっ!」

 

 

フリードとマキアスは、ウラノスと額の水晶を緑に輝かせて風を纏ったトライドスがその場から飛び離れたことで事なきを得たが、それ以外の者は頭上のゲートから降り注いだ自分達の攻撃によって次々と落とされていってしまう。

 

 

「くっ……まだ見くびっていたということか……奴らはどこに?」

 

「!彼処だ、フリード!」

 

 

フリードが憎々しげに呟いて消えた二人を探していると、マキアスが頭上に指を差して二人の存在を伝える。そこには重力魔法で宙を浮くユエと、再生魔法により、以前の飛行能力の八割を取り戻した翠翼をはためかせるアタランテがいた。

アタランテはヤークトから八本の魔力矢を放ち、内四本は地上の魔物の群れを囲むように刺さり、残りの四本は空中で止まる。

そして、そのままユエとアタランテは静かに瞑想する。一見すれば千載一遇の好機なのだが……

 

 

「全軍、急いで矢の囲みから離脱しろ!」

 

 

フリードとマキアスは背筋に悪寒を覚えた事から攻撃より離脱を優先し、フリードの指示に従って急いで矢の囲みの内側から出ていこうとする。

フリードとマキアスを含めた数名が囲みから出たところで、ユエとアタランテから同時に言葉が紡がれた。

 

 

「「“絶潰(ぜっかい)”」」

 

 

その瞬間、巨大な黒き筐が顕れ、まだ魔力矢の囲みの内側に居た魔物達や魔人族達はその中に閉じ込められた。そして、その巨大な黒き筐は瞬く間に最初の十分の一サイズにまで圧縮され―――凄まじい衝撃と共に消し飛んだ。

 

 

「くっ……トライドスッ!!」

 

 

マキアスが叫ぶと、トライドスは額の水晶の輝きを今度は黄色へと変え、同時に三重の黄色き巨大な障壁を展開。こちらへと迫るその衝撃を受け止める。フリードとウラノス、灰竜達、魔人族を乗せたコートリス達、弾速で囲みから逃れていた火啄木鳥―――《キライマスシリーズ》No.6・ブレイバ達もトライドスが展開した障壁の後ろに隠れ、その凄まじい衝撃波をやり過ごしていく。

重力魔法と空間魔法を複合させた魔法“絶潰”。指定空間内を瞬時に圧縮して押し潰し、それを解放することで衝撃を飛ばす複合魔法だ。

無論、空間魔法“震天”の方が威力が高いのだが、こちらは周りへの被害を抑えられる。無論、王都の為でなく、単に自分達の攻撃で敵でない民間人を殺しました、等という事態を避けるためだが。

 

 

「“雷龍”」

 

 

衝撃波が収まると同時にユエが再び“雷龍”を発動させ、障壁が展開されていない側面から強襲させる。

だが、トライドスの三つある首の二つが迫る雷龍へと顔を向け、額の水晶の輝きを今度は青色へと変える。途端、正面の障壁が二つ消えるも、額の水晶が青く輝いているトライドスが大口を開くと、雷龍が逆に吸い込まれていき、その雷の体を取り込んでいった。

 

 

「……やっぱり普通じゃなかった」

 

「君達に言われたくはない台詞だな」

 

 

ユエのどこか苦々しげな呟きに、マキアスは不機嫌そうに返す。同時にトライドスの額の水晶の輝きが銀色へと戻り、ウラノス以上の極光をユエ達に向かって放つ。ウラノスと灰竜達も続くようにブレスをユエ達に放っていく。

当然、ユエは“絶禍”でその極光を呑み込んで防いでいく。すると、トライドスの右首の額の水晶が黒く輝き、その頭がユエを睨み付ける。

 

 

「ッ!?くっ!」

 

 

一瞬、ユエが目を見開き、表情を苦痛に染めるもすぐに表情を引き締め、魔法の維持に集中する。だが、今のユエは“絶禍”の維持で手一杯となってしまい、炎を纏って迫りくるブレイバ達の迎撃に割く余裕はない。

だが、ここにいるのはユエ一人ではない。

 

 

「“氷嵐槍(ひょうらんそう)”」

 

 

アタランテが長弓モードのヤークトにつがえた魔力矢を放つと、その魔力矢は極寒の竜巻となって自分達の周囲を駆け抜けていき、ブレイバ達を瞬時に凍てつかせていく。

オリジナル魔法“氷嵐槍”。“嵐帝”と“凍獄”、重力魔法を複合させた、自在に駆け抜ける絶対零度の竜巻だ。

 

 

「あの金竜、どうやら額の水晶の輝きが変わることで能力が変わるようだな」

 

「……ん。あの時の魔物より地味に厄介」

 

 

アタランテの推察に、ユエが“絶禍”で吸い込んだ極光を解放しながら頷いて同意する。返された極光は再び額の水晶を青く輝かせたトライドスによって全て吸い込まれてしまう。

 

 

「銀が極光、緑が風による機動力の強化、黄色が防御障壁、青が魔法の吸収、だな」

 

「……ん。加えて黒は人のトラウマを思い出させる。この分だと回復もありそう」

 

 

素のブレスではウラノスの方が威力は上だろうが、トライドスは複数の能力を的確に使い分けている。ある意味、ウラノス以上に厄介である。

 

 

「やはりブレスは効かぬか……」

 

「だが、君達の神代魔法の正体はおおよその予測がついた。さっきの黒い球は“重力”に関係しているんだろう?それなら説明がつくからな」

 

 

マキアスの考察にユエとアタランテは無言を貫く。マキアスはそれを肯定と受け止め、やはりといった感じで頷く。

 

 

「なら、それならやりようはある。……フリード」

 

「……そうだな。出し惜しみしている暇も力を温存する余裕もなさそうだからな」

 

 

マキアスの言葉にフリードは深く頷き、ブツブツと詠唱を始めていく。

 

 

「……あのガリ男。そこのブ男より面倒そう」

 

「だな。答えを導き出した上に、有効な攻撃手段をすぐに割り出したのだからな」

 

 

だが、()()()()()()

ユエとアタランテは不敵に笑い合い、ユエは魔法の準備を、アタランテはフリード達の上空に魔力矢を何十本も放って魔法陣を構築する。

 

 

「“劫火浪・流星”」

 

 

アタランテが名称を呟くと、魔法陣から幾つもの大火が隕石の如くフリード達に降り注いでいく。“劫火浪”は本来、津波の如き大火を繰り出す超広範囲攻撃魔法なのだが、アタランテはわざと防衛できるレベルに落としこんで放ったのだ。

その大火の流星群をトライドスが防御障壁と魔力吸収によって防いでいき、灰竜の背に乗る亀の魔物も赤黒い障壁を展開して詠唱しているフリードを守っていく。

さらにアタランテは相手に考える余裕を与えない為に、魔力矢で魔法陣を幾つも構築し、様々な攻撃魔法をフリード達に放っていく。

今のアタランテは固有魔法“適応力”で得られた新たな技能“魔力貯蔵”により、数値としては五百近い魔力を自身の内に溜め込んでいる。魔晶石での魔力の貯蔵と比べれば劣るが魔晶石よりすぐに魔力を引き出せ、自身の魔力の効率化と消費量減少技能により、実質は一万に近い魔力量である。その魔力を引き出して、魔法による波状攻撃を仕掛けていっているのだ。

そんな中で、フリードの詠唱が、遂に完成する。

 

 

「―――“震天”!」

 

「“縛羅”」

 

 

フリードが空間を無理矢理圧縮し、それを解放して凄まじい衝撃を生み出す空間魔法“震天”を発動させるのと同時に、ユエが空間を固定する空間魔法“縛羅”を発動させる。

直後、空間が大爆発を起こし、その衝撃で地面が抉り飛び、天空の雲すら吹き飛ばすも、その中心にいたユエとアタランテは“縛羅”によって無傷で佇んでいた。

だが、それを予想していた者は二人いる。

 

 

「耐えきるとわかっていたぞ!」

 

「だから、さっきのはカモフラージュとさせて貰った!」

 

 

ユエとアタランテの背後からゲートが開き、凄まじい速度でウラノスとトライドスに騎乗したフリードとマキアスが現れる。そのままウラノスはユエに、左右の首の額の水晶が緑、真ん中の首の額の水晶が銀に輝いているトライドスはアタランテに一気に喰らいつく。

ユエはウラノスに肩を噛み付かれ、アタランテは両腕、肩をそれぞれの首に噛み付かれ、トライドスは額の水晶を全て銀色に変え、どちらも零距離で極光を放とうとする。

だが、ユエとアタランテは悪魔の如き笑みを浮かべ、詠唱を紡ぐ。

 

 

「“壊刻”」

 

「“刻影”」

 

 

直後、フリードとウラノス、マキアスとトライドスの絶叫が響き渡る。

 

 

「「ぐぅあああああああああああっ!!」」

 

「クゥルァアアアアアアン!!」

 

「「「ゴゥアアアアアアアアアア!!」」」

 

 

ウラノスは身悶えてユエの腕を噛みちぎり、トライドスは痛みから噛みついていた口を離す。ユエは“自動再生”であっという間に腕を再生させ、アタランテも再生魔法で自身の傷を治して天空に上がり、彼らを睥睨する。

対象の過去の傷を再生させる再生魔法“壊刻”と、空間魔法と再生魔法を複合させ、一部の空間の過去の状況を再生させる複合魔法“刻影”により、フリードは過去の傷を、マキアスはその空間の“震天”の衝撃を受けて手酷い傷を負う。“刻影”は相当な消費量であり、“震天”の威力がある程度落ち着いていた状況までしか再生出来なかったが、それでも効力は十分であった。

 

 

「……どう?痛い?」

 

「どうだ?先程奴が放った神代魔法の味は?」

 

 

ユエとアタランテの質問に答えることなく、トライドスの額の水晶が白く輝き、自身とマキアス、ウラノスとフリードを薄く光る白い膜で覆う。途端、彼らの傷が少しずつ塞ぎ、癒え始めていく。思った通り、回復能力も持っていたようだ。

 

 

「ぐぅ……最低でも神代魔法を三つも持っているのか……」

 

「空間に重力、欠損さえも治す魔法……このまま戦っても勝利は得られそうもない……かくなる上はっ」

 

「……させないっ!?」

 

「逃がしはしなっ!?」

 

 

ユエとアタランテが止めを刺そうとした瞬間、左右の首の額の水晶を黒く輝かせたトライドスが二人を睨み付け、過去のトラウマを思い出させる。

アタランテは八百年前の襲撃と、八百年の孤独を引き出され、息が詰まりそうな気分になるも、ソウジとの暖かな記憶を思い出すことでそのトラウマを叩き出し、ユエもハジメとの記憶を思い出して同じくトラウマを叩き出し、再びフリード達に止めを刺そうとするも、窮地を察して救援に駆けつけた地上部隊の魔人族達の特攻によってそちらの対処に割かれてしまい、まんまとフリードとマキアスの離脱を許してしまった。

 

 

「……“五天龍”」

 

「…………」

 

 

トラウマ再生が解除されたユエとアタランテは八つ当たり気味に、ユエは雷龍、蒼龍、嵐龍、氷龍、石龍を出現させ、アタランテも魔力矢と翠の羽根で魔方陣を多数構築して、様々な上級魔法を地上の魔人族達に放って、ものの十数秒で魔人族の地上部隊を殲滅する。

 

 

「……あの金竜、本当にウザい」

 

「全くだ」

 

 

苛立ちを露に呟くユエに、同じく苛立ちを露にしているアタランテは頷いて深く同意していると、ユエ達の前にゲートが開き、そこからシアとジークリンデが飛び出してくる。

 

 

「ユエさ~ん?あのクソ野郎は生きてますかぁ?」

 

「ユエ様、アタランテ様。あの輩達はどうなりましたか?」

 

「……逃げられた。あの金竜が人のトラウマを思い出させたおかげで」

 

「あのガリ男、次こそ仕留めてやる」

 

 

それだけでシアとジークリンデは大体の事情を察し、彼らのしぶとさに内心驚きつつも、苦笑いしながら二人を宥めるのであった。

 

 

 




「お前達もアルヴ様の教えを知るがいい!」

「お前達が此方に来るなら、悪いようにはしない」

「ふっ、私は既にハジメ教に入信している。教祖は私」

「なら、私はこの場でソウジ教を立ち上げるとしよう」

「「宗教舐めるな!」」

フリードとマキアスがユエとアタランテを勧誘した場合の図。

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