魔王の剣   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


ミストルル

―――時間は遡る。

一枚目の大結界が破壊された頃、雫はその音で目を覚まし、四皇空雲を手に一瞬で臨戦体勢を取る。そして、室内に異常がないと分かり、若干の安堵の息を漏らした。

ここ数日は愛子先生とリリアーナの事で警戒心を強めており、今日も警戒心溢れる就寝だった雫は音もなく数秒で装備を整え、光輝と龍太郎の部屋に向かい、扉をノックした。

扉はすぐに開いて光輝が姿を見せた時には、その警戒心の無さに雫は呆れていたが、嫌な予感を感じていた雫は他のクラスメイト達の部屋を片っ端から叩いていく。

その時、雫と懇意にしている侍女の一人、ニアが駆け込んで来て、雫に話しかける。

 

 

「雫様……」

 

「ニア!」

 

 

ニアはどこか覇気に欠ける表情で雫の傍に歩み寄るが、雫は()()()()()()()()()にニアに話しかける。そして、ニアがもたらした大結界破壊の情報に度肝を抜かれることとなる。

その後、恵里の提案でメルド達と合流する為に緊急時の屋外の集合場所へと向かい、騎士団副団長のホセの案内で光輝達は兵士達の中央へと案内される。兵士達は()()()()()であり、光輝達は疑問を感じずに兵士達の中央へと進んでいく。

だが、雫はあまりにも()()()()()()()()兵士達に逆に違和感を覚え、起きた時からずっと感じている嫌な予感と相まって、周囲への警戒を強め、無意識の内に、四皇空雲を握る手に力が入る。

そして、光輝達が周囲の兵士と騎士に囲まれたとき、ホセの演説が再開し、兵士と騎士達が一斉に剣を抜刀して掲げる。

 

 

「さぁ、始めよう、我々の反撃を」

 

 

ホセがそう言って抜刀した剣を掲げた瞬間、光輝達に強烈な目眩が襲いかかった。

そして、次の瞬間、周りの兵士と騎士達が背後からクラスメイト全員に向かって掲げていた剣を突きだし、クラスメイト達はあっさりと貫かれてしまい、次々と地面に組み伏せられ、魔力封じの枷を付けられてしまう。

 

 

「な……」

 

 

そんな中、警戒していた雫だけは辛うじて四皇空雲で自分を襲った凶刃を防ぎ、その光景に言葉を詰まらせていた。

 

 

「あらら、流石というべきかな?雫」

 

「え?」

 

 

その状況で一人、平然と立ち、今までと全く違う雰囲気を放っている恵里に雫は思わず硬直し、反射的に疑問を投げ掛けようとした。

その瞬間、雫の体に再び異変が起きる。

 

 

「……え?何で急に、体が……あぐっ!?」

 

 

突然襲った体の痺れに、雫はその場で膝をついてしまい、そのまま他のクラスメイト達と同様に拘束されてしまう。しかも、その相手は……

 

 

「ニ、ニア……?ど、どうして……?」

 

「…………」

 

 

自分を組み伏せ、魔力封じの枷を取り付けた無表情のニアに、雫は信じられないといった表情で顔を横に向けて覗きこむ。

 

 

「どう、雫?信じていた相手に組み伏せられた気分は?その為にわざわざ用意したんだよ?」

 

「え、恵里……一体、ニアに何を……」

 

 

恵里は雫の質問に答えず、ニヤニヤと笑いながら眼鏡を外し、光輝の方へと歩み寄り、熱に浮かされた表情で光輝の唇を奪う。

光輝は突然の濃厚なキスにわけがわからず振りほどこうとするが、数人がかりで押さえつけられている上に、魔力封じの枷を首と手足、合計五つも付けられている。また、体を貫く剣と、謎の痺れのせいで力が全く入らずなすがままだった。

そして、光輝との接吻にある程度満足した恵里は、光輝を手に入れるため、魔人族と手を組んだこと、自身のオリジナル降霊術“縛魂”で本来なら違和感を感じるレベルで死体を操っていたことを明かしていく。

 

 

「う、嘘だ……ホセさんを始め、皆はいつも通りだったのに……」

 

 

光輝は信じられないといった感じで否定しているが、雫はここで漸く、自身の異常に気づいた。よくよく思い出せば、ニアは普段は親しみのこもった眼差しと快活な表情をして、凛とした雰囲気を発していたのにも関わらず、あの覇気のないニアの様子に()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「恵里……私達に、一体何をしたの……?」

 

 

雫のその言葉に、恵里はより一層口元を歪め、その疑問の種を明かしていく。

 

 

「実は、魔人族とのやり取りである魔物を城内に侵入させてね。その魔物の毒で皆の思考を若干鈍らせたんだよ~?彼等の違和感を感じさせないくらいにね」

 

「ま、魔物の毒って……いつの間に……」

 

 

クラスメイトの誰かが信じられない思いで呟くのを尻目に、恵里がパンパンッ!と手を叩くと、恵里の直ぐ近くの地面が盛り上がっていく。そして、そこから植物の枝が飛び出し、瞬く間に成長して一本の樹木がそびえ立った。

 

 

「《キライマスシリーズ》No.2・ミストルル……それがこの子の名前みたいだよ?最初に渡された時は種の形をしていたんだけど、花や草等、様々な姿の植物に変わるから驚いたよ。僕の指示にも素直に従ってくれたし、本当にいい魔物だよ」

 

 

恵里がそう言って樹木―――ミストルルを撫でると、ミストルルはそれに応えるように、枝葉をざわざわと揺らす。

 

 

「この子の生み出す毒は多種多様で無味無臭の上に、盛る相手を選べる。皆が感じた目眩も体の痺れもこの子が生み出した微細な毒粉のおかげ。毒粉の場合はすぐに効果を発揮しないし、強力になるほど時間が掛かるのは難点だけど、それでも有り余る程なんだよね?ちなみに、毒で皆を殺していないのは、それだと面白くないから。その気になれば毒殺できるし、おまけに―――こんな事も出来るんだよ?」

 

 

恵里はそう言ってミストルルに何かを呟くと、地面から幾条もの蔓が伸び、瞬く間に雫に絡みついてく。

 

 

「ああっ!?」

 

 

雫はそのままニアの拘束を離れ、逆さ十字の体勢で全身を蔓に縛られてしまった。

 

 

「あははははっ!中々似合っているよ雫!!」

 

 

惠里が可笑しそうに哄笑を上げて雫を見つめる。対して雫は鋭い眼差しで恵里を睨み付ける。

 

 

「このままサクッと殺してもいいんだけど、せっかくだからその蔓で散々啼かせから殺して上げるよ」

 

「ふ、ふざけないで!!そんな―――」

 

 

雫は恵里の言葉に声を荒げるも、体がビクンッ!と痙攣し、次いで火照ったように身体から汗が噴き出し、ブルブルと身体を震わせ始めていく。

 

 

「……あ……ぁぁ……」

 

「実は雫にだけ強力に発情する毒も与えてたんだよ。今の雫は身体中が疼いて、アソコを責めてほしくて堪らないよね?」

 

「う……うるさ……ああんっ!?」

 

 

雫は必死に強がろうとするも、胸を蔦で絞られて喘ぎ声を洩らす。さらに地面から新たな蔓が伸び、その蔦が雫の身体を撫で回していく。

 

 

「ん……ぁ……やめっ……ひゃんっ……ぁぁぁ……」

 

「凄く敏感になってるね。そのまま女の尊厳をズタズタにしてから殺して、ボクの傀儡にして素敵な役目を与えてあげるよ」

 

「ハァ……ハァ……っ、役目……?」

 

 

息を厭らしく吐く雫の疑問に、恵里は口元をニヤつかせて、その答えを告げる。

 

 

「そうだよ。実は香織を欲しがっている人がいてね。その人には色々と協力してもらったからね。だから、香織を人形にするのに君を使おうってね。親友に殺される時、香織はどんな表情になるのかな?くふふっ」

 

「!?この……ひ、きょう……者……ッ!」

 

 

怒りを露にする雫の言葉を無視し、恵里はすぐ傍にいた近藤礼一の下へ歩み寄る。近藤は何をされるのかを理解し、恵里から少しでも離れようとするも、組み伏せられ、魔力も枷で封じられている上に、毒よって身体が痺れているのでただ震えて眺めることしか出来ない。

そして、光輝達の制止の声も無視して、恵里は近藤を目の前で殺害し、傀儡兵へと変えていく。その間、雫は蔓に身体を撫でられ、傀儡と化したニアがその手に持つ懐剣によって衣服が丁寧に切り裂かれていく。雫は抵抗しようにも、身体の拘束と毒のせいで抗えず、されるがままである。

 

 

「え、恵里……なんで……」

 

 

恵里の親友である鈴はショックを受けたように愕然とした表情で疑問を零し、恵里は鈴をずっと光輝の近くにいるためだけに鈴を利用していただけだと嬉々として明かし、鈴の心を容赦なくへし折る。

その告白を受け、現実逃避のように瞳から光が消えた鈴に構うことなく、恵里は半裸状態となった雫へと近づいていく。それを見た光輝達は必死の抵抗を試みるも、毒によって満足な抵抗も出来ず、良くて軽く身動ぎしか出来ないでいる。

 

 

「それじゃあ、雫。盛大にイカせた瞬間に殺してあげるから、安心してイッテね?後、君との友達ごっこはヘドが出そうだったよ?」

 

 

恵里が近くの騎士から受け取った剣を片手にそう言うと、雫を拘束している下半身の蔓が動き出し、閉じていた股を開かせていく。雫は必死に抵抗を試みるも、やはり毒のせいで力が入らず、容易く開脚させられてしまう。

そして、地面から一際太く、先端が鋭い蔓が伸び、その先端が見下ろすように雫のアソコへと狙いを定め、猛烈な勢いで迫っていく。

 

 

(ごめんなさい、香織。次に会った時は私を信用しないで……生きて……幸せになって……)

 

 

雫は世界の何処かで旅をしている親友に祈りを捧げていると、猛然と迫っていた蔓が、突然現れた掌くらいの光の障壁によって止められていた。

 

 

「「え?」」

 

 

全く予想してなかった光景に、雫と恵里の言葉が重なる。そして、ここにいる筈がない者の声が響いた。

 

 

「雫ちゃん!」

 

 

その声―――香織の声が響くと同時に、十数人の人影が駆け抜け、次々と兵士と騎士達を薙ぎ飛ばしていく。その人影は使用人の服を着た女性で、手には大鎌を携えている。

その女性が大鎌を巧みに振るい、光の障壁に止められていた蔓と、雫を拘束していた蔓だけを的確に切り裂いて雫を拘束から解放し、優しく抱き止める。

その大鎌を持った女性に、雫は見覚えがあった。

 

 

「貴女は確か……フィアさん?」

 

「ええ。数日振りですね、雫様」

 

「どうしてここに……それに、その耳は……?」

 

 

愛子が行方不明となる前に、王宮に招待されていた歌姫アリアと共に顔を合わせていたのだが、その時は頭に狐の耳は無かった筈だ。それに、よく見れば尻尾まである。

 

 

「それについては後程。今はこの状況についてです。何が起きているのですか?」

 

 

雫の質問にフィアはそう言って大鎌を振るい、猛然と迫っていたニアを吹き飛ばす。切り裂かない辺り、正確に状況を掴みきれていないのだろう。雫は要点を押さえて手早くフィアに状況を説明していく。

 

 

「今いる兵士と騎士達は、死んだ傀儡で……あの樹木は、毒を振り撒く魔物で……」

 

「……そういう事ですか」

 

 

雫の説明にフィアは納得したように頷くと大鎌を構え直し、襲いかかる兵士と騎士達を容赦なく切り裂き始めていく。

 

 

「まったく、とんだ邪魔が入ったよ!!それに、なんで君がここにいるのかなぁ!?」

 

 

恵里は怒りを露に、周囲の騎士達を聞き慣れない詠唱を唱え始めた香織に向かわせていく。香織は皆の傷と、拘束から何人かは解放されたにも関わらず動こうとしないことから、何かしらの毒を盛られているのだと判断し、負傷と毒を同時に癒す為、再生魔法での治療を選択したのである。

騎士達は香織に襲いかかるも、香織のすぐ後ろにいたリリアーナが張った光の障壁に阻まれ、フィアの一閃によって地面に沈められていく。

 

 

「仕方ない、かな?」

 

 

恵里がそう呟いた直後、香織達を守る障壁に攻撃を仕掛けていた騎士の一人が首を落とされて崩れ落ちた。

その倒れた騎士の後ろにいたのは……一見ボロボロの檜山大介だった。

 

 

「白崎!リリアーナ姫!無事が!?」

 

 

その檜山は、フィアの大鎌の峰で顔を殴り飛ばされ、地面をゴロゴロと無様に転がるのであった。

 

 

 




「この魔物は色んな毒を作れるんだよ!」

「色んな毒を作れるのなら、惚れ薬のような毒を作ってもらえれば……」

「あーダメダメ!それだと定期的に毒を与えないといけなくなるから!!第一、借り物だし!!」

雫の指摘に反論する恵里の図。

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