魔王の剣   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


師弟

冒険者ギルドで、漢女と裸族の大量発生の事実を知ってしまったソウジは、敢えて深く考えようとはせず、しかし、ハジメとユエにはしっかりと教えておくべきだと思いつつ、王宮の帰り道で買った花束を片手に、王宮の西北側にある山脈の岸壁を利用して作られた石碑版の忠霊塔の前に、一人で来ていた。

 

 

「それほど付き合いがあったわけじゃないが……あんたの人間性は嫌いじゃなかったよ、メルドのおっさん」

 

 

ソウジはそう言って、石碑前に花束を置く。ソウジの花束以外にも彼等の遺品や、献花が多く置かれている。当然、近藤と檜山の遺品もここにある。もっとも、ソウジがここに来た理由はメルドへの弔いだけであるが。

メルドは王国の騎士団長という立場にも関わらず、自分達に親身に接し、本気で悩んでくれていた。多少半端な部分もあったが、それでも死んだのが一番“惜しい”人物だった。

ソウジはメルドに黙祷を捧げた後、一度も振り返らずにその場を立ち去るのであった。

 

 

「……やっぱり、俺、忘れられているのかなぁ……?」

 

 

石碑の前でへたり込んでいた、遠藤を普通に無視して……

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

メルドへの墓参りを済ませたソウジは、そろそろ戻ってきているであろうハジメを探すのだが……

 

 

「……八重樫、何でお前一人だけなんだ?ハジメとユエはどうした?」

 

 

ハジメとユエを案内していた八重樫を先に見つけた為、ソウジはその所在を問い質す。八重樫は溜め息と共に質問に答えた。

 

 

「南雲君は職人さん達に追いかけられているわ。私とユエは一足先に戻って来たのよ」

 

 

どうやら、ハジメは王国の職人達と鬼ごっことなっているようである。

 

 

「ならユエは……ああ、料理とお茶の手解き中か」

 

「ええ」

 

 

自分達が帰ってきて早々、アタランテは早速フィアに料理の手解きを受ける為にフィアと共に厨房へ向かったのだ。シアと香織も一緒だったので、今頃、厨房は少々賑やかになっているところだろう。

 

 

「……どうせなら、ハジメを助けてやっても良かったんじゃないのか?」

 

「無茶言わないでよ……貴方がくれた四皇空雲の時もそうだったけど、あの人達は一度火がつくと並大抵じゃ止まらなかったんだから……」

 

 

目を逸らして弁明する八重樫に、ソウジは深く溜め息を吐き、ついでに気になったことを聞く。

 

 

「そういえば八重樫、それの機能はどうなった?」

 

「……職人さん達のおかげでこれに魔方陣が取り付けられて使えるようになったわ。あの時はパンク寸前でスルーしていたんだけど、どうして魔力を直接操作して使うという作りなのよ?」

 

 

ジト目を送る八重樫の質問に、ソウジは無言で腕の裾を捲り、腕に蒼い線を浮かばせつつ指先に小さな炎を灯した。詠唱も魔方陣も無しに指先から炎を起こしたことに目を白黒させる八重樫に、ソウジは説明していく。

 

 

「魔物の肉を食った結果、その魔物の固有魔法を手に入れると共に魔力の直接操作が出来るようになったからだ。オルクスじゃ魔物の肉しか食べるものがなかったし、当時は例の薬も湧水のように出ていたしな」

 

「少しは予想できていたけど、本当に壮絶ね……」

 

 

ソウジが明かした理由に、八重樫は複雑そうな視線を向ける。ハジメとソウジの強さのもとが余りにも壮絶な経験の果てだと改めて実感したからだ。

 

 

「そういえば、空山君はこれからどうするつもりなの?」

 

「ハジメが戻って来るまで、適当な場所で軽く素振りをするつもりだ」

 

 

ソウジはそう言ってその場を後にするのだが……

 

 

「何で付いてきているんだ?」

 

「せっかくだから空山君の剣を改めて見ようと思ってね。迷惑、かしら?」

 

「……お前には剣の手解きを受けていたし、別にいいぞ」

 

 

ソウジはあっさりと八重樫の追従を許し、適当な屋外に辿り着き、軽く素振りを始めていく。

 

 

「…………」

 

 

ソウジが片手で絶天空山を振るう姿を、八重樫はじっくりと観察する。ソウジの太刀筋に型が存在しないのが一目で分かる。だが、その太刀筋はとても鋭く―――迅い。

その鋭い太刀筋の挙動の一つ一つが、剣術の奥義の域に達しているであろうことが、幼い頃から剣術を習っていた八重樫には理解できた。生半可な技量の剣士が受け止めれば、その剣ごと斬られるであろう、必殺の剣。

天才の剣。それがぴったりと当てはまる。

 

 

「……本当に綺麗ね」

 

「より迅く、より鋭くと剣を振るってきた結果だ。オルクスの時は折り返しまでは氷で作った刀を振るっていたからな。それでも、お前の剣術のような洗練さはないし、我流ゆえに眉をしかめるものだろうがな」

 

「……もうツッコまないわよ」

 

 

さらりと出てきた事実に、八重樫は眉間を解すも、ソウジは構わずに絶天空山を振るい続けていく。

 

 

「正直、少し悔しいわ。教えた相手に、こうあっさりと追い抜かれたからね」

 

「随分と弱気だな。一応、オレの師匠だから追い抜いてやるくらいの意気込みを見せたらどうだ?オレ達の旅に同行するんだからな」

 

「冗談も程々にしてちょうだい……」

 

 

ソウジの発言に、八重樫は額に指を当てながら深い溜め息を吐く。具体的な例を出されて自分達だけでは返り討ちだと感じていた八重樫達は、ソウジの肉壁発言を辛うじて呑み込んでついて行くことを決めたのである。

 

 

「何だったら、世話になったお返しに、お前の稽古に少し付き合ってやってもいいぞ?」

 

「……じゃあ、少し胸を貸してもらうわね」

 

 

少しの間から、八重樫はソウジの前に立ち、抜刀術の体勢で四皇空雲を構える。ソウジも絶天空山をぶら下げ、悠然と佇んで八重樫を見つめる。

 

 

「…………」

 

 

一見、隙だらけに見えるソウジだが、八重樫は全く隙が無いことを肌で感じ取り、一歩でも踏み込めば一瞬で斬られることを本能で理解する。

 

 

「…………ッ」

 

 

ソウジが放つ剣気に八重樫は思わず呑まれかけるも、八重樫は必死に踏み留まり、“機”を狙っていく。

時間の概念を忘れそうになる程張り詰めた空気に、八重樫の頬から一筋汗が流れ落ちる。そして―――

 

 

「はぁああああああああ―――ッ!!!」

 

 

裂帛の気迫の咆哮と共に踏み込み、四皇空雲を抜刀するも―――

 

キィイインッ!

 

ソウジはあっさりとその一閃を捌き、そのまま流れるように八重樫の首筋に絶天空山の峰を軽く叩いた。

 

 

「―――参りました」

 

 

完全な敗北を喫した八重樫は四皇空雲を納刀し、ソウジに軽く一礼する。

 

 

「やっぱり強いわね。今までで会心の一撃だったんだけど、あっさり捌かれちゃったわね」

 

「死地で何度も己の存在と命を賭けたんだ。簡単にいくとお前自身も思っていないだろ?」

 

 

そんなソウジと八重樫の姿を……

 

 

「「「「…………」」」」

 

「……なぁ、どう見えると思う?」

 

「……友人ですね……()()

 

「……やはり、そう見えるか」

 

「はい」

 

「フフッ、ソウジ様も人気ですね」

 

「へっ、絶対にソウジの“一番の特別”を奪ってやるぜ」

 

「……フッ、出来るものならやってみろ」

 

「あの、アリア様が随分とガサツな口調なのですが……」

 

「あちらが素ですので気になさらなくていいですよ」

 

「あっ、そうなのですね」

 

 

フィアの固有魔法で隠れていた彼女達に、ちゃっかり覗き見られていた。

その後、その日の夕方のソウジ達の食事はフィアの手解きで作った、王宮料理を軽く超えた彼女達の手料理に舌鼓を打ちつつ、王宮料理を食べる天之河達をスルーしていた。

ちなみに、変態レベルが上がったティオがあの時のご褒美として、著しく誤解を招く言い方でお尻をいじめて欲しいとぶちかました際―――

 

 

「ハジメ様。遠慮なくティオ様の要望にお応えして頂いて結構です」

 

「おい―――」

 

「!流石ジークじゃ―――」

 

「ティオ様のお望み通り、進化したパイルバンカーの杭を」

 

「―――へ?」

 

「―――OK、わかった」

 

「ま、待つのじゃ、ご主人様よ。先程のは例えであって……」

 

「大丈夫ですよティオ様。今は再生魔法と魂魄魔法がありますから、一度逝ってもすぐに帰ってこられますよ?」

 

「そ、それなら……いや、それだと蘇生中はご主人様に罵られないから嫌じゃ!」

 

「遠慮するなよ、ティオ。お前の従者もこう言っているんだから、安心して一瞬で逝かせてやる」

 

「妾が悪かったのじゃぁ~!!許してたもう!!」

 

 

ジークリンデが別の意味で逞しくなったと実感した瞬間であった。そして、ティオのご褒美は添い寝となった。

 

 

 




「何だったらオレが鍛えてやってもいいぞ?」

「……その手の台本?は何なの?」

「ハジメが用意した『鬼の特訓台詞集(改正版)』だが?」

「結構です!!」

嫌な予感に駆られ、断る雫の図。

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