「いやっ…来ないでください!」
僕が扉の前に来ると、姫路さんの声が聞こえる。その声はとても怯えていて、嫌悪感が混ざり合っている。
「おうおう!そんなに抵抗されると、体に傷がついちまうぜ?」
「あんまりやり過ぎるなよ?値段が下がっちまう」
「わーってるよ、へへっ」
そんな会話が今も続かれてている。こいつらの声を聞くだけで、嫌悪感と胸糞悪さがこみ上げて来る。僕は、その気持ちをこの一言に全てを込めた。
「死にやがれ!!クズどもが!!」
ドガンッ!!
僕は、言葉と同時に、鉄製の扉を思いっきり蹴り飛ばし、扉を開いた。
「「!?」」
「吉井君…!!」
そこには、紐で縛られた姫路さんが床に座っていた。そして、姫路さんの前にいる奴は、上着を脱いでおり、あと少しで姫路さんに触れるところだった。
「その汚い手で、姫路さんに触るなぁぁぁ!!」
「……ッ!?ゲブっ!?」
僕は、姫路さんの近くにいた男を殴り飛ばした。まだあと数人、だが何人いようが関係ない…全員ぶち殺すだけだ!!
「吉井君!!後ろ!!」
「!?」
姫路さんにそう言われ、後ろを確認すると、鉄パイプを振り上げている男がいた。やばいっ!避けられないっ!咄嗟に腕で防御する体制になり、衝撃が来るのを待つ。
「………?」
なかなか衝撃がこない。そっと目を開けてみると、その男は目の前でドサッと倒れ込んだ。そして、その男の後ろに赤髪の男が立っていた。
「雄二!!」
「まったく…一人で突っ込むバカがいるか。貸し一だからな?」
「了解!」
雄二がいれば百人力だ。なんせ、前の文化祭で、姫路さんと、美波と、葉月ちゃんがさらわれた時も、ほとんど雄二が倒した。
「調子にのるなぁぁぁ!!」
男がナイフを片手にこちらに迫って来る。でも、僕たちは避けない。何故かって?それは…
「……加速」
ひとりのアサシンが、すぐそこにいる事を雄二にテレパシーで教えてもらったからだ。アサシンことムッツリーニは、目にも止まらない速さで、その男は攻撃を加えた。
「グハッ!?」
「……加速終了」
よし!雄二とムッツリーニが来てくれたおかげで、残りひとりだ!あと一人は…そうあたりを見渡した時、その男がいる場所が分かった。しかし、その場所は…
「おい!?一歩でも動いてみろ!!こいつの顔に一生消えない傷が付くぜ?」
「吉井君っ…」
僕はその光景を見たとき、ある一つの感情の支配された。そう怒りだ。奴に対するどうしようもない怒りだ。
「………。」
「明久?どうしっ…!」
雄二が何故か驚いたが、今は構っている暇はない。どうしたら姫路さんを助けられるか、どうしたら奴をぶっ飛ばせるか…それだけを考えている。そして、ある方法を思いついた。それは、あまりにも無茶で、今までのを見ると成功するとは思えない方法だけど、これしかない。
「……B-9倉庫にテレポート!!」
僕の体は徐々に消え、パッと消えた。
「どっ、どこへ行きやがった!?」
「ここだよ」
「ガッ!?」
僕は、その男の後ろにテレポートして、思いっきりうなじを殴った。ここは、全神経が通ってるらしい。いわば急所だ。男はその場でドサッっと倒れ込んだ。
「姫路さん!」
「吉井君…!!」
ここで抱き合い、感動的なシーンに…!
「おぃおぃ!ここか!?邪魔者が入ったってのは!?」
そんな妄想は、この一言で終わりを告げた。なんだよ!?せっかくいい所だったのに!!声のする方を見ると、男たちの仲間らしき人が数十人ぐらいいた。
「流石にやべぇな…、おい明久、テレポート脱出できねぇか?」
「ダメだよ。僕のテレポートは、2人までしか他人を移動させられないよ!だから、秀吉には残って貰ったんだから!」
そう、僕のテレポートも万能ではない。他人を運べるのはせいぜい二人が限度。ここに誰か一人置いて行くしかないのだ…。
「ここは雄二が残って…!」
「あとで覚えてろよ?」
「なんでもないです」
くそっ!どうすれば!!そんな事を考えてると、ある声が聞こえた。いや、聞こえたという表現は語弊がある。言うなれば、脳内から聞こえるという感じだ。
《やれやれ、面倒なことになっているな》と…
お読み頂いてありがとうございます!あと、1・2話ぐらいで完結とさせていただきます!好評だったら続編書くかもです!お気に入り登録などよろしくお願いします!
ではまたお会いしましょう!