どうぞ!
「さて、急いで帰らねば」
今日も今日とて何もなく学校が終わったな。今日はゆきなちゃんと一緒に帰れなかったから後日がちょっと…。この間ちょっと教師からの用事で遅れたらすごく拗ねてしまって機嫌とるのにしばらくかかってしまったからね。んん~もう!女神ったらかわいいんだから!…こほん。とにかく今日は早く家に帰って、久しぶりに会う両親を迎えなきゃね!
「と、思ってたんだがなぁ」
「グスッ」
何故こうなったのだろう(遠い目)いや、別に文句があるわけではないがなぁ。いや、あえて言わせてもらうなら、だ。
「お前は白いギターなんだなぁ」
「?」
「いや、なんでもないさ」
そう、コイツ(推定小学生低学年髪の色はアイスのミントみたいな色)はりさちゃんと同じように色のついた楽器のオーラを纏ってるのだ。…なんでこんな中二病みたいなこと思わなきゃならないんだろう。はぁ。と、とにかくオーラがあるのだ!みなとちゃんの青い薔薇のモチーフみたいなのはリーダー的な意味合いだろうか?となると他のメンバーもいるのだろうな…
「…すね」
「ん?なにか言ったか?」
「そういうお兄さんは白い剣ですねって」
「…は?」
まてまてまて、何て言ったコイツ!
「お兄さん?」
「あぁごめんよ。また、悪い癖が出た」
そう、今はオレの才能云々は問題じゃない。コイツのことだ。コイツは今オレにオーラが見えると言ったのだ。もしかしたら…
「なぁ?こんなふうなのって誰にでも見えてるか?」
「?いいえ、ボクが見たことあるのは姉だけです。ふたりいるんですけどとっても優秀で」
「因みにどんなふうに?」
「う、上の姉が青いバラで、下の姉がピンク色の絵の具を出しとくやつです。えーとなんだったかな名前は」
どう言うことだ?楽器モチーフはリーダー的なものじゃないのか?それにピンク色の絵の具を出しとくやつ?新しい色だな。こっちは絵画の才能なのか?
「ほうほう、いつ頃から見えてる?」
「え、えっと…。ちかぁぁい!」
「おっと失敬。ついつい、ね」
「ふぅ。で、いつからでしたっけ?少なくとも記憶にあるうちからずっと姉たちには見えてましたよ」
と、なるとだ。やはりオレが出会えてなかっただけか。メインキャストがそんなに多くないのは確かだろうな。
「こっちからも聞きたいんですけど」
「ん?なんだ?」
「お兄さんも見えてるんですよね?」
「ああ」
「誰にどんなふうに見えてるんですか?」
「ほう!聞きたいか!我が女神のことが!」
「あ、やっぱr」
「全くぅ!しょうがないなぁ~語ってあげようじゃないか!」
そうかそうか、そうだよね気になるよね。女神のこと気になっちゃうよね。流石女神。会ってなくても人の気を引いちゃうなんて。そんな女神に毎日会えるどころかお言葉も貰えるなんて…。はっ、もしかしなくてもオレがこの世で1番幸せな人間なんじゃ?
「…ふんっ」
「あいたぁ!な、何をするんだ!」
「この十数秒であなたが王子さま的な見た目でもかなり残念な人だと言うことはわかりました」
「え?無視なの?そして失礼だろ?」
「もう、誰に見えたかとかどうでもいいんでどう見えただけ言ってください」
「ちょっと謝罪の言葉は…」
「言え」
「ヒッ」
な、なんだこのショタは…。めちゃくちゃ怖い声だしたぞ今。
「え、えっとですね。自分もアナタ様以外はふたりしか見てないです。青い薔薇の人と青いベースだと思われるものです。あ、ベースってわかります?」
「ベースはわかります。しかし青いバラですか…。あと、ビビりすぎです」
「わかってるよ冗談だろ?んで、やっぱりそこが気になる?」
「うーん。多分僕たちは同じようなものが見えてるだけで違うものを見てるっぽいですね」
「ん?どういうことだ?」
「僕にギターが見えたのなら心当たりがないこともないので。多分アナタが見たら姉たちにもギターが見えるんじゃないんですか?」
なるほどな。言うなればこのショタは繋がりがわかって、オレは繋がりと役割ってところか?てことは。
「あなたのお知り合いと僕の上の姉は縁がありそうですね」
「そうなるよなぁ」
そう、同じ青繋がりでゆきなちゃんとりさちゃんと同じだ。いつから物語で言うところの序章かわからんがいつかは出会うんだろうな。
「あの、ひとつ聞いてもいいですか?」
「?なんだかしこまって」
「その
「ん、まぁそうだな。一緒に登下校したり、互いの家に遊びに行ったりする仲だな」
うむ、やはりオレはかなりの幸せ者だな。女神とこうも時間を共有できているとは(ジーン)よし、祈りの時間を増やそう。
「そうですか。なんにも感じないんですか?」
「またよくわからんことを…。オレは信仰心が溢れそうだが、そう言うことじゃないんだろ?」
そこら辺に泣いてた理由とかありそうだな。このショタは精神年齢確実に小学生を越えてるオレとこんな話をしてるんだ。ちょっと、ほぉんのちょこっと一般的なショタから逸脱してる訳だろうし、迷子で泣いてたわけでもないだろ。
「当たらずも遠からず、でしょうかね」
そこから少年(口を滑らせてショタって言ったら殴られた)の姉たちへの感情について聞かされた。
少年は物心ついたときから姉たちとその他の人間が違うことはわかっていた。その事を祖母に聞いたら「誰にもその事は言うな」と念押しされた(両親は共働きであまり家にはいなかった)。小学生になるぐらいまでは姉たちはすごいんだ、ぐらいにしか感じていなかった。いつか自分もふたりに追い付くとさえ思っていた。小学生になって姉たちは他のオーラがないやつらとは隔絶、とまではいかないまでも別格ではあった。そして自分はどれだけ努力してもふたりには追い付けないであろうこともわかり始めた。上の姉が秀才。下の姉はまさしく天才。どちらの姉も軽々と壁を越えていく。それに対して自分はどうだ?家族のそしてふたりの姉の恥にならないように努力をする。友達だっていらない。姉たちに心配をかけない程度には友好的に振る舞うが努力の邪魔になるならいらない(自然と回りに人が寄り付かなくなった)。それでも影を踏むことすらできない。下の姉は毎日のように上の姉をつれて遊びに行っている。もちろん自分も誘ってくれる。…遊びにすらついていけない。惨めだ。姉たちは自分を含めたオーラを持ってないやつと違って特別だ。それなのにオーラが見えないやつらは、やれ「お前は姉とは違うのだな」。やれ「お姉ちゃんたちは出来たのに」。僕にすら劣るやつになんでそんなことを言われなきゃならんのだ。姉たちはその度に自分をかばってくれる。努力を評価してくれる。…惨めだ。姉たちの後ろにいるだけの僕のためにふたりは振り替える。
「姉たちがいなければこんなことにはならないのに」
考えなかったとは言わない。でも…
「でも、好きなんです。」
「そうか」
「厳しくても誉めてくれる上の姉も。空気読めなくても慰めようとしてくれる下の姉も」
「そうか」
「でも、そんな姉に対して少しでも嫌なことを考えてしまう自分が嫌で…い、いやで」
「そうか…そうだろうな」
コイツは…。多分あの日にゆきなちゃんと会えなかったオレなんだろうな。その代わりにオレとは。…なんというか。
「責任重大だな(ボソッ」
しかも、これもしかしなくてもオレが止めを刺したな。最後の防波堤である「姉たちにはオーラがある」をオレがバッサリいっちまったわけだ。…うん?どうすんのこれ?
「グスッ。バカが一生懸命考えても答えなんて出てきませんよ」
「んなっ!せっかく人が考えてんのになぁにを言いやがりますか!」
「どうせ、自分が止めを刺したー、とか思ってるんでしょうが。まぁその通りなのですが」
「んぐぅ」
「こんなのはどこまで行っても僕の折り合いの問題なんです。アナタがない頭で考えても無駄ですよ」
こ、コイツぅ。一言余計なことを言いやがって。
「それにしばらくは姉たちとも会わなくなるでしょうし」
「なんだそれは」
「祖母の家に引っ越すんですよ。僕だけ」
「オマエ、それは…」
「まぁ、逃げってやつですね」
そう、問題の先送りをしているにすぎない。折り合いのつかないまま距離を置けば後が大変なだけだ。
「こんなことを7歳の僕がいうのもなんですが、まだ僕たちは幼い。これからの自分に期待しましょう」
「それは!そうなのだが…」
「それに」
「僕のことをアナタが言えたものでもないと思いますがね」
「バイオリン界の天才児さん?」
「…知ってたのか」
「たまたまテレビに出てたのをね。アナタほど目立つ見た目の人を忘れるのが難しい。いえ、責める意図はないんですよ。ない頭はそっちで使えってことです」
「ハァ、いちいち悪口を言うな」
「フフッ、それはすみません。つい、ね?」
全くホントにコイツは小学生なのか?オレとコイツを端から見たらショタが話してるようにしか見えないと言うのに…。
「あ、いた!いたよ!おねーちゃん!」
「れい!よかった、あなた家に珍しくいないと思ったらこんな時間まで公園にいるなんて」
「んぐっ。ちょ、ちょっと姉さん。くるしいです」
「フフフ、これはこれは」
ふむ、なるほどねぇ。同じような違うものが見えている、か。その通りのようだ。
「あの、あなたは…」
「あぁ、たまたま一人でいるのを見かけて話しかけていただけです。お気になさらず」
「その、ありがとうございました。弟が家族以外で一緒に誰かといるのを久しぶりに見ました」
「そ、そうなんですか」
あ、アイツそこまで露骨なのか…。あ、もう一人の多分下の姉であろう人物にもみくちゃにされてる。すごいな、こんなに近いのになにが起こっているのやらわからんぞ…。
「全くあの子は…」
…おやぁ?これは…まずいなぁ。この娘はこの娘で下の妹にプレッシャーでも感じてるのか?コイツ今抜けて大丈夫なのか?こじれる予感しかしないんだが…。流石にメインキャストなだけあってドラムスティックだなぁ。おっとドラマチックだった。…まぁ、頑張れ!オレは知らん!
「さて、ボクもそろそろ帰らせてもらいますね」
「ちょ、姉さん。まっ、タンマ!ちょっと待って!」
「本当にありがとうございました」
「いえいえ、ボクも彼から得難いものを得ることができました」
「あの、おにいさん!」
お、抜け出せないかと思ったら案外いけるもんだな。
「なんだ、少年?」
「ま、また会えますか?」
「オマエ、それは…」
「わかってます!絶対に戻ってきます。そのときは会ってくれますか?」
ふむ。言われるなら美少女に言われたかったが…。あぁ!女神よ!すみません!!お許しを!浮気じゃないんです、軽口です!
「んんっ!そうだなオマエに白い剣が見えたのならきっとまた会えるだろう。オレも待ってる。そのときにお互い名乗ろう」
「わかりました。では、ありがとうございました」
「あぁ、じゃあ」
「「また」」
そうして、少年は姉たちと帰っていった。多分これからしばらく離れることを伝えるんだろうな。
…うん。少年にあそこまで言われたらオレも覚悟決めるかな。ちょうど両親も帰ってくることだし。
こうしてオレの小学3年生の出会いは自身に向き合うきっかけを作り、新たな始まりを告げた。(この後あの少年に会うのが7年後とか考えもしなかったが)
その後は家でバイオリンをやめると言った時に下の双子と壮絶なケンカをすることになるのはおそらく余談だろう。驚いたのは両親や祖父母はあっさり認めてくれたことだ。曰く「やってて全く楽しくなさそうだった。むしろやらせてすまなかった」だそうだ。転生者と言えど親には勝てない、ということらしい。オレの浅はかな考えも意味はなかったかもしれないな。(これは本当に余談だが母曰く、オレのバイオリンの才能は完全に頭打ちだったらしい。あとは落ちていくだけだったそうだ)
そんなイベントのあとは驚くほど何もなく小学校を卒業し、オレは共学の中学へ。ゆきなちゃんとりさちゃんは女子校に進学することとなった。母がよく分からない気をきかせてオレを女装させ女子校に入れようとするのをなんとか阻止できたことは褒めて欲しい。ゆきなちゃんに友達を作るようにしっかり言い含めお互い頑張ろうと言ってひとまずの別れとなった。
このときは、「会おうと思えばいつでも会えるさ」と思ってはいた。確かにそんなに離れたところに住んでいたわけでもないし引っ越すわけでもない。でも、
ここがこれからのオレの、そして彼女…いや、彼女たちの運命の別れ道だったのかもしれない。そう、そう遠くない未来で思うとは思ってもいなかった。
あとちょっとです。
がんばって!