実際転生したらこんな感じじゃね?そんな都合よく無双の力とか手に入らないよね。って感じで書いてます。
美しい羽を持つ鳥がいた。
その鳥の羽は、あらゆる羽を持つ者たちの憧れだった。
そんな鳥は、ある時怪我を負った。そして、その鳥の羽は醜いモノになった。
皆の憧れではなくなった鳥。醜い鳥。意地汚い鳥。
それでも、そんな鳥でも。
他の鳥を助けるために怪我を負ったのならば。
その鳥は、それまでよりも。それ以上に美しい。
気づけば、全てが燃えていた。墜落事故。ニュースでたまに聞く非現実的な言葉。
飛行機が墜落して、死傷者が大量に出る事故。何故、とかいう理由なんて知らない。
それが俺の身に起きた。唯一の家族。妹とともに旅行のために乗った飛行機でソレは起きた。
ただ、それを夢としか見れなかった。だが現実として全てが壊れ燃えて、周りには血の海と瓦礫が広がっていた。
全てが空となった世界。この世界こそが、俺が今いる全て。
「―――――ぁ」
声は出ない。音として、現実に生まれない。自信から生み出されない。カスれた空気しか自身の口からは出てこない。熱気を吸ったのか、それともあの時の衝撃か。
肺が燃えたのだろうか。それとも潰れたのだろうか。
声帯はもはや意味をなくしている。
助けは来ない。声は聞こえない。ただ聞こえるのは轟々とした炎の音と、さざめく波の音だけ。
…自分は、飛行機から墜ちた。外国から日本に戻ってくる途中でこの地獄は生まれた。
ならばここはどこかの島。恐らく無人島。たまたま、壊れ果てた人を運ぶモノが、恐らくはパイロットがせめてもと探し出した場所。
もしかしたら、陸があるのならば助けがくるかもと、生きていけるかもととっさに選んだ場所。
だが―――意味はない。その行動に、意味はない。
例え助けが来たとしてもソレは時間がたってから。俺以外には…恐らく、誰も生きていない。
音がしないとはそういうことだ。
かつての家族は、妹は…―――分かっていたことだ。
俺の前にある肉片。それが、誰かなんて理解したくないけれど。
それでももはや、原型すらないほどグシャグシャになっていたソレは。
―――ああ…また、繋がりを失った。所詮、人が頑張った所で現象には勝てないのだと、見せ付けられたようで。また、なのか。
俺以外には、生きているものは誰もいない。辺りにはグシャグシャになった人形と燃え尽きた炭素だけ。
なんて、理不尽―――。その現実に、欠けていた心が完全に折れた。
皆、死んだ。そして俺も、恐らく死ぬのだろう。
あの時、俺だけが覚えている現実。なかったことにした現実。それをしたからなのか。
あの時の、罪なのか。全てから逃げ出したことがダメだったのか。
もう、でも…おしまいだ。今更そんな事考えたって意味がない。
心が折れた。生きる目的を見失った。あの時彼女と交わした約束は、結局何も守れなかった。磨り減って、心が何度折れても立ち上がったけど、その全ては灰になった。
一体、俺の人生はなんだったのだと、声を荒げて叫びたかった。
「――――ッ」
だが、何も声はでない。現実は何も変わらない。
もはや俺は死に体なのだろう。
下半身の感覚はない。左腕はどこかにいったか分からない。唯一動かせるのは右腕だけ。だが、それがなんだというのだ。それで世界は変わらない。
かつて失った力を、かつて自分から手放したあの星の力を…どうしようもなく、欲した。
けれど、もはやその力はない。俺はただの凡人に成り下がった。世界を変えることは出来ない。
周りは燃えている。ガソリンに引火したであろう、メラメラとした炎。その炎は俺の心を写す鏡。
それは酷く―――醜悪で、醜い。
かつて力を求めた。その結果、俺は全てを得た。
そうして結局、その力を失った。そして、全てを失った。
贖罪の為に、心が欠けようと、何度折れようと走り続けた。あの時、選択をして俺が持つ全てを犠牲にしたのだから、俺が悪いのは分かっていると。それでも、自分が選んだ選択を、決して否定してはいけないと我武者羅に走り続けた。
俺の心がこの炎のように、醜く泥のように濁っているのはとうの昔に知っている。
それでも、それでも―――…。
「ぁッ――――」
声は、変わらずでない。
俺は、死ぬのか。生きていけないのか。
本来ならば、生にしがみつくことこそが人。
だが、もはや人ではない俺ならばそれは…とても――いいことかもしれない。
大体、仮に生き延びたとしても下半身と左腕がない以上、俺に生きていく術はない。
お人好しの叔父さんがいるから恐らく助けてくれるだろうが、人に迷惑をかけてまで生きていくのならば―――死んだほうがましだ。そんな権利俺にはない。妹が死んだのに、俺が幸せになるだなんて間違っている。ましてや、俺はあの時、彼女すら見捨てたのだから。
後悔はある。けれど、それは人生に対して。
自分が死ぬこと。死ぬことに後悔なんてあるはずがない。それは、俺が持ってはいけないことだ。
ただ、それでもこの炎に焼かれるのだけは嫌だった。大切な家族を奪ったコレらに自身の命を奪われるのだけは嫌だった。だから―――
「こ、れ…ぁ、ら、いぃか、ぉ、な。」
声が、でた。
カスれて、俺以外には理解すら出来ないだろうけど、それでも声は出た。
なら、最後にこの言葉だけでも言わなくては、いけない。
「ごめんな、さい」
ああ、言えた。ならもう、現世に用はない。
目の前にたまたまあったガラスの破片。それを血に塗れた右腕で握り締めて。
ガチガチと、震える奥歯をギュっとかみ締めて。
思い切り、確実に死ねるよう自身の心臓に振り下ろした。
先祖に、ごめんなさい。
両親に、ごめんなさい。
世界に、ごめんなさい。
彼女に、ごめんなさい。
これで、終わりか。
―――――…プツン。
そうして、意識は途切れ―――――
「――――」
…なんだこれは。
「あ、れ?」
目の前に広がるのは草原。否、田んぼがあるから片田舎といったところか。
気づけば俺はそこにいた。あの燃えつくような熱さはない。
身体の感覚がある。痛みがどこにもない。まるで健康体そのもの。だが、決定的な違和感を感じる。
身体が酷く動かしにくい。とても軽い。まるで風が吹けば吹き飛んでしまうかのように、自身が脆く感じる。
これは―――俺じゃない。
違う。俺は俺ではない。
ふと、自分が誰だか考える。
不思議な記憶がある。自分の記憶じゃない。それは子供の記憶。名前は■ ■。違う。僕の名前はバイバーだ。
ビシリ、と頭に音が響いて。
「―――――――、ぁ」
痛い。
痛い、痛い痛い、痛い。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛痛痛い痛痛いい痛い痛い痛い痛い痛痛い痛い痛いいい痛痛い痛い痛い痛痛痛っ
濁流となってあふれ出てくる呪いの言葉。かつての俺の信念。
「―――――ッぁ、ぐ」
割れそうなほど、頭が痛い。
俺は誰だ?違う。俺は俺だ。
僕はバイバー/俺は■ ■。
両親はいて/もうしんだ/殺した。
妹はいなくて/もうしんだ/殺した。
両親との仲は良好で/もうしんだ/殺した。
世界には魔法があって/そんな奇跡はない/星の力。
勇者に憧れて/そんな救世主はいない/そんな救世主はもういない。
誰だお前は。誰だ誰だ誰だやめろやめろやめろ僕を侵食するな僕を消すな僕まだ5年しか生きていない俺は僕は。
俺は俺だ俺であるなら俺を認めよ俺を認めよ俺を認めよあの時の彼女を捨てた捨てた捨てた捨てた捨てた選択した選択した選択したやめろ、消すな消すな僕を消すなまだ何もしらない何も出来ていない母さんに誕生日プレゼントを渡していない70億人を見捨てようとした全てを消した殺した消したカスれた。
僕は僕は僕は―――――俺は、お前とは違う。
記憶は濁流となって、音となって。
「――――、あっ」
頭に響く音の羅列。それが収まって。ブツリと、頭の糸が切れた。
「バイバー!バイバー!」
目の前には、今に涙を流している母親が、険しい顔をした父親がいた。
気づけばベッドにいた。けれど、意識は朦朧としていて口を開くことはできなかった。身体はどこも動かなかった。俺は知っている。これは風邪だ。だが、なぜ?
そうして、知恵熱のようなものを出して2日。ようやく現状を理解した。
転生した。否。憑依したといったほうが正しいか。
赤ん坊の頃は覚えていない。元より十数年生きた人間の記憶を生まれた当時の赤ん坊が記憶できるはずもない。
だからこそ、ゆっくりと少しずつ思い出して、5歳になったころにはついに自我を取り戻した。
何の特徴もない。ただの農民。その子供に転生した。
それに気づいたときには
「あ、ぁ。ああああああああああああああアアアアアアアア!?!?!!?」
哀しみと、慟哭が溢れ出て。
思わず、心のままに叫んでしまって。
この魂は人を不幸にすることしか出来ないのかと、絶望して。
―――転生したと理解したとき、俺が得た感情は喜びではなく…今の身体の持ち主を消したという罪悪感だけだった。
それから1年。特に不自由なく、俺は今を生きている。両親は優しい人で、俺に色々なことを教えてくれた。
その時に得た知識と、かつての身体の持ち主の知識を照らし合わせるとここはいわゆる剣と魔法の世界。ファンタジーの世界らしい。
魔物がいて、魔王がいて。それに対抗するように勇者がいて。そんなテンプレじみたゲームのような世界だった。
けれど、ここはゲームではない。俺がこの1年で接してきた人達は間違いなく、作り物じゃない”人”だ。
ここを非現実と思うことはできない。それほどまでにこの世界はテンプレの部分を除けばリアルな世界だった。
両親には転生した事は言っていない。
当たり前だ。おなかを痛めて、必死に頑張って生まれた子供が前世の記憶を持っている?
それを知ったとき、彼らはどう思うかわからない。もしかしたら、今まで通り接してくれるかもしれないし、腫れ物のように扱うかもしれない。でもそれは俺にとってはどっちでもよかった。
自身は純粋な彼らの子供ではない。それだけが事実。そしてそのようなもの、彼らにとって不幸でしかない。前世の記憶がある、それを言うのはただの自己満足だ。本当の子供を意図せずとはいえ奪った。ソレは余りにも罪深いことだ。
だってそれは、彼らの子供の輝かしい人生を潰したことと等しいのだから。
その事実を伝えなければ、両親は自分の子供だと思える。それは、とても幸せなことだ。
何度、罪悪感を感じただろう。彼らの子供を奪った。その苦しさに溺れそうになった。
何度も何度も、自身が転生者であるということを伝えたくなった。
でも、それは間違いだ。そんな事してはいけない。自分の罪悪感を消すためだけに、彼らを不幸にしてはいけない。
俺は彼らの子供であるということを演じなければならない。素晴らしい、自慢の子供だと思わせなくてはいけない。
でなければ、元々の彼らの子供。俺が消したバイバー君が余りにも報われない。
彼らは、両親は幸せになって俺は幸せになってはいけない。この罪悪感を胸に刻まなければならない。
それこそが、両親に、否。あの時俺と共に死んだ彼らに対する俺の贖罪となるのだから。
そうだ。
――――唯一、あの地獄から生き延びた。いや違う。唯一、あの地獄から俺は転生できた。
俺が乗った飛行機には100人近く乗っていた。100人のうち、俺1人だけ第2の人生を歩むことが出来た。他の人が転生しただなんて思っていない。そんな話この世界に生まれ変わってから聞いたことないし、そんなにも現実は甘くない。だから、俺だけが転生したのだと思っている。
そしてそれは余りにも―――罪深い。
100分の1。理由なんてないんだろう。たまたま、俺が選ばれた。
他の人を蹴落として、俺だけが第2の人生を得ることが出来た。
ならば、俺は俺のためではなく、別の誰かのためにこの人生を使わなくてはならない。周りを笑顔にし、正義を貫かねばならない。
それだけが、唯一第2の人生を得た俺がすべきことだと思うから。
だから――――
「バイバーくーん!あそぼー!」
「―――ごめん。今日からもう遊べない。大切な、しなくちゃいけないことが出来たんだ。」
「えー?私と一緒にいること以上に大切なことがあるの!?」
「ごめんごめん。でも、しなくちゃならないんだ。だからもう今度から遊ぶのはもう、おしまいだ。」
「…バイバーくん?」
「ごめんな。俺、強くなりたいんだ。だから、もう遊ぶのはやめだ。」
「え~?どうして~?」
「ごめんって、本当。ごめん。」
「もう、仕方がないなぁ。じゃあまた明日ね~」
そんな事をいう幼馴染。何も分かっちゃいないが、それは俺と同じ6歳だから当たり前か。
幼馴染と別れ、俺が来たのは裏庭にある修練場。父に頼んで不恰好だが作ってもらった。
危ないからと、持たされた剣は木の棒。出来る限り剣に近い形状であるそれは、両親に頼みに頼み込んで、どこにも持ち込まないという条件で許された。
俺の本来の身体の持ち主。バイバーは神童と呼ばれていたらしい。それもあってのことだろう。
俺に才能なんてものは欠片もないが、これでも十数年は生きてきたアドバンテージがある。彼のように接することに余り苦労はしなかった。
「ふッ、ふッ――――」
不器用ながら木剣を振るう。それが強くなるための一歩だと信じて。
俺は強くならなくてはならない。
この世界には魔物がいる。それらは人々を苦しませる。ならば俺は英雄にならなければならない。
魔物を倒し、強きをくじき、弱きを守る。
そんな、英雄にならなければならない。
俺は恋愛はしない。そんな幸せ望んじゃいけない。
俺は快楽を求めない。楽しさを得ることは、してはいけない。
俺は常に正しくあらなければならない。それが偽善だとしても、それでも人を救う英雄にならなければならない。
俺は常に強者でなくてはいけない。弱者になって、守られる存在になってはいけない。
俺は正義の味方にならなければならない。それだけが、俺が俺足らしめる証明なのだから。
俺は、幸せにはならない。けれど―――周りの人を幸せにする。
それこそが、唯一あの地獄から転生し、輝かしい子供の未来を奪った俺の贖罪なのだから。
一度、とある過去をなかったことにした贖罪。
だからこそ俺は愚直であろうとなんであろうと。
「ふッ――――」
剣を、振り続ける。
強迫観念に突き動かされる系主人公大好き
衛宮士郎とか衛宮士郎とか衛宮士郎とか。
幼馴染系勇者ちゃんを苦もなくぶっ壊れサイッキョにして、それに嫉妬しまくる頑張る主人公を書きたい。
贖罪だの罪悪感だの非情にクドイと思いますが、今回の話は主人公の基礎となりますので滅茶苦茶くどくかきました。
バイバー君(旧):主人公に自我を消された哀れな子供。無意識に主人公の記憶があったため神童扱いされていた。