―――男は、幼稚だった。
目的があったのに、呆気なくそれを手放した。
―――男は、子供だった。
自分の妹を守るため、人生の全てをなげうった。
―――男は、勇者と呼ばれた。
その力を持ってしても、大切な者を救えなかった。
―――そんな男は、大人になった。
それでも、彼は残された者を守るために、子供の時と変わらず走り続けた。
地獄を知った。人が死ぬことよりも地獄。口にするだけで、同情されるであろう地獄。
現実はもっと過酷。そのことを人伝で聞いただけで、涙が溢れでた。
ならば、その場にいた本人はどんな気持ちだったのか。
ボロボロで、全てに絶望した男の姿を見た彼女は、どんな気持ちだったのだろう。
自分のために、人生を擲つ兄を見てどんな気持ちだったのだろう。
例えソレが仮初の気持ちでも、代替でも構わなかった。
男はそれでも嘗ての約束の為に――――彼女を守ったのだ
その時の気持ちは複雑に捻じ曲がっていて、言葉で表せないが、たとえ血がつながっていなくても、それでも彼女にとって兄とは大切な存在になった。
だからこそ、死ぬ直前。飛行機の墜落事故で自身がグシャグシャの肉片になる直前。
ただ祈った。
お兄ちゃんが、幸せになれますように。
今まで、不幸続きで人生を何も楽しんでいなかった男を想って。歩み続けた男が、止まれるように。
後悔のない、幸せな時間をすごしてほしいと。
ただ、それだけを――祈ったのだ。
結局、それは叶わなかった。彼女は肉片となり、兄はその姿を見て自害した。
だが、別の奇跡は起こった。たまたまその姿を見た神が、気紛れに彼女を選んだのだ。異世界の勇者として、転生する権利とチートと呼ばれる力。
鍛えれば全能になりうる、最強の力を携えて転生する権利を彼女は得た。
そしてその権利を彼女は―――呆気なく、放棄した。
いらない。そんな力はいらない。だって、それをしてもその世界に兄はいない。
神は問う。それでいいのか、死者を復活させることは出来ないが、それ以外なら何でもできる、と。その力を鍛えれば元の世界に戻って、時間を撒き戻すことも可能だぞ、と。
それでも、彼女はそれを拒否した。
勇者の力。それは文字通り退魔の力。それを手にするということは、数多の魔性を狩り続けなくてはならないといけない。例え悪を滅する力だとしても、そんな血に塗れた力いらない。
それに、例えその力が手に入ったとしても、時間を撒き戻すなんて出来ない。してはいけないのだ。
だって、ソレをするということは。時間を撒き戻して、あの時の悲劇をなかったことにするということは。
それはつまり、兄のあの時の決断をなかったことにすることだ。
それは―――あの時の兄との幸せな時間をなかったことにするということだ。例え同じ行動をして、同じ時間を過ごせたとしても、それでもあの幸せをなかったことにしてはいけない。
あの哀しみを、なかったことにしてはいけない。
そんな偽者の幸せなんて、思い出なんていらない。
そういって、彼女はその力を手放した。否、その力が不完全であっても行使した。
自分の魂と、転生特典の勇者の力。ソレを燃やし尽くして、兄を転生させたのだ。
自分はかつて救われた。ならば、彼を救わないのは嘘だ。
なかったことにはしない。ならば、その転生という席を渡すだけ。
それは奇跡。神ですら驚愕させた偶然。本来、人を転生させる事が出来るのは神のみだが―――その領域にまで、思いの力で到達した。
それは、もはや神以外誰も知らない一コマの時間。その一コマの時間を見た神が、何を思ったかは分からない。
ただ一ついえるのは、その神が異世界転生を行ったのはそれっきり。未来永劫、異世界転生はそれ一度だけということだけだった。
この世界の人間の9割は白か、もしくは白色に近い薄い髪の色をしている。
何も染まらず、何も染めれず。
だからこそ、髪に色を持つ者はイロモチと呼ばれ、たたえられてきた。
黒髪。イロモチでも別格扱いのソレは神に祝福された象徴。黒は全てを内包しているとされ、神の使いの象徴ともされる。
かつて黒髪だったモノは勇者と呼ばれたり、伝説扱いされてきた。
だからこそ、レイと呼ばれた少女が黒髪で生まれた時、誰もが伝説の始まりと疑わなかった。そして結局、彼女は勇者だった。
それでもその村の住民は、彼女を異端としてみることはなかった。異端はより濃い異端によって塗りつぶされる。バイバーと呼ばれた少年がそれだった。
少年はあらゆる人間から見ても異常だった。どうしてまともな親からあんな子供が生まれるのか、村人は畏怖した。
その髪の色は赤。火の魔術属性を持つ者の象徴。だが、その赤は濁っていた。まるで世界に拒絶されたかのような色で、誰もが嫌悪感を持つ気味が悪い色。何故だかその少年は魔術を使えなかったが、そんなものは彼の異常性をあらわしていない。
その少年の異常は精神性と天性にあった。子供にしては大人顔負けの余りにもの才能。あらゆる事を高基準でこなす少年は、一部の大人から皮肉げに賢人と呼ばれるほどであった。
そして、自分を犠牲にしてでも他者に尽くそうとするその精神性は、子供と呼ばれるものではなかった。
だから、独り。またひとりと彼から親しい者は去っていった。最終的には彼の親も、彼の崇高な精神に耐えれなかった。彼を直視すると、自分の醜さを理解してしまうから。
唯一彼についていけた勇者の少女、レイも13歳の時に村から出て行った。彼についていける存在は村にはいなかった。だが、彼はその崇高な精神で村のためにただ只管尽くした。
彼は終ぞ理解されることはなかった。彼は別に崇高な精神など持っていないことを、一人を除いて誰も知ることはなかった。
ただ、彼は贖罪のために必死になっただけ。それを唯一理解していたのは勇者のみ。
彼は理解されなかった。
だが、それでも村に尽くそうとする彼を見た村人達は再度歩み寄り…結局、彼は崇められ、村の子供たちの先生となった。
もはやソレは洗脳とよばれるもの。バイバーがいた世界であった宗教と呼ばれるものとなっていく。
バイバーが意識をしていなくても、その村はバイバーに依存し、バイバーがいなくては何も出来ない村になっていった。
それに関してバイバーは何も思わない。歪であろうと、人と人が関わることが間違いのはずがないのだからと。
誰一人死なない現実が、幸せじゃないはずないのだから。
とある村のはずれにある、建築されて長らくたつ協会。もはやそれは協会としては形を成しておらず、村の学び舎となっていた。
響きわたる子供たちと、とある夢が破れた男の声。
「「センセーさよーならー!」」
「はい、さようなら。宿題は明日提出ですので、忘れないように」
「わかってるって!」
「先生、もう終わったよー」
「めんどくさっ」
そんな様々な態度をとって解散していく子供たち。数にして7人
小さな学び舎だが。そこには活気があった。
この村はお世辞にも豊潤とはいえない。質素な生活を送るしかない。
だが、一人たりとも不幸な顔をその子供たちはしていなかった。未来を見据えて歩いていっている。
その姿をみて、思わず笑みを零すのは悪いことではないだろう。
これでいいのだろうか。
正義の味方を目指すと決意したのは幼少の頃。今の俺は村の先生をしている。
一度幼馴染の勇者との戦いに敗北してから、今まで以上に自身を苛めつづけた。最強の勇者になるのだと、必死に走り続けた。
だが、俺が生まれ変わって12歳に為った時…。思えば、あの一件で俺と幼馴染の仲の亀裂は大きくなったのだろう。
結果でいうと、モンスターに殺されて両親が死んだ。
あの時、どうしようもなく俺は腐り落ちて、幼馴染は俺を見限ったのだ。
だから、彼女を見返したくて地獄の修練を続けた。
あれから色々あって教師をしているが…でも、今の道は間違いじゃなかったかもしれない。
彼らを見ていると…もしかしたら、この力はいらないのかもしれないと、今のままのほうがいいのかもしれないと思い始めている。
彼らは純粋で、ひたむきに勇者を信じていて、自身が人を助けようとすることを迷わない。
余りにも綺麗な彼らをこのまま放っておいて勇者の旅に出る。それだけは違う。それに…
勇者なんて綺麗な言葉を並べても、それは暴力だ。力なき正義に意味はないというが、力ある正義は独善でもある。
真実なんてわからない。何をすればいいのだろうかなんて分からない。
ただ、勇者になりたかった。勇者に嫉妬した。ソレだけを思って今までを必死に生きてきた。
けれど、こんな日々も―――悪くない。
そんな、平和な一時。
カン、カーン!と響く村の鐘の音。何かが起きたか。とはいえ、村内に恐怖の感情を感じない。つまり、危険なことではないのだろう。
ジッと、村の外に目を凝らす。アレは――――。
数は4人。外装を来た旅人。顔は見えない。だが、先頭にいる一人。ソイツの雰囲気で分かる。
ああ―――帰ってきたのか。
ソイツだけは覚えている。俺が唯一この世界で憎しみを抱いた相手。才能で俺が欲した全てを得たもの。
黒いマントを携え、仲間を引き連れたかつての幼馴染が。
勇者が、レイが帰ってきた。
「ひっさしぶっりー!ねえねえ。元気してた?」
村長と少し話しをして、迷わず俺のほうに向かってきた幼馴染。その姿が大人になっても、中身は変わらない。
思わず苦笑する。
「レイ…」
「何よ、そんな辛気臭い顔して。」
「いや、なんでもない。―――久し振りだな。それと」
振り向き、一言。
強い…な。この3人。勇者ほどではないが、ここまでの強者は見たことがない。
年老いた男以外は魔術持ち…だが、この男が勇者を除けば一番強いだろう。
このレベルは…まあ、問題はないか。
「こんにちは皆さん。バイバーと申します。」
このとき、バイバーとレイは特に危機感を感じていなかったが、勇者の仲間の3人は違っていた。
赤髪の少年。それはひと目みたら誰もが軟弱と思うような体系をした、柔和な雰囲気を持っている。
冒険者の大半が雑魚だと蔑むような華奢な男。
だが、勇者の仲間は超一流と呼ばれるソレ。だからこそ、彼をひと目みて正しく実力を理解し、警戒していた。
蒼色の髪の少女、アクアは、その髪の色に驚愕した。まるで人を呪い殺すかのようなそのくすんだ赤は、余りにも異常だった。
金色の、かつて盗賊王と呼ばれた男、フーシは戦慄した。その佇まいだけで、コイツからは何も盗めないと直感した。
白色の髭を携えたドワーフ。最強をほしいままにして、剣の一点においては勇者も超越する剣王、ドーン。その男が、彼を一目見た時、どうしようもなく嫉妬した。その余りにもあふれ出る力は、自身の全盛期を遥かに超越していると理解した。
だが、そこは様々な修羅場を乗り越えてきた者たち
(((まあ、悪い奴ではないだろう)))
案外、彼らは平和的であった。
挨拶を終えて、今までのことを語り合った。自己紹介から始まり、今まで旅であったこと、バイバーが村で経験したことなど1時間ほどの談笑。
だが、本題は他にあるはずだ。だからこそ、彼は問う。
「で?」
「で?って何よ。」
「嫌、何でこんな辺鄙な村に戻ってきたかってことだよ。理由は…まあなんとなく分かるけど、何でだ?」
「…さすがは幼馴染と言ったところかしら。まあ理由は予想通り。私は勇者よ。だから、ここに来た理由なんて決まっているでしょう」
「私のものになりなさい、バイバー。一緒に魔王を倒しましょう。」
そうやって、手を差し出し笑みを浮かべる自身に溢れた彼女の顔は、まるでそれが当然といった感じで。
なんともまあ、男らしいことだ。さすが勇者といったところか。欠片も女らしい所がない。だが
――バシン、と
俺は、その手を払いのける。目に映る驚愕した女。
だが、決まっている。俺はお前が嫌いだし、何より―――
「すまんな、それは無理だ。だって俺はお前の師匠だし、お前がリーダーとか俺いやだから。俺お前より強いし。」
当たり前だ。俺は自分より弱いやつの仲間になるつもりはない
「なんですって…!アナタ、私に以前負けたことを忘れたの!?」
瞬間的に、憤怒の顔を見せる彼女。
本当に、変わらない。その自身が最強だと思っている傲慢さも、すぐキレるところも何も変わらない。
そんな所が、どうしようもなく以前の俺みたいで―――嫌いなんだ。
いや…こんな言い方すれば怒るのは当然…か。どうも常識というのがズレてきている。昔から彼女は嫌いだから、どうも言い方に棘が出来てしまう。
「それは前の話だろ?誰がお前に剣を教えたと思ってるんだ?今の俺が、今のお前に負けるはずがないだろう。」
「…ふーん。ちょっと、外に出なさい。私の言いたいこと、アンタなら分かるわよね?」
「ああ、お前が言いたいことなんて手に取るようにわかる。なんせ幼馴染だからな」
ただ、それでも。譲れないものはある。
「「タイマンだ!」」」
過去を乗り越えるためにも、勇者の力を超えるためにも。
こいつにだけは負けるわけにはいかない。
修練場。家の裏にあるそこは以前ならばともかく、現在は家を少し取り壊して増設されている。
剣を競い合う程度の広さはある。それに、ここなら迷惑はかからない。
俺が持つのは安物の剣。相手が持つのは勇者にだけ許された王家の秘法。聖剣。
いくらなんでも酷すぎないか。
俺の心情を知らぬ存ぜぬの、そんな彼女は苦い顔で
「ここも懐かしいわね。あの時とちっぽも変わらない。」
「そんな事、どうでもいいだろ。感傷に浸る前にルールは?」
「あ、アンタね…。まあいいわ。一撃いれたものが勝ちにしましょう。殺し合いのために戦うんじゃないし。まあ捻ってあげるわ
「いってろ」
勇者の仲間3人は特に危機感なく遠くで手を振っている。
流石は勇者の仲間といったところか。いや、あれは勇者が勝つと確信してるからか。
ふざけやがって。
そうして、お互いに剣を構える。
始まりの合図はない。そんなもの、実践ではあり得ない。だからこそ、互い剣を構えればそこが合図といえる。
そうして、剣を持って気づけば
彼女が眼前に突如現れた。
「――――」
息を呑む暇などない。声を荒げる暇もない。
最速の剣。間違いなく勇者にのみ許された身体能力。
そうだ、俺は知っている。彼女の身体能力を。俺とはまるで違う基礎能力を。
だが、それで俺の年月に届くと思うな。
生前、そして今世。ひたすら、剣の道を歩み続けた。
才能があった生前。才能がない今。当時の剣を再現する事は不可能だが、それでもその経験は絶対的に活きた。
剣に掛けた思いが、違うんだ―――!
来る、来る、来る―――!
俺が見切れなかった速度、恐らくは身体能力を最大限使い魔力で強化した一撃。それは必殺のソレ。
開幕一撃で俺を落とすつもりなのだろう。だが―――
キィーンと、鉄の音が広がる。
「―――」
その息を呑む声は誰か。 勇者か、その仲間か。
彼女の最大の必殺。最速から放たれた絶剣は。
呆気なく、峰を持って受け流された。
剣が舞う。それは演舞のように、美しい剣の応酬。
互いが互い。超を超えた一流の剣。それは間違いなく世界で1番を競う剣。
女は、圧倒的速度で剣を振るう。常人では認識できない速度で剣が空を舞う。
それに向かいうつは男の剣。その速度は女より遥かに遅い。だが最小限、一切無駄のない剣は確かに彼女の連激を受け流している。
「―――クソ!」
思わず悪態をつく。実に面倒くさい
身体能力は私が上。剣もこちらは聖剣。あちらはただの安物。
だけど互角。完成されつくしたと思っていたその剣の技量は、さらに向上している。
戦闘のテンポのとり方、受け身の技術。全てにおいて私は彼より下。
どんだけ鍛えてるってのよ…!
だけど、たとえ相手のほうが錬度が上でも
―――私だって、だてに勇者をしていない…!
自負があった。経験でなら村に篭ってばかりのバイバーより上。ましてや勇者とよばれるソレ。傲慢かもしれないが、何の魔術の才能もない彼に負ける道理はない。
だからこそ、嘗て得た技術を全てぶつけていく、が―――届かない。
余りにも理不尽なソレ。技術を鍛えただけで、ここまで大きく変わるというのか。
おそるべくはその対応力。
もはや、この男は私を見ていない。否、見るという事自体を放棄している。目で見てから動くのでは不十分と判断しているのだろう。
それは、置くような動き。
空気の流れる方向に剣を置くだけで、勝手に防御を行っていく。今の私には絶対に真似できない絶技。
相手の剣は…折れない。何度うちあっても、折れはしない。
どうなっているんだ。知っている。所詮彼の持つ剣は安物。私が持つ聖剣の遥か格下の剣。それなのに。
ガン、ガン。と響く鉄の音。本来なら呆気なくへし折られる安物の剣は、持ち主の圧倒的な技量を持って破壊を免れている。
「リズムじゃな」
「はい?」「何だおっさん、急にどうした」
オッサン呼ばわりするでない。そうドーンは呟くと。
「そも、本来ならば勇者の身体能力は圧倒的。対抗できるはずがない。だからこそ、あの男はレイのリズムを掌握している、といえる」
「まあ…そりゃあな。相手の動きを文字通り読んでるって感じだし。俺でも分かるよ。」
「うむ、だがあのバイバーと呼ばれる少年。最も驚愕なのはもはやレイの剣を見てもいないというところ。否、そもそもあの速度じゃ見えていないな」
「見えていない?」
「ああ、レイの剣はハッキリいって早すぎる。目で追えない。ならばどう対応するか。見なければいい。単純な話じゃろ?」
「いやいや!それ可笑しいって!見えてないなら、どうやって反応してるの!?」
驚愕するアクア。彼女からしたら、男達の発言は文字通り意味不明である。
「置いているのじゃろう。剣を」
「置いている?どういうことだ?」
「何、見えないのならば予感して、相手の剣が来る場所に自身の剣を置く。それだけで防げる。」
「いや…まあそりゃ理屈は分かるが…。出来るのか?達人なら」
「たまになら、ワシも経験はある。極限のギリギリの戦いだととんでもなく集中出来ることがあるんじゃ。相手のリズム…戦闘の癖とかを完璧に把握し、全てを読みきることが出来れば勝てるのは道理。」
「まあ、意図的にすることなんてワシには無理じゃったがな。」
「ってーことはつまり…」
「ああ、剣の腕というのなら間違いなく世界1じゃろ。レイが仲間にしたがる理由もわかる。」
その言葉に驚愕する二人。
「だが、まあレイの勝ちじゃ。いかんせん身体能力ってのは大きすぎる。たとえ幼児がいくら鍛えたところで大人には勝てないのと同じ。それくらいには身体能力は隔絶しておる」
「じゃあまあ、レイの勝ちはゆるぎないってことか。見た感じそうだし、まあ心配ないわな」
「あなたたち…何を見えているのよ。私はもう頭パンクしそうになってるわ…。」
そんな彼らに不安はない。
彼らが見てきた常勝不敗の勇者は、負けるということを今までしなかった。だからこそ、絶対的な信頼がある。
(勝つんじゃぞ…レイ…!)
それはまるで自分の子供かのように。そこに、一切の不安はなかった。
剣の合唱。奏でる鉄の音。剣戟の極地。それは世界に愛された者と、世界を超えた者の戦い。
「――――」
13手、それ以上すれば持たない、か―――。
少しずつ押されている。たとえ技術が相手に勝っていても、それでも相手は勇者の剣。それは俺にこそ及ばないが超一流のそれだろう。
剣が欠けていく。少年の手が不可に耐え切れないのか、血にぬれていく。
それでもしったことか。手を休めれば負ける。痛みなど、とうの昔になれている。それで俺の動きが鈍ることなどない。
その後のことなどまるで知ったことかと、揺らぎのない剣戟。
俺はただこいつに勝ちたいんだ。
11、12手と剣戟が続く。ピシリと音がなりついには13手
バキ、と。
「――――」
それは音の声。誰かが驚嘆の余り、息を出した音だったか。
剣が、中央から折れた。勿論俺の剣だ。相手は目を見開いている。俺は予想していたが、相手は予想していなかったらしい。
――分かっているさ。お前はここまでの剣の極地にきていない。剣というものを理解していない。多分だが、今まで完璧に受けながされたから折れるとしても今じゃないと思ったんだろう?
甘い―――…!俺は彼女に剣を教え込んだ。叩き込んだ。なのに、何だこの体たらくは。
驕りが過ぎるぞ、レイ…!
そんなお前だかこそ、今からすることは絶対にお前には回避できない一撃だ。
「―――」
掛け声はいらない。俺の戦いは全てが必殺。わざわざ必殺技として分けるなんて、そんなものは弱者が必要なモノだ。
欠けた剣。真ん中からへし折られた剣。ソレは俺の心。二つに分けた心。
今手にある俺の持つ剣は今の俺。空に舞う、切り離された剣はかつての俺。だが、俺は過去を決して離さない。
ただ、手を伸ばした。ソコに、何かがあると信じて。そうして、剣を左手で強く持つ。
血は絶えない。当たり前だ。むき出しの剣を持っているのだから。
けれど、痛みなどなれている。少し奥歯をかむだけでいい。だから、手が遅れることはない。
擬似的な二刀流。単純に手数は2倍。それを体言すれば―――勇者に遅れをとること、無し。
手が、千切れそうになるのを踏ん張って
剣が、剣を分かつ。剣戟の極地。だが、それは先ほどの速度の比ではない。
勇者といえど到底追うことなど不可能。だから、結末はすぐに来た。
音と、辺りに血が舞う。そうして、最後には。
「―――――あっ、」
決定的な瞬間。予想されていない一手。それは彼女に焦りを生み
「残念だったな。」
最速の剣。最初に放たれた彼女の剣よりかは遅い。だが、それでも絶対的な速度。
彼の持つ剣は、音速を超えた速度を持って彼女に襲い掛かり、反応できない速度を持って
「俺の勝ちだ。」
そうして、彼は興ざめしたかのような顔で、最後まで剣を振るうこともなく。
まるで、彼女に振るう剣などないかのように――――彼女の顔面を蹴り飛ばした。
「――――」
鍛え抜かれたその脚。人間の腕力の3倍あるとよばれるその一撃を受けた彼女は10数メートルバウンドし、吹き飛んでいく。
その一撃は、彼女の意識を刈り取るに十分な威力を誇っていた。
致命的な一撃。たとえ立ち上がったとしても、もう終わりだろう。やる意味がないし決着はついた。
俺の勝ちだ。
そうすると、不思議と
「う、うォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
自身を猛るように、自分の強さを鼓舞するように思わず声が溢れ出る。
――――もう2度と負けるわけにはいかない。
例え、誰に負けるにしても才能にだけは負けられない。
誰にだって、正義の味方を目指す権利はあるのだから、勇者なんかに負けられない
遂に、勝てた。
俺が、今まで歩んだ道。両親が死んで、少し反れたけど、あの時の修行は間違いじゃなかった。
間違いじゃ―――なかったぞ…!
あとがき。
男女平等キック!
主人公の強さに関して
剣術の一点、タイマンなら主人公が勇者より圧倒的に強いです。(理由あり)まあ、生前色々あったとだけ、。
けれど主人公が求めたのは大勢の敵を倒す力。誰かを癒す力。即座に危機のために駆け出すことが出来る脚力です。
強さのスペック
主人公 50m走3秒台 敵を100匹倒す時間を1とすると
勇者は 50m走0.1秒 敵を100匹倒す時間0.001といったところ。
敵討伐の効率が勇者に比べて1000分の1しかありません。
主人公のベンチプレスは400kg(まあこの世界にはベンチプレスなんてありませんが)
勇者はベンチプレス15トン
何だこの化け物女!?
また、勇者が仮に遠距離攻撃をメインに使った場合主人公では絶対に勝てません。そもそも走力に桁違いの差があるのだから近づくことなく遠距離魔法爆撃されて負けます。
本来の戦いなら勇者と蒼髪魔法使い(アクア)には絶対勝てません。
逆に金髪盗賊王(フーシ)と白髭剣王(ドーン)には絶対に勝てます。
ちなみにこの作品はコメディとして書きたいと思っていますので、シリアス部分は当分なくなる予定です。
というか正確にはここまでプロローグ。