夕焼け空の見守り手達   作:九戸政景

4 / 9
政実「どうも、Afterglowメインのイベントでは、『夕影、鮮明になって』が一番好きな片倉政実です」
兎亜「どうも、宇田川兎亜です。そういえば、この章はそれを元にした話になってるけど、他のイベントとかバンドストーリーを元にした話もこれから出て来るの?」
政実「そうなるかな。もっとも、全部が全部というわけじゃないけどね」
兎亜「そっか。さてと、それじゃあそろそろ始めていこっか」
政実「うん」
政実・兎亜「それでは、第3話をどうぞ」


第3話 一緒にいるという事

「……さてと、とりあえず見守る事にしたは良いけど、ここからはどんな風に見守っていったらいいかな……」

 翌日、皆と一緒に登校をしていた時、私がポツリとそんな事を呟くと、隣を歩いていたタカが顎に手を当てながら「そうだな……」と言い、少し考えた後に難しい表情を浮かべながら言葉を続けた。

「昨日決めた事から考えるなら、つぐみ達5人が自分達でこの問題を解決できるように時々俺達の意見を言い、 悪い方へ行きそうになったら軌道修正を加えていくのがベストだと思う。この問題は、あくまでも5人で解決しないといけない問題であるわけだから、俺達が手を貸しすぎるのは流石にマズい。だから、干渉し過ぎずほっとき過ぎずのギリギリのラインでやっていくしかない」

「……まあ、そうだよね」

「それにしても……意外だな。兎亜ならそういう事は分かってると思ってたから、こういう事を訊かれるとは思ってなかったよ」

「ん……まあ、分かってはいるんだけど、巴達がこの事で悩んでいるのを見てたら、私も少しだけ不安になってきた……のかもしれない」

「不安、ねぇ……まあ、その気持ちは分からなくもねぇぜ? 昨日は口にはしなかったけど、俺だってお前達と離れる事になったら、今みたいに落ち着いて生活できるか微妙なところだからな」

「……まあ、寂しさは確かにあるかもな。あの日からずっと一緒にいたわけだから、一緒にいるのが当然みたいな気持ちはあるし……」

 タカは少し先の方を歩いている巴達に視線を移すと、「……当然、つぐみ達も同じだったんだろうけどな」と少し寂しそうな声で言った。一緒にいるのが当然、これから先の事を考えるなら、この言葉は子供っぽい言葉なのかもしれない。けど、今の巴達やあこ達の気持ちを考えるなら、そんな風に言う事は出来ない。

「……だからこそ、私達が少しでも巴達やあこ達が一緒にいられるように支えるのが一番ではあるわけだしね。たとえ、これが子供っぽい考えだったとしても」

「そうだな。まあ、その前にまずは蘭自身が自分が抱えてる気持ちをアイツらに言う必要はありそうだけどな」

「確かにな。けど、それはとりあえず本人のタイミングに任せるしか無いよ。下手にせっつくと、それこそ悪い方へ行きかねないからさ」

「んー……まあ、そうだな。俺もアイツには、好きなタイミングで言えっては言っちまったし、今は静観に努めるとしますかね。けど……」

「……けど?」

「いつも一緒にいる奴が近くにいなかったらどう思うかっていうのについての情報や意見は、今の内に集めといて損はないんじゃね? 俺達だって他人事では無いわけだし、もしその時が来た時の覚悟を決める意味でも誰かには訊いとくのも手だろうな」

「誰か……ね」

 その瞬間、私の脳裏にある2人の顔が浮かび、この2人なら良い答えを返してくれそうな予感がした。

「……うん、それならあの子らに話を聞いてみようかな」

「あの子らって言うと――ああ、アイツらだな」

「なるほど、確かにあの2人なら良い答えをくれそうな気がするな」

「でしょ? それじゃあ、休み時間にでもあの2人に話を聞いてみるから、2人は巴達の事について考えておいて。それで、良さげな案が浮かんだら、後ろにいる太陽と桃とあこにも連絡をしておいてくれると助かるかな」

「おう、了解! 俺達の頭脳が合わされば天下無敵だからな!」

「……何だか違う気もするけど、まあ良いや。とりあえず考えるのは俺達に任せておいてくれ、兎亜」

「うん、頼りにしてるからね、2人とも」

 2人はそれに頷いて答えた後、早速真剣な様子で話し合いを始めた。その2人の様子にクスリと笑ってから、私は件の2人にどう話を切り出すかを考えながら学校へ向かって歩き続けた。

 

 

 

 

 業間、私はタカ達を残して1人廊下へと出た。そして、隣のクラスの方へ足を向けようとしたその時、話そうと思っていた2人が丁度教室から出てきたので、「ふふ、ラッキー♪」と独り言ちてから2人へと話し掛けた。

「お疲れ様、お二人さん」

「……ん? あ、兎亜じゃーん。お疲れー」

「……お疲れ様、というほどでも無いけれど、とりあえずお疲れ様」

「うん、ありがとうね、リサ、友希那」

 2人――今井リサがニコニコとした表情で、そして湊友希那が怪訝そうな表情を浮かべながら返事をしてくれた後、私はそれに対してニコリと笑った。リサと友希那とは、別のクラスではあるけれど、私だけじゃなくタカ達とも1年生の頃からの付き合いだ。最初は、私がリサと仲良くなったんだけれど、その後に友希那がリサに無理やり連れて来られる形で引き合わされた。そして、私と青司でいつものように距離を詰めていき、今みたいな仲の良さになった。

 この2人も幼なじみみたいだし、私達が求めている答えとまでは行かなくても、何かヒントになる答えは出してくれる気がする。そう思って2人に頼る事にしたけど、果たしてどうなるかな……?

 そんな事を思っていた時、リサが不思議そうな様子で私に話し掛けてきた。

「ところで、あたし達に何か用だったの? いつもなら鷹明とか青司とかと一緒にいるのに、1人でいるなんてかなり珍しいじゃん?」

「うん、ちょっとね。まあ、ケンカをしてるわけじゃないし、2人にある事を頼んでるから、私だけ別行動みたいな感じかな」

「ある事……?」

「そう、それでなんだけどさ……2人は今同じクラスだけど、もし別のクラスになったらどうする?」

 私が話を切り出すと、リサは少し哀しそうな顔をしながらそれに答えてくれた。

「うーん……友希那と別のクラスかぁ……。あんまり想像はしたくないなぁ」

「そうかしら? 今は運が良いから一緒のままではあるけど、いつかはそういう事もあると思うわ」

「い、いや……あるのはあたしも分かってるよ。けどさ、友希那と別のクラスになったら、絶対に寂しいと思ってさ。いくら休憩時間とか帰りに一緒になれるとしても、いつも一緒にいた分の雰囲気とか感覚とかみたいなのはやっぱりあるから」

「リサ……」

 哀しそうなリサの言葉に、友希那は少し驚いた表情を浮かべた後、静かに微笑みながらその頭にポンッと手を置いた。

「ゆ、友希那……?」

「ありがとう、リサ。そこまで私の事を思ってくれて、私はとても嬉しいわ」

「……ふふ、当然でしょ? 友希那はあたしにとって大切な存在だからね。これからもあたしは友希那の事を支え続けていくつもりだよ」

「ええ、よろしく頼むわね、リサ」

「うん、任しといて♪」

 仲良く微笑み合う2人の様子に心がポカポカしてくるのを感じながら、私は今朝のタカ達との会話に出てきた不安に対して答えが何となく出たような気がした。

 一緒にいた分の雰囲気とか感覚とかか……確かに私もタカ達が一緒にいてくれる事で、だいぶ安心してる気がする。だから、私にとってタカ達は、とても大切な友達であると同時に、一緒にいて安心できる存在なんだろうなぁ……。

 タカ達の顔を思い浮かべながらそんな事を考えていた時、今度は友希那が不思議そうな様子で私に話し掛けてきた。

「それにしても……貴女にしては珍しい質問だったけれど、何かあったの?」

「あ、うん……実はね――」

 私は巴達5人に今起きている事や今朝のタカ達との会話を友希那達へと話した。すると、リサは「あー……なるほどね」と納得顔で言い、友希那は「……そういう事だったのね」といつものような落ち着き払った様子で言った。そして、すぐに小さな笑みを浮かべると、手を私の方に置きながら言葉を続けた。

「……恐らく、私達に手助け出来る事は無いと思うけれど、話を聞く事くらいは出来ると思うから、今の静観している状況から何か変わって、自分達じゃどうにも出来ないと思ったその時はまた話しに来なさい」

「そうそう、友希那の言う通りだよ、兎亜。それと……その5人はさっきのあたしみたいな寂しさを感じてるんだろうから、何かそれを紛らわせられるような物を見つける手助けをしてあげるのも良いかもね」

「寂しさを紛らわせられる物、かぁ……。うん、それもタカ達と話してみるね。リサ、友希那、ありがとうね」

「どういたしまして、兎亜」

「さっき友希那も言ったけど、私達も話を聞く事くらいは出来るから、何かあったらまた相談してよ?」

「うん、そうさせてもらうね」

 ニコリと笑いながら答えた瞬間、授業開始のチャイムが鳴り、私達は顔を見合わせた。

「……っと、そろそろ席に戻らないと。それじゃあね、2人とも」

「うん」

「ええ」

 そして、2人と別れた後にすぐ教室へと入り、席に戻りながらタカ達にアイコンタクトを送ると、タカ達は微笑みながら静かにコクンと頷いた。

 ……ふふっ、やっぱり幼なじみ力っていうのは、スゴく偉大だよね。さて……そろそろ『別の行動』も起こす時かな?

 そんな事を考えながらクスリと笑った後、私は次の授業の準備を静かに始めた。

 

 

 

 

 昼食中、友希那とリサとの会話の内容をタカ達へと話し、その後に現在私達に出来そうな事を簡単に話し合っている内に、いつの間にか昼休みが終わっていた。そして、次の授業の準備をしながらある行動について考えていたその時、この時間の授業担当じゃないはずの担任の先生が静かに教室へと入ってきた。

 ……あれ、どうかしたのかな?

 教室中の視線が先生へと集中した時、先生は全員が静かになっている事を確認してから口を開いた。すると、先生の口から出てきたのは、本来この時間の担当だった先生が急に体調を崩したため、予定変更して自習にする事にしたという話だった。それを聞いた瞬間、私は先生に対しての心配の気持ちもあったけれど、それと同時に少しだけラッキーだという思いもあった。

 ……先生にはスゴく悪いけど、これも良いタイミングだし、どうにかしてやってみるしかないかな。

 担任の先生の話を聞きながら心の中で覚悟を決めていたその時、後ろの方から視線を感じ、私は目だけをそちらに向けた。すると、青司が何かを言いたそうな様子でこっちを見ており、その目から青司が何をする気なのかを察し、私はそれに対してこっそり頷いた。そして、その内に先生の話は終わり、自習中にやるプリントが私達に配られると、先生はそのまま教室を出ていった。

 プリントかぁ……まあ、次の授業の時に提出する物みたいだし、後でタカ達と一緒にやれば良いよね。

 そう思いながらプリントを裏返した後、私は青司の方へ視線を向け、アイコンタクトで合図を送った。そして、それに対して青司はニカッと笑いながら頷いた後、同じくプリントを裏返した。すると、タカはそれを見て小さく溜息をつくと、私達に向かって不審そうな視線を向けてきたけれど、青司がそれに対して簡単な手振りでやろうとしている事を説明すると、タカは呆れた様子で大きな溜息をついた後、仕方ないといった様子で頷いた。

 うん、これで関門は1個突破したけど、後の関門はどうしたものかな……。

 次の関門――クラスの皆について考えていたその時、後ろの席に座っている委員長が小さな声で話し掛けてきた。

「……宇田川さん、まさかとは思うけど、自習中に教室を出ようとしてないわよね?」

「え、ああ……えっと、それは……」

「はあ……良いわ、今回は見逃してあげる。貴女達には幾つもの借りがあるし、貴女達の場合はたとえ抜け出しても悪い事をする感じでは無いからね」

「……ありがとうね」

「どういたしまして。でも、必ず授業時間中には戻ってきてね? 貴女達がいない言い訳をそんなに多くは考えられる自信は無いから」

「分かった。それじゃあ、ちょっと行ってくるね」

「……はいはい」

 そして、私が静かに席を立つと、それと同時に青司も席を立ったけれど、それに対して何か言うクラスメートは1人もいなかった上に日菜や咲也辺りはまるで応援してくれてるような視線を送ってくれた。

 ……ふふ、それならその信頼にはしっかりと応えないとね。

 皆に対して一度頭を下げた後、青司に対してアイコンタクトで合図を送り、私達はこっそりと教室を出てそのまま廊下を歩き始めた。

「……それで? 青司には()()があるんだよね?」

「……へへっ、もっちろん。たぶん、()()()ならあそこにいるだろうぜ?」

「そう。それならさっさと行こっか。クラスの皆がどうにかしてくれてる間に目的を果たさないといけないからね」

「おうよ」

 そして、青司に続いて誰かに見つからないように気をつけながら私達は誰もいない廊下を静かに歩き続けた。

 

 

 

 

 数分後、私達は青司が予想をつけていた場所――屋上へとやって来た。すると、そこには捜していた蘭ちゃんの他にモカちゃんの姿もあり、2人は何かを話しているようだった。

「いた事はいたけど……何でモカちゃんまでいるんだろう?」

「さてな……とりあえずあの2人の会話に混ざらせてもらうとしようぜ?」

「そうだね」

 そして、2人に向かってゆっくりと近付いていくと、青司が少し戯けた調子で2人に話し掛け始めた。

「やあやあ、お二人さーん。俺達はBoys&Girlsなんだけど、そのガールズトークに混ぜてくれないかーい?」

「……に、兄さん? それに兎亜さんまで……!」

「おやおやー? 2人ともサボりとは感心しませんなぁ~」

「ははっ、お前達も同じもんだろ? それに、俺達の方は自習だしクラスの奴らの公認だよ」

「クラスメートの公認って……鷹明さんもよく許してくれたね」

「ふふ、タカもそれだけ心配だったって事だよ」

「つう事で、頼りになる兄さん姉さん達とも少しだけ話をしようぜ?」

「……分かった。ここまでされて断るわけにもいかないからね」

「モカちゃんももちろんオッケーだよ~? 」

「うっし! そうと決まれば、隣失礼するぜ?」

「どうぞどうぞー」

 そして、蘭ちゃん達の隣に立って手摺に寄りかかった瞬間、気持ちの良い風が私達の間を吹き抜け、蘭ちゃんが少しだけスッキリした様子で口を開いた。

「風、気持ちいいですね」

「そうだね。どんな問題もこんな風にスーッと解決できればどれだけ良いかと思うけど、そううまくはいかないからね」

「問題……さては、あたし達の事について隠れて話し合いでもしてましたなぁ~?」

「へへっ……ご名答。まあ、隠しきれるもんでも無いし、いつかはバレると思ってたぜ」

「ふっふっふ~、モカちゃんはカラフルな頭脳を持つ名探偵だからねー」

「あははっ、良いねぇ。そんなにキラキラしてるんだったら、だいぶ楽しそうな感じがするぜ」

 モカちゃんの言葉に青司が楽しそうな笑い声を上げていると、蘭ちゃんは少し呆れた様子でポツリと呟いた。

「……それは正直どうでも良いよ。それで、昨日の会話もそういう事だったんだよね?」

「まっ、そういう事だな。けど、お前に言った事は全部本当の事だ。だから、そこだけは安心してくれて良いぜ」

「…………」

「んで、お前達はさっきまで何の話をしてたんだ?」

「んー……正直に話しても良いけど、蘭の意見も聞かないと……」

「……私は良いよ。どうせ、この調子だと大体バレてるだろうし」

「だってさー。という事で、モカちゃん達の会話内容の全貌をここに公開しちゃいまーす」

 そして、モカちゃんは私達が来るまでの会話の内容を話してくれた。それは、私達が予想していた物とだいたい同じだったけれど、確証が得られた事が私にとっては何だかんだで嬉しかった。

「寂しい、か……。ふふ、やっぱりそういう事だったんだね」

「だな。さっすがは、幼馴染み仲間ってところだな」

「幼馴染み仲間って……他の誰かにも相談をしてたの?」

「兎亜が、だけどな」

「……そっか」

 青司の答えに蘭ちゃんは少しだけ暗い表情を浮かべながら静かに俯いた。そこには、何で話してしまったのかという非難や申し訳なさといった色が浮かんでいたけれど、微かに安心感みたいな物も見えたような気がした。

 さて……目的は一応達成したし、クラスの皆のためにもそろそろ戻らないとね。

 微かな達成感のような物を覚えながらスッと手摺から体を離した後、それに続いて体を離した青司と一緒に蘭ちゃん達へと声を掛けた。

「それじゃあ、私達はそろそろ戻るね」

「目的は無事に達成したし、その事についてはとりあえず干渉し過ぎない事にしてるからな」

「……分かった。えっと……心配してくれてありがとう」

「モカちゃんからもありがとうー」

「へへっ、良いって事よ。んじゃあな、2人とも」

「春とは言っても外にいすぎると流石に寒いだろうし、風邪を引かない程度には気をつけてね」

 そんな言葉を掛けた後、私達は蘭ちゃんを残して屋上を後にした。そして、教室に戻っている最中、「ねえ」と声を掛けると、青司は「んー……?」と少し気怠そうな声を上げたけれど、私はそれには構わずそのまま言葉を続けた。

「私達のやってる事、これで合ってるよね?」

「……さてな。けど、その答えはまだ分かんねぇし、蘭もまだまだ何かを隠してる感じはした。だから、答え合わせはアイツらがアイツらなりの答えを出したその時にならねぇと出来そうにないな」

「……そうだね。んー……何か気を張りすぎて少し疲れたし、家に帰ったらウチのあこニャンで癒されようかな……」

「ははっ、遂にあこが猫化でもしたのか?」

「ふふ、似たような物かな。まあ、正しく言うなら、あこに膝枕をしてあげながらなでなでさせてもらう形だけどね」

「なーる、ソイツはだいぶ楽しそうじゃん?」

「うん、まあね」

 こっそりと教室に戻りながら私は青司とそんな会話を続けた。青司が言うように、私達の行動が正解はまだ分からない。けど、あの5人を支えたいという気持ちは本当の事だ。だから、これからも動向を見守りながら私達なりの行動を取るしかない。

 ……さてと、そうと決まれば今日の帰りにでもタカ達と話し合いをしないとね。

 そう心の中で決めながら私は青司と一緒に教室に向かってこっそりと戻っていった。

 

 

 

 

 帰宅後、私はリビングのソファーに座り、膝に感じる仄かな温かさを味わいながら膝の上に載っているもの――あこの頭を静かに撫でていた。

「ふふっ……やっぱりこうしてるのも落ち着くなぁ……」

「うん……あこもスゴく落ち着いてるよ……」

「それは良かった。さあ、そのままこの兎亜様のなでなでの魔法に更に掛かってしまうがいい」

「なでなでの魔法……うん、それも良いかもね……」

 あこののんびりとした声を聞きながらゆっくりと撫で続けていたその時、「姉貴、ちょっと訊きたい事が……」と暗い表情で言いながら巴がリビングに入ってくると、私とあこの様子を見て小さく溜息をついた。

「……姉貴、またあこを撫でてるのか?」

「そうだけど、巴も撫でる? それとも撫でられる?」

「今はどっちも良い。それでさ、ちょっと訊きたい事があるんだけど良いかな?」

「うん、もちろん。で、訊きたい事って?」

「姉貴も知ってると思うけど、蘭が屋上に行ってる事やクラス替えの件で寂しいと思ってる事はモカから聞いた。だけど、帰り際にひまりが『一緒にいる事って、こんなに難しいことだっけ』って言ってたのがちょっと心に残っててさ」

「……なるほどね。それで、私はどう思うか訊きに来たって事だよね?」

「まあ、そうなる……かな。それで、姉貴的にはそれをどう思う?」

「そうだね……」

 あこを撫でる手を一度止め、私は巴から投げかけられた質問の答えを頭の中から探し始めた。

 一緒にいる事が難しいかどうか、ね……。正直な事を言えば、無理やり理由をつけてしまえば幾らでも誰かと一緒にいる事は出来るかもしれない。けど、それは相手の都合を考えない独りよがりな考え方と言える気がする。つまり、お互いの都合を考慮した上で一緒にいる理由を見つければ良い事になるのかな。

 頭の中で色々な事を考えていたその時、それを聞いていたあこが不意に何かを思いついた様子で声を上げた。

「……ねえ、巴お姉ちゃん達は一緒に何かをしたりはしないの?」

「うーん……やってないし、一緒の習い事をしてみるっていう案も実は帰り道で出てたんだよな……」

「それなら、習い事じゃなくても良いから、なにか繋がりになる物を作ってみれば良いんじゃないかな?」

「繋がりになる物……?」

「そう! あこもオンラインゲームで出来た別の学校の友達がいるし、遊びとか勉強とかでも良いから、何か皆で出来そうな繋がりになる物を色々と試してみれば良いんじゃないかな?」

 そのあこの提案を聞いた瞬間、巴はとても驚いた表情を浮かべたけれど、それはすぐに優しい笑みへと変わり、不意にあこの頭を優しく撫で始めた。

「ありがとうな、あこ。このあこの案は、参考にさせてもらうよ」

「うん、色々大変だと思うけど、巴お姉ちゃんも頑張ってね」

「ああ、もちろんだ。姉貴も話を聞いてくれてありがとうな」

「ふふ、どういたしまして。けど、無理はせずに頑張りなよ?」

「ははっ、分かってるって。それじゃあ、あたしはそろそろ部屋に戻るな」

「うん、分かった」

「了解だよ、お姉ちゃん!」

 巴に対して2人でそんな風に答えると、巴は小さく笑いながら頷き、そのまま部屋へ向かってリビングを出ていった。そして、私はあこをまた撫で始めながら声を掛けた。

「あこ、ありがとうね。あこのおかげで少しは進展が見込めそうだよ」

「えへへ……でも、まだまだ心配事はあるんだよね?」

「うん、でも大丈夫。絶対にこの事は解決できるから、それまでは私達で支えていかないとね」

「うん!」

 あこのキラキラとした笑顔に安心感を覚えながら私はさっきの巴の質問をもう一度頭の中に思い浮かべた。

 一緒にいる事が容易か困難か……この質問も私達にとっては他人事では無いわけだし、この問題が解決した後にでもタカ達と一緒に考えてみる必要はあるかもね。

 そんな事を考えながら小さく微笑み、私はあこから伝わるタカ達とは違った安心感で気持ちが静まっていくのをただ感じていた。




政実「第3話、いかがでしたでしょうか」
兎亜「この様子だと、この章はもう少し長くなるみたいだね」
政実「そうだね。一応、各章はその元々のストーリーの話数分と同じにはするつもりだけど、それはその時にならないと分からないかな」
兎亜「ん、りょーかい。それで、次回の投稿予定は未定で良いのかな?」
政実「うん」
兎亜「了解了解。そして最後に、この作品についての感想や意見、評価などもお待ちしてますので、書いて頂けたらとても嬉しいです」
政実「さて……それじゃあそろそろ締めていこうか」
兎亜「うん」
政実・兎亜「それでは、また次回」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。