桃「どうもー、青葉桃です。キーボードって事は、つぐみお姉ちゃんと同じだね」
政実「そうだね。別の所でも話してるけど、短期間だけピアノの練習と発表をする機会があったから、どれをやるかと訊かれたら間違いなくキーボードって答えるだろうね」
桃「ふふっ、そっか。さてと、それじゃあそろそろ始めていこっか」
政実「うん」
政実・桃「それでは、第5話をどうぞ」
お姉ちゃんとモカお姉ちゃんと屋上で話をした翌日、いつものようにモカお姉ちゃん達5人とタカ兄や太陽君達と登校をしていた時、私が前の方を歩くお姉ちゃん達の様子に注目をしていると、青兄がこそっとした声で私達に話し掛けてきた。
「お前ら……ちっと良いか?」
「……何だ?」
「このまま学校をサボろうっていう提案なら、今日の所は遠慮しておきたいんだけど?」
「いやいや……今日に限らず断るべきだろ、それは……」
「ふむ……学校をサボるってのは、中々魅力的な案だが、残念ながら俺が言いてぇのはそれじゃねぇよ」
「いや、学生が学校をサボる事を魅力的って言っちゃダメだろ……」
「ははっ、まあ……それは置いといて。実はな……アイツらが、週末にファミレスに集まる約束にしてるのを昨日の夜に偶然聞きつけたんだけどさ……」
「うーん……それは別に良い事だと思うけど、ダメなの?」
「いいや、決してダメなんかじゃねぇ。むしろ、俺達からすれば絶好のチャンスって奴だ」
「絶好のチャンス……?」
あこちゃんが不思議そうに小首を傾げると、青兄はニヤリと笑いながら頷き、こそっとした声で話を続けた。
「その通りだ。ここまで俺達は、蘭達に対してそれぞれ何らかの助言をしてきた。けれど、この状態になってからアイツらが集まっている現場にまだ出くわした事は無い」
「出くわした事が無いって……別にそれは仕方ない事じゃないのか? 家の手伝いとか部活動とかのような色々な事情が重なった結果、そうなっただけなんだし……」
「そうだな。だからこそこれはチャンスなんだよ。ウチの蘭がつぐや巴達に思いを伝えられるかどうかを確認したり昨日の放課後に太陽がモカに対して頼んだ事が上手く行くかを見届けたりする、な」
青兄がニカッと笑いながら言い、兎亜姉が「……なるほどね」と同じような笑みを浮かべ、太陽君が「……確かにそれは気になるかも」と顎に手を軽く当てながらそう呟く中、タカ兄はジトッとした目で青兄を見ながら話し掛けた。
「……青司、まさかとは思うけど、それについていこうとしてるのか……?」
「まあ、似たようなもんだな。と言っても、そのままついていくんじゃなく、アイツらが座る席の近くに陣取って、話の様子をこっそりと見守る感じだな」
「こっそりと巴お姉ちゃん達の様子を見守る……うん、何だかスゴくカッコいい気がする……!」
「へへっ、だろ? それと……モカにだけはこの事を事前に伝えておく」
「え……モカお姉ちゃんに伝えちゃっても良いの?」
「ああ、見守り中に蘭達が俺達に気付きそうになる可能性もあるからな。もし本当にそうなった場合、モカに事前に伝えておけば何とか誤魔化してもらえるからな」
「……確かに、ウチの巴やひまりちゃん達はそういうのに向かないし、蘭ちゃんはもってのほかだからね」
「そういう事。という事で、その日は出来る限り予定を空けておいてもらえると助かる。無理にとは言わねぇが、人数が多い方が色々と助かるからな」
微笑みながら言うその青兄の言葉を聞き、私達がやる気に満ちた表情を浮かべながら大きく頷く中、タカ兄は「……仕方ないか」と諦めた様子で小さく溜息をつきながらポツリと呟くと、青兄は満足顔でコクンと頷いた。
「んじゃあ、その日は蘭達が出掛けてから一度タカの家に集合な。それと……モカ以外には、絶対に知られねぇように気をつけろよ?」
『了解!』
「……了解」
私達が声を揃えて、そしてタカ兄が少し暗い様子で返事をした後、私はタカ兄達と一緒に歩きながら作戦実行の日へ向けてのやる気を高めていた。
モカお姉ちゃん以外には知られないように様子を見守る、かぁ……うん、ここまで色々と頑張ってきたわけだし、作戦実行の日はお姉ちゃん達が上手くいくように祈りながら見守らないとね……!
そう思いながら右手を軽く握った後、私はタカ兄達と話をしながら羽丘学園に向けてそのまま歩いていった。
学校に着いてタカ兄達と別れた後、私達は自分達の教室である1-Bへと向かい、話し声で賑わう教室のドアを少し強めに開けて中へと入った。
「皆、おっはよー!」
「おはよう、皆」
「皆、おはよう」
そして、それに答えてくれる皆に対して頷きながら教室内を歩いていくと、1人の席に集まりながら仲良く話していた友だち達が私達の方へと顔を向け、それぞれ挨拶をしてくれた。
「おはよう、3人とも」
「おはよう。桃は今日も元気だね」
「おはよう、お前達」
「うん、おはよう。
「おはよう、3人とも」
「3人とも、おはよう」
私達が挨拶を返すと、凛人君達はニコリと笑いながらコクンと頷いた。凛人君達は、この春から出来た私達の新しい友達で、
そういえば……タカ兄のクラスにも凛人君達と同じく姉妹が花咲川に通っている人がいるみたいだし、結構そういう人っているものなのかな?
何となくそんな事を考えていた時、凛人君が何かを思い出した様子であこちゃんに話し掛けた。
「あこちゃん、姉さんがオンラインゲームのクエストの件で少し相談したい事があるから、暇な時があったら連絡して欲しいって言ってたよ」
「クエストの件……あ、もしかしたら昨日の夜にちょこっと話してた奴の事かも。うん、分かった!」
「オンラインゲームかぁ……ウチの姉さんだったら、『仕事』の関係で関わらなければあまり手をつけなそうなイメージだな」
「あはは……そうかもね。まあウチの場合は、何だかんだで手をつけてそうかな」
「従姉妹の人はそういうのは好きな方なの?」
「うーん……好きかまではちょっと分からないかな。けど、そういうのをやってそうなイメージはあるかも」
「そっか。私達も始めてみたい気持ちはあるけど、それに本格的にハマっちゃったら抜け出すのに苦労しそうだから、手を出しづらいんだよね……」
「確かに普通の生活にまで影響しちゃうくらいハマっちゃう人もいるけど、あこやりんりん――凛斗君のお姉ちゃんはその辺はしっかりとしてるからね。それに皆だってその辺は大丈夫な気がするし、もし始める時に声を掛けてくれたら色々と教えてあげられるよ!」
「うん、その時は是非お願いしようかな」
「うん、任せてよ!」
あこちゃんが胸をポンッと叩きながら言うと、その様子に太陽君達はクスリと笑いながら静かに頷いた。こんな皆との毎日は、私にとってはとても楽しい物だし、タカ兄達やモカお姉ちゃん達との毎日にも劣らない程だと思ってる。そして、本当なら蘭お姉ちゃんだってクラスの人達とこんな風に話したり笑い合ったりする毎日を送る事は出来るはず。けれど、青兄が言うようにクラスに居場所がないのかまた別に理由があるのかは分からないけど、今の蘭お姉ちゃんはそういう事が出来ずにいる。
今度あるお姉ちゃん達の集まりでそれがどうにかなるかはまだ分からない。でも、蘭お姉ちゃんも含めて皆にはいつも笑顔でいてもらいたいから、今までお世話になってきた分、私達が精いっぱい支えていかないといけないよね。
「……うん、どんな形になったとしても精いっぱい頑張って支えていこう」
皆に聞こえないような声でポツリとそう独り言ちた後、私は再び太陽君達の会話へと混ざっていった。
作戦実行の日、モカお姉ちゃん達が出掛けていった後、私達は予定通り一度タカ兄の家に集まっていた。そして青兄の作戦通り、モカお姉ちゃんには事前にこの事を話していて、どのファミレスに行くかもしっかりと聞いていたため、準備はバッチリと出来ていた。
「さてと……モカには話は通してあるし、こうして6人全員が集まる事も出来た。後は蘭達に気付かれねぇように同じファミレスの中に入って、こっそりとその様子を見守るだけだが……」
「ん、何か不安な事でもあるのか?」
「いや、不安っつーか……俺達6人がまとめて入ったら、明らかに不審がられるだろ? だから、3人ずつで組み分けをしようと思う」
「組み分け……?」
「そう。そうやっておけば、いるのがバレた時でも不審がられる可能性をかなり下げられるからな。本当なら、咲也とか恵明とかも混ぜればもっとバレにくく出来っけど、アイツらの貴重な休日を使わせてまでやらせるわけにもいかねぇからな」
「まあ、確かにそうだね。それで、どんな風に組み分けをするつもりなの?」
「一応、男女で分けようと思ってる。変に凝った組み合わせにすると、明らかに怪しまれちまうからな」
「なるほど……という事は、僕がタカ兄と青兄と同じで……」
「私が兎亜姉とあこちゃんと同じだね」
「えへへ、そうだね。それで、お姉ちゃん達の事はいつまで見守るつもりなの?」
「蘭達がファミレスを出るまでだ。もっとも、その前に話が良い方に進めば、その時に終わりにするつもりだけどな。あくまでも、俺達がやりたいのはアイツらの話の流れを見守る事であって、アイツらを束縛する事では無いからな」
青兄がとても真剣な顔で言うと、それに対してタカ兄と兎亜姉は同じように真剣な表情で頷き、私達も続く形で同時に頷いた。その時、青兄の携帯電話がブルッと震え、「……来たかな?」と呟いてから青兄は携帯電話を確認した。そして、画面を見ながら静かに頷いた後、私達へと視線を移してから口を開いた。
「よし……行くぞ」
『了解』
それに対して同時に返事をした後、私達は作戦を実行するために動き始めた。
十数分後、モカお姉ちゃん達がいるファミレスに着き、まずは私達女子組が中へと入った。そして、モカお姉ちゃん達が座っている席の近くに座り、モカお姉ちゃんに着いた事を報せるメールを送ると、すぐにそれに対しての返事が届いた。
「……『りょうかーい』だって」
「そっか。それにしても……巴達の顔、スゴく楽しそうな感じだね」
「うん。最近、5人が集まる時間が登下校くらいしか無かったみたいから、やっぱり嬉しいのかもしれないね」
「だね」
下校時は皆色々な理由があるから、中々一緒に帰る事が出来ていなかったけれど、登校時は青兄と兎亜姉が電話連絡で大体のタイミングを合わせて一緒に登校出来るようにしていた。けれど、やっぱりこんな風に落ち着いた状態で集まるのはまた違うのかもしれない。
……今日の集まりで、モカお姉ちゃん達の事が進展すれば良いなぁ……。
そんな事を考えていた時、兎亜姉の携帯電話がブルッと震え、それと同時に兎亜姉が携帯電話を確認すると、「……男子組も席に着いたってさ」と微笑みながら私達に声を掛けてきた。そして、ごく自然な動きでテーブルの上に立てられていたメニューを手に取ると、それを静かに開きながらニコリと笑いかけてきた。
「話がどんな風になるか分からないし、何か頼んでおこうか。何も頼まずにいるよりも頼んでおいたほうが怪しまれないし、カモフラージュにもなるからね」
「うん、分かった」
「あこも了解だよ、兎亜お姉ちゃん」
「うん、それじゃあ早速選んじゃおうか」
「「おー!」」
そして、それぞれメニューを選んだ後、それを待ちながらモカお姉ちゃん達の話に聞き耳を立てた。最初はなんてこと無い雑談から始まったモカお姉ちゃん達の話だったけど、ひまりお姉ちゃんがカラオケの話をし出した事で、話題はバンドの事への変わった。その瞬間、つぐみお姉ちゃんの表情が少し変わり、モカお姉ちゃん達がそれぞれやってみたい楽器を上げ、ひまりお姉ちゃんがつぐみお姉ちゃんに話を振ると、つぐみお姉ちゃんは少し立ち上がりながらとても真剣な顔で声を上げた。
「バンド……。バンド……やろうよっ!!」
その言葉にモカお姉ちゃん達や私達が驚く中、つぐみお姉ちゃんが更にバンドをやろうと言い出すと、蘭お姉ちゃんが驚いた表情のままつぐみお姉ちゃんにどうしたのかと訊いた。すると、つぐみお姉ちゃんは5人が中々集まれていなかった事やどうしたら集まる事が出来るかを考えていた事を話し出し、それに対して蘭お姉ちゃんがまた驚いてると、巴お姉ちゃんが静かに頷きながら皆で話し合っていた事や蘭お姉ちゃんが最近元気が無かったことに触れ、蘭お姉ちゃんは少し申し訳なさそうな様子を見せた。そして、モカお姉ちゃんがニヤリと笑いながら昨日蘭お姉ちゃんが屋上で書いていた歌詞の話に触れると、焦り出す蘭お姉ちゃんとは対称的に兎亜お姉ちゃんがクスクスと笑い始めた。
「何と言うか……つぐみちゃんがバンドの話を始めてくれたのは、本当にラッキーだったね」
「そうだね。でも、つぐみお姉ちゃんが話を切り出さなかったらどうするつもりだったんだろう?」
「うーん……謎だね……」
「ねー……」
まあ、モカお姉ちゃんの事だからどうにかしたんだろうけど、もし教えてくれそうだったら後で訊いてみようかな?
そんな事を考えている内に私達が注文した物が届き、モカお姉ちゃん達の席では蘭お姉ちゃんが少しだけ顔を赤らめながら歌詞が書かれているノートを取り出した。そして、つぐみお姉ちゃん達は蘭お姉ちゃんの歌詞ノートに目を通すと、目を輝かせながら歌詞の良さなどに触れ、蘭お姉ちゃんはそれに対してそんな事ないといった様子で答えていたけど、その顔はどこか嬉しそうな風に見えた。その後、蘭お姉ちゃんが作詞とボーカルをやれば良いんじゃないかという巴お姉ちゃんの言葉で、お姉ちゃん達のバンド計画は着々と進みだし、結果としてバンドを組むという事で完全に決まったようだった。
お姉ちゃん達のバンドかぁ……ふふっ、何だかスゴく楽しみかも。
満員の客席の中でお姉ちゃん達がライトを浴びながら演奏をして、その音などで更にお姉ちゃん達が絆を深めていく様子を想像しながらお姉ちゃん達の様子を見ていた時、同じようにお姉ちゃん達の様子を見ていた兎亜姉が安心したようにクスリと笑った。
「蘭ちゃん……ようやく笑顔になってくれた感じだね」
「そうだね。何かこうやってモカお姉ちゃん達が楽しそうにしている様子を見ていると、ここまで頑張って来て良かったって感じがするよね」
「うんうん、そうだよね。一時はどうなるかと思ったけど、こうして巴お姉ちゃん達が笑っているのを見てると、こっちまで嬉しくなってくるしね」
「ふふ、そうだね」
そんな事を話しながら楽しそうに話すお姉ちゃん達の姿を見ていたその時、兎亜姉の携帯電話がまたブルッと震え、兎亜姉は携帯電話へと視線を移してから画面を確認した。そして、安心したような笑みを浮かべると、画面を私達の方へと向けた。そこには青兄から送られてきた作戦の終了と撤収を告げる旨の文章が書かれてあり、それに対して頷いた後、私はあこちゃんと一緒に頼んだ物を急いで食べながらモカお姉ちゃんにメールを送った。そして、食べ終わると同時に私の携帯電話がブルッと震え、携帯電話の画面を確認してみると、そこには私のメールの内容に対しての『りょうかーい』と『ありがとうね』というお礼の言葉の2つが書いてあり、その言葉を見た瞬間に私の胸の奥が静かにポカポカとしてきた。そして、携帯電話をしまってから出る準備が整った事を確認した後、私達は楽しそうに話し続けるお姉ちゃん達を残してそのまま席を立った。会計を済ませてから外へ出てみると、そこにはタカ兄達男子組の姿があり、私達がそのまま男子組の方へ歩いて行くと、青兄が優しく微笑みながら兎亜姉へと話し掛けた。
「これで一安心……だな」
「そうだね。音と楽器が繋ぐ新しい繋がり、ってところかな」
「はは、そうだな。それにしても……つぐみが自分からバンドを始めようなんて言い始めたのはスゴく驚いたよ」
「ふふっ、そうだね。でも、こうして新しい事に挑戦していこうとしているのは、やっぱりとても嬉しいよね」
「だね。お姉ちゃん達のバンド……ふふ、やっぱりスゴそうだよね」
「当然だよ! なんて言ったって、あこ達のカッコいいお姉ちゃん達のバンドだもん!」
「ははっ、そうだな。さてと……これからどうする?」
「そうだね……タカは午後からお店の手伝いなんだっけ?」
「ああ。だから、それまでなら予定は空いてるぞ?」
「そっか……んじゃ、適当にその辺をブラつくとするか。んで、昼飯もそのついでに食っちまえば良いしな」
「そうだね。今日は巴達がバンドの結成を決めたおめでたい日だし、無理にならない程度にぱあーっといこっか」
「はあ……まあ、今日くらいは良いか。それじゃあ、太陽達の分も含めて俺達で割りという事で良いよな?」
「へへっ、もちろんだぜ!」
「当然だね」
え……さっきの分も払って貰ったのに、これ以上払って貰うのは流石に悪いような……。
そんな風に言いながら話をどんどん決めていくタカ兄達に対して声を掛けようとしたその時、私の視線に気付いたタカ兄がニコリと笑いかけてきた。
「気にしなくても良いよ、桃。俺達が好きでやってる事だからさ」
「そうそう。だから、お前達は大人しく俺達に奢られとけよ」
「いつか桃達に可愛い後輩が出来たときにでも同じ事をしてあげれば良いだけだからね」
「タカ兄……青兄……兎亜姉……」
「へへっ……んじゃあ、行こうぜ。アイツらのこれからを祈るためにもな!」
『おー!』
「「了解」」
そして、様々な人が行き交う街の中を私達はお姉ちゃん達の話をしながら歩き始めた。
その日の夜、私が自分の部屋でレシピ集を眺めていた時、コンコンというノック音が聞こえ、それに対して「どうぞー」と答えると、「失礼しまーす」と言いながらモカお姉ちゃんが部屋に入ってきた。
「お姉ちゃん、私に何か用だった?」
「んー……まあ、そんなところ~」
「そっか。あ、それと……バンド頑張ってね、お姉ちゃん。私達はお姉ちゃん達のバンド活動も支えていくつもりだから」
「おー、中々頼もしいですなぁ~。それなら、お言葉に甘えて桃達にはこれからも色々とお世話になろうかな~」
「うん、じゃんじゃん頼ってね♪」
「うん、そうさせてもらうよー。でも……」
「でも……何?」
小首を傾げながら訊くと、モカお姉ちゃんは突然私にハグをし始め、それに対して私が不思議に思っていると、耳元でモカお姉ちゃんが優しい声で言葉を続けた。
「桃も何かあったらあたし達の事を頼ってね」
「え……い、いきなりどうしたの?」
「んーん、別にー。けど、1つだけ言わせてもらうなら、あたし達だって桃達にはいつも笑顔でいてもらいたいだけだよ」
「笑顔……」
「うん。桃、何だか肩に力が入りすぎてるような顔してたから、ちょっと心配だったんだよー」
「……うん。私、お姉ちゃん達には絶対にうまくいって欲しかったから……」
「その気持ちはとても嬉しいよー? でも、あたし達からすればね、桃達が笑顔でいてくれる事だって大事なんだよ~。だから、何か困った事があったら、遠慮無くあたし達やタカ兄達を頼りなよー?」
「……うん、分かった。ありがとうね、お姉ちゃん」
「いえいえー、こちらこそあたし達を心配して、支えてくれて本当に
その言葉を聞いた瞬間、ファミレスで送られてきたメールを思い出し、私はまた胸の奥がポカポカしてくるのを感じた。何気ないありがとうの言葉でも、心がこもっていれば言われた人を幸せな気持ちに出来、笑顔にも出来る。そんな事を思いながら私は胸の奥の『ポカポカ』とモカお姉ちゃんから伝わる『ポカポカ』の2つを感じながらとても幸せな気持ちになっていた。
暖かい……この暖かさは、たぶん一生忘れない気がする……。
そして、モカお姉ちゃんは私から離れると、私の顔を見ながら優しく微笑んだ。
「それじゃあ……桃、お休みー」
「うん、お休み」
私が返事をすると、モカお姉ちゃんはコクンと頷いてから部屋を出ていった。そして、私はそれを見届けた後、さっきのぽかぽかを思い出しながら独り言ちた。
「……うん、これからも色々な人をポカポカさせられるように頑張ろう。太陽君やタカ兄達、お姉ちゃん達にも頼りながら」
その声が部屋の中に響き終えた後、私は幸せな気持ちを感じながら静かに微笑んだ。
政実「第5話、いかがでしたでしょうか」
桃「前回は後2・3話でこの章が終わるって言ってたけど、この調子だと次回で終わりそうだね」
政実「恐らくそうなるね。だけど、最後まで気を抜かずに精いっぱい書くつもりだよ」
桃「うん、了解。そして最後に、この作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けるととても嬉しいです」
政実「さて……それじゃあそろそろ締めていこうか」
桃「うん」
政実・桃「それでは、また次回」