青司「どうも、美竹青司です。バイトの経験は無くとも、働いた経験はあるんだっけ?」
政実「うん。正社員とパートタイマーの経験がね」
青司「そっか。さてと、それじゃあそろそろ始めていくか」
政実「うん」
政実・青司「それでは、第8話をどうぞ」
こころ達『ハロー、ハッピーワールド!』のメンバーと出会った翌朝、俺達は『ハロー、ハッピーワールド!』のメンバーの一人、ミッシェルこと
「なるほどって事は……もしかして、妹がバンド活動をしてたのを知ってたのか?」
「いや、そこまでは知らなかったよ。ただ、最近薫の事について幾つか質問をされていたから、ちょっと気にはなっていたんだけど……まさかそんな事になっているとはね」
「……んで、自分の妹が熊の着ぐるみに入ってバンドでDJしてるのって、兄貴から見てどうなんだ?」
「うーん……それは別に構わないよ。けど、どんな事をするにしてもあまり無理だけはしないでほしいと思ってるかな」
「無理……?」
「うん。あの子──美咲はいつも
「行き過ぎた全力……それならウチのつぐみも心配なところがあるな。日々の生活や生徒会活動、バンド活動に家の手伝いと色々な事に精を出してるから、いつか倒れてしまうんじゃないかと思う時があるよ」
「あー……なんか分かるな、それ。でも、本当にそうならねぇようにタカが日常面を含めて、細かくサポートをしてやらないとな」
「ああ、兄としてはもちろん、ガールズバンド支援グループのリーダーとしてもつぐみが無理をし過ぎないようにサポートをしていくつもりだよ。正直、今の俺にはそれくらいしかしてやれないからな」
タカが少し俯きながら暗い表情で言う中、隣に立っていた兎亜がタカの肩を軽くポンッと叩き、それに対してタカが顔を上げると、兎亜はニコリと笑いながら静かに口を開いた。
「タカ、そんなに暗い顔しないの。タカにとってはそれくらいなんて思う事かもしれないけど、つぐみちゃんにとっては本当に助かるはずなんだから。ね?」
「兎亜……」
「兎亜の言う通りだ、タカ。タカの言葉や支えは、つぐにとってスッゲぇ助けになってるはずだぜ? タカはいつだって公平で的確な判断をしてくれるし、手伝うべき時と見守るべき時の線引きだって上手ぇからな。だから、中学ん時の蘭達の件や『ハロー、ハッピーワールド!』との協力の件の最終決定を任せられたし、タカの事を俺達のリーダーとして認められるんだ」
「青司まで……」
「タカ、お前はもう少し自分に自信を持っていいんだぜ? お前にはそれだけの力があるし、もしもお前の判断が原因で何かあったら、その時は俺達が全力でサポートをするからさ」
「そうそう。私達のリーダー様兼大切な幼馴染みのためだもんね。私達に出来る事なら全力でサポートをさせてもらうよ」
「……ああ、その時はそうさせてもらうよ。これまでと同じく、な」
「おう!」
「うん」
安心感に溢れた様子のタカの言葉に対して兎亜と一緒に返事をしていると、それを見ていた咲也がクスリと笑った。
「いつも思うけど、三人とも本当に仲が良いよね」
「へへっ、まあな!」
「仕方無い時以外は、殆ど一緒にいるから、もしかしたらそれぞれの家族よりも顔を見てるかもしれないね」
「いや、それは流石に言いすぎだって……」
兎亜の言葉を聞いてタカが小さく溜息をつきながら言っていたその時、「……あ、そういえば……」と咲也が何かを思い出したように声を上げ、それに対してタカは少し不思議そうに首を傾げた。
「咲也、どうかしたのか?」
「あ、いや……この前、美咲が別のバイト先も探してるみたいだったのをふと思い出してね」
「別のバイト先?」
「うん。僕も不思議に思って訊いてみたら、鷹明達の話を聞いて、いつも借りてるDJセットじゃなく、どうせやるなら自分の相棒みたいに思えるDJセットを手に入れたいんだってさ」
「美咲ちゃんがそんな事を……」
「まあ、まだバンドを辞めるつもりはあるみたいだけど、少しは『ハロー、ハッピーワールド!』の活動について考えるところがあったんじゃないかな?」
「なるほどなぁ……」
「自分達の言葉がきっかけで誰かが心を動かしてくれるのってなんだか良いね」
「そうだな」
兎亜の言葉に対してタカがニコリと笑いながら答えていたその時、「なになに? 何の話?」と訊きながら日菜が興味津々な様子で
「おっす、日菜、恵明。今、咲也の妹の話をしてたところだよ」
「咲也の妹さん……ああ、たしか美咲ちゃんだったよね。熊のミッシェルの中に入って薫君達とバンドを組んでるっていう」
「うん、そうだよ」
「着ぐるみの中かぁ……見てる側は楽しいけど、やってる側は絶対に暑いよね……」
「あはは、本人もそう言ってるよ。今ではライブ後のスポーツドリンクと冷却シートが手放せないってさ」
「だろうな。そうだ……なあ、タ──」
「……言っとくけど、俺達も似たような事をやろうって言うのは無しだからな」
「ちっ、流石にわかったか」
「当然だ。何年お前達の幼馴染みをやってると思ってるんだ? それに、そんな予算も無ければ、着る着ぐるみだって……」
「それは演劇部の奴らに作ってもらえば良いんじゃね? タカが着るってわかったら、麻弥を始めとした裏方勢が乗り気で作ってくれそうだし」
「……本当に実現しそうだし、それをこころちゃんに聞かれたら、尚更実現しそうだから止めてくれ……」
「こころか……たしかにやってくれそうだし、スゴいハイテクな着ぐるみを作りそうだよな」
「「……たしかに」」
それを想像したのかタカと兎亜が声を揃えてそう言うと、日菜はキラキラと目を輝かせながら俺に話し掛けてきた。
「ねえねえ! そのこころちゃんってそんなにスゴい子なの!?」
「ああ。家がスゴい金持ちみたいで客船も所有してるとか言ってたかな」
「へえ……! なんだかお姫様みたいだね!」
「ははっ、そうだな。ライブの時の話を聞く限りだと『ハロー、ハッピーワールド!』はおもちゃ箱みたいに観客をワクワクさせるバンドみたいだから、それを率いるこころは『おもちゃの国のお姫様』ってところか」
「『おもちゃの国のお姫様』かぁ……どんな子か気になるし、一度会ってみたいかも♪」
「それじゃあ、近い内に会えるようにセッティングしてやるよ。こころも日菜の話を聞いたら絶対に興味を持つだろうしな」
「わあ、ありがとう! それじゃあよろしくね、青司」
「おう、任せとけ」
嬉しそうな笑顔を浮かべる日菜に対してニッと笑いながら答えていると、教室に付けられたスピーカーからチャイムの音が鳴り出し、クラスメート達は次々と自分の席に着き始めた。
「……っと、もうそんな時間か」
「そうだな」
「それじゃあ、話の続きはまたお昼休みにって事で」
「だな」
俺が頷きながら答えた後、俺達はそれぞれの席に向かって歩き始めた。
それにしても……『ハロー、ハッピーワールド!』がおもちゃ箱みたいなバンドなら、俺達『Twilight』はどんなバンドにしたら良いかな。一応、ガールズバンド支援も目的にはしてるけど、それだけがメインでは無いし……。
「……まあ、タカ達と相談しながら気長に考えていくか」
考えていた事についてそう結論づけた後、俺は席に着きながら別の事について考え始めた。
その日の放課後、偶然帰り時間が被った俺達『Twilight』は、タカの淹れてくれるコーヒーなどを飲みながら『Twilight』の今後の話をするべく、『羽沢珈琲店』に向かって歩いていた。そして、『羽沢珈琲店』の建物が見え始めたその時、入り口の前に見慣れない制服を着た白と銀の中間のような色のボブカットの女子生徒が立っているのが見えた。
「ん……見慣れない制服だな」
「そうだね。でも……どうして入り口の前にずっと立ってるんだろう?」
「うーん……もしかしたら、あまり入った事が無いから、少し
「あー……確かにありそうかも」
「まあ、なんにせよとりあえず話を聞いてみるか」
タカの言葉に頷いた後、俺達はその女子生徒に近づき、顔を迷いの色が浮かんでいるのを確認してから声を掛けた。
「なあ、ちょっと良いかな?」
「……え? わ、私ですか……?」
「うん。さっきからここの入り口の前にずっと立ってたから、どうしたのかなと思って」
「もしかして……こういうお店にあまり入った事が無いから、少し
「……はい、実はそうなんです。少し前にこのお店を見つけて、良い雰囲気のお店だなと思って入ってみようとしたんですけど、いざ入ろうとした時に緊張して入らずに帰るっていう事を繰り返してて……」
「なるほど……」
「そういう事なら、一緒に入るか?」
俺のその言葉に女子生徒は「え……?」と不思議そうに首を傾げた。俺はそれに対してニッと笑いながら頭をポンポンと叩いた。
「わふっ……」
「一人で入ろうとするとどうしても緊張するなら、皆で入れば緊張しなくてすむだろ?」
「それは……まあ……」
「それに、困ってる奴を放っておくのは俺達の性に合わないからな。な、皆?」
「……そうだな」
「『羽沢珈琲店』は商店街だけじゃなく、来てくれた皆の憩いの場みたいなところだからね」
「うん、ここで放っておこうものなら『Twilight』の名が廃るってもんだよ」
「あはは、たしかにね」
「皆さん……」
「という事で早速入ろうぜ、えーと……」
「あ……わ、私……倉田ましろといいます。中学三年生です」
「ましろ、だな。それじゃあ入ろうぜ、ましろ」
「は、はい……!」
ましろが嬉しそうに答えた後、俺達は『羽沢珈琲店』のドアを開け、そのまま中に入った。そして、タカが店の手伝いをするために店の奥へと入っていく中、俺達はいつものカウンター席に並んで座った。
「さてと……俺達は注文するのはいつものにするとして、ましろはどうする?」
「あ、えっと……それじゃあ紅茶で」
「おう、わかった」
そして、店の奥からエプロン姿のタカが出てくると、ましろは少し驚いた様子を見せた。
「お店の方……だったんですね」
「あはは、まあね。それで、コーヒーが二つに紅茶が二つ、ココアが一つで良いんだな?」
「ああ、それで頼む」
「わかった。それじゃあ出来るまで待っててくれ」
「おう」
そして、タカがコーヒーなどを淹れる準備を始めるのを眺めていた時、店の奥にふと見覚えのある姿が見えた気がし、俺はそれを確かめるためにタカに話し掛けた。
「なあ、タカ」
「ん、なんだ?」
「今、店の奥に見覚えのある奴がいた気がしたんだけど……」
「……流石、青司だな。俺もさっき見てびっくりしたけど、俺達にとって縁深い人がバイトの面接に来てたんだよ」
「僕達にとって縁深い人……?」
「それって、一体誰なの?」
「それは──」
タカが説明をしようとしたその時、店の奥からタカの親父さんと『ハロー、ハッピーワールド!』のDJであるミッシェルこと美咲が一緒に出てきたのが見え、兎亜達と美咲は同時に驚いた様子を見せた。
「美咲ちゃん……?」
「皆さん……今、学校帰りだったんですね」
「そうですけど……」
「まさか美咲さんがここのバイトの面接に来てるなんて思わなかったから、スゴくビックリしましたよ」
「あはは……まあ、そうかもね」
桃の言葉を聞いて美咲が小さく笑みを浮かべながら答えていると、ましろは首を傾げながら俺に話し掛けてきた。
「あの……お知り合いなんですか?」
「ああ。この子とは学校は違うけど、この子の兄貴が俺達のクラスメートでな」
「後は僕達『Twilight』が美咲さんが入っている『ハロー、ハッピーワールド!』っていうバンドと協力関係にあるっていう繋がりもあるよね」
「バンド……青司さん達もバンドを組んでるんですか?」
「うん。私達はガールズバンドの支援も目的とした学生バンドで名前は『Twilight』っていうんだ」
兎亜がニコリと笑いながら『Twilight』について軽く説明をした後、俺はましろを指し示しながら美咲に話し掛けた。
「美咲、こっちにいるのは倉田ましろ。今日出会ったばかりの中学生だ。んで、ましろ。こっちにいるのは奥沢美咲、熊のミッシェルの中に入って『ハロー、ハッピーワールド!』っていうバンドでDJをやってる『花咲川女子学園』の一年生だ」
「そうなんですね……あの、初め……まして、倉田ましろです」
「あ、うん。奥沢美咲です。えっと……これからよろしくね、倉田さん」
「はい……よろしくお願いします」
美咲とましろが笑みを浮かべながら握手をする中、俺はタカの親父さんに声を掛けた。
「それで、美咲はバイトとして合格なんすか?」
「ああ。来週から入ってもらう事にしたよ」
「そうなんですね。でも、美咲ちゃん。あまり無理はしないようにね?」
「はい、それはもちろん。お気遣いありがとうございます」
「ふふ、どういたしまして」
美咲がペコリと頭を下げ、それに対して兎亜が手をヒラヒラとさせながらニコリと笑う中、俺達の目の前にホカホカと湯気を立てるカップが次々と置かれていった。
「はい、お待ちどおさま。熱いから皆気をつけて飲んでくれよ?」
「へへ、わかってるって」
「それなら、良いけど……あ、美咲ちゃんはどうする?」
「私……ですか?」
「うん。もし、この後予定が無ければ一杯どうかと思って」
「……それじゃあ一杯だけ」
「うん、わかった。美咲ちゃんは……コーヒーで良かったかな?」
「はい、お願いします」
美咲が頷きながら答えると、タカはそれに対して頷き返してから再びコーヒーを淹れる準備を始め、美咲はましろの隣の席に静かに腰を下ろした。そして、美咲とましろが話をし始める中、俺がコーヒーを一口飲んでいたその時、制服のポケットに入れていた携帯から着信音が鳴り出した。
「ん……誰からだ?」
そんな事を独り言ちながら携帯を取りだして画面を確認き、こころの名前が表示されているのを見た後、俺は携帯を操作してその着信に出た。
「もしもし?」
『あっ、青司? 今、どこにいたかしら?』
「今? 今は『羽沢珈琲店』でコーヒー飲んでたぜ? 因みに、『Twilight』は全員いるし、美咲と今日出会ったばかりのましろっていう子も一緒だ」
『そうなのね! それなら、私も『ハロー、ハッピーワールド!』の皆を連れて今から行くわ! だって、なんだか楽しそうなんですもの!』
「ん、わかった。それじゃあタカにはそう伝えておくな」
『うん、ありがとう! それじゃあまた後でね』
「おう、また後で」
そして、こころとの通話を切ると、美咲は恐る恐るといった様子で話し掛けてきた。
「青司さん……今の電話ってまさか……」
「……こころからだよ。なんでも今から『ハロー、ハッピーワールド!』のメンバーを連れて来るんだとよ」
「……やっぱり」
「けど、どうして今から?」
「なんだか楽しそうだかららしいぜ?」
「な、なんだか楽しそうだからって……それだけの理由で……?」
「はは、まあ……そういう奴だからな。という事で、また新しい知り合いが増えるけど、大丈夫そうか? ましろ」
「は、はい……ちょっと緊張しますけど、大丈夫……です」
「……そっか。それなら良かった」
ましろの返答にタカが本当に安心した様子を見せた後、俺達は色々な話をしながらこころ達の事を待った。そしてそれから十数分後、入り口のドアが開き、美咲を除いた『ハロー、ハッピーワールド!』のメンバーが次々と店内に入ってきた。
おっ、来た来た。
そんな事を思いながらこころ達が入ってくるのを見ていると、こころは太陽のように明るい笑顔を浮かべながら俺に話し掛けてきた。
「昨日ぶりね、『Twilight』のみんな!」
「おう、昨日ぶりー」
「昨日ぶり、こころ」
「昨日ぶりです、こころさん」
「こころさん、昨日ぶり~」
「……昨日ぶりだね、こころちゃん」
「ええ!」
そして、こころは美咲とましろに視線を向けると、更に明るい笑顔を見せた。
「美咲はさっきぶりね!」
「……そうだね。因みに、ミッシェルは外せない用事があるってさっき連絡があったよ」
「ええ、そうみたいね。さっき、黒服の人達もそう言っていたわ」
「……そう」
「そして……隣にいるのが、青司が言っていたましろね!」
「ふぇっ!? は、はい……」
「私、弦巻こころ! 『ハロー、ハッピーワールド!』のみんなと一緒に世界を笑顔にするためにバンド活動をしているわ!」
「世界を……笑顔に……」
「そうよ。だから、あなたも機会があったら私達の演奏を聴いてみてね? 絶対に後悔はさせないから」
「は、はい……!」
こころの言葉にましろがぎこちないながらも笑みを浮かべながら頷いた後、タカは兎亜達と話をする薫達を見ながら小さく溜息をついた。
「……今日も賑やかだな」
「くく……けど、これもまた悪くない、だろ?」
「……まあな」
タカがフッと笑いながら答えた後、俺は再びコーヒーを一口飲み、その苦さとコクを楽しみながら小さく息をついた。
今日も新しい出会いがあり、また俺の周りは賑やかになっていく。けど、そういう環境を楽しんでこその人生だよな。
「『Twilight』もそんな風に賑やかさを楽しんでもらえるようなバンドにしていけたら良いのかもな」
小さくクスリと笑いながら独り言ちた後、三度コーヒーを一口飲んでから、コーヒーなどの香りが調和しながら混ざり合う中、俺はこころ達の会話に混ざっていった。
政実「第8話、いかがでしたでしょうか」
青司「今回ましろが出てきたけど、他の後のMorfonicaメンバーも出て来るのか?」
政実「出せそうなら出そうかなと思ってるよ」
青司「わかった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さて……それじゃあそろそろ締めていこうか」
青司「ああ」
政実・青司「それでは、また次回」