絵理「……はぁ」
愛「仕方ないですよ」
絵理「……でも」
愛「765プロの皆さんは売れっ子なんですから」
絵理「アポ……取っておけばよかった」
愛「まったくです、今度はちゃんとアポ取ってから行きましょう。ね? 絵理さん」
絵理「……うん」
愛「何か飲み物、いれてきますね」
絵理「ミネラルウォーターがあれば」
愛「はーい」
愛「お待たせしました」
絵理「ごめんね、人の家なのに」
愛「勝手知ったるなんとやら、ですよ」
絵理「難しい言葉、知ってるね」
愛「えへへー」
絵理「そういえば最近、どう?」
愛「最近ですか? いつも通り元気ですねー、絵理さんは?」
絵理「まぁ……普通」
愛「……」
絵理「……あ」
愛「どうしました?」
絵理「この間、武田プロデューサーさんと話した」
愛「武田プロデューサー…というと」
絵理「そう、あの有名歌番組『オールド・ホイッスル』のプロデューサーさん」
愛「めちゃくちゃ大物じゃないですか」
絵理「何か、わたし達に出てほしいって」
愛「え!? オールド・ホイッスルにですか?」
絵理「うん。でもオールド・ホイッスルで新しい企画をやるらしくて、そっちに出て欲しいみたい」
愛「へー、なんか意外ですね」
絵理「少し話を聞いたら楽しそうだったから、勝手にOK……しちゃった?」
愛「一緒のお仕事、久しぶりですねっ!!」
絵理「うんっ」
愛「常々疑問だったんですけど」
絵理「うん?」
愛「あたしの衣装が一番、露出度高いのって何故なんでしょね?」
絵理「え…?」
愛「胸元開いているのって、あたしだけじゃないですか」
絵理「うーん……多分……」
愛「多分……?」
絵理「多分、一番気にしなさそうだから?」
愛「えぇー」
絵理「涼さんはアレだし……わたしだったら……」
愛「ひぅ!!」
絵理「ってなっちゃう」
愛「なるほどー……って、あたしも結構恥ずかしかったりするんですけど……こう、谷間とか……」
絵理「うーん……涼さんはどう思う?」
涼「なんでこのタイミングで! その話題を僕に振るの!?」
愛「油断してるからですよーっ!!」
絵理「なにか涼さんも日頃の疑問とか言ってみる?」
涼「ずいぶんと無茶振りだね」
愛「さぁさぁ遠慮せずに!!」
涼「そうだねぇ……じゃあ、絵理ちゃんが尾崎さんのことを『尾崎さん』って呼ぶ理由が聞きたいな」
絵理「……え?」
愛「あーっ、それあたしも思ってました!」
涼「別に『玲子さん』で良い気がするんだけど」
絵理「……」
涼「絵理ちゃん?」
愛「その表情から察するに……恥ずかしいからですか?」
絵理「……うん」
涼「尾崎さんは絵理ちゃんのことは名前で呼ぶけど、僕達には名字呼びだよね」
愛「でもたまに名前で呼ばれてびっくりしちゃいます」
絵理「そうなの?」
愛「素の時というか、急いでるときは『愛ちゃん』って呼ばれたりします」
絵理「涼さんも?」
涼「そう言われれば、確かに『涼』って呼ばれるときがあるような……普段は『秋月さん』なんだけどね」
絵理「ふぅん……」
涼「何か思い当たる節が?」
絵理「それ……多分、家で練習……」
愛「練習?」
絵理「うん。尾崎さん……きっと家で『愛ちゃん』とか『涼』とかって練習……してる」
涼「……何のために?」
絵理「仲良くなるため……? ううん、分からない……けど、尾崎さんは……そういう人」
愛「今度、直接聞いちゃいましょうか」
涼「聞いていいのかなぁ……」
愛「武田プロデューサーと言えば」
絵理「ほう」
涼「絵理ちゃん、そういうのはいいから」
愛「『ダズリング・ワールド』って武田プロデューサーが涼さんのために作ったんですよね」
涼「うん、そうだよ」
絵理「無理言って?」
涼「そ、そうだよ」
愛「でもその時って……」
涼「うん?」
愛「……いえ……だとすると……」
絵理「何か、気になる?」
愛「……」
涼「愛ちゃん?」
愛「なんというか……歌も歌詞も可愛すぎるなーって」
涼「……ぁぁ」
愛「こう、キラキラーっていうか、きゃぴぴぴーっていうか、きゃるる~んっていうか」
絵理「言いたいこと、分かる」
愛「聞いていて、ちょっと恥ずかしかったりします」
絵理「涼さんが歌うと、特に?」
涼「もう止めて」
愛「あっ、でも良い曲ですよね」
絵理「掛け値なしに」
涼「絵理ちゃん、怒るよ?」
絵理「ごめんなさい」
涼「まったく……!」
絵理「あ」
愛「どうしました?」
絵理「今、涼さんのア……ンテナがぴょこんって」
涼「アンテナ?」
愛「アホ毛のことですよ」
涼「アホ毛って……」
絵理「愛ちゃん……直球過ぎる?」
涼「これ好きで生やしているわけじゃないんだけどね……」
愛「そうなんですか?」
涼「うん、って愛ちゃんは好きで生やしてるの?」
絵理「この業界、生やしている人が一杯」
愛「なんででしょね?」
涼「えーっと876プロに限って言えば……」
愛「涼さんにあたしに、えーっと……社長とまなみさんっ!!」
絵理「わたしと尾崎さんは……生えてない」
涼「876プロ以外では武田さんも生えてたような」
絵理「意外」
愛「ママも生えてますよーっ」
絵理「親子でお揃い」
愛「ですっ!」
絵理「サイネリアも生えてない」
涼「夢子ちゃんも生えてない」
絵理「律子さんは?」
涼「……うわ……生えてる……」
絵理「アホ毛遺伝子、存在確認?」
涼「ネーミングが直球だね」
絵理「ふふっ」
愛「えへへー」
涼「そろそろ晩ご飯の仕度の時間かなー」
絵理「お腹空いてきた」
愛「17時ですよ、17時!」
涼「……」
絵理「あっ……涼さん……私達、帰った方が?」
涼「またそういう聞き方を……もう。いいよ、何か食べたいのある?」
絵理「ふふっ。涼さんのなら、何でも?」
愛「今日はお泊りパーティーですよっ!!」
涼「泊まるのっ!?」
絵理「御馳走様でした」
涼「お粗末さまでした」
愛「美味しかったですーっ」
絵理「お風呂の順番……どうしよう?」
涼「尾崎さんを呼んでおいたから」
愛「え? 尾崎さんも泊まるんですか?」
絵理「何時の間にそんな関係に……!?」
涼「違うよ! 絵理ちゃんを連れて帰ってもらうため!!」
愛「あ、そういうことですか」
絵理「びっくり、した」
愛「じゃあお泊りはあたしだけですか?」
涼「愛ちゃんは僕が家まで送るから」
愛「えぇー」
絵理「えぇー」
涼「舞さんも呼んだ方がいいかな?」
愛「お邪魔しましたー」
おしまい。