○オーディション会場・舞台(昼)
日高愛(アイドル衣装):下手から入場する。
日高舞(アイドル衣装):上手から入場する。
愛「ママ」
舞「ふふん。よく来たわね、愛。それでこそ私の娘よ」
愛「一体、何の為にこんなことするの!?」
愛「皆、みんな! 散っていった!! 雪歩先輩やホシイさん……絵理さんも!! 涼さんもっ!!」
舞「何の為? 私の行動に理由なんてないわ。強いて言うなら……私がやりたいと思ったから?」
愛「ふざけないでよっ!! いつだってママはっ!! 自分勝手で!! 好き勝手やって!! 面白がって!! 周りがどれだけ迷惑してるかも考えずにっ!!」
舞「わぁ怖い……」
愛「……」
舞「じゃあ聞くけど、愛。何の為にアナタはここに立ってるの?」
舞「アナタもトップアイドルになりたいからって、ここに立ってる。のでしょ?」
舞「他人を踏み台にして、アナタもここまで来た。のでしょ?」
愛「……違う」
舞「違わない」
愛「違う」
舞「認めなさい」
愛「違う!」
舞「アナタも私と同じ側だということを」
愛「違う!!」
舞「何が違うの?」
愛「私はママとは違う」
舞「何故違うの?」
愛「私には支えてくれる人達が居るから」
愛「だからママとは違う」
舞「支えてくれる人達……ねぇ」
舞「もしかして、それって……私が潰してあげた人達のこと?」
愛「……ッ!!」
舞「ふふっ、何も違わないわ。アナタは私の娘。アナタと私は同じ部類よ」
愛「違う!!」
愛「違う違う違う違うーーーーーっ!!」
舞「相変わらず五月蠅いわねぇ……。まぁいいわ、私達は問答するためにここに立っているんじゃないのだから」
舞「私と愛。どっちが正しいか答えを出しましょ」
愛「……そうだね、あたし達はアイドル……言葉ではなくオーディションでしか答えは出ない……」
舞「きなさい……愛。全て受け止めてあげるわ……そして潰してア・ゲ・ル♪」
愛「そうやってまたっ!! 人を上からでしか見れないんだから!!」
舞「ぐだぐだ言ってないでさっさと来て頂戴、待ちきれないわ」
日高愛:日高舞に向かって駆け出す。
愛「『relations』!!」
舞「ほいっと」
日高愛、日高舞:至近距離で激しく踊る。
愛「『エージェント夜を往く』!!」
舞「ふふんっ」
愛「……クッ」
舞「ダンスの速さ比べかしら?」
愛「……『THE IDOLM@STER』!!」
舞「ふふっ、付き合ってあげるわ」
日高愛、日高舞:ダンスがぶつかり合う反動で宙に浮かんでいく。
愛「4ビート!!」
舞「8ビート」
愛「……16ビート……!!」
舞「ほら、32ビートよ」
愛「……くっ……ぅ……」
舞「これに付いてこれるかしら!? 128ビート!!」
愛「はっ、速……!?」
日高愛:舞台に叩きつけられる。
愛「……ぐっ! ……ぁ……」
舞「つまらないわ」
愛「……!?」
舞「愛。アナタ……それで全力?」
愛「……何……?」
舞「もっと本気だして頂戴……こんなんじゃ全然満足出来ないの」
愛「……」
舞「本当の本当に全力なの?」
愛「……」
舞「……あちゃー……買い被りすぎたか……」
日高舞:舞台に着地する。
愛「……だったら……何なのよ……」
舞「もういいわ、愛。帰ってご飯にしましょう」
愛「……ふっ! ふざけないでよ!!」
舞「ふざけてなんかないわ。今のが全力ならこれ以上やる必要は無いもの」
日高舞:下手へ移動する。
愛「日本一のアイドルを決めるんでしょーっ!?」
舞「そんなことどうでもいいわ」
愛「そんなこと……?」
愛「日本一……アイドル・アルティメットの称号が……そんなこと? 一体何人のアイドルが目指してると思ってんの!!」
愛「そんなことなんかじゃない!! そんなことなんかの為に散ったんじゃない!!」
愛「訂正してよっ!! 訂正しなさいっ!!」
舞「あら残念。私に命令できるのは、私だけ♪」
愛「日高舞ィィィィィッ!!! 取り消せぇっ!!」
舞「力尽くでどうぞ、愛セ・ン・パ・イ♪」
愛「『shiny smile』!!」
日高愛:歌う。
舞「声量は十分……だけど、ビブラートが甘いわね」
舞「お手本を見せてあげるわ!!」
舞「『shiny smile』!!」
日高舞:歌う。
愛「っ……かっ……はっ……!?」
舞「ふふん、息が出来ないでしょう? 私の歌声で貴女の肺を思いっきり圧迫してやったんだから」
愛「……くぁっ……っ……うっ……『HELLO!!』!!」
舞「すごい、その状態でも歌えるの!?」
日高愛:歌声で舞台上に真空状態を作る。
舞「舞台が破壊されていく……? まったく……我が娘ながら恐ろしい子だわ」
舞「……恐ろしい? 恐ろしいですって? 私が……この日高舞が恐怖を感じているの?」
舞「そう……これが怖いという感覚……背筋に寒気が走るような……今にも逃げ出したくなるような……」
日高愛:肩で息をする。
愛「……取り消すまで……絶対許さないっ!!」
舞「面白いッ!! 実に面白いわッ!!」
愛「何が楽しいの!? あたしはそれが嫌だって言ってんのにっ!!」
日高愛:日高舞に向かって駆け出す。
舞「これが日高の血統……これが日高の血の力!!」
舞「もっと!! もっと私を追い詰めなさい!!」
愛「だから謝るまで許さないって言ってるでしょーっ!!」
舞「うっふふ。良いわぁ……この感じ。身体の中がガーッと熱くなって……ほら何だって出来る!!」
日高舞:分身しながら上手側に移動する。
愛「うっ、後ろっ!?」
舞「これよッ!! これが日高の血の力なのねッ!!」
愛「ええぇぇえぇえーっ!? ママが二人居る!?」
舞「ねぇ、愛!! アナタも出来るんでしょ!? 身体の中から……無尽蔵に力が湧いてくる、この感じ!!」
舞「最高にマイってやつだわアァァァハハハハァッ!!」
愛「……こ、こんなのって……」
照明:OFF
スポットライト:日高愛
愛「……勝てない……今のままじゃ……」
愛「でも……ママの言うとおり……あの力を使えば何とかなるかも……」
愛「……あの力、使わないって春香さんと約束したけど……ママに勝つには……春香さん……ごめんなさい……」
スポットライト:OFF
照明:ON
秋月涼(アイドル衣装):下手より駆け足で入場する。日高愛をかばうように立つ。
涼「駄目だ!! 愛ちゃん!!」
愛「りょ、涼さん!? どうしてここに?」
舞「ん?」
水谷絵理(アイドル衣装):下手より駆け足で入場する。日高愛を支えるように立つ。
絵理「その力では、勝てない?」
愛「絵理さんも!? 危ないから下がって……」
涼「聞いて愛ちゃん!! その力を使っても舞さんには勝てないんだ!!」
愛「で、でも……やってみなくちゃ分からないですよ!!」
絵理「それでは日高舞の単なるコピー……それじゃ勝てない」
愛「コピー?」
舞「……」
絵理「愛ちゃんだけの良さがあるから」
涼「愛ちゃんにしか出来ないことがあるんだ……それを見失わないで!!」
愛「涼さん……絵理さん……」
舞「ふぅん……? 貴方達のことは嫌いじゃないけど……邪魔するなら……知らないわよん?」
日高舞:垂直に跳躍後、空中を蹴って舞台中央まで移動する。
舞「これが、私の最高の歌よ!! 『ALIVE』!!」
愛「させないっ!! 『ALIVE』!!」
日高愛、日高舞:歌う。
舞「あら、アナタも『ALIVE』を?」
舞「うっふふ、良いわぁ!! 凄く良い!!」
秋月涼、水谷絵理:吹き飛びながら下手へ退場する。
愛「涼さん!! 絵理さんっ!!」
舞「さぁ、お邪魔虫も居なくなったことだし……続きを楽しみましょうか、愛!!」
愛「……涼さん……絵理さん……お二人の気持ち、心……受け取りました」
愛「あたしはママのコピーじゃない……」
舞「何をぶつぶつ言ってるの? 早く始めましょう?」
愛「あたしは……あたしはっ!! あたしはーーーーーーーっ!!」
舞「……っ!?」
愛「あたしはママのスーパーアイドル、日高舞の娘!!」
愛「そして!! あたしはそれを超えるスーパースーパーアイドル、日高愛!!」
愛「これが……!! あたしの……!!」
舞「こ、これは……?」
愛「『ALIVE』だからーーーっっっ!!」
日高愛:歌う。
愛「持って!! あたしの喉ーーーーーっ!!」
舞「これが……そう……貴女の……」
舞「ふふっ……大きくなったわね、愛」
照明:OFF
○日高家・リビング(夜)
照明:ON
日高愛(私服):トロフィーを持って下手より入場する。
日高舞(私服):上手より入場する。
愛「ただいまー」
舞「お帰りなさい」
愛「一緒に帰ろうって言ったのに先に帰っちゃうんだから」
舞「あら、ご飯の用意は誰がすると思ってるのよ」
日高愛:テーブルにトロフィーを置いて着席する。
愛「ねぇ、ママ」
舞「なに? もうご飯はできてるけど」
愛「そうじゃなくて……どうして、わざと負けたの? あのまま続けていたら、ママの勝ちだったのに……」
愛「やっぱりママにとっては、このトロフィーも『そんなこと』なの?」
舞「……ごめんなさい」
愛「ええっ!?」
舞「取り消すわ。『そんなこと』なんて言って、ごめんなさい」
愛「……」
舞「なによ? その顔」
愛「だって、ママが素直に謝るとは思わなかったし……」
舞「色々と思うところがあってね」
愛「ふーん……」
舞「さぁ、早く手を洗ってきなさい。お喋りするのはその後よ」
愛「もう手は洗ったし、うがいもしたよ」
舞「そう、じゃあ冷めちゃう前に食べましょう」
日高舞:テーブルに着席する。
愛「いっただきまーすっ」
舞「はい、召し上がれ」
愛「もぅごもぅ。ふぉのぐぉん、もっでごふぉぎーっ」
舞「ほら、喋るのなら口の中を綺麗にしてからにしなさい」
愛「ふぁーい」
舞「焦らなくても、おかわりはまだまだ一杯あるんだから」
愛「うんっ!! ママ、だーい好きっ!!」
舞「現金ねぇ」
愛「えっへへー」
照明:OFF
スポットライト:トロフィー
幕降りる。