おしゃべりーす   作:tihiro

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3. 母娘喧嘩

○オーディション会場・舞台(昼)

 

   日高愛(アイドル衣装):下手から入場する。

   日高舞(アイドル衣装):上手から入場する。

 

愛「ママ」

舞「ふふん。よく来たわね、愛。それでこそ私の娘よ」

愛「一体、何の為にこんなことするの!?」

愛「皆、みんな! 散っていった!! 雪歩先輩やホシイさん……絵理さんも!! 涼さんもっ!!」

舞「何の為? 私の行動に理由なんてないわ。強いて言うなら……私がやりたいと思ったから?」

愛「ふざけないでよっ!! いつだってママはっ!! 自分勝手で!! 好き勝手やって!! 面白がって!! 周りがどれだけ迷惑してるかも考えずにっ!!」

舞「わぁ怖い……」

愛「……」

舞「じゃあ聞くけど、愛。何の為にアナタはここに立ってるの?」

舞「アナタもトップアイドルになりたいからって、ここに立ってる。のでしょ?」

舞「他人を踏み台にして、アナタもここまで来た。のでしょ?」

 

愛「……違う」

舞「違わない」

愛「違う」

舞「認めなさい」

愛「違う!」

舞「アナタも私と同じ側だということを」

愛「違う!!」

舞「何が違うの?」

愛「私はママとは違う」

舞「何故違うの?」

愛「私には支えてくれる人達が居るから」

愛「だからママとは違う」

舞「支えてくれる人達……ねぇ」

 

舞「もしかして、それって……私が潰してあげた人達のこと?」

愛「……ッ!!」

舞「ふふっ、何も違わないわ。アナタは私の娘。アナタと私は同じ部類よ」

愛「違う!!」

愛「違う違う違う違うーーーーーっ!!」

舞「相変わらず五月蠅いわねぇ……。まぁいいわ、私達は問答するためにここに立っているんじゃないのだから」

舞「私と愛。どっちが正しいか答えを出しましょ」

愛「……そうだね、あたし達はアイドル……言葉ではなくオーディションでしか答えは出ない……」

舞「きなさい……愛。全て受け止めてあげるわ……そして潰してア・ゲ・ル♪」

愛「そうやってまたっ!! 人を上からでしか見れないんだから!!」

舞「ぐだぐだ言ってないでさっさと来て頂戴、待ちきれないわ」

 

   日高愛:日高舞に向かって駆け出す。

 

愛「『relations』!!」

舞「ほいっと」

 

   日高愛、日高舞:至近距離で激しく踊る。

 

愛「『エージェント夜を往く』!!」

舞「ふふんっ」

愛「……クッ」

舞「ダンスの速さ比べかしら?」

愛「……『THE IDOLM@STER』!!」

舞「ふふっ、付き合ってあげるわ」

 

   日高愛、日高舞:ダンスがぶつかり合う反動で宙に浮かんでいく。

 

愛「4ビート!!」

舞「8ビート」

愛「……16ビート……!!」

舞「ほら、32ビートよ」

愛「……くっ……ぅ……」

舞「これに付いてこれるかしら!? 128ビート!!」

愛「はっ、速……!?」

 

   日高愛:舞台に叩きつけられる。

 

愛「……ぐっ! ……ぁ……」

舞「つまらないわ」

愛「……!?」

舞「愛。アナタ……それで全力?」

愛「……何……?」

舞「もっと本気だして頂戴……こんなんじゃ全然満足出来ないの」

愛「……」

舞「本当の本当に全力なの?」

愛「……」

舞「……あちゃー……買い被りすぎたか……」

 

   日高舞:舞台に着地する。

 

愛「……だったら……何なのよ……」

舞「もういいわ、愛。帰ってご飯にしましょう」

愛「……ふっ! ふざけないでよ!!」

舞「ふざけてなんかないわ。今のが全力ならこれ以上やる必要は無いもの」

 

   日高舞:下手へ移動する。

 

愛「日本一のアイドルを決めるんでしょーっ!?」

舞「そんなことどうでもいいわ」

愛「そんなこと……?」

愛「日本一……アイドル・アルティメットの称号が……そんなこと? 一体何人のアイドルが目指してると思ってんの!!」

愛「そんなことなんかじゃない!! そんなことなんかの為に散ったんじゃない!!」

愛「訂正してよっ!! 訂正しなさいっ!!」

舞「あら残念。私に命令できるのは、私だけ♪」

愛「日高舞ィィィィィッ!!! 取り消せぇっ!!」

舞「力尽くでどうぞ、愛セ・ン・パ・イ♪」

愛「『shiny smile』!!」

 

   日高愛:歌う。

 

舞「声量は十分……だけど、ビブラートが甘いわね」

舞「お手本を見せてあげるわ!!」

舞「『shiny smile』!!」

 

   日高舞:歌う。

 

愛「っ……かっ……はっ……!?」

舞「ふふん、息が出来ないでしょう? 私の歌声で貴女の肺を思いっきり圧迫してやったんだから」

愛「……くぁっ……っ……うっ……『HELLO!!』!!」

舞「すごい、その状態でも歌えるの!?」

 

   日高愛:歌声で舞台上に真空状態を作る。

 

舞「舞台が破壊されていく……? まったく……我が娘ながら恐ろしい子だわ」

舞「……恐ろしい? 恐ろしいですって? 私が……この日高舞が恐怖を感じているの?」

舞「そう……これが怖いという感覚……背筋に寒気が走るような……今にも逃げ出したくなるような……」

 

   日高愛:肩で息をする。

 

愛「……取り消すまで……絶対許さないっ!!」

舞「面白いッ!! 実に面白いわッ!!」

愛「何が楽しいの!? あたしはそれが嫌だって言ってんのにっ!!」

 

   日高愛:日高舞に向かって駆け出す。

 

舞「これが日高の血統……これが日高の血の力!!」

舞「もっと!! もっと私を追い詰めなさい!!」

愛「だから謝るまで許さないって言ってるでしょーっ!!」

舞「うっふふ。良いわぁ……この感じ。身体の中がガーッと熱くなって……ほら何だって出来る!!」

 

   日高舞:分身しながら上手側に移動する。

 

愛「うっ、後ろっ!?」

舞「これよッ!! これが日高の血の力なのねッ!!」

愛「ええぇぇえぇえーっ!? ママが二人居る!?」

舞「ねぇ、愛!! アナタも出来るんでしょ!? 身体の中から……無尽蔵に力が湧いてくる、この感じ!!」

舞「最高にマイってやつだわアァァァハハハハァッ!!」

愛「……こ、こんなのって……」

 

   照明:OFF

   スポットライト:日高愛

 

愛「……勝てない……今のままじゃ……」

愛「でも……ママの言うとおり……あの力を使えば何とかなるかも……」

愛「……あの力、使わないって春香さんと約束したけど……ママに勝つには……春香さん……ごめんなさい……」

 

   スポットライト:OFF

   照明:ON

 

   秋月涼(アイドル衣装):下手より駆け足で入場する。日高愛をかばうように立つ。

 

涼「駄目だ!! 愛ちゃん!!」

愛「りょ、涼さん!? どうしてここに?」

舞「ん?」

 

   水谷絵理(アイドル衣装):下手より駆け足で入場する。日高愛を支えるように立つ。

 

絵理「その力では、勝てない?」

愛「絵理さんも!? 危ないから下がって……」

涼「聞いて愛ちゃん!! その力を使っても舞さんには勝てないんだ!!」

愛「で、でも……やってみなくちゃ分からないですよ!!」

絵理「それでは日高舞の単なるコピー……それじゃ勝てない」

愛「コピー?」

舞「……」

絵理「愛ちゃんだけの良さがあるから」

涼「愛ちゃんにしか出来ないことがあるんだ……それを見失わないで!!」

愛「涼さん……絵理さん……」

舞「ふぅん……? 貴方達のことは嫌いじゃないけど……邪魔するなら……知らないわよん?」

 

   日高舞:垂直に跳躍後、空中を蹴って舞台中央まで移動する。

 

舞「これが、私の最高の歌よ!! 『ALIVE』!!」

愛「させないっ!! 『ALIVE』!!」

 

   日高愛、日高舞:歌う。

 

舞「あら、アナタも『ALIVE』を?」

舞「うっふふ、良いわぁ!! 凄く良い!!」

 

   秋月涼、水谷絵理:吹き飛びながら下手へ退場する。

 

愛「涼さん!! 絵理さんっ!!」

舞「さぁ、お邪魔虫も居なくなったことだし……続きを楽しみましょうか、愛!!」

愛「……涼さん……絵理さん……お二人の気持ち、心……受け取りました」

愛「あたしはママのコピーじゃない……」

舞「何をぶつぶつ言ってるの? 早く始めましょう?」

愛「あたしは……あたしはっ!! あたしはーーーーーーーっ!!」

舞「……っ!?」

 

愛「あたしはママのスーパーアイドル、日高舞の娘!!」

愛「そして!! あたしはそれを超えるスーパースーパーアイドル、日高愛!!」

愛「これが……!! あたしの……!!」

舞「こ、これは……?」

愛「『ALIVE』だからーーーっっっ!!」

 

   日高愛:歌う。

 

愛「持って!! あたしの喉ーーーーーっ!!」

舞「これが……そう……貴女の……」

舞「ふふっ……大きくなったわね、愛」

 

   照明:OFF

 

○日高家・リビング(夜)

   照明:ON

   日高愛(私服):トロフィーを持って下手より入場する。

   日高舞(私服):上手より入場する。

 

愛「ただいまー」

舞「お帰りなさい」

愛「一緒に帰ろうって言ったのに先に帰っちゃうんだから」

舞「あら、ご飯の用意は誰がすると思ってるのよ」

 

   日高愛:テーブルにトロフィーを置いて着席する。

 

愛「ねぇ、ママ」

舞「なに? もうご飯はできてるけど」

愛「そうじゃなくて……どうして、わざと負けたの? あのまま続けていたら、ママの勝ちだったのに……」

愛「やっぱりママにとっては、このトロフィーも『そんなこと』なの?」

舞「……ごめんなさい」

愛「ええっ!?」

舞「取り消すわ。『そんなこと』なんて言って、ごめんなさい」

愛「……」

舞「なによ? その顔」

愛「だって、ママが素直に謝るとは思わなかったし……」

舞「色々と思うところがあってね」

愛「ふーん……」

舞「さぁ、早く手を洗ってきなさい。お喋りするのはその後よ」

愛「もう手は洗ったし、うがいもしたよ」

舞「そう、じゃあ冷めちゃう前に食べましょう」

 

   日高舞:テーブルに着席する。

 

愛「いっただきまーすっ」

舞「はい、召し上がれ」

愛「もぅごもぅ。ふぉのぐぉん、もっでごふぉぎーっ」

舞「ほら、喋るのなら口の中を綺麗にしてからにしなさい」

愛「ふぁーい」

舞「焦らなくても、おかわりはまだまだ一杯あるんだから」

愛「うんっ!! ママ、だーい好きっ!!」

舞「現金ねぇ」

愛「えっへへー」

 

   照明:OFF

   スポットライト:トロフィー

 

   幕降りる。

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