夢子「LGBTについて教えて欲しい?」
涼「この間に失礼なこと言っちゃったから、もう少し勉強しようと思って」
夢子「それで私に聞きに来たってわけ?」
涼「うん、夢子ちゃん詳しそうだし」
夢子「そんなことはないけど、まぁ知ってる範囲でならいいなら」
涼「ありがとう、夢子ちゃん」
夢子「べっ、別に涼のためじゃないんだからねっ! 貴方がどーしてもっていうからよっ!! 勘違いしないでよね、涼!!」
涼「うん。もう少し照れを含ませると、もっといい感じになるかな」
夢子「ありがと。今度、伊織さんにも相談してみようかな」
涼「そうだね、それがいいと思うよ」
夢子「じゃあ本題に入るけどLGBTは何の略かは当然知ってるんでしょうね?」
涼「レズビアン、ゲイ、バイセクシャル……と何だっけ?」
夢子「トランスジェンダー。はい、言ってみて」
涼「トランスジェンダー」
夢子「それぞれの定義はわかる?」
涼「レズビアンは女性が好きな女性のことで、ゲイは男性が好きな男性のことで……バイセクシャルとトランスジェンダーっていうのはよく分からないや」
夢子「バイセクシャルは異性も同性も両方好きになれる人」
涼「そうなんだ」
夢子「トランスジェンダーは身体と心の性が一致していない人のことよ」
涼「すると、性同一性障害の人達ってこと?」
夢子「厳密に言うと違うわ」
涼「違うの?」
夢子「定義が難しいようだけど、身体と心の性が不一致の状態に対して不都合を感じる場合に性同一性障害ってことになるみたい」
涼「不都合を感じる……自分が男なのに女の格好をしているのが嫌だと思う、とか?」
夢子「そういうこと。さすがに理解が早いじゃない」
涼「心当たりがありすぎて……ね」
夢子「もっとも性同一性障害ってのは診断の結果……つまりお医者さんがつける診断名のことだからね」
涼「なるほど」
夢子「あと、女装が好きとか男装が好きっていうだけの場合もあって、これはまた別の状態」
涼「……」
夢子「どうしたの?」
涼「自称バリバリの女の子なのに、行動がイケメン過ぎる人はどう判断したらいいんだろう?」
夢子「そのまんま解釈すればいいじゃない。女の子でもありイケメンでもあるって」
涼「それって矛盾していない?」
夢子「心のありようが一つとは限らないのよ?」
涼「なるほど……!!」
夢子「格好良いところもあるし、それでいて乙女で可愛いのが真さんの魅力でしょ?」
涼「うん、舞台で共演したときの真さん……格好良かったなぁ……」
夢子「ピーターパンだっけ?」
涼「ロミオとジュリエットだよ」
夢子「……ジュリー、マイ、ラーブッ! はボツにしておいて正解だと思うわ」
涼「ちょっ、やめてよ!! 夢子ちゃん!! ていうかどうして夢子ちゃんがそれを知ってるの!?」
夢子「さぁ? どうしてかしらね」
涼「もうっ、話戻すよ」
夢子「そらしたのはアナタでしょ。まぁいいけど……なんか他に聞きたいことあるの?」
涼「最近LGBTっていう言葉をよく聞くけど、何か理由あるの?」
夢子「さぁ?」
涼「きょ、興味なさげだね……」
夢子「本当にわからないもの。強いて言うならそういう時代がきたのかなっていうだけ」
涼「時代、か」
夢子「ただまぁ、知識として知られていないよりも知られている方がいいと思う。けど、だからといって無理に知ってもらう必要もないと思うの」
涼「それはどうして?」
夢子「あんた、自分の性的対象は女の子ですって言い回りたいの?」
涼「……そんなことはしないけど」
夢子「そう。だから、そういうことは人それぞれなのよ。知って欲しい人もいるし、そっとしておいて欲しい人もいる」
涼「そうなんだ……内面的なことだから、そうだよね」
夢子「知りたくない人も当然いるだろうし、そういう人に無理やり教えても嫌悪感が増すだけだと思うの」
涼「そうかもしれないね」
夢子「でも知らないことで、差別や排除に繋がっても困るから……難しいのよねぇ」
涼「だから知っておく方がいいけど、無理には……って思うんだね」
夢子「うん。要は『机の下に潜んでいるアイドルを無理やりスポットライトに晒すようなことはしないで』って話よ」
涼「森久保さんはそういうの含めて楽しんでるような気がするけど……」
夢子「そうかな」
涼「そもそも例えになってない気もするし」
夢子「……なっ、なんにしても、どんな人でも夢を諦めないで済むのが一番だと思うわ」
涼「まとめ方が強引だね」
夢子「聞こえませんっ」
涼「ところでLGBTに該当する人ってどれくらいいるのかな?」
夢子「嘘か本当かは分からないけど日本人では大体七%前後の人が該当するそうよ」
涼「百人いたら七人ぐらいか。改めて聞くけど……夢子ちゃんはレズビアンなんだよね?」
夢子「周りから見たらそうなるんじゃない?」
涼「周りから、というと?」
夢子「自分の気持ちや感情なんかはゼロかイチかで決められないし、その時の気分や状態なんかでも変わるから」
涼「自分では決められないし分からないってこと?」
夢子「そう。私の場合、男性嫌悪が大分入ってるのもあるし、実際どうだか分かんないわ」
涼「男性嫌悪……男の人が苦手なの?」
夢子「苦手というか……この世界に入ってから酷くなったっていうのもあるけど……まともに喋れるのって武田さんとアナタぐらいのものよ」
涼「そうなんだ」
夢子「そうなの。だから涼に受け入れてもらって嬉しい、ありがとう」
涼「それはお互い様だよ」
夢子「それでもありがとう」
涼「どういたしまして」
涼「じゃあ愛ちゃんはどうなのかな?」
夢子「アナタと水谷絵理の両方好きって話よね?」
涼「夢子ちゃんからそう聞いたけど」
夢子「あの子の場合は、尊敬とか憧れを恋愛感情と勘違いしているだけな気がするわ」
涼「そうだと嬉しいんだけど」
夢子「親の影響もあるでしょうしね、あそこは」
涼「後二、三年でお母さんが自分を産んだ年になるけど、やっぱり意識とかするのかな?」
夢子「本人に聞いてみるのがてっとり早いんじゃない?」
涼「……夢子ちゃん、適当言ってない?」
夢子「そう言えば、まだ学校で男から言い寄られたりしてるの?」
涼「まぁおかげさまで……」
夢子「その方々全員がゲイってわけでもないからね」
涼「え?」
夢子「どうせ性別関係なく秋月涼だから好きって人が多数なんでしょ?」
涼「よく分かるね」
夢子「あんたを見てればね」
涼「どういう意味……?」
夢子「ちなみにホモセクシャルの意味って知ってる?」
涼「男性が好きな男性? あれ? でもこれってゲイの意味だよね?」
夢子「そうね。ホモセクシャルは同性愛者って意味だから、レズビアンとゲイを含む意味なの」
涼「知らなかった……」
夢子「あと、同性愛者が近くにいると襲われたりしないか怖いっていう意見があるけど」
涼「……」
夢子「その辺は異性愛者と同じだからね」
涼「同じというと?」
夢子「誰彼構わずだったり、無理やり襲ったりしないってこと。アナタに言っても説得力はないかもしれないけど」
涼「……そうだねぇ、話を聞いてくれなかったり強引だったりする人は女性にも……いるし……えーっと、この場合も異性愛者、さんと表現するのかな?」
夢子「そうね。ヘテロセクシュアルとも呼ばれるわ」
涼「初めて聞いた」
夢子「ついでだけど、心と体の性が一致している人をシスジェンダーとかっていう言い方もするから覚えておきなさい」
涼「それも初めて聞いた」
夢子「他にも、自分の性別や性的指向が分からなかったり、不明瞭だったりすることに不安を感じている人達はクエスチョニングの状態にあると表現されるの」
涼「なるほど」
夢子「ちょっとに似ているけどアセクシュアルっていうのもあって、こちらは恋愛感情が湧かない人のこと」
涼「恋愛感情がない……?」
夢子「そのまんまの意味よ。それに恋愛感情はなくても結婚願望とか育児願望はある場合もあるから」
涼「なんか複雑だね……」
夢子「そうね、逆に恋愛感情はあるけど性的行為はしたくないとかっていう人もいる」
涼「知らないことがなんか申し訳なくなってきたよ……」
夢子「細かく分類すると何十種類にもなるし、今後も増えていきそうだから誰も正確には把握できてないんじゃないかな」
涼「そんなにあるんだ」
夢子「もっとも把握できる人がいるとも思えないけど、まぁ細かいところは自分で調べてね」
涼「うん、そうするよ」
夢子「海外と日本とで用語の指している範囲とかニュアンスが違ったりするから、その辺りも気をつけて」
涼「分かった。ありがとう、夢子ちゃんっ」
夢子「どーいたしまして」
涼「なんか、でもこういうのって妙に恥ずかしいよね」
夢子「アナタとじゃなかったら、こういう話はできないわ……あー、顔が熱い……」
涼「そうなの? 普通に話してるように見えたけど」
夢子「んっふふっ、私の演技力も大分上がってきたようね」
涼「そうだね、僕も負けてられないや」
夢子「じゃあ今度、伊織さんと同じレッスンになるように調整お願いできるかしら?」
涼「まっかせといて!」
もう少し続くかも?