やはり俺の怪異症候群はまちがっている。   作:オルタナティブ

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今回、強いアンチ傾向があります。ご注意ください。


第5話:逆鱗

青春とは嘘であり、悪である。

青春を謳歌せし者たちは常に自己と周囲を欺き、自らを取り巻く環境全てを肯定的に捉える。

彼らは青春の二文字の前にはどんな一般的な解釈も社会通念も捻じ曲げてみせる。

彼らにかかれば、嘘や秘密も、罪咎や失敗、現在進行形で外敵から攻められているこの現状さえも青春におけるスパイスでしかないのだ。

全ては彼らのご都合主義でしかない。

結論を言おう。

青春を謳歌せし者よ。

 

 

砕け散れ

 

P.S.高校生活を振り返ってというのなら普通3年の2学期ぐらいにやりません?なんで2年の1学期にやってるんですか?平塚先生

 

 

 

「お前を先に砕いてやろうか、比企谷」

 

「生徒呼び出しといて第一声それですか」

 

さっさと帰って菊川警察署で報告書書かないといけないんだが。つーか俺を砕くならRPG持ってこい。ゲームジャンルでもセカ○ワでもない方の。ロケランと対戦車ライフルがあって俺を砕く確率が2%ぐらいだから。……妖力無しだとガトリングでもあれば砕けるけどね。

 

「……比企谷。私が授業で出した課題はなんだったかな」

 

悪霊のおいしい料理法 〜霊魂をそえて〜

 

 

 

 

いやふざけました。

 

「はぁ……追伸に書いた通り、高校生活を振り返ってというテーマの作文でしたが」

 

「それでなんで君はこんなナメた作文を書き上げているんだ……なんだこれ?どうしてこうなった」

 

うっせ。こちとら心霊スポットに肝試し感覚で訪れて悪霊とか怪異の怒り買った奴を気絶とかさせて記憶消す程度にぶちのめしたりその後怪異の処理とかがあるせいでいわゆる”リア充”は大嫌いなんだ。無駄に仕事を増やすからな。

 

「……たく、君の目は、死んだ魚のような目だな」

 

妖力を全力解放したら死んだ目じゃなくなるんですけどね。ある怪異研究者によると、俺の目の濁りは人体が通常持ち得ない妖力を内包しているがために歪んだ「在り方」を映し出したものらしいですし。それゆえ妖力を全力解放……擬似怪異となると歪みが消えて濁りがなくなるらしいです。んなこと言っても「アホか」の一言で一蹴されるでしょうからいいませんけど。

 

「そんなDHA豊富そうですか?賢そうですね」

 

「真面目に聞け……!」

 

平塚先生が凄む。正直初めて単独で怪異と戦った時の方が怖かった。わからない人はI○のペニ○ワイズと貞子と伽倻子を同時に相手してるようなもんとでも思っといてくれ。

 

……誰に説明してんだ?

 

「いや、俺はちゃんと高校生活を振り返ってますよ?ただ振り返るような思い出がないだけで」

 

「いや、体育祭とかあっただろう……」

 

「存在を認識されず出場競技がなかったのでそもそも登校してません」

 

「……文化祭は」

 

「風邪引いて休んでました」

 

ごめんこれは嘘。体育祭は事実だけど文化祭の方は怪異研究の協力でサボってた。

 

「……悲しい1年間だな。ともかく小僧、屁理屈を言うな」

 

「屁理屈らしい屁理屈を言った覚えはないんですが……だいたい小僧って。確かに先生の年齢からしたら俺は小僧ですがーーー」

 

ブォン!!!

 

平塚先生の拳が顔のすぐそばを通る。避けなかったのかって?さすがに他の教師がいるなか唐突に教師が生徒ぶん殴ったらやばいって常識はあるんだろ。殴るという事象に関しては手遅れだけど。

 

「女性に年齢の話をするなと教わらなかったのか?」

 

「……教わる前に家族死にましたからね。中学の教師も突如家族が変死した中で唯一生き残った奴を構いたくはないでしょう」

 

「そ、そうか……すまなかったな、心の傷を抉ってしまって」

 

「いいえ、気にしてませんよ」

 

実際クラスメイトなんか誰も俺に近付かなかったし、家族の死を一瞬でも忘れたくて怪異狩りに精を出して出席日数とかは割と死んでたからな。本はよく読んでたから文系は問題なかったし、心情読解に関しては生きた……いや生きてねえな。死んだ人間相手と話し合ったことも何度かある。複雑な事例ばかりだったが。理数系は……うん、まあギリギリレベルだったがここに受かる程度にはあった。

 

「じゃあ、これは書き直しーーー」

 

「いや、待て。君には奉仕活動を命じる。ちょっと、ついてきたまえ」

 

そう言って平塚先生は何処かへと歩いていく。とりあえずあいつに連絡しとかねえとな。俺はスマホを取り出してある人物にメッセージを送っておく。

 

『すまん。ちょっと遅れる』

 

それだけ打って送信するとスマホをポケットにしまって平塚先生を追っていく。

 

「……比企谷。お前に友人はいるのか?」

 

「一人だけですが」

 

厨二病でクッソつまんない小説書く奴が。あいつある一点に関しては特務課全員が一目置いてんのに、厨二病とつまんない小説のせいで台無しになってんだよ。

 

「……彼女は?」

 

「いませんよ。それがどうかしたんですか」

 

なんかだんだんムカついてきた。なんで俺の身辺知らねばならんのだ。

そうしてしばらく歩いて平塚先生はある空き部屋に止まる。その扉を開けるとーーー

 

「……ッ」

 

未だ見たことのないほどの美少女がいた。

 

 

ごめん嘘。姫野の方が美人だわ。姫野には口が裂けても言えんが。だが俺が驚いた理由はそこじゃない。

 

 

雪ノ下雪乃。その空き部屋に唯一いた少女であり、去年の入学式に俺を轢いたリムジンに乗っていた中の一人である。……何故覚えているかって?怪異狩りやってると忘れちゃいけないのが多くて自然と見たものは忘れなくなってんの。まあ轢かれたことに関しては俺が飛び出したのもあるし治療費も、飛び出した俺が悪いのに慰謝料まで払ってくれたから別に文句はない。……9割ぐらいの確率で俺の隣にいるアラサーが仕組んだものだということに察して驚いたのだ。

 

「……平塚先生。入る時はノックをお願いしたはずですが」

 

そう言えばノックしてねえなこのアラサー。人の部屋に入る時はノックするって常識だろうに。昔礼儀正しい怪異と会った時に礼儀間違えて殺されかけたから人付き合い(ほぼ生者とは使わない)のために覚えてる。つーか()の中悲しすぎるだろ。

 

「ノックをしても君は返事をした試しがないじゃないか」

 

「返事をする間も無く先生が入ってくるんですよ。……それで、そのぬぼーっとした人は?」

 

ぬぼーっと、て。他に言い方あるだろ。いや、初対面の剛さんに「おい、怪異が迷い込んでるぞ」って言われたのと比べたらマシなんだが。

 

「彼は入部希望者だ」

 

「……2年F組、比企谷八幡です。……って、入部ってなんだよ」

 

「君には、舐め腐ったレポートの罰としてここでの部活動を命じる。異論反論質問抗議口答えは一切認めない」

 

横暴だ。まあいい、逃げればいい。妖力使えばウサインボルトでもない限り追いつけないし。

 

「というわけで見ればわかると思うが、彼はこの腐った目と同様根性も腐っている。そのせいでいつも孤独な憐れむべき奴だ」

 

「憐れまれる筋合いはないんですけど。これでも今の生活に満足してますし」

 

「友人が一人しかおらず月に一回謎の欠席を行う生活で満足出来るか」

 

出来るわ馬鹿にすんな。

 

「この部で彼の捻くれた孤独体質を更正する。これが私の依頼だ」

 

……依頼?つまりこの謎の部活動は基本的な行動はなく、あくまで第三者からの介入によって初めて行動が出来るということか。ずいぶんと歪な部活動だ。後雪ノ下雪乃、断ってくれ。こんなとこ入れられたら怪異狩りが万全に出来ん。

 

「……お断りします。そこの男の下心に満ちた下卑た目を見ていると身の危険を感じます」

 

俺は初対面の相手を罵倒するような奴に欲情するほど歪んだ性癖は持ち合わせていないんだが。

 

「安心したまえ。この男のリスクリターンの計算と自己保身に関してだけは、なかなかのものだ、刑事罰に問われるようなことは決してしない。彼の小悪党ぶりは信用していい」

 

絶対褒めてない。このアラサーに婚期が10年ほど伸びる呪いをかけてやる。

後誰が小悪党だ。こちとら人知れず人助けしてるんだからどちらかというとヒーローだろうが。……俺みたいなヒーローいたら世界終わるな。じゃあ仮面ライダーエターナルみたいなダークヒーローでいいや。

 

「いや常識的な判断が出来ると言って欲しいんですが……」

 

「小悪党……なるほど」

 

聞いてない上に納得しやがった。

 

「まあ、先生からの依頼ならば無下には出来ませんし。承りました」

 

「そうか、なら頼んだぞ。雪ノ下」

 

そう言って平塚先生はこの部屋を立ち去っていった。……ドアのそばでガン待ちしてるじゃねえか。こりゃドアから逃げるのは骨が折れるな。疲労的な意味と物理的な意味で。後者で折れるのは俺じゃなくて平塚先生だけど。とりあえず俺は教室後ろに積まれてある椅子を取り床に置くとそこに座り込む。

 

「……座っていいと言った覚えはないのだけれど」

 

「座ってはいけないと言われた覚えもないがな」

 

こうなったらこの状況を脱することに全力を費やしてやる。俺は意識を仕事モードに切り替えて状況を確認する。

 

……ドアの横約1.2mに平塚先生、俺から概算距離で約3m離れたところに雪ノ下雪乃。窓はカーテンが揺れていることから開いているのは確定。教室のサイズ的に窓までは4mから5m。俺の身体能力が正確にはわからんが、1秒〜1.5秒で窓からは飛び出せる。そっからはフリーランニングの要領で壁を走ればいいか。こんだけしかわからんな。情報集めだ。

 

「……そもそも、ここは何部なんだ?何も聞いてなくてな」

 

「……当ててみたら?」

 

そう来たか。ならば……特別な機材を必要とせず、単独でもさほど問題のない文芸部か?いや違う。文芸部ならば依頼などは存在しない。あるかもしれんが人の更正などの依頼は間違いなくありえない。意識を研ぎ澄ませろ。あらゆる情報から「それ」を推察するんだ……

 

『君には奉仕活動を命じる。ちょっと、ついてきたまえ』

 

『この部で彼の捻くれた孤独体質を更正する。これが私の依頼だ』

 

依頼でありながら報酬と思われるものは存在しない。ならば報酬というもの自体が存在しないんだ。それはつまりボランティア……奉仕活動に他ならない。ならば答えはーーーーー

 

「ボランティア部、もしくは奉仕部と言ったところか」

 

「……驚いたわ。まさか当たるとは」

 

当たってたか。

 

「……比企谷君。女の子と最後に話したのはいつ?」

 

姫野とが最後だな。

 

「……昨日の夜。というか今日の朝7時ぐらいだな」

 

いやー、今日の授業9割爆睡してたわ。

 

「家族は含めないわよ?」

 

家族自体くたばってるからねぇ。

 

「家族じゃねえよ」

 

「そう、その人に同情するわ」

 

神経逆撫ですることばっか言いやがるな。こいつ呪ってやろうか。

 

「持つ者が持たざる者に慈悲の心を持ってこれを与える。人はそれをボランティアと呼ぶの。困っている人に救いの手を差し伸べる。それがこの部の活動よ」

 

「ようこそ奉仕部へ。歓迎するわ。頼まれた以上力になるわ。あなたの問題を解決してあげる。感謝なさい」

 

「アホくさ」

 

なんだこの上から目線。全身の内臓引きずり出してぶち殺してやろうか。

 

「……どういう意味かしら?」

 

「そりゃ自己満足だ。持つ者が持たざる者に慈悲の心を持ってこれを与える。いい話だ。THE・美談だな。だが……お前はそれが出来ない」

 

「……出来るわ」

 

「出来ねえよ。なぜならお前は”救いの手を差し伸べる”と言った。それは絶対的な上の立場から行うということを理解していない限りそんな言葉は出ない」

 

「それがどうかしたのかしら?事実私は上の立場だもの」

 

「それが矛盾なんだよ。奉仕……ボランティアとは、一切の私意無く単純で純粋な善意で行われるものだ。お前のその言動ならば、それはボランティアではなくただの自分が満たされるためだけに人々を利用するだけの異常だよ」

 

実際、純粋な善意で人助けをするような輩は見たことないがな。

 

「……貴方、性格最悪ね。親の顔が見てみたいわ」

 

「あいにく生まれつきだ。親の顔ならあの世にでも行けばみられると思うぞ」

 

「……どういうことかしら?」

 

「死んでるよ。5年ほど前にな。両親も妹も。残ったのは俺だけだ」

 

その言葉に対し

 

「そう。初対面の美少女をここまで散々に罵倒出来るような貴方の家族なのだから、どうせーーーーー」

 

奴は。雪ノ下雪乃は

 

 

 

 

 

「ーーーーーろくな死に方をしなかったのでしょうね。因果応報だわ」

 

逆鱗に触れた。

 

 

 

私は適当に比企谷と雪ノ下を言い争わせて、頃合いを見て部室に入るはずだった。だが数分後

 

グワッシャァァァン!!!!!

 

突如部室内から聞こえた尋常ではない物音に驚き、反射的に部室に飛び込む。そこで見たものはーーーーー

 

全ての窓ガラスが粉微塵に砕け散った部室と、立ち竦んで動けない雪ノ下。そして、文字通り”殺意”を振り撒き雪ノ下を睨みつける……いや、いつでも雪ノ下を殺せるように身構えた比企谷がいた。

 

 

 

奴は俺の、決して触れてはいけないものに触れた。妖力が噴出、部屋中に充満しその勢いに耐えられず窓ガラスが粉微塵に砕け散る。すると平塚先生が入ってきてこの状況に驚くが

 

「何があった!比企谷、説明しろ!」

 

「……そこの醜女が俺の今は亡き家族を罵倒した。俺がそいつを殺す理由はそれで充分だ」

 

そう言いながら俺は雪ノ下雪乃……いや、名前を呼ぶだけで虫唾が走る。”ソレ”に近寄り首を握りつぶそうとした瞬間

 

<アラシノヨウナミーラーイモーハタカラミーリャターダーノクロニクルー

 

「……」

 

スマホが鳴り出す。スマホを取り出し画面を見ると、いくつかの数字が映し出されている。……電話か。090や080ではないから携帯電話からではないな。廊下に出てから通話ボタンを押す。

 

「……もしもし」

 

『比企谷さん!私です……姫野 美琴です!』

 

「姫野?……なんで俺の電話番号知ってんだ」

 

『氷室さんから”いざという時はここにかけろ”って言われて……』

 

等さんの仕業か……仕方ないか。

 

「……で、どうかしたのか?」

 

『あの……私……道に迷ったみたいなんです!』

 

道に迷った?それだけ?……いや、「いざという時」にかけるって常識ぐらいはあるだろう。ならば……

 

『それも……ただ迷ったんじゃなくて……同じところをずっとぐるぐると……』

 

「……何?」

 

空間を捻じ曲げるほどの力を持つ怪異などそうそういない。となると大至急向かわねばならんかもしれんな。

 

『それだけじゃないんです!白い……何か白いモノに追いかけられました!』

 

白いモノ……くそっ、まだ特定できるほどの情報がない!

 

『途中までお爺さんと一緒にいたんですが……お爺さんがそれをみた途端、急におかしくなっちゃって……』

 

白いモノ……視認すればアウト……まさか

 

「姫野!それを見たら全速力で逃げろ!何故お前がそれを見て平気でいられるのかはわからんが、俺が来るまで耐えていてくれ!大至急向かう!場所は!?」

 

『えっと、菊川警察署からーー駅への直線の道を曲がったところにある民家に……きゃあっ!?』

 

まずい!俺は教室に戻ると鞄を拾いあげて

 

「すみませんが先生、俺はこの部に入るつもりはありません。俺は用事があるので、ここで失礼します」

 

そう言って走り出し、階段を一気に飛び降りて靴箱にて靴を履き替える。そのまま学校から50mほど離れたところにある駐輪場に停めてあるバイクに乗るとエンジンを全力で蒸し姫野が言った場所へと突き進む。ええい赤信号が邪魔だ!あいつは俺の担当だ……絶対に、死なせはしない!

 

 

to be continued

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