インフィニット・ストラトス アルエット・グローリー   作:イェーレミー

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やーーーっと書き終わったイェーレミーです。あけおめことよろ!
長く待たせてすまない。これもゲームってやつのせいなんだ。
あと、頭の中でキャラが話したいことを話し出してそれを文章化するという作業のせいでプロットがほぼ役に立ちません!おのれディケイドォォォォ!

というわけで、第2話をどうぞ


第二話

時は巡って放課後。クラスメイトが寮に戻るなか、拓海はサクサクと帰る準備をしていた。政府からは「一週間は自宅からの通学となる」と言われているからだ。ちなみに春人は必読と書いてあったはずの教科書をタウ○ページと間違えて捨てたらしく、余っていたものをもらって勉強家の一夏に教えてもらっていた。ただ、飲み込みは早いらしく、山田先生曰く

「この調子で勉強していたら、一年でマスターするかもしれません」

とのこと。そして、嫌な顔をしつつも教えてもらっている春人は貧乏揺すりをしていた。まるで、何かを待っているかのように・・・・・・・

 

「皆さん!あぁよかった、まだ帰ってなかったんですね」

「山田先生、息急ききってどうしたんですか?」

 

と、そんなときだった。息があがった様子の山田先生がやってきた。長い距離を走ってきたのだろう、少し汗をかいていて膝に手を置き頭を下げていた。とりあえず落ち着くまで待ってみることにした。

 

「えっと、ですね。寮の鍵をお渡ししますね」

「・・・・・・ん?一週間は自宅からの通学って聞いたんですが・・・・・」

 

すると聞いていたこととは違うことを言われたので突っ込んでみた。すると

 

「それがですね」

「どうせ政府から特例って事で寮に入れろって言われたんじゃねーの?」

「春人くん、よく分かりましたね」

「いや、ただの予想。俺達はイレギュラーで、家に帰ろうもんなら誘拐されてモルモットだろうし、存在自体が貴重なサンプル。んなら、一応は世界各国の手が届かない場所に置いとこうって考えだろ」

 

春人に発言をカットされたが、つまりはそういうことらしい。とりあえずちらつかせるための素材は取れたことだし良しとしよう。まぁ、このあとの想像もついているのだが。

 

「いい推測だ。だがな」

 

自慢げにドヤ顔をして天狗になっている春人の背後に般若が現れた。迫力としては、ハッスルポーズをすれば金ぴかになって地面から大小様々な石が浮き上がってきそうな感じであった。そして

 

バシィッ!!

 

「目上のものには敬語を使え」

「い、いえす、まむ」

 

織斑先生の得意技、出席簿スマッシュが炸裂した。持ってみた感じ普通の出席簿だったのに、あの音とあの威力はどうすれば出せるのだろうか・・・・・?

 

「それでですね、これが寮の鍵なんですが一つ問題がありまして・・・・・・・・」

「どうしたんですか?」

 

一夏が訊ねると山田先生は大きな胸を揺らしながらその場で頭を下げた。綺麗な謝罪のポーズだった。

 

「ごめんなさい!皆さんを一人部屋にしようとしたのですが、部屋数が足りなくて一人しか確保出来ませんでした!」

「どの鍵が一人部屋ですか?」

「1026ですね。1025と1080が他の人のいる部屋です」

「じゃあ・・・・・」

 

と言いつつ同時に春人も動いた。彼が取ったのは1025、僕が取ったのは1080だ。このとき限りは以心伝心していたように思う。お互いの顔を見合わせてニヤリとしていた。

 

「だ、大丈夫なんですか?」

「僕は大丈夫ですよ。一応仲の良い友達もできたことですし」

「オレも大丈夫だ。兄さんには休むことを覚えた方がいいと思うしな」

「・・・・・・じゃあ、俺もその言葉に甘えさせてもらうことにするよ」

 

そう言って一夏は一人部屋の鍵を取った。ただ、急に決まったことらしいので、荷物とかは持ってこれてないらしい。まぁ、一応キャリーケースを転がしてきたし中に色々とプライベートな物は入れてはいるが・・・・・・・。ちなみに織斑兄弟は姉が勝手に部屋に入って必需品だけを取ってきたらしい。・・・・・・・どんまい。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

そしてその後寮の鍵をもらって織斑兄弟と別れ、学生課で預けていた荷物を受け取った。それはいいのだが。

 

「寮ってどこだよ・・・・・・」

 

拓海はIS学園の案内板とにらめっこをしていた。教室から出るときに山田先生から「道草しないでくださいね」と忠告され、寮の位置が分かっているらしい春人は小声で「一本道なんだから迷うはずないだろ・・・・」と困惑していたが、こちらからすれば案内板を見ずに目的地に着く方がおかしいと思ってしまう。なので案内板を睨んで一人で全部の校舎の位置を把握しようとしていた。その時だ。

 

「あれ、遠藤くん。どうしたの?」

「ん?」

 

さっきまで誰もいなかったはずなのに、いきなり声をかけられた。驚いてバッと振り向いてみると、少女が三人いた。二人はクラスメイト、一人はさっきの食堂で会った人だった。確か名前は・・・・・

 

「ハミルトンさんと夜竹さんと鏡さん・・・・だっけ?」

「あってるわ。よく覚えてたね」

「名前は覚えろって小さい頃から言われ続けた結果だよ。名前って重要だからさ」

「あー、それは分かるかも。言ってしまえば寿限無と同じでしょ?名前がなくなればその人を指し示すものがなくなるから、それすなわち存在が消えるのと同義だーってね」

 

うろ覚えだったが合っていたようだ。っていうか夜竹さんは寿限無なんてよく知ってるな。現代っ子にとってはあんまり知らないというより馴染みがないはずなのだが・・・・・

 

「あ、ちなみに私が寿限無を知ってるのは某まゆげが繋がってる国民的アニメの影響だね。あれのエンディングで初めて知って映像資料とかを調べた結果なんだよね」

 

少し思案してみると当の彼女がネタバラシをしてくれた。確かにそれだと理解はできるのだが、ただあのアニメのエンディングの時って相当古かったような気もしなくはない。まぁ、気にしないでおこう。

そしてただ一人無言を続けているのは鏡さんである。何故かこちらの顔をずっと見続けていて、一言も発しようとしないのだ。このままだと埒が空かないのでとりあえず何か話してみることにした。

 

「鏡さん?さっきからボーッとしてるけど、どうしたんだ?」

「ん?あ、あっ、ごめんっ。ちょっと思考が停止してたみたい。ごめんね」

「いやいや、謝らなくて良いから。ちょっと気が動転してるっぽいからまずは気持ちを落ち着けようか」

「じゃあヒッヒッフーで呼吸してー?」

「夜竹さん。ラマーズ法やめい。それは妊婦さんに対しての呼吸法やったはずや」

「だって弄り甲斐があるでしょ?あと、どうして大阪弁?」

 

指摘されて初めて気がついた。うわっ、僕のポーカーフェイスというかその他もろもろ素が出るの早すぎ・・・・。あと、夜竹さんはわざとやったのか?

 

「ん?あー、悪い。つい癖が出た。家とかリラックスしてるときとか突っ込もうとするとたまに出るんだよ。一応出身は関西だから。ちなみに関西の友達からは東京っぽいって言われるんだよなぁ。多分アニメの影響だとは思うけど」

「別に良いんじゃない?北九州から来てる人も方言のまま言ってるし、無理矢理にでも標準語に直さなくても良いと思うよ?」

「あいよ。それやったら話しやすいアニメ語交じりの関西弁でいくわ。女言葉みたいとか言わんといてや?」

 

別に良いと言われたので大阪弁に変えてみたが、全員目を見張るだけでそれ以上の反応とかはなかった。どんだけ肝っ玉据わっとんねん。

 

「それはさすがに、言わないと思うなぁ」

「で、や。鏡さんはなぜにボーッとしてたん?」

「笑わないで聞いてよ?・・・・・・・・・その、懐かしいって、感じたから・・・・・」

 

理由を聞いて納得した。何故か拓海もそう思っていたのだから。

 

「それなら僕もや。昔に会ったことあるっけ?」

「ううん、これが初対面のはず」

「もしかしたら、前世で夫婦関係だったのかもしれないわね」

「あはは、それならそれで面白いよね。それで・・・・・ハミルトンさんは話し方とか無理してない?」

 

夜竹さんが今度は話をハミルトンさんに振った。当のハミルトンさんは少し目を見開いたあと自嘲するような笑みに変わった。

 

「よくわかったわね。でも、話し方を戻すのはもう少し仲良くなってからにしてくれないかしら?私、ちょっと疑り深くて、ね。それから、ティナでいいわよ」

「それならしゃーないな。誰もがちょっと喋ってもう友達って訳にも行かんしな。まぁ、ハミルトンさんが僕らと友達になったって思ったときに変えれば良いんやない?」

「そうだよー。最初から無理して変えるよりも、自分の意思で変えた方がどちらにとっても不満とかないでしょ?」

「それもそうね。ありがとう」

「どういたしましてー」

「それで、遠藤くんは何してたの?その重そうな荷物は一体?」

 

ハミルトンさんの表情が自然な笑みに戻ったところで、鏡さんが異次元に飛ばしていた本題を聞いてきた。まぁ、隠す必要すらないからすぐさま話したわけだが。

 

「ん?あぁ、一週間は自宅からの通学って聞いたんやけど予定が変更になったらしくてな。今日から寮生活になったんよ。ちなみにこの中に必要なもんが入ってるんよ。まぁ、大体は食材なんやけどね」

「それは・・・・・・・御愁傷様としか言いようが無いわね」

「やろ?で、案内されるまで覚えようとしてなかった弊害がここに来て現れたんよ。寮の場所分からん」

「じゃあ、私達が案内してあげよっか?」

 

すると鏡さんが渡りに舟な提案をしてくれた。その提案はまさに願ったり叶ったりな物だった。即時即決してしまったのは無理もないだろう。ちなみに夜竹さんとハミルトンさんは「流石ナギ!」と褒めて遣わせていた。ありがたき幸せ、とは言っていなかったが。

 

「任せても良いんか?一回行った場所なら覚えられるんだが、土地勘のない場所はどうしても方向音痴になってしまうんよー」

「確かにそれは分かるわ。地図見ないと私も土地を覚えられないのよ」

「ハミルトンさんもそうなのか」

「大まかに土地を覚えるときはそうよ。内部構造とか全部を把握するなら歩いて自分の目で確かめないといけないけれどもね」

 

話していると同類がいたのでホッとした。まぁ、僕の場合は2ヶ月位前までマッピングとかもしていたから余計に癖になっているのだろうが。それはともかく。

 

「ほんじゃまぁ、案内よろしくー」

「はーい、任されましたー。とは言っても、構造とか完全に把握してないから詳しくは自分の目でお願いね」

「大体で大丈夫やよー」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「アリーナに関しては多分授業で使っていくし、放課後で訓練するときにも予約が必要みたいだから省いて、ここが学食だよ。ご飯の注文の仕方は大丈夫?覚えたかしら?」

「ああ。ハミルトンさんが教えてくれたからな。あん時はほんまに助かった。ありがとうな」

 

心配そうに見つめてくるティナに対して拓海は頷いた。実は昼飯を買おうとしたとき、券売機の使い方が分からず途方に暮れたのだ。現金派でたまにプリペイドを使う程度の拓海にとって、入金口のない券売機はどうあがいても絶望でしかないのだ。そんなとき助けてくれたのがティナだった。彼女は分かりやすく説明してくれ、また実演も行ってくれたため事なきを得たのだ。

ちなみに、アリーナとかを少し見て回ったときに偶然静寐と会い、そのまま一緒に歩いている。

 

「どういたしまして。学生証がクレジットカード代わりになるっていう説明は入学式に言ってたけど、遠藤くんは入学式に居なかったのよね?」

「せや。なんでも僕が居る事によって入学式が進まなくなるっていう混乱を避けたかったらしいな。ただ、それやったらそれでここに案内してきた織斑先生とかが説明してくれ、とは思ったな」

「あはは・・・・・・、織斑先生はISの知識よりかは技能面の教師らしいからね。ほら、山田先生は知識面では良いけどあのテンパりを実技にされたら、ね?」

 

ここで入学式の話から静寐が話題にした山田先生に関するエピソードに移っていった。

 

「あー、確かに。それはそれで困ったことになってまうよなぁ」

「でも、山田先生も優秀みたいだよ?元日本代表候補だし」

「確かキリングシールドやったっけ。少し前に代表候補生時代の動き見たけど、あれはヤバイ。ロケランの発射寸前にライフルで弾頭を狙撃して爆発させるとか、グレネードを投げられたときに爆発させずに相手の方に撃ち返すとか、精確な射撃に定評ありすぎなんよ」

「静寐も遠藤くんもよく知ってるよね。私なんか、山田先生が元日本代表候補生だってこと初めて知ったよ?」

「一応アメリカだと有名だったから私は知ってるわ。織斑先生の再来かって言われたほどだし」

「ほぇー。そうだったんだねー」

「まぁ、その辺りの話は本人に聞いた方が良いんじゃないかしら?私達があーだこーだ言っても仕方ないでしょう?」

 

と、歩きながら話し合っていたところでようやく寮の前に着いた。楽しくわいわい話をしながら歩いていると、やはり時間の経ち方が早くて仕方がない。ただ時間が来てしまった以上、お礼を言って部屋に行くべきだろう。そう考えて拓海は彼女達に向き直り頭を下げようとしたのだが。

 

「そういえば遠藤君って部屋は何号室なのかしら?」

 

出鼻をくじくような一撃をティナからくらった。タイミングが悪いとは思いつつも表情には出さず、下げかけた頭を元に戻して答えた。

 

「1080やで。玄関から凄く遠そうやなこれ」

「うぇっ!?」

 

聞いた本人が驚くようなカウンターを繰り出してしまったようだ。ただ、原因が分からないので聞いてみた。

 

「そんなに驚いてどしたん?」

「私とティナと、それからソフィーティアさんが1081号室なの」

 

すると静寐がそう言い、

 

「1079号室は私とアストラルさんとで三人部屋なの」

 

それに合わせてさゆかも答えた。そして何故驚いたかの理由についても察してしまった。つまり、彼女達は僕の部屋のお隣さんということなのである。それは確かに驚くだろう。何故なら世界に3例しかない男性操縦者のうちの一人が寮の隣部屋に住んでいるのだから。

 

「って、夜竹さん。アストラルさんは同じクラスのあの人やろ?あと一人は誰なんや?」

「それが・・・・・・私にも分からないの。三人部屋で、アストラルさんは分かってるんだけど・・・・・」

 

するとその言葉に反応したのか、ナギがポケットの中に入れていたらしい寮の鍵を取りだし何かを見ている。そして意味ありげに顔をゆっくりと上げてこちらを向いた。

 

「三人目は私だね。ほら」

 

と、提示された鍵には1079と書かれており、まさかのここにいる全員がご近所さんと化したのだった。ちょっと笑ってしまったが。

 

「じゃあ、部屋の前まで一緒にいく?」

 

というわけで、ナギからそんな提案がされたが了承したのは仕方のないことだろう。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

そのまま少女四人と部屋の前まで来た拓海だったのだが、ふとこのタイミングで気になったことがあった。それは

 

「相部屋の人って誰なんやろか」

「あー」

 

相部屋が女性なのは分かっているのだが、隣部屋の人が誰かも分かったのだが、肝心の相部屋が誰になるのかはまだ判明していなかったのだ。そしてこんなときに限って賑やかしが来ていた。というか、我が妹だった。

 

「やっほー、お義兄(にい)ちゃーん。そんなに緊張しても何も起こらないよ?」

「あのなぁ。相部屋の人ってことはつまり女尊男卑系女子かもしれんやろ?それに引っ越しが何時になるかは分からんからそれまでずっと一緒に暮らすことになるやろ?そんなこと考えてたら胃に穴が空くぐらいストレスがマッハで溜まるんよ?」

「確かにそれはそうかもしれないけど、でもこれってシュレディンガーの猫でしょ?っていうか女尊男卑系女子って?」

「鷹月さん・・・・・・。シュレディンガーなのは納得できるけどさぁ・・・・・・」

「皆してどうしたの~?部屋に入らないの~?」

「あぁ、本音か。いやさ、相部屋の人が誰かも分からんから不安で胃がキリキリ痛み出してんのよ」

「あー。タクって~、結構人見知りな上に~、心配性だもんね~」

「あれ?布仏さん。あなた、今・・・・」

 

いつの間にか本音と静寐も混じって会話していた。ただ、さゆかは本音の登場の仕方が気になるようで、疑問を呈していた。拓海は見ていなかったので分からなかったのだが。

 

「ん?夜竹さん、どしたん?」

「気のせい、だよね?1080号室から布仏さんが出てきたのは」

「気のせいでも偶然でもないよー。私は~、1080の住人だから~」

「は!?」

 

拓海は驚いてしまった。つまり、本音が相部屋の人ってことである。まず始めに考えたのは「女尊男卑系女子やなくてよかった」であった。ただ、色んな思考回路が色々考えて出した結論が、

 

「ふにー」

 

思考回路の暴走(オーバーロード)による思考停止(ショート)だった。つまり、意識を失って(目の前が真っ暗になって)倒れこんだのだった。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「ん・・・・・・?」

「気分はど~?」

 

目を覚ました拓海が最初に見たのは、本音が心配そうな病状をして覗きこんでいる顔であった。夢かもしれないので、とりあえずその柔らかそうな頬をつまんで引っ張ってみた。

 

「ふにー」

 

すると力が抜けるような擬音が聞こえた。自分の硬い頬をつねり、ゆっくりと本音にぶつからないように起き上がった。すると、目の前に広がる光景に腰を抜かしそうになった。何故なら自分が持ってきたキャリーケースを何者かの手によって勝手に開けられており、中の物が散らばっていたからである。

 

「待てぇい!お前ら何やっとんの!?」

「あ、遠藤くん起きたんだ」

「鷹月さん!?起きたんだ、じゃねぇよ!?何勝手に他人の物漁っとんの!?」

「いや、ピッキングしたのは私だよ?お義兄ちゃん。どうせキャリーケースの中にナマモノ入ってるだろうから救出してただけだよ?」

 

鍵を閉めていたはずなのに、と思えば思考を読んだようにすぐさまフェルに返された。完全に思考を読まれていた。一応フェルの犯行だということは特定できたが、内容が内容であるからお咎め無しという判決に至った。

 

「・・・・・悪い。そういうことなら仕方ないよな。箱に手ェつけてなければ、の話やけど」

「さすがにあれはロッカーの上段に入れたよ。流石に前にこっぴどく叱られたから学習してるよ」

「んならいいんやけど。あとサンキュ。助かったわ」

「どうせ今日はせめて同室の人にご飯作るつもりだったんでしょ?」

 

フェルが嘆息しながら話していた。ただ、実はというとそうではないのが理由である。とりあえず伸びをしつつ立ち上がりながら言っておいた。

 

「いや、最初は近くのホテルから通うって話やったからな。んで飯は用意しないって話してたから、自分で用意するしかなくてな。それが一週間分だったからそんなに入ってるだけやで」

「あー。監視の都合上、お義兄ちゃんがホテルに入ってもホテルの方で毒とか入れられるかもしれない危険性を考慮して、お義兄ちゃんも交渉した結果ご飯は自分でって約束してたよね~」

「説明乙。それのせいで食材が多かったのよさ。一週間分やったし」

「さっきも言ったけど、本当にご愁傷さまね」

 

そう言って頭を撫でようとするティナである。背伸びをして腕を目一杯伸ばしているのだが、届かない。ついにはその場で跳びはね始めた。

 

「何やってるん?」

「遠藤くん、その身長高過ぎない?」

「自覚はあるんやけど伸びてもうたんやからしゃーないやん。縮めることもできひんねんし」

 

さゆかからの質問を受け流し、ティナの跳ねる頭の上に手を置いてみた。すると一回ビクッとなったが跳ね回ることはしなくなった。とりあえず仮の手段ではあるが、当面の間は他の人が暴れたときにはこうやって止めるようにしようかと心に決めた拓海であった。

 

 

 

ティナの思考回路はオーバーフロー寸前だった。上からの指示でマークするのは三番目で彼にまつわる情報は聞いていたが、まさか結構な天然なためこちらの感情や記憶にダイレクトアタックを仕掛けてくるとは予想できていなかった。込み上げてくる感情を何とか整理しつつ、ジト目で拓海を見た。

 

「遠藤くん、いつまで手を乗せておくつもりなの?」

「あ、悪い。こうしてたら落ち着いてたからそのまま乗っけてたわ」

 

そうして離れていく彼の手。少し名残惜しいと思った自分に驚きつつ、ため息をついた。思考回路も落ち着いてきたところで、彼のキャリーバッグの異物について聞いてみることにした。

 

「そういえばソフィーティアさんが無言でロッカーに小さな箱を入れていたけど、あれには何が入っているの?」

「それは絶対に教えられへんよ。あの箱に名前をつけるならば『思い出箱』やと思うんやけど」

「確かにそれは見せられないわね。ごめんなさいね」

「かまへんよ。あれ見て不思議に思わん人の方が多そうやし」

 

一応中を見ることはダメだったが、その箱の情報を得られただけ充分聞いた価値があっただろう。後で協力する予定の人達に聞いてみることを決めたティナであった。

そしてその直後だった。鍵をかけていたはずのドアから解錠音が聞こえた。全員がドアの方を向き警戒した。本音だけはドアに近付いた。そして誰かによって開けられるドア。そこにいたのは。

 

「・・・・・・あれ?部屋を間違えた?」

「合ってるよ~、かんちゃん~」

 

そこに立っていたのは、水色の髪をセミロングにしてアンダーフレームの眼鏡をかけた赤目の少女だった。その少女を見た瞬間、一瞬だけ拓海が狼狽したのがティナには分かった。ただ、感情的には狼狽というよりも歓喜と興奮だろうか。そして彼女の事は向こうのブリーフィングで資料を見たから覚えている。

 

「ここに集まっている人達は?」

「1組のクラスメートの人がほとんどだよ~。たまに違うけど~」

 

そう言って私にチラッと目配せする本音。糸目が薄く開いてこっちを見る彼女の表情に、背中に氷柱を差し込まれた感覚がしたが、細かく殺気を混ぜて睨み返したら満足そうに口許を緩ませた。・・・・・・・本音って何者なんだろ。

 

「・・・・・・拓海?」

「まさか、簪か?」

 

そしてそこが繋がるのか、とティナは考えた。・・・・・・思わせ振りな感じだったから親友若しくは幼馴染みの可能性を浮かべて正解だったかな。

 

「久し振り、拓海。あれから成長・・・・・し過ぎじゃない?」

「失敬な。僕かてこんなに伸びたいと思って伸びてる訳や無いんやからな?」

「あと、筋肉とか大丈夫?二年ぐらい寝たきりだったでしょ?」

「まぁな。ただAH総合病院のリハビリ担当の人が優秀やったし、結構家でもリハビリは続けてたから軽く運動するぐらいなら大丈夫やで。ただ知識面は今一つやから新しい常識とかあったら教えてくれー」

「もしかして、幼馴染み?」

 

と、ここで痺れを切らしたのかさゆかが訊ねた。心の中でナイスと言っておきながら、二人の発言にこの場にいる全員が集中していた。

 

「簪とは、っていうか簪の家と本音の家とは小学校の頃隣同士でな。中学校入る前に引っ越したんやけど、そこまでは仲良くさせてもらってたんよ~」

「・・・・・・一応文通はしてたから久し振りっていう感覚じゃないけど」

「まぁまぁ~、会うのは久し振りだからね~」

 

その発言で全員が納得した。まぁ納得したフリをして、ティナは心の中で更識とはまだコネクションが無いため個人的に接触しておいて協力関係を結んでおこうと思っていた。

 

「で、簪はどうして帰るの遅くなったん?本音みたいに部屋に居るもんやと思ってたんやけど」

「そ、それは・・・・・・」

「かんちゃんはね~、専用機を一人で作っているのだ~」

「ち、ちょっと本音!?」

 

更識簪というこの人は専用機を作っているということが従者によって明かされた。彼女の名前は日本代表候補生の場所で見たので、専用機がどこで開発されているのかも公開されている。日本の場合は代表・代表候補生共に倉持技研である。その中の代表候補生の序列2位が彼女だ。

ちなみに序列1位は永久欠番となっている。そこには1組の副担任である山田麻耶女史が入っているからである。

 

閑話休題

 

そして専用機を持つような優秀な代表候補生が専用機をもらえないという事態になるというのは非常に珍しい。というのも、犯罪などを行う・不祥事が発覚した(本人が巻き込んだ場合に限る)といった事が発生すると即刻除名や処分が下されるが、彼女はオタクであるということ以外キッチリした少女である。そんな彼女がもらえないということは、他の要因があったとしか考えられない。

 

「もしかして、遠藤くん以外の男性操縦者のせいかしら?」

「・・・・・・・・どうして分かったの?」

「代表候補生の規約とか思い出しても貴女に下される処分が分からなかったからね。それなら規約以外の要因しか考えられなかったから。あ、自己紹介が遅れたわ。私、アメリカの代表候補生をしているティナ・S・ハミルトンよ。気軽にティナでいいわ。よろしくね」

「・・・・・よろしく。私も簪でいい」

 

更識簪との顔合わせは上手くいったところで、頭の上にクエスチョンマークを浮かべている他の人達に説明をすることにした。

 

「まず、IS委員会の取り決めで世界各国は国家代表と序列2位までの代表候補生には専用機が与えられることになっているの。といってもそのほとんどが先進国に当てはまるのと、発展途上国には国家代表というより、複数の国を一纏めにして代表を立てているわ。そしてその後に残りのISコアが分配されたわ。ちなみに日本は分配されたISコアの数が多いわ」

「それは家の会社が賛成したからやろ?」

「ええ。次に専用機が与えられることになる国家代表と代表候補生にほぼ例外はないわ。犯罪歴が有ったとしても国家代表になれば与えられるわ。例外として、与えられた後に犯罪を行った場合にはその立場が剥奪されるために専用機を返却しなければならないという義務が発生するけれども、簪はそうじゃないのよね?」

「・・・・・・うん。そもそも罪を犯したら家から追い出されるし」

「そうよね。それであれば国の規約以外での要因があったことになるわ。そして今年はイレギュラーな事があった」

「おりむーやはるるんやタクの事だね~」

「そうよ。遠藤くんは家の事情も考えると『ヴァーミリオン・ヴィクトアール』が専用機を開発すると思うし、他の二人はそれ以外の日本の企業、まぁ倉持技研が開発すると思うわ。そして日本代表候補生序列2位である簪の専用機は倉持技研が開発するはずだったのよね?」

「・・・・・・・・」

 

無言で首肯する簪。話しすぎで喉が乾いたので専用機からコーラ瓶を取り出して栓を抜き、ちょっと喉を潤した。

 

「ちょっとごめんね。・・・・それで織斑兄弟の専用機開発に人員を割かれた結果、簪の専用機開発が凍結して、それを引き取って自分で開発していると考えたのだけれど、あってるかしら?」

「・・・・・・・ティナは名探偵か何かなの?ほぼ全部あってて怖いよ」

 

すると理解したであろう他の人達が口々に意見を言い始めた。

 

「流石に倉持技研は酷すぎない?」

「技術者としてどうなんだろ?」

「やっぱり倉持が問題を起こしたんだね」

「倉持技研は尻軽だね~。人として大丈夫かな~?」

「一応企業代表だけど、これは流石に・・・・・」

「これはひでぇな・・・・・・」

 

そんな中、ティナにとっては気になる発言が二つほどあった。一応どちらも知識としてはあるが、形式上聞くことにした。

 

「ソフィーティアさんは、ヴァーミリオンの企業代表なのかしら?」

「あー、言ってなかったね。隠すようなことでもないから言っちゃうけど、ヴァーミリオン・ヴィクトアールの企業代表やってるよ~。まぁ、機体は魔改造されてるから原形ほとんど無いんだけどね。それはともかく、鷹月さんも気になる発言だね。やっぱりってどういうことかな?それ、問題が起きること前提でしょ?」

 

そしてその火種は静寐に移った。当の静寐は苦虫を潰したような笑みを浮かべ、一つため息をついてからゆっくりと話し始めた。

 

「私の家が特殊なところで、お父さん経由でそういう情報が入ってくるの。日本の暗部から集めてもらってるらしいんだけどね」

 

ここで表情が硬くなったのは簪と本音だった。そしてその二人に目を合わせて静寐は続けた。

 

「その暗部は更識っていう苗字のところだけど、簪のところだったりする?」

「もしそうだとしたら、どうするのかな~?」

「・・・・・・更識の苗字は珍しいけど他にも存在してるよ?」

 

完全に地雷を踏みに行っていた。もちろん対価を払っていない静寐に渡す情報は無いと言いたいのか、簪ははぐらかし、本音は口調こそ変わらないが視線には殺気を込めていた。拓海はお腹に手を当てているのでストレスにより胃がキリキリ痛んでいるのだろう。流石にそれは不味いと思ったのか、フェルが助け船を出した。

 

「静寐は、まず包み隠さず自己紹介をすればいいと思うよ?そのお父さんの事も含めて」

「うーん、その方がいいよね。あ、先に言っておくけど、今から言うことはここだけの秘密にしておいてね?」

「そんなの~、内容によるかな~」

 

完全に目が笑っていない本音も含めて頷いたのを確認した。なので静寐は声を大にして自己紹介した。

 

「私の名前は鷹月静寐です。よろしくお願いします」

「いや、そのお父さんの名前は?」

「私のお父さん?鷹月宗一郎って言うんだけど・・・・知ってる?」

 

特大の爆弾を添えて。

 




あ、次とその次も伏線回です(予告)
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