インフィニット・ストラトス アルエット・グローリー 作:イェーレミー
現在のコロナの影響によりリアルの事情が輪をかけて酷くなってまして、投稿が遅れましたことをお詫び申し上げます。
今回はただの事情説明会です。やっとこさこの辺りの設定を書くことが出来てちょっぴり満足してます。
え?ゲームしてただろって?そりゃパニシングとか原神はやるし、ファンキルは6周年だし。いっぱいガチャしました。
それではどうぞ。
追記
色文字とかエフェクトとかをお試しで使ってみました。
拓海達と別れた更識姉妹と布仏姉妹は刀奈と虚の部屋に入り、ベッドに腰掛けた。
「それで?何があったのか聞かせてもらえるのかしら?本音ちゃん?」
「え、さっきのメールって本音の招集メールだったの!?」
「ええ、しかも皆を騙すようにしないといけないというふうに書いてましたね。そんなに重要な事なのでしょうか?」
三者三様の反応があり、3人の顔が本音の方を向く。その件の本音はにへらっといつものように笑った。
「ま〜ね〜。たっちゃんとかんちゃんとお姉ちゃんには言ってたでしょ〜?私が何億年生きてるって〜」
「確か・・・・・魔法使い、だったっけ?アーネンエルベでよく会うおじいさんと同類って言ってた気がするけど」
「この世に五人しかいない魔法使いの1人、よね?魔法というのがどれほど貴重なのかは分からないけれど」
「でも、情報の正確性や切り札としては優秀なので私が居る意味が分からないんですよね・・・・・」
「お姉ちゃん〜、卑屈にならないでよ〜」
実は、更識の情報網は本音1人で賄われている。未来予知にも似た推理と情報収集能力、さらには作戦立案能力により本音が情報担当になってからは、総理大臣の協力もあってか更識の名前が世界中に轟くようになったのである。そのためか、虚は妹に対して引け目を感じるようになっていた。本音自身は自分の力が無ければ出来ていなかった事とだと常々言っているので、虚自身は極力気にしないようにしてはいるのだが。
「もしかして、何か事件でもあったのかしら?」
「うーん、事件ではあるかな〜」
「勿体ぶらずに教えて?」
「分かった〜。前に教えた不思議な親友が居たっていう話は〜、したことあるよね〜?」
その親友の話はまだ更識姉妹の仲が良かった時によくしてくれたものだ。英雄譚、とまでは行かないもののその親友と本音との珍道中には刀奈も簪も虚もスゴく興味を惹かれたものだった。それと同時に歴史の裏側で何が起こっていたとか、どんな秘密結社が動いていたか、さらには世界中を巻き込んだ事件をどんな風に解決したのかなど、当時の写真付きで細かく説明してくれたため、彼女達の歴史のテストは常に満点だった。これが原因で、虚が真面目になったり刀奈が楯無を引き継ごうとする事になっていたりする。
「うん。お姉ちゃんと喧嘩しちゃったから、お姉ちゃんとお話は聞けてないけど・・・・」
「そうね。もしかして、そのお話をするために呼んだのかしら?」
「ちょっと違うかな〜。さっきこの学校で会ったんだよ〜。だから〜、紹介しようと思って〜」
すると、反応は二分された。
「え!?そのお友達と会えたの!?本音の話とか聞きたいんだけど!?」
興味津々、といったように目をキラキラ輝かせながら本音を見る簪と、
「まさか、その為だけに呼ばれたのかしら?それなら忙しいのだし、また後でにしてくれないかしら?」
「緊急任務と思って来てみれば・・・・・・肩透かしを食らいましたよ・・・・・」
呆れながらため息をついてベッドに寝転ぶ刀奈と虚で分かれた。本音はにへらっと笑ったままだった。
「ま〜ま〜、騙されたと思って〜、話を聞いて欲しいんだけど〜?」
「明日も明日で忙しいのだし、私は寝させてもらうわよ」
「えー?ちょっとだけ、ちょっとだけだから。ダメ?」
「そうですよ。私としては話さなければならないことが沢山あるのですから。幸い時間はたっぷりとありますし」
「あれ?フェルにティナ?2人も用事なの?」
「用事がなかったらこの部屋にお邪魔してないよー」
「本当に、頭を抱えたくなりましたよ・・・・・」
「ティナ〜、さっき頭を抱えてたよね〜?」
和気藹々と、ティナとフェルと簪と本音が話し始めた。刀奈も虚も、微笑ましい光景だったから、おじゃま虫である2人は退散しようと、入り口まで歩いてドアに手をかけて
「「・・・・・・・・・・えっ?」」
その異常性に気付いた。
入口は鍵が閉まっている。本音が力を使った様子もない。留守から自室に帰ってきたのだからベランダに続く窓も開いていない。盗聴器の類が無いかどうかをISで走査した上に、その時に生体反応が無いことも確認した。それでも、何度瞬きしても、彼女達は存在する。彼女達はそこに居る。部分展開してハイパーセンサーで彼女達を確認すると、生体反応があった。つまりこれは、彼女達が何らかの方法でもって、この部屋に入ってきたということに他ならない。
「ねぇフェルちゃん。ティナちゃん?少し聞きたいことがあるのだけれど、ちょーっと良いかしら?」
「ん?いいよ?」
「構いませんよ?」
「ん?・・・・え?あれ?」
ここに来て、簪も目の前の異常に気がついたようだ。ティナやフェルをてしてし叩いてみたり、何度も凝視したりしている。
「この部屋に、どうやって入ったのかしら?」
「そこにドアがあったので」
質問を投げかければ機械のようにすぐレスポンスが帰ってきた。しかも、ティナの指さす方向は浴室に向かうためのドアである。室内構造的にもそこからの侵入は不可能であるため、ISを展開して槍を突きつけた。
「お姉ちゃん!?」
「答えてもらうわよ?ティナちゃんもフェルちゃんも、私達を油断させて何かをするつもりだったのでしょうけど。2人とも、仲良くなりたかったのだけれどねぇ」
「仕方ないなぁ」
「ですね」
「
虚は常備している小刀をティナの背後から首筋に当てて宣言した。だからこそ気づいた。目の前に居るのは人間などではなく人間の皮を被った化け物だという事に。
「あはは。チェック・メイトっていうのは詰みを表す言葉なんだよ?私達にとってのチェック・メイトっていうのは、アレになる時ぐらいかな?まぁ、私が私であるうちは絶対にならないしさせないけど」
「私達のようなモノにとっては、この程度は児戯ですね。あぁ、納得も理解も必要ないですよ。一応、本音とは違った形で真理に辿り着いたので。あるがままに受け入れることをオススメします」
虚は握っていた小刀の感覚が突然消失した事に疑問を持った。そしてティナを警戒しつつもその手を見て驚愕した。自分が持っていたのは一握りの砂だったからだ。穴の空いた樽にワインを入れたかのように、砂は指の間から零れ落ちていく。そしてティナに一瞬だけでも隙を見せた彼女を待っていたのは、さらなる驚愕だった。いつの間にか、心臓に向けて銃が向けられていた。誰に?ティナに。どうやって?右手で保持し左腕を輪のようにして、さながらニュータイプ撃ちをするガンダムのように。その銃は?何処から取り出したのか不明、予備動作も不明。何もかもが不明だった。
刀奈は今の状況に困惑するほかなかった。
「フェル・・・・・・ちゃん・・・・・!?」
「刀奈ー、それで全力なの?機械の力を使っててそれなのは、ちょーっと情けないんじゃないのー?」
フェルは唐突に槍の穂先を片手で掴んだ。それだけだ。それだけのはずなのだ。だがしかし、そこから槍はISの力をフルパワーにして使っても、ピクリとも動かなかった。ブースターを吹かして
と音が鳴ったと思うと、刀奈の持っていた槍の穂先が捻じ切れていた。ゾッとした。素手でISの装備を破壊したのだった。ブリュンヒルデや天災は元から超人だから理解出来るが、今目の前で起こっているこれはなんだ?
簪は絶句しながらも見ていた。フェルの華奢な腕で姉の専用機の槍を折るところを。虚の小刀が砂に変わり、何処から取り出すことも無く、その場で作成したかのように銃を持ったところを。そして今更ながらに気付いた。ティナとフェルは本来この部屋には居ないはずの存在だということに。だが痼のような疑問が残った。どうやって彼女達は来たのか、では無い。何故この部屋に来たのか。さっきまで話し合っていたのだから、その時に話すことは出来たはず。だが彼女達に何らかの秘密があるのなら、話が変わってくる。誰にも聞かれたくないからこの場所を選んだ、のだろう。けれども何故ここに?他にも場所はあるはず・・・・・。と考えたところで、1つの可能性に行き着いた。さっき本音はなんと言っていた?確か『親友がここに居たから紹介する』だったはずだ。つまり、
「フェル、ティナ、答えて。本音の親友は、2人なの?」
するとティナは一瞬だけ目を見開いたがすぐさま微笑みに変わった。フェルはというと、少し驚いた顔をして簪の方に振り返った。
「簪ちゃん!?それは有り得ないわよ!?」
「そだよー」
「かんちゃん大正解〜」
思いつきで言ったことだったが、それが正解だったらしい。それを咀嚼して思考して。
「え、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
後に残ったのは驚愕だけだった。
――――――――――――――――――――――――
「あ、ティナ。虚さんの小刀と刀奈の槍、元に戻しておいてー」
「フェル?私は猫型ロボットではありませんよ?」
言いながらも、ティナは槍を元通りにして、砂になった小刀は刀身を黒くして暗闇の中での視認しにくさをあげた上で元に戻した。
「性能をあげることも出来ますが、今はこの程度でも大丈夫でしょう」
「な、何が起こって」
「はいは〜い。説明するから〜、てきとーに座って〜」
色々と起こったことに反応する間もなく、本音がゆるーい声で何時ものように話した。もちろん、これからが本題なのだろう。全員が適当に座ったのを確認すると、口を開いた。
「自己紹介は〜、多分必要ないから〜、ティナ〜。お任せするよ〜」
「ありがとうございます本音。ではそうですね、さっきの話の修正からいきましょうか」
「さっきの話とは、一体何のことでしょうか?」
刀奈と簪がティナと話していたこと自体は知っているが、中身はまだ共有出来てなかったから虚は訊ねた。だがその答えは意外なところから飛んできた。
「ん?あー、ティナがFBI所属で、更識と協力したいって言ってたはずの話だね」
「あの場に居なかったフェルが言うだけで胡散臭さが増したわよ?」
「フェル、勝手に口走らないでください。補足説明程度なら別に構いませんが、引っかき回さないでください」
「りょーかーい」
疲れたように溜息をつき、ジト目でフェルを見るティナ。フェルはというと、本音に抱きつかれて頬ずりされたりわしゃわしゃ撫で回されたりしていた。本音はどちらかというとそういうのをする側ではなくされる側のはずなのだが。
「さて。まずは情報の修正からですね。簪。刀奈さん。すみません。厳密にはFBIではありませんでした。ただ更識と協力関係を結べるという点は問題無いので安心してください」
「前居たところがFBIだったからね。数年前にUGNに部署ごと異動になったばっかりなんだし、まだ慣れきってないんじゃないかな?」
「・・・・・ですね。たった数年程度の事ですし、まだまだ慣れていないのかもしれません」
「ゆーじーえぬ・・・・・って、ユニバーサル・ガーディアンズ・ネットワークのこと?」
簪がUGNという言葉に反応した。殆どは反応できないはずだが、更識という家柄もあって反応できたのだろう。もちろん、知っているのは表向きの情報だろう。裏社会で名を轟かせている更識家であってもだ。
「ユニバーサル・ガーディアンズ・ネットワーク、略称UGNは、世界中で慈善活動をしていることで有名な組織ですよね。ですが、特殊感染症対策部でしたか?そんな名前の部署は聞いた事が無いですよ?」
「それは当たり前ですよ。なぜなら、その慈善活動というのは表向きの顔ですからね」
「表向きの顔ってあなたねぇ・・・・・」
「いやいや、更識にも表の企業としての顔と裏のカウンターテロ組織としての顔があるでしょ?それと同じっていうだけだから」
そのフェルの言葉に刀奈達は反論できない。実際に更識家も表向きは由緒正しい問屋だからだ。実際はカウンターテロ組織としての仕事の中の人や物や金の動きを見て商売をしたのが始まりとされているからである。
「そういえば、20年ほど前に考古学者が中東で事件に巻き込まれて亡くなりましたね」
「フィランダー博士の事ね。いきなり話が飛んだけれど、何の関係があるのかしら?それと、あの話は事故じゃなかったかしら?」
「UGN発足のきっかけですからね」
「20年ほど前、彼はこの世界が変わってしまうほどのモノを発掘しちゃったんだ。でも、自爆して、そのモノを世界中に撒き散らしちゃったんだよ。そのほとんどは燃える飛行機の中で焼失したんだけど、一つだけ、ばらまかれたものがあるんだ」
「その何かがばらまかれたとして、公表・・・・・・しないのは、何かの意図があっての事ね?」
刀奈のその言葉に、フェルは苦笑した。そして次の瞬間、ゾクリと背中に氷柱を刺されたように感じるものがあった。目の前にいる親友が、ナニカ別のモノになったような感じがしてしまった。フェルの翠だったはずの目が、紅の双眸が睨むことなく刀奈達を威圧していた。
「まぁね。あの時考古学者は古代に封印されたウィルスを発掘しちゃったんだ。それが爆発に巻き込まれて全世界に拡散、世界中の何もかもに感染したんだよ。ただ、世界中の八割は無症状だから、まだ良かったんだよね。まぁ、残り2割が大変なんだけど。そのウィルスの名前は
そう言ってフェルは自虐的な笑みを浮かべた。もちろんそんなことを言われて咀嚼できる訳もなく。
「人を超えし者、オーヴァードですか・・・・・・。随分と仰々しい呼ばれ方ですね・・・・・・」
「まぁ、虚さんがそう言うのも無理はないかな。じゃあティナ、よろしく」
「仕方ないですね・・・・・」
発砲音がした。ティナから。フェルに。フェルはベッドに倒れ、ベッドには胸から溢れた血が滲み始めた。完全に即死である。
「ティ・・・・・・ナ・・・・・・・!?」
「何を・・・・・・しているのかしら・・・・・・!?」
「撃てと言われたので撃っただけですよ?」
「その、銃は、何処から、取り出したのですか!?」
「素材なんて周りにいっぱいあるでしょう?」
ティナの言うことは何かがおかしい。一般常識が欠けている、そんなレベルではないほどに。しかし簪にとっては味方だと思っていたティナが、親友のフェルを撃ち殺したのだ。恐怖から、それよりも何か大事なものを踏みにじられた気がして。
「い、いや・・・・・いや・・・・・・イ」
「はいはい、叫んだらお隣さんの迷惑になっちゃうでしょ?」
叫ぼうとしたら何処からか手が伸びてきて簪は口を塞がれた。刀奈と虚が簪の背後を見て驚愕している。ティナは薄らと微笑み、本音はニンマリとしていた。そして簪は背後を振り返る。
「ん?簪、どうしたの?私の顔に何か付いてる?」
「フェ、ル!?」
「そだよー?」
「撃たれ、えっ!?」
そこには何事も無かったかのように佇むフェルの姿があった。ベッドに染み付いていたはずの血も何も無く、さっき撃たれた事が無かったと思える。時間が巻き戻ったのか、本音が巻き戻したのか。そう思って本音の方を見ても首を横に振るだけ。
「でも、良かった。死んで、なくって」
「え?1回死んだよ?」
「えっ?」
「1回死んだんだよ?本音ぐらいじゃない?心臓を撃ち抜かれても無かったことにして死なないのって」
「いや〜、それなら撃ってきた人を遡って消す方が便利かなぁ〜」
事も無げに言っているが、その内容は異質そのものだった。1回死んでいる?ならば目の前の彼女は一体なんだ?
「あ、今簪ってあれでしょ。私が死んでたはずなのに、今こうして話してるからここにいる私は何なのか、とか考えてるでしょ」
「ど、どうして」
「どうして分かったのかって?さっき言ったでしょ?私もティナもオーヴァードだからだよ」
「フェル、それでは説明不足ですよ。オーヴァードにはエフェクト・・・・簡単に言えばポケモンの技ですね。それを組み合わせて異能を使うのですが、中には単体で使うものもあるのですよ。今のはオーヴァードであれば誰でも使えるエフェクト、リザレクトですね。身体が消滅していたとしても復活するエフェクトです。簡単に言えば死者の完全な蘇生ですね。残念ながら回数による限度はありますが」
驚愕に次ぐ驚愕。本音はもう既に知っているからのほほんとしているが、3人は鉄砲水のように溢れた情報量でパンクしそうになっていた。流石と言うべきか、その混乱状態からいち早く脱出したのは刀奈だった。
「それなら、フェルちゃんの血はどういうことなのかしら?肉体の損傷の回復、もしくは身につけているものも修復するのはまぁ納得も理解もできていないけれど分かったわ。けれど、さっきポケモンで例えていたのだし、ポケモンで言う所のタイプとかもあるんじゃないかしら?」
「素晴らしい洞察力ですね。その通りです。現在オーヴァードには13種類のシンドローム、ポケモンでいうところのタイプが確認されています。人によっては1種類、2種類、3種類のシンドロームを保有しています。それぞれ、ピュアブリード、クロスブリード、トライブリードと呼びますね。3種類が混ざりあっているため器用貧乏なトライブリード、1種類だけのため特化しているピュアブリード、ピュアとトライの間のためどちらかに特化していたり混ざりあっていたりするクロスブリード、と言う方が良いでしょうか」
「難しいわね」
「知らない言語を学ぶようなものですからね。そう感じるのは当然ですよ。そして先程の13種類ですが、それぞれに特徴が存在します。光を操るエンジェルハイロゥ、時と重力を操るバロール、電気を操るブラックドッグ、血を操るブラムストーカー、肉体を獣化させるなどして強くするキュマイラ、肉体を軟化させるエグザイル、波を操るハヌマーン、砂と元素を操るモルフェウス、脳が異常発達するノイマン、領域を操るオルクス、熱を操るサラマンダー、体内で薬物生成が可能になるソラリス、カービィの如きコピー能力や影を操るウロボロスの13種ですね」
「ちなみに私はブラムストーカーとノイマンのクロスで」
「私はバロールとモルフェウスのクロスブリードですね」
「だから血を操って、ベッドに染み込んだはずの血を体内に戻したんだけどね」
言ってネタばらしをするフェルだが、反応は薄い。もちろん、その程度のことであれば想定の範囲内ではあるのだが、反応されないというのは誰だって悲しいものである。
「あ、あれ?簪?虚さん?刀奈?おーい」
「さすがに、脳の処理が追いつかない・・・・・・・」
「そりゃ、そもそもの作りが違うんだし」
「それに、先程のティナさんの銃がどこから出たのかというのも気になります」
「それは簡単ですよ。ここに材料がありますから」
そうしてティナは指を指した。だが、その方向には何も無い。強いて言うならば壁があるぐらいだ。
「何もないじゃないですか」
「何も無ければどうして人間は生きられるのですか?」
虚の問いかけに対してティナは逆に謎かけのような問いを重ねてきた。どういうことなのかと考える虚に電流走る。フェルを撃った時、彼女は「素材なんていっぱいある」と言った。そして、「ここに材料がある」「何も無ければ人間は生きられない」とも言った。彼女らが自分達の常識に当てはまらないのだとすれば。
「まさか、空気から作成しているのですか!?」
「ええ、そのまさかですよ」
「ですが!錬金術では等価交換を乗り越えられないはずですよね!?」
「だってティナがやってるのって錬金術じゃないし。化学反応ですらないし」
「空気中の窒素を銃にしているだけですし」
「それだと銃の反動で壊れないかしら?」
「・・・・・お嬢様。ティナさんはもしかすると、そもそも元素自体を作り替えているのではないでしょうか?」
「操る、の方が正しいですね」
「ティナ〜、お菓子ちょ〜だ〜い〜」
「仕方ないですね。では、これをどうぞ」
「わーい」
虚は疲れたのか、突っ込みの鋭さも無くなってきた。そして、本音にお菓子を要求されたために今まで持っていた銃を本音に投げ渡すティナ。ギョッとする更識姉妹。さっきまでその銃口から硝煙が立ち上っていたのである。しかしそんなことはお構い無しに本音は大きな口を開けて。
「いただきま〜す」
「ほ、本音っ!」
「「えっ?」」
金属で出来た銃をそのままバリボリと貪り食うのかと思えば、聞こえてきたのは快音だった。それも、ウエハースを食べているような。
「うんまーい!今回はホームランバーみたいにしたんだね〜」
「ええ。刀奈さんも簪も、お菓子を食べるというのに変な顔になりましたからね」
「ちょ、ちょっと待って。ティナ。その銃って、フェルを撃った物、だよね?」
「そうですね。フェルを撃った物でしたね」
「どうして食べられるようになってるのよ!?」
「さっきティナが言ってたでしょ?元素を操れるって。だからその力で銃を食べ物に変えたんだよ。ティナなら角砂糖を水爆にしたり、砂漠をオアシスにしたり、ボールを太陽にすることだって児戯なんだよ」
「そんなの、人間じゃ」
「人間じゃないから出来るんだよ?確かに私達は人の姿をしてるけど、中身は全く別だったりするし。1番特徴的なのはキュマイラとエグザイルかな?キュマイラの人は車を片手で持ち上げたり肉体を変化させて獣になったりするし、エグザイルの方は○NEPIECEのルフィみたいに手足を伸ばしたりNARUT〇の君麻呂みたく骨で戦ったりするし。
「・・・・・・・・」
刀奈は色々と言われて処理落ちに陥ったようだ。簪は何かを考えたあと、何かに気付いて顔を青くした。
「ねぇフェル、ティナ。その異能、公表しない理由って、もしかして強力なデメリットとかあるんでしょ。さっきも、フェルがフェルである内とか言ってたし」
「・・・・あるよ。とびきり大きなやつがね。ウィルスってさ、大抵は人間の免疫力が抵抗することで熱を出したりするわけでしょ?」
フェルは苦笑しながら説明する。だがその内容はよく聞くウィルスへの免疫力による抵抗だった。つまり、この後フェルが言うことは、未知の感染症をばら撒いてしまう、ということなのだろうと予想しながら簪は黙って聞く。ただ、フェルがフェルである内、というのが何処で入ってくるのかわからなかった。
「でも、普通のウィルスみたいに、肉体を侵食して最悪殺す、っていうわけじゃないんだよね。もしそうだとするとレネゲイドウィルスは多分もう絶滅してるはずだし。レネゲイドウィルスの場合は、宿主の精神を侵食して人間性を殺すんだよ。自分の欲望を叶えることしか考えない化け物、ジャームにするために。肉体はオーヴァードになった時点でナノ単位で作り変わってるから、あとは自我を作り変えれば、大量殺戮を行い続ける殺戮者の完成って訳。まぁ、エフェクトを使わずに居れば何とかなるんだけど」
「例えば、誰かと恋人になっている人がジャームになったとします。すると、ジャームにとってはその恋人以外邪魔だと思うので殺すわけです。もちろん、自分がジャームだと分かっていないからいつもと同じように暮らすのですが、イラついたことがあれば惨殺したりしますね。つまり、人間から理性や倫理観や常識を排除した化け物を想像すれば一応基本は押さえられますね」
「SIDSD、あ、英語で略さずに言うとでSpecial Infectious Disease Strategy Department、まぁ特殊感染症対策部の略称なんだけど、ストレス発散用として電子制御かつVRゲームの中で擬似的にジャーム化出来るんだよ。依存性が高いからそっちで満足しちゃってる節もあるんだけど、だからこそ実際にジャームになるっていうのは忌避感を覚えるかな」
「それって今度見ることとかは出来ますか?」
簪はその強烈なデメリットを聞いて、顔をさらに青くして恐怖に陥った。だがそれとは別に、ティナの擬似ジャームとやらになった姿も見てみたいと思ってしまった。
そしてここでやっと復活した虚は、色々ありすぎて考えが追いつかなかったのか、それとも化け物の想像がつかなかったのか、いつもの虚らしくない質問をした。キョトンとするティナ。額に手を当てて苦笑いするフェル。ギョッと目を向く更識姉妹。にんまりとした笑みを崩さずに薄目を開く本音。
「今日・・・・・はちょっと遅いし、明日でも良い?別に空いてる日があれば一応見せられるけどね。そんなに気になったの?」
「いえ、その・・・・はい」
「それはそうですよね。特に布仏ですからね」
その言葉にサッと顔を青くしてティナの方を見る虚。その表情は鮮やかな恐怖だけで彩られていた。主人である刀奈も、簪もさらに目を剥いた。
「本音の親友なのに、その辺のことは知らないとでも思ってた?」
「もちろん、更識や布仏が生まれた時もその場に居ましたよ」
「というか、1番最初に布仏当主になったのは本音だよ?そこから分家とか生まれてたけど、3人は教えて貰ってたでしょ?」
「え、えぇ・・・・・・・・」
「そりゃ2億から歳数えるのはやめたけどさ、記憶力は良い方だからいつ、何があったとか、結構事細かに覚えてるよ」
「ナチドイツのことも?」
「まさか機械化兵が大量に製造されてるとは思ってなかったね」
「表にあった月がまさか偽物で、質量兵器とは思いませんでしたね」
「あー、あったあった。アレの時が1番最後だったっけ?みんな で協力プレイしたのは」
「一応会っていることには会っていますからね」
「もしかして〜、スグリンとかソラーとかヒメのこと〜?私あの時から数えると2回ぐらいしか会えてないんだけど〜?羨ましいなぁ〜いいなぁ〜」
「SIDSDに行く時にでも呼ぶ?」
「やったぁ〜」
「ピ、ピラミッドの事とかも覚えているのかしら?」
「いや、アレは忘れる訳には行かないよ。スフィンクスは目からビーム出すし口元を変形させてレールガン撃ってきたもん。ティナが初めてリザレクトした時じゃない?アレ」
「まぁ、その代わりアレのおかげでビーム兵器もレールガンも作れるようになったので感謝しかないですね。ピラミッドの上部が開いて滑走路が出来上がったのには浪漫を感じられずにはいられなかったのですが」
「分かる〜。でも〜、スグリやソラの技術を〜オーパーツとして使うのはキレたから滅ぼしちゃったよね〜」
「あの時、本音の本気を見たよね。外見はそのまま中の生物だけを殺す、なんて何処のバグかと思ったね」
「流石にあの芸当は私には無理ですよ」
「私も無理ー」
「アマネ辺りだとどうなんだろ?」
「兵器に対して傷を与えずに、というのは難しいですよ。元に戻すというのならアマネよりもリンネの方が、でしょうね」
和気藹々と会話が繋がるが、フェル達が会話を繋げていく度に刀奈や簪、虚にとっては彼女達が本音と同じ時間を過ごしていたということを理解せざるを得なくなった。
「・・・・・その様子だと、他にもいるのね?知り合いかどうかは分からないけれど」
「2人だけでSIDSDを名乗ってるわけじゃないよ。支部はないけれど、本部もしっかり存在してるし」
「それなら、呼びましょうか?ワームホールとどこでもドアと、どちらがいいか教えてもらえれば」
「じゃあ、ワームホールかな」
刀奈が話を逸らすためか話題を変えてきたが、ここのメンバーを驚かせるためには誰が良いのか。2人には既に3人の姿が思い浮かんでいた。過去に会った陰湿かつ邪悪かつひねくれた魔女のように、口元は三日月のような笑みを浮かべて、彼女達を呼び出すためにいつもの使い慣れたスマホから、彼女達に連絡を取った。返事はすぐに来た。全員がOKとのことだった。
「ティナ」
「分かってます」
合図をすれば床に穴が空いた。もちろん、実際に穴が空いた訳では無い。ワームホールとして座標を固定したのである。
「はーい!呼ばれて飛び出てどどどどーん!天っ才っ殺戮系美少女の紅葉雪音ちゃんをお呼びかなー?」
「雪ちゃん!?」
「あり?フェル?・・・・バラしたの?」
「もち。だってそりゃ、本音経由でバラされたし。それに、被害は最小限の方が良いでしょ?」
「それはそうなんだけどにゃー」
「え、本当に雪ちゃんなの?」
初めに勢いよく飛び出てきたのは紅葉雪音という少女だった。彼女、というより紅葉家というのは更識と共に日本の暗部を担う片翼である。更識は諜報や暗殺など手を広げているが、紅葉は暗殺とその後始末のみを仕事とする。そのため更識のように表の顔は存在せず、政府の命令や金で雇われて暗殺をすることを生業としている。もちろん、お互いに協力しなければ成功しない任務も存在している。つまるところ、彼女とは幼馴染なのだ。それも、ズブズブと深い沼にハマっているぐらい。
「ゆ、雪、さん・・・・・」
「んもー、簪ちゃん?さん付けはやめてって言ってるでしょー?同じ年代なんだしにゃー」
「・・・・・・・ゆ、雪」
「よく出来ましたにゃー」
「同年代って・・・・・。いやいや、雪は20超えてるでしょ?お皿を鑑賞しながらそれを肴にしてお酒飲んでるし」
「だから驚いたんだよー?20歳過ぎてるのに高校に潜入しろ、だなんていうのがティナから言い渡されたんだしー」
「えぇ・・・・・・」
今いる更識家と布仏家のメンバーの中で1番の年長者である虚よりも年上ということに、虚自身引いていた。それはそうだろう。今まで同じ年代だと思っていた親友が、実は既に成人していただなんて聞くと、今までの話し方や何やらが失礼だったかもしれないというふうに考えてしまうからだ。もちろん、彼女がそれを嫌う思考である、というのは重々承知の上なのだが。
「それで?フェル、もしかして私達と共同戦線を組む流れにしたの?」
「そういうこと。雪は理解が早くて助かるよ」
「というより、それ以外の選択肢が無いだけだからねぇ。そうなったら、今までやってこなかった紅葉家の全力バックアップの元、世界の更識と呼ばれるほどの実力になった更識家のパワーバランスをさらにこっち側に崩せるにゃー。オーヴァードの能力で検索とか予測とかを」
「その辺は私がするからだいじょぶ〜。更識の情報網は私が要だし〜」
えっへん、というふうに胸を張る本音。これが2億以上の歳を重ねた女の子?である。
「本音ちゃんが味方なら心強いにゃ〜」
「ねぇフェル。あとの二人も、私達の知ってる人なの?」
「よく分かりましたね。その通りですよ」
そう言って、残りの2人も出てきた。本音も含めた4人は、それぞれの驚き方で感情が彩られた。
まぁ、この密談により彼女達の関係が密になったのは言うまでもない。
「で?殺戮大好き家系の虚さん?どうする?明日見に来る?見に来るんだったら色々向こうのメンバーに伝えておかないといけないんだけど」
「お願いしても、いいですか・・・・・」
「分かりました。では、そのように」
布仏家に殺戮大好き設定が追加されたよ!
とりあえずここからは巻きで行けたらいいなぁ(願望)