ウルトラマンメビウス BRAVE NEW WORLD   作:ローグ5

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以前投稿した『光に触れて、その先へ』の続編となる話です。

本作は1990年代終わりごろからウルトラマン達と地球人が怪獣や宇宙人と戦い続けている世界観のになっており、複数のウルトラマンが登場する作品です。


暗殺宇宙人 ナックル星人 キャザ
彗星怪獣  ガイガレード      
                         登場


再誕-REBIRTH- 

夢を見た。まだ彼が20代の前半だった頃のことだ。自分の無力さに絶望していた頃に彼は奇妙な夢を見た。

 

夢の中で彼がいたのはどこかの遺跡のような空間だった。そこに生物の姿はないがどことなく古代を思わせる森の中であり、空の色は色あせた写真のような色をしていた。

 

「ここは・・・」

 

「ここはですね.えーっとなんて言えばいいんでしょうか・・・・・ネクサス空間?」

 

気が付くと彼の前には年頃らしい仕草で首をかしげるショートカットの少女がいた。10代半ばほどの少女は整った顔立ちをしており、なによりもその明るい表情は同年代の男子だけでなく老若男女問わず人々から愛されていることを感じさせる、魅力的なものだった。だが彼は少女につられて笑うことはない。むしろ気づかわし気に声をかける。

 

 

「いやそんなことより・・・君は大丈夫なのか?」

 

 

明るい表情とは裏腹に、少女は有体に言ってボロボロだった。服のそこかしこが破れているうえ、頭部を始めとして血が止まりかけているものの、その体には多くの外傷があった。そしてなにより仕事柄のせいか、この不可思議な空間のせいかは分からないが、彼は少女が心身共に疲弊しきっていることを見抜いていた。

 

 

 

「あははは 私は大丈夫ですよ ちょっと疲れていますけど友達と一緒にばっちり生きています!ただちょっとしばらく戦うのは無理なんで・・・急なんですけどこれ、お願いしますね!」

 

そういって少女は彼に懐に入っていたものを差し出した。それは鞘に入った白い短剣のような道具だった。中央には美しい緑の宝石のような物がはまっており、それを守るように赤と黒の塗装がなされている。

 

 

「戦うって・・・・一体何と?これを使って戦うのか?」

 

「すいません、時間がないんであまり多くは説明できないんです。ただ時が来たら分かりますとしか。ただ私が言えるのは私の次はあなたがこの力に選ばれて、ウルトラマンネクサスとして戦う運命にあるってことです。」

 

 

「ウルトラマンネクサス?俺が?ということは君が・・・・」

 

 

ウルトラマンネクサスは地球を滅ぼそうとしたバット星人に地球人と一体化して立ち向かい、地球を守り抜いたウルトラマン、この世界の地球のウルトラマン・ザ・ファーストというべきウルトラマンである。自分がそれに選ばれたことに彼は困惑するが同時に私の次という少女の言葉に反応する。

 

 

「ええ!私はウルトラマンネクサスの変身者、デュナミストでした!あなたの先輩ってことになりますね!」

 

「そうか・・・君が・・・・地球を守ってくれてありがとう、地球人を代表して礼を言うよ。でも俺がウルトラマンになるのは無理だ。」

 

 

彼の言葉にどこか誇らしげに胸を張っていた少女はええっ、とややオーバー気味に驚いた。

 

 

「俺はそんな立派な人間じゃない。最愛の人すら守れなかった愚かで無力な人間だ。もっと他に的確な人が」

 

「そんなことありません!!」

 

 

少女は自嘲を断ち切るように声を張り上げる。

 

 

「大切なのは力じゃありません!誰かを守ろうとする心です!!ネクサスさんがあなたを選んだっていう事は、あなたがそういう心の光を人一倍持っているってことです!!」

 

「心の・・光・・・」

 

「そう心の光です!そしてそれはあなたのだけじゃない!周りの人から受け継いだ光だってあるはずですっ!あっやばっ!」

 

 

そこまで言い終えた所で少女の体が透けていく。

 

 

「時間を超えたのもあってちょっとエネルギーを使いすぎました・・・。私はそろそろ戻ることになりそうです。あと最後に一つだけ、周りの人だけじゃなく自分を大切に・・・」

 

そういって少女は消えていく。それと同時に彼の意識もまた遠のいていぅた。

 

 

それは絶望に屈していた彼が再び立ち上がるきっかけとなった日、だれかを守る為に戦おうとした日、そしてウルトラマンネクサスになった日のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

細波リオは目覚まし時計などを使うことなく、目が覚めた。今日は久しぶりにとった連休の一日目で起きる必要はないのだが、もう十年以上続けている対怪獣レスキューチーム隊員としての性か、自然に目が覚めてしまった。

 

(久しぶりに見たなあの時の時の夢、俺もあの子も若かったな・・・・まあもう十四年も前になるから当然は当然か。)

 

そう思うリオは机にならべられた写真を見やる、まだ新人だった頃の彼と婚約者と映った写真や、それよりも年を取ったリオが何歳か年下の女性や小学生くらいの少年と撮った写真、いずれも彼の人生を彩る思い出の詰まった大切な写真だ。それらを一瞥し、リオは身支度を整え、部屋から出ていく。今日彼にはいくべき場所があった。

 

「あ~副隊長おはようございます~」

 

基地とその周辺地を分ける門のあたりでリオは普段彼のチームのオペレーターをしている女性隊員と会った。間延びした口調とは裏腹に頭の回転が速く指示も的確で、リオ自身も彼女の指示に何度か助けられている。

 

 

「ああ おはよう ところでなにか怪獣に関する動きはあったか?」

 

「いやーありませんよ~先週のティグリス君もアンデスでゆっくりしてます~」

 

 

オペレーターが差し出したスマホの画面には長い尻尾を持った4本足の怪獣、ティグリスがのんびりと欠伸するさまが映し出されていた。先週九州に現れた個体を鎮静化させ怪獣共存区に移送したのだが、特に問題はないらしい。どうやら前回の怪獣の移送計画はうまくいっているようだ。

 

 

「それならいいや。せっかくの休暇だし楽しんでくるよ」

 

「ごゆっくり~今日もやっぱりいつものあの公園行くんですか~」

 

「ああ十何年も前からお気に入りの場所だからな」

 

「そうですか~副隊長なら大丈夫でしょうけど、不審者に間違われないようにしてくださいね~」

 

「・・・・・・・」

 

 

のんびりとした口調で放たれる思いのほか厳しい言葉にリオは肩をすくめる。確かにそれは重要な事だった。

 

 

 

 

 

リオは春の日差しの中、手入れの行き届いた公園の中を散歩する。この広い公園は本格的な運動施設から屋根付きの休憩用スペースなどおよそ人々が公園に求める設備をすべて満たしており、ここらの地域住民の憩いの場となっている。

 

のどかな風景の公演を一通り散歩した後、公園の入り口付近にある休憩スペースにあるベンチに腰かけたリオは屋台で買ったホットドッグをかじりながら周囲を眺める。

 

(やっぱりここはいつ来ても平和だな・・・。みんな笑顔で幸せそうだ)

 

 

リオがこの公園を好むのは設備が充実しているからではない。設備や雰囲気のせいか、あるいはまだ明るい時間に来ているからか、公園にいる人々が老若男女問わず皆幸せそうな顔をしているからだ。

 

(俺も一人の人間なりに頑張った甲斐があったかな、なあ奈菜・・・・・)

 

リオは今はもういない、けれどいまだに彼にとって一番大事な人間である婚約者に呼びかける。彼女もまたこの公園が好きだった。良く二人でこの公園に来ては他愛のない事をして楽しんだ。それはリオをいまだに支え続ける大切な思い出だった。

 

 

 

そうして穏やかな時間を過ごしているとリオの近くの席に中学生くらいの少女が何人か座ってきた。軽いスポーツを楽しんだ後なのかラフな格好の少女たちはかしましくおしゃべりに興じている。

だがその内容は年頃の少女たちのそれとは少し異なっていた。彼女たちが囲んでいるのはウルトラマンが描かれた雑誌であり、話の内容もウルトラマンに関係したものだった。どうやら彼女たちの中に何人かウルトラマンのファンがいるらしい。

 

 

「ウルトラマンティガがアラスカに現れた怪獣レイキュバスに大勝利!!う~んやっぱりティガ様はかっこいいな~この顔立ちからして中身の尊さがあふれ出ているよ~」

 

 

少女の手にした雑誌の記事には赤と銀に紫のウルトラマンの姿が描かれている。どうやら少女はこれまで何人も確認されているウルトラマンの中でもティガを好んでいるようだ。

 

「『中の人がイケメンそうなウルトラマン』第一位だしね。でもあたしはやっぱりネクサスかなあ。あのサムライって感じのたたずまいがいいって!」

 

「あーぎんじょーちゃんのお兄さんとお姉さん小学生のころネクサスが助けてもらったんだよねー。そりゃーネクサスが一番かー。」

 

「そーそーあれ以来三葉姉ちゃんだけじゃなくて継兄ちゃんまでやたらしゃきっとしてさ、ネクサスにはマジ感謝だよ」

 

「なんか蒼色の珍しいネクサスだったらしいよ。青色のネクサスは初期の銀色や赤のネクサス、それに今のネクサスと違って二回しか目撃されたことないんだって。」

 

「へえ~ますます縁起がいいねー」

 

 

きゃいきゃいと少女たちはウルトラマンに関する話題を話している。リオは彼女たちの話に自身の知っている人間の名前が出ていたことに気づき、ちらりと少女たちを見た。先程兄弟をネクサスに助けられたと語っていた少女はリオの”後輩〝ともいうべき少年の妹であるようだ。今はもう大学生になった彼から何度も写真を見せられた妹に違いなかった。

 

あの頃彼女は小学校低学年ほどの年だったはずだが、時間が流れるのは早いものだとリオは人知れず密かに感慨に浸る。

 

 

(しかしなんというか、こそばゆいな・・・うん?)

 

もう二十年近く地球を守り続けているネクサスを始めとしてウルトラマンに好意を抱き、称賛する人は多々いる。そうした人々の声を実施兄リオは聞いてきたが、それでもまだ街中で称賛の声を聴くとどうも落ち着かない。

 

そう思った所でリオはこちらに近づいてくる人影に気づく。パーカーのフードをかぶり顔を隠した男がこちらの休憩スペースへ近づいてきていた。

 

(なんだあいつ・・・こんなとこで顔なんかかくして・・!?)

 

 

リオはその男と目が合ったような気がした。それと同時にリオは背筋に冷たいものを感じる。十数年前は日常のように、そして今の仕事においても稀にだが感じる感覚、殺気を感じた。

 

 

「伏せろっ!!」

 

 

それからのリオの行動は素早かった。少女たちに注意を促すと同時にテーブルを掴み盾とする。

 

そうした行動が功を制し、テーブルが盾となって男の放った毒針は一本もリオや少女たちに届くことはなかった。

 

それを見て男は笑う。

 

「地球人の分際でやるじゃねえか。俺はナックル星人キャザ。てめえはどうでもいいがそこのガキを頂くぜ。」

 

ブヘへへと品性が知れる笑い越えを上げた男はフードを脱ぎ捨てその正体を露にした。白い体毛に覆われた筋肉質な体に黒い顔に凶暴な赤い目、銀河中に悪名を轟かせる暗殺宇宙人ナックル星人が男の正体だった。そしてナックル星人キャザは黒く長い髪に赤いリボンを付けた少女を指さす、隣にいた少女がそれを守るように立ちふさがる。

 

 

「なんで・・・何で千歳ちゃんを狙うんですかあなたは!?」

 

「ああん?そいつがなんなのか知らないのかてめえは。ほんと地球人は物を知らねーなぁ。まあ雑魚どもは纏めて殺してうおっ!?」

 

 

幸運なことにキャザはかつてウルトラマンと鎬を削ったというナックル星人の中でも三下の雑魚だった。

うかつにもリオから目を切ったキャザに持ち前の瞬発力を活かしたリオが飛び掛かり、そのまま手にしたボウガンをたたき落として素手での殴り合いに持ち込む。

 

「こっこいつ!いい加減にしやがれっ!」

 

地球人が宇宙人相手に格闘戦を挑む事は、一見とんでもない無茶な行為に思えるが実は意外と理にかなっている。宇宙人の多くは高い身体能力を誇っているが、それは自前の能力だけでなく高度な科学技術に支えられた装備による力も多く、素の身体能力は一部の強力な宇宙人を除けば絶対的な差は存在しない。現にここ二十年の防衛隊や警察と宇宙人の戦闘では白兵戦で宇宙人を制圧した例が多数報告されている。

 

リオとキャザの殴り合いでも当初は身体能力で勝るキャザが押していたが、徐々にリオの方が優勢になっていく。いつまでたっても地球人一人を倒せないことにキャザは焦り大ぶりのパンチを放つがそれはリオの望むところだった。がら空きになったキャザの顎に右腕に添うように放たれたクロスカウンターが突き刺さる。

 

 

「ごぺっ・・・・・・」

 

 

人型である以上宇宙人とはいえ頭部が急所であることには変わらない。強烈な一撃で頭部を揺らされたキャザは糸が切れたように崩れ落ち、それをリオは素早く押さえつける。

 

「答えろ!なぜあの子を狙う! お前らチンピラ共の薄汚い商売に関係あるのか?」

 

「うぐえ・・はっ・・・地球人共はおめでたい奴らだぜ。自分たちの隣に特大のお宝が眠っていることにも気づかないなんてよ」

 

「お宝?どういう事だ!?」

 

「いいぜ 冥土の土産に教えてやるよそれは・・・・・」

 

 

その時だった。突如リオたちの百メートル程前の野原に禍禍しい色の光が降り注ぐ。その光が収まるとそこには巨大な生物がたっていた。灰色の鋭角的なフォルムに刃物のような頭部、そして強い悪意を感じさせる目、人々がイメージする宇宙怪獣としての特徴を兼ね備えた姿をリオは知っている。

 

「あれは ガイガレード!」

 

降り立ったのは彗星怪獣ガイガレードという怪獣だった。数年前にも月起動周辺での出現が報告されており、ウルトラマンティガを苦戦させた強力な怪獣である。さらに最悪な事にガイガレードはまっすぐにこちらに向かってくる。

 

(人口密集地に向かわないのは幸いだが・・・やはりあの子に狙われる理由があるのか?)

 

「君たちっ!早く逃げろっ!!その子を連れてはやくっ!」

 

「わああああああああっ!!畜生来るんじゃねえっ!!畜生畜生っ!!」

 

ガイガレードの接近を知ったリオは無力化したキャザにかまわず少女たちに逃げるように叫ぶ。よろめきながらも彼女達が逃げ出すさまを見た後、自身も防衛隊が来るまでの時間を稼ぐため怪獣を引き付ける囮になろうとする。一方キャザはその巨体にみっともなく錯乱し拒絶の叫びをあげ、先程リオに落とされたボウガンを取りに向かう。

 

 

「てめえなんかこれさえあれば怖く──────ぐぎゃっ!!」

 

まるで邪魔な障害を薙ぎ払うようにガイガレードは腹部から無数の岩を発射した。弾幕のようなそれをキャザは無論躱すことは出来ず、蚊のように叩き潰された。それはキャザの近くにいたリオも同じであり

 

「がっ!・・・・ぐあっ・・・・」

 

かけらと言えど人間を殺傷するのに十分なサイズの岩がリオの腹に突き刺さり、その中身をもはや生存不能なほどに破壊する。激痛の中リオは血と泥にまみれ地面を転がる。

 

 

(今度こそ・・最後か。何回やっても、なれないなこういうのは・・・・あの子たちは無事に逃げられたか。)

 

 

防衛軍はまだ到着しない。走馬灯のように引き延ばされたリオの時間感覚では長く感じる時間もおそらく実際はガイガレードが現れてから三十秒ほどもたっていないだろう。あの少女たちが逃げるにはあまりにも短い時間だった。ならばやることは一つだ。リオはまだ死ぬ前にやることがある。

 

「ぐ・・う・・」

 

 

震える手でリオは発煙筒の紐を引き抜く。怪獣の注意を集める成分を多量に含んだ特殊な発煙筒をリオは万が一の場合に備えて普段から携帯していた。この発煙筒の効果でガイガレードを引き付けその間に少女たちを逃がそうという悪あがきをリオは行う。その決死の行為の甲斐あってかガイガレードは僅かに進路を変えたように思えた。

 

 それを見て薄れゆく意識の中リオはただ少女たち、そしてこの地域に住まう人々の安全のみを願う。自分が思っていたよりだいぶ遅くなったがまた婚約者と会えるだろうか。リオはただそう思う。そうして彼が一生を終えることは

 

──────────────────────────────────────なかった。

 

 

 

天から光が降る。一見先程と同じように見えたこの光はリオの基へ光の速さで到達し、その身を包み込む。

 

(これは・・・・あの時と同じだが同じようで違う・・・・ならこれは!)

 

リオは薄れ行く意識が急速に明瞭になっていくと共に全身を照らす暖かな熱を持った光を感じた。それは彼がかつて知っていたそれとは同質でありながら異なる光だった。

 

「君はウルトラマンなのか!?」

 

『そうだよ。僕はウルトラマンメビウス。君たち人類とともに戦うウルトラマンの一人だ。』

 

「そうか・・・ならメビウス頼む。俺の名前は細波リオ、俺と・・・俺と共に戦ってくれ!!かけがえのない命を守るために!!!」

 

『当然だよリオさん! ともに戦おう!』

 

メビウスの答えを聞きリオは自身の足で立ち右手を高々と天に突きあげて叫ぶ。

 

「メビウーーーース!!!」

 

 

 

 

 

凶悪な怪獣におびえる人々が見た。自分たちを逃がそうとした大人の身を案じながら怪獣から逃げる少女たちが見た。現場に急行する防衛隊の戦闘機部隊のパイロット達が見た。邪悪の化身のような宇宙怪獣の前に立つ赤き巨人、ウルトラマンメビウスを。

 

 

「ギャアアアアアアアアッ!!!」

 

「ハアッ!!」

 

 

巨体から想像もできないスピードでガイガレードが空中を突進し、それをリオと一体化したメビウスが抑え込み、そのまま人口密集地から離れた地点に投げ飛ばす。それを受けて転がったガイガレード先程のように腹部から無数の岩を飛ばす。

 

 

「メビウス! 君は光剣を出す技が使えるか?できれば取り回しがきく二刀のやつをだ!」

 

『ライトニングスラッシャーがある!!それを使うんだ!』

 

「こうか!?でいいいやああああっ!!」

 

 

メビウスは両腕から短剣のような光をだし、無数の岩を切り裂いていく。メビウスとリオの技が合わさったそれは無数の岩を一つも残さず切り裂いていく。人々や街を守る美しい光の軌跡が何重にも描かれた後、最後に飛んできた一際巨大な岩を回転切りで粉砕し、その勢いのまま体を回転させながら空中に飛びあがる。

 

「はああああああああああああああああああああああっ!!!」

 

空気を焦がすような、いや実際に超高速の回転により生じた摩擦熱で空気を焦がしながらメビウスはガイガレードに飛び蹴りを叩き込む。ガイガレードは両腕の頑丈そうな鎌でメビウスを受け止めようとするが無駄だ。

 

かつてウルトラマンレオによって鍛えあげられ、その後も無数の死闘によって昇華されたメビウスの蹴りは到底一介の怪獣に受け止められるものではない。ガイガレードの鎌を粉砕し、そのまま腹の甲殻を貫き、その重厚な体を吹き飛ばす。

 

 

「ギイイ・・・・・・」

 

 

大ダメージを受けたガイガレードは忌々し気にメビウスをにらみつけ、格闘戦ではかなわないと光線を口から放とうとする。だがそうした判断は功を奏さない。すでに到着した防衛隊の戦闘機が搭載したレーザー砲や対怪獣用徹甲弾でガイガレードの頭部を集中的に攻撃し、光線の発射を阻害していく。メビウスの隣を飛翔する戦闘機のパイロットがサムズアップを送るのがメビウスと一体化したリオには見えた。

 

 

「メビウス! ここで一気に決めるぞ!!」

 

『ああ 行こう!』

 

 

メビウスが両腕を一気に広げると名前の通りメビウスの輪のような光が放たれ両手を一気に十字に組み合わせると同時に莫大なエネルギーを持つ光線が放たれる。これこそがメビウスの代名詞多くの敵を倒してきた必殺技

 

 

『「メビュームシュートォォ!!」』

 

 

名前の通り無限にも思えるような熱量を持った光線はまっすぐにガイガレードに飛び、その身を撃ち抜き爆散させた。

 

断末魔の叫びとともに爆散するガイガレードをバックに残身を決めたメビウスの姿が光となって消えていく。それは人々に今日の戦いの終焉と新たな希望の存在を予感させた。

 

 

変身を解いたリオは戦闘の影響でえぐれた大地に降り立った。その手には赤と金の太陽をかたどったようなブレスレットがある。

 

 

「ありがとうメビウス。おかげで助かったよ。おそらくあの子たちも無事だろう」

 

『いいんだリオさん。それにしても傷の治りの速さに、僕と一体化した事への順応性・・・・あなたはもしかして』

 

「ああ・・・」

 

 

リオの脳裏に映るのは十数年前凶暴な怪獣、悪辣な宇宙人、そして人の心の闇の化身といったかつての宿敵たち、そしてそれらと死闘を繰り広げた日々の記憶。

 

 

そうだ俺はかつてウルトラマン・・・・・ウルトラマンネクサスだった。」

 

『ネクサス・・・・・!彼もこの地球に・・・・・』

 

 

戦いの後の街を太陽の光が照らす。ありふれているが美しいその光景の中、十数年前は絆の、今は無限のウルトラマンとして、細波リオの戦いは再び始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




登場人物

・細波リオ

 2000年代前半にウルトラマンネクサスだった男。この地球では二人目のデュナミストであり、まだ防衛体制の整っていない地球を守り、過酷な戦いを続けていた。現在はXIGのチームシーガルのような防衛隊のレスキュー部隊の副隊長として活動している。


・七原千歳
 
 一見普通の女子中学生、どうやらナックル星人やガイガレードに狙われるような秘密があるようだが・・・・?

・ナックル星人キャザ 

 七原千歳を狙っていたチンピラ宇宙人 ブヘへへとか笑っちゃう時点で程度が知れるものである。ガイガレードの発射した岩が直撃し、死亡

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