ウルトラマンメビウス BRAVE NEW WORLD   作:ローグ5

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今回は戦闘中心の回です。


ベリアル融合獣ハイパーデス

宇宙怪獣ベムラー

磁力怪獣アントラー  
                                     登場


天と地の、光の戦士達

漆黒の宇宙を蒼く美しい地球を背に、二筋の光が駆け抜ける。その一つは禍禍しい紫の、もう一方はどこか暖かな焔のようなきらめきを感じさせる赤い光であった。

 

二つの光はすさまじい勢いでぶつかりそしてまた離れてを繰り返す。だがより強い勢で宙を飛ぶのは赤い光の方だった。禍禍しい紫の光が赤い光に弾き飛ばされる。

 

「ちいいっ! 一度倒れたばかりの貴様が、どこからそんな力を!」

 

「分からないのかモネラ星人ヴェンジェラ?お前が傷つけ利用しようとしたあの子の勇気が、この力の源だっ!」

 

「何を分けの分からない事を!っ!?貴様らまさかっ!」

 

瞬間移動を交えてメビウスの攻撃を回避しながらヴェンジェラのその明晰な頭脳はある可能性に気づく。彼のような闇の者には、理解どころか発想すらし難い千歳の行動に気が付いた事はその頭脳の優秀さを示していた。だがそれはもう遅い。

 

「ストルム器官の力を使い、手下共の闇の力を光の力に反転させたというのかっ!」

 

「そうだっ!そのまさかだよっ!」

 

凄まじい威力を秘めたメビウスの回転蹴りがハイパーデスに突き刺さり、錐もみ状態にして吹き飛ばす。

 

そう千歳が防衛隊を説得して行った事そのものは簡単な事である。かつてベリアルの配下であったストルム星人が光の力を闇の力に転移させたように、千歳も自身の持つストルム器官の持つ力を応用し、ヴェンジェラの部下を始めとした収監された宇宙人犯罪者の持つ闇の力を反転させ、メビウスやリオに渡していた。これこそがひどく傷ついていたはずのメビウスが最強形態であるバーニングブレイブとなり、ハイパーデスを圧倒している理由の一つである。

 

 

「おのれ忌々しい巨人どもが・・・・・ならば数の差に押しつぶされなさい!」

 

ヴェンジェラが合図をするとデブリ帯に隠されていた円盤が楕円形の護衛機と共に10個近く動き出した。その円盤にはそれぞれ怪獣や戦闘兵器が搭載されており、その平凡な外見から想像もできない程の危険性を秘めている。だがここでもモネラ星人はよく考えるべきだった。地球人に居場所を知られていないはずの自分が、何故先制攻撃を受けたのかを。

 

 

《シャドウリーダーより各機、槍を放て》

 

《了解!FOX3!》

 

何もないはずの宙域から放たれたスペシウム弾頭封入型のミサイルが次々と中身の怪獣ごと円盤を粉砕していく。否、その宙域には確かに何かが存在していた。モネラ星人の科学力を以てしても探知は極めて困難な、超高性能のステルス戦闘機隊が。

 

 

彼らは専守防衛を旨とする地球防衛隊にあって、侵略宇宙人への先制攻撃や暗殺を目的とした参謀本部直属の特殊戦闘機部隊、『シャドウ隊』である。シャドウ隊は防衛隊が今回の事件の様々な情報、衛星による観測データから匿名のタレコミまで――――を統合し、ハイパーデスが存在すると予想された宙域にステルス性を活かした隠密飛行で赴き、メビウスにその正確な位置を教えていた。

 

《こちらシャドウ2。敵円盤の全機撃墜を確認。討ち漏らしの護衛機の掃討に当たります。》

 

《シャドウリーダー了解。偶数番機は護衛機の掃討、奇数番機はメビウスを援護だ。スピードに惑わされて撃つ相手を間違えるなよ!》

 

《了解!》

 

一瞬のみ刃物の様に鋭利な機影を映した後、再び彼らは闇に溶け込んでいく。それとほぼ同時に残りの護衛機が爆発していき、さらにハイパーデスへ無数の小型ミサイルが放たれる。

 

「この私が舐められたものですねえっ!地球人ごときがぁっ!ぐぅっ!」

 

ヴェンジェラの怒声と共にハイパーデスのガトリングガンが火を噴き、ミサイルを掃射していく。次々と爆発するミサイルは通常の弾頭だけでなく煙幕や閃光を発する弾頭も含まれていた。そうした弾頭がガトリングにより起動し、ハイパーデスの視界を奪っていく。そこにメビウスが焔をまとった跳び蹴りを放つ。

 

「せやああああああああああああああああああっ!!」

 

「ぐがああああああっ!!!」

 

気づくのが遅れたハイパーデスは瞬間移動による回避が間に合わない。とっさに両腕を盾にするものの、回転の勢いを加えたすさまじい跳び蹴りはその両腕と顔面の一部を粉砕し、ハイパーデスを月面に叩きこんだ。

 

 

「おのれ・・・・・おのれおのれおのれぇっ!」

 

顔面が半場砕けたハイパーデスが立ち上がる。皮肉にもその構成要素となったデスフェイサーがかつてそうなった様に顔面を砕かれたハイパーデスの全身からはどす黒い怨念のオーラが漂う。

 

「もはやベリアル軍の復活などどうでもいい!私をコケにした地球人とウルトラマン共を殺す!」

 

その言葉と共に先程とは別の宙域に隠されていた2つの円盤が地球に向けて動き出す。当初の計画が破綻したヴェンジェラは、もはや千歳の確保などどうでもよく、可能な限り怪獣で地球人を殺戮するつもりであった。だが月面に降り立つリオとメビウスは動じない。地球の人々を、そして地球を守り続けてきた光の巨人を信じているからだ。

 

 

『そんな事が出来るものか、させるものか!地球の人々はお前に殺されるほど弱くも無価値でもない!』

 

「ほざけえええええええええええええええっ自らの無力に絶望しながら死ね!死ね!ウルトラマンメビウスゥゥゥゥっ!!!」

 

憎悪の叫びと共に両腕に禍禍しい刃を生やしたハイパーデスが突進する。この事件に終止符を打つ最後の決戦が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

「ふーやっと最後かあ・・・・・」

 

最後の宇宙人を文字通り蹴散らした三光翼はようやくといった感じで一息つく。彼の周りにはおよそ数十人の宇宙人が倒れている。この宇宙人たちは全てヴェンジェラの手により地球に侵入した宇宙人であり、今日破壊工作や千歳の家族友人を人質にする為に暗躍しようとしていた。

 

 

が、その目論見はたった二人の男によって破綻した。翼ともう一人の手により彼らは全員叩きのめされ無様に這いつくばっている。

 

「ツバサ。奴が隠してあった円盤が2機地球に向かっているらしい。無人地帯に誘導して叩くぞ。」

 

翼からやや離れた位置にいた男が声をかける。短く刈り揃えた金髪に深い知性を湛えた瞳の偉丈夫は懐から短剣のような形状の神器を取り出す。その名はエボルトラスター。

 

「了解です。よしと・・・・・気合い入れていくぞ!」

 

自身の顔を叩いて気合いを入れた翼は白い神器を取り出す。その名はスパークレンス。

 

 

「どうしたツバサ、好きな子の為にいつも以上に気合十分か?」

 

「もちろんですよ!好きな子の笑顔を守りたいと思うのは当然でしょう?それに俺は千歳ちゃんにも、あの子の家族や友達にも、それに世界中の人々が笑顔でいてほしいんです。その為の戦いなら幾らでも気力がわいてきます!」

 

高空で傷だらけの円盤が爆散するが、その一瞬前に二体の巨大な怪獣が射出される。それをしっかりと両の目で見た二人は勇ましく自らの手に持つ神器を掲げる。

 

「そうか。なら始めるぞ。ネクサーーーーース!」

 

「ティガーーーーーー!」

 

 

テオドール・シュミット、この地球で4人目のウルトラマンネクサスの変身者

 

三光翼、超古代人の遺伝子を受け継ぐウルトラマンティガの変身者

 

二人の体は光となり高空へと延びていく。その美しい光の軌跡は地球の人々を、シェルターの中で戦いを見守る千歳の顔を照らしていた。

 

 

 

円盤の一方に搭載されていたのはかつて初代ウルトラマンと戦った怪獣ベムラー、もう一体はクワガタの様な角と強靭な外骨格を持つ磁力怪獣アントラー。この二体がハイパーデスを除き、ヴェンジェラの保有する最後の戦力だった。

 

関東の無人地帯に叩き落とされたこの二体の凶悪怪獣は、自身の敵であるウルトラマンに対して憎悪を込めたうなり声をあげるが、すぐにその唸り声は困惑するような調子になった。ネクサスが自身の腕から清浄な波動を放ち、周囲の空間を特殊空間メタフィールドに作り替えたからだ。

 

「ガギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

「ブブブ・・・・ジュアアアアアアッ!!」

 

それでも二体の凶暴怪獣は持ち前の凶暴性を発揮し、それぞれの敵となるウルトラマンに向かっていく。

 

アントラーが向かったのはこの空間を作り出したネクサスである。アントラーはその怪力と強靭な体を活かして、突進からの一撃でネクサスを粉砕しようとする。

 

『ヘアアッ!』

 

「ギギィッ!?」

 

だがアントラーの一撃がネクサスを粉砕することはなかった。ネクサスがカウンター気味に放った、ただの拳の一撃でアントラーの突進は止められ、その強固な外骨格の一部が砕ける。

 

『どうした。そんなものなのか貴様の力は。』

 

ネクサスは基本形態と言える銀色の姿から、すでにテオドール特有の強化形態に姿を変えている。アントラーの攻撃を真正面から受け止め、逆に強烈な反撃を叩き込むネクサスの姿は先程よりも一回り程大きくなっていた。その理由は体の各部を鎧の様に覆う装甲である。

 

手足は濃い緑色に銀のラインが奔った小手や具足のような装甲に覆われ、また胸部もカラータイマーの周囲を中心に堅牢に装甲されている。その重厚な様相は武士的な印象の強かった過去のネクサスと異なり、鎧をまとった騎士を見る者に想像させた。これこそがテオドール・シュミットの変身するネクサスの強化形態、ジュネッスグリューンであった。

 

『その厄介な角を折らせてもらうぞ!うおおおあああああああっ!』

 

勇ましい叫びと共にネクサスはアントラーの片角をへし折る。その怪力に主張のあるアントラーを圧倒していることからもわかる通り、ジュネッスグリーンの特徴は堅牢な装甲とウルトラマンの基準からしても非常に強力なパワーである。代償としてスピードの低下をもたらすものの現在のような近接での殴り合いでは関係ない。そのパワーを最大限に活かしてアントラーを圧倒していた。

 

『もう一発だっ!』

 

さらにネクサスがアントラーの角をへし折り、アントラーは潰れたような叫び声をあげる。。銀と緑のウルトラマンが破城槌のような拳を打ち込み、アントラーの外骨格が砕けていく。その力強さは地球の人々が最大限の信頼を寄せるウルトラマンであるネクサスに寄せる、信頼の強さを象徴しているようですらあった。

 

 

 

 

翼の変身するウルトラマンティガは三つの形態を使い分け、臨機応変な戦いを可能とするウルトラマンである。基本形態のマルチタイプに加え、速い相手ならば速度の出るスカイタイプに、力のある相手なら剛力を持つパワータイプになって対応する。

 

だがベムラーはバランスの取れた能力を持ち、特化した能力を持たない為タイプチェンジの判断がしにくい厄介な相手である。

 

―――――常識的に考えたならば。

 

「ゴギャアアアアアアアアアアアッ!」

 

(これは・・・・・うん、スカイタイプなら躱せる!)

 

ベムラーが無数の光弾を放つと同時にティガはマルチタイプからスカイタイプに代わり飛翔し、青い光弾を次々躱していく。ベムラーは空中を自由自在に飛行するティガを追い、さらなる光弾を放つがとうとうエネルギ―が尽きる。それと同時にパワータイプに変身し、落下の勢いを載せてベムラーに瓦割のような強烈な打ち下ろしの拳を叩き込む。

 

(今のは聞いただろ・・・・おっと!)

 

ベムラーは倒れた勢いを利用してしっぽを振り回す。先端の鋭い輝きや攻撃の角度から、ティガは回避や受け止める事よりもこの一撃を捌く事を決断し多彩な技を持つバランスの良いマルチタイプにチェンジ、光を纏った手刀で尻尾をはじいた。そうして尻尾があらぬ方向に振り回され、がら空きになったベムラーのボディに再度パワータイプにチェンジし蹴りを叩き込む。さらにその一瞬後にはスカイタイプにチェンジし、ネクサスに反撃しようとするアントラーへ牽制の光弾を素早く見舞う。

 

 

『よーしよしよし今日も冴えてるぞ俺!ああ、千歳ちゃん・・・メタフィールドだから見えないだろうけど心の目とかそういうサムシングで俺の活躍を見守ってくれ・・・・・!』

 

翼は周囲にはスポーツ万能の青年として知られているが身体能力や体格が飛びぬけているわけではない。彼がそう評価されるのは一重に判断から行動までの速度が人間の限界とほぼ同等まで早い事が理由である。

 

超古代人の血筋がもたらすものなのか、翼はその状況において自分のやるべき事を迅速に判断し、実行に移す能力が地球人のほとんどどころか高い身体能力を持つ宇宙人よりも高い。そんな彼がウルトラマンの力、特に三つの形態を使い分けられるティガの力を得たならばどうなるか。

 

(っ! テオさんがアントラーを殴り飛ばした!ならこっちもベムラーを)

 

一秒未満という、極めて短い時間で適切に形態を切り替えて戦う事すら可能である。今も翼の変身したティガはマルチ、スカイ、パワーの三タイプを瞬時に切り替え続けベムラーを追い詰め、ネクサスの一撃でアントラーが吹き飛んでくるのを見るや否やパワータイプの力でベムラーを殴り飛ばし、位置を強引に変えて二体をぶつけた。

 

「ガグッ・・・・・・!」

 

「ギジュアッ・・・・!」

 

轟音を立てて二体の怪獣がぶつかり倒れ伏す。それを後目にティガとネクサスの二人の巨人が並び立ち、うなずきあった。そしてティガは両腕を広げた後にL字に組み合わせ、ネクサスは右腕を引きタメを作るような動作を行う。

 

「ゼペリオン光線!」

 

「ブレイクレイシュトローム!」

 

ティガのL字に組み合わせた腕から、ネクサスのカタパルトのように打ち出された拳から光がほとばしり、アントラーとベムラーを撃ち抜いた。そして二体は爆散し、塵となって大気中に流れていく。

 

それと同時にネクサスの展開したメタフィールドが消失していき、再び現実世界に二人のウルトラマンが現れた。

 

 

『さすがに今からあちらに加勢する余裕はないな・・・・・あとはメビウスに任せるしかないか。・・・・・や飲んだぞメビウス。もっとも君がアイツに負けるはずがないがな。』

 

『頼みましたよメビウスさーん!あの卑怯者をぶっ倒してくださいねー!』

 

人々には聞こえない声でメビウスを激励し、ティガとネクサスは、二人の変身者は光に戻っていく。地球の人々はその姿を仰ぎ見てある者はあこがれを、ある者は尊敬を抱く。地球を守り続ける巨人がこの地球上の人々の多くが敬愛していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




登場人物紹介

テオドール・シュミット

本作品の世界では4人目のデュナミスト(ウルトラマンネクサスの変身者)。名前の通りドイツ人であり、普段は医者として活動している。

彼の変身するネクサスの強化形態はジュネッスグリューン。緑と銀の強化装甲によりパワーと防御力が大幅に強化されており、その強みを活かした格闘戦で怪獣を圧倒する。



三光翼

これまでの話ではただの七原千歳のストーカーでしかなかった彼だが、実はウルトラマンティガの変身者。
判断力に優れた彼は場合によっては一瞬毎にティガの形態を変え、臨機応変に戦う事を可能とする。

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