皆さん、読んでいただき誠にありがとうございます。
これからも頑張っていきたいと思います!!
それでは、本編スタート!!
⇒惟臣side
「さようなら…烏間先生、ビッチ先生…」
「さようなら…」
「あぁ…気をつけて帰るように。」
綾崎君が自身のことを話した日の放課後…大半の生徒の顔は暗く、足取りも重かった。
無理もないだろう。
なぜなら…
「まさか…あんな過去を背負っていたなんてねぇ…。
この国は危険とは縁遠い国なのに…それでもいるのね、平和というこの国がもたらす恩恵を受けられない人間って…」
イリーナの言葉のとおりだ。
とにかく…重いのだ。
いつ狂ってもおかしくない。
そんな過去を過ごして来たのだ。
「…でもいいの?
あの子たちをあのままにしておいて…。」
イリーナのその疑問はもっともだ。
だが───
「彼らももう受験生だ。
いつまでも選択肢を人任せにしていてはダメだ。
だからこそ…俺達に今出来るのは、彼らが自分で何をするべきか理解するまで傍観している事だけだ。」
いつまでも大人が選択肢を用意していては人は成長しない。
時には…突き放して、本人に考えさせないといけない。
「…ふぅん。難しいものね、大人って。」
⇒桃花side
放課後───
今日は誰も、暗殺訓練をしようとする生徒は出て来なかったため、全員で下山していた。
いや、全員ではない。
綾崎君と渚君、それと歩ちゃんの3人は先に帰って行ったため、それと…寺坂君が関係ないとばかりに我先にと帰って行ったためここには居ない。
だが、それでも───
皆、見るからに暗い顔をしていた。
鏡を見ていない、おそらく…あっても見ないと思うけど、私も皆と同じように暗い顔をしているだろう。
「なぁ…ちょっといいか?」
不意に、三村君が口を開いた。
「俺達ってさ…いったい何様のつもりだったんだろうな…?
E組に落とされたくらいでさ…全てが終わったかのように諦めてさ…。
で、必死に俺達に前を向かせようとしていた殺せんせーにもあんな事言っちまった…。」
あんな事…おそらく、テスト前に殺せんせーを前にして言った諦め…いや、今となってはただ逃げるための口実だったのであろう言葉だ。
「たぶん…E組だからという理由で差別されることに慣れちまったんだろうな…。
だから、簡単にあんな事が言えるんだ…。」
「知らなかったとはいえ…私たちよりも過酷な人生を歩んできた人間の前で言っちゃうなんて…」
「あいつはそれでも前向きに生きてきたのに…」
「あんな家庭なら…たぶん小さい頃からずっと耐えてきたんじゃないかな…?」
綾崎君に対して罪悪感を感じたのか、次から次へとそんな言葉が飛び交った。
「あいつさ…人の輪に入るのは上手いのに、なんか一歩距離を置いているように思ってたけど…
あいつ、俺達を自分よりも上に見ていたんじゃねーか?」
杉野君のその一言にハッとなる。
なるほど…綾崎君の親は自分を見てくれず、ただお金が手に入れから手元に置いていてくれただけだったのだ。
その点、私たちにはE組に落ちた後もちゃんと育ててくれる親が居る。
「なんにせよ…これからどうやってあいつと向き合っていくか、だな。」
「それ考えるとさ…綾崎は元から強いけど…渚と歩っちも強いよね。」
「うん…そうだね…。」
ひなたちゃんのその言葉に…私はそう答えるしかなかった。
~~場所は変わって~~
全員で集まって考えていてもしかたがないという磯貝君の言葉で私たちは解散し、それぞれで考えることになった。
とりあえず、私は家に帰ってから自分に何が出来るのかを考えることにした。
───そこに、クラクションが聞こえてきた。
音の方を向くと、大型のトラックが此方に走ってきていた。
どうやら、歩行者用信号が赤だったことに気づかずに進んでいたのだろう。
あまりのことに硬直してしまった。
もうダメだと思い、せめてぶつかる瞬間を見てしまわないように目を閉じ、意味はないだろうが衝撃による痛みを和らげようと軽く歯を食いしばる。
だが───
車と衝突したような、そんな衝撃はなかった。
そのかわり、誰かに抱えられて、宙を舞ったかのような感覚と風を感じた。
不審に思い、目を開けると───
「綾…崎君…?」
私をお姫様だっこで抱えて跳ぶ綾崎君の姿があった。
「大丈夫ですか、矢田さん?」
「う…うん。…助けてくれてありがとう、綾崎君。」
歩道に降りた綾崎君はすぐに私を下ろしてくれた。
だが、立つことが出来ず、その場に座り込んでしまった。
「君達!!大丈夫かい!?」
そこに、あのトラックの運転手と思しき人が血相を変えてやってきた。
「ええ、僕も彼女も何ともありませんよ。」
「ならよかった…。
だけど…君も考え事をしていたのかどうかは知らないけど、前はちゃんと見ないといけないよ。」
「は…はい。
すみませんでした…。」
「分かったならいいんだ。
じゃあ、気をつけてね。」
そう言って、トラックを走らせて去っていった。
「さて…立てますか、矢田さん?」
まだ歩道に座り込んだままだったことを思い出し、立ち上がろうとしたけど───
「あ…あれ!?立てない!?」
「あー…。たぶん、突然いろいろな事があったから腰を抜かしたんだと思います。」
でしたら…と綾崎君がまた私をお姫様だっこの形で抱えた。
「ちょっ!!…綾崎君!?いったい何を!?」
「何って…立てるようになるまで僕が足代わりになろうかと…」
「だからって、この体勢はちょっと…///」
ちょっとどころか、かなり恥ずかしい…///
「…?あぁ…。僕は大丈夫ですよ、気にしてませんから。」
「私が気にするの!!」
綾崎君って、もしかしなくても…デリカシーがない?
「じゃあ、どんな体勢ならいいんですか…?」
綾崎君がそう聞いて来たので…
「じゃあ…おんぶで…。」
そう答えてみた。
「分かりました。では…一旦降ろしますね。」
そう言って私を降ろした綾崎君は私の前にまわり背中を向けてしゃがんだ。
重心を後ろに傾けているのはたぶんだが私の今の体勢からでもしがみつきやすくするためだろう。
こういう優しさを見せられると、皆が綾崎君を好きになるのが分かる気がする。
寄りかかったのを確認した綾崎君は私の太ももに腕を回した後───
「しっかり捕まっていて下さいね!!」
そう言って歩き出した。
綾崎君の背中、意外と大きいなぁ。
「そういえば、綾崎君って先に帰ってたよね?なんでまだこんなところにいたの?」
ふと、気になったことがあったので聞いてみた。
そう、私の記憶が正しければ…綾崎君は先に帰っていたはずだ。
なのになぜ、こんなところにいたのだろうか。
「それが、学校に忘れ物したと思って取りに行っていたんですが…カバンの中をよく見たらあったので山の中腹あたりから戻ってきていたんですよ…。
そしたら、あんな事になっていたので…。」
なるほど、要するに偶然というわけか。
そうだったとしても、私のことを見てくれているように思えて嬉しかった。
だから、綾崎君の背中にさらに身を寄せた。
「あの…矢田さん?」
「どうしたの、綾崎君?」
「いえ、その…当たってるんですが…。」
「当ててるんだよ?」
「あ、もしかして…意識してくれてる?」
「まあ、矢田さんみたいな可愛い人にそうされたら…というより、そんなことして…勘違いされたらどうするん「いいよ…。」…え?」
「綾崎君とだったら…勘違いされても…。」
「今の…どういう意味なんですか?」
「なんでもなーい。」
私も参加しちゃおう…綾崎君の争奪戦に…
⇒渚side
次の日───
「綾崎、ちょっといいか?」
僕と西沢さん、それと寺坂君を除いた全員がハヤテ君の席の周りを囲んだ。
「昨日の放課後、少し考えさせられた。
その…悪かった。
前向きに進もうとしているお前の周りで簡単に諦めてさ…。
でも、誓ったんだ。
もう、簡単に諦めたりしない。
綾崎と、
───いや、ハヤテを含めた皆で前向きに突き進んでいく、ってな。
だから、これからもよろしくな。」
その宣言にハヤテ君は
「はい。
こちらこそ、よろしくお願いします!!」
笑顔でそう言った。
中間テストで僕たちは壁にぶち当たった。
E組を取り囲むぶ厚い壁に───
だけど、ハヤテ君のおかげで胸を張ることが出来そうだ。
自分がこのE組であることに
本編の最大文字数更新!!イエーイ!!
「作者さーん、1ついいですか?」
どうした-ハヤテ?
「この作品、カルマ君の学年順位、1つズレて5位なんですよね。
上はどうなっているんですか?」
あーそれね。
ネタバレになるから全部は言わないけど、浅野君は学年1位じゃないよ。
1位は集会の時間で地の文やった人。
「ほぼ言ってるじゃないですか…。」
まあまあ、いいじゃん。
というわけで、次回もお楽しみに!!