暗殺者のごとく   作:aros

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皆さん、いつもこの作品を読んでくださって誠にありがとうございます。


最近、投稿するのが楽しくて仕方ありません。


これからも、よろしくお願いします。

それでは、本編スタート!!


第21話 しおりの時間

⇒渚side

 

 

 

「そっか…じゃあハヤテ君は…」

祇園を訪れた僕たちは、突然現れた不良に襲われ…茅野と神崎さんが連れ去られた。

 

隠れていたらしく無事だった奥田さんから僕たちが気絶していた間のことを聞かされた。

 

「はい…

茅野さんたちを助け出しに行くって言ってました…。

あと…私たちを先に行かせたこと…すごく後悔してました。」

「いや、間違っていたわけじゃないと思うよ。

…ただ、相手が実行に移すにあたってハヤテ君を要注意人物として警戒していたからあんな作戦にしたんだと思うよ。

しまった…今日一日ハヤテ君が立ち止まって周りを確認するような仕草をしている時点で気付けば良かった。」

カルマ君の言うとおりだ。

ハヤテ君は気付いていたんだろう。

だが、せっかくの修学旅行で余計なことを考えさせないために言えなかったのだろう。

 

 

 

───でも…

「あいつ…一人で何でも抱えてじゃねーよ。

仲間なんだからもっと俺たちを頼れよ。」

杉野の言っていることは確かだ。

いくら迷惑をかけたくないからと言ってもそれを黙っていてしまっては逆に迷惑になってしまう。

 

 

 

「ちょっと皆、ハヤテ君が言っていたしおりのことって…これじゃない?」

「なんだ?

“班員が拉致られた時の対処法マニュアル”って…そこまで想定したしおりなんて世界中探してもこれだけだろ。」

「…殺せんせーマメだからね。」

役に立つことからどうでもいいようなことまで、本当に何でも書いてある。

「でも…今すべきことがちゃんと書いてある。

それに、ハヤテ君もこれを教えたからには僕たちの到着を期待していると思うよ。

行こう。

茅野と神崎さんを助けるんだ。」

 

 

 

 

⇒カエデside

 

 

 

今私たちはガムテープで腕を後ろ手に拘束されている。

この状況を乗り切ることは出来る。

…だけど、今ここでそれをしてしまえば私がE組に来た目的を果たせなくなる。

 

 

 

───とそこに、

「ヒ…ヒィィ!!」

見張りとして建物の外に残していた男がそんな声を上げながら入ってきた。

「な…!?どうした!?」

「リ、リュウキ大変だ!!

警戒してたあのガキが!!」

震えながらのその言葉に反応するかのようにドアが開き、そこから───

 

 

 

「お前たち、覚悟は出来ているんだろうな…?」

怒りによるものだろうか、敬語がなくなったハヤテ君がいた。

「て、テメェ!!

どうやってここを…!?」

「その質問に答える義理は僕にはない。

ここから先、お前たちの有利は無いと思え…。」

「ふざけんな!!

有利は無いだと…人数じゃ圧倒的有利なんだよ!!

やっちまえ!!」

リュウキというらしい男の声に不良たちは皆走り出した。

 

 

 

 

 

───だが、

 

 

 

~~~~

 

 

 

「グハッ」

「ク、クソォ」

「つ、強ぇ…」

ハヤテ君の一方的な戦況に皆息を飲んでいた。

 

 

 

「チッ…なんで邪魔するんだよ。

こっちはこの女どもを自然体にしようとしてたのによぉ。」

「…自然体?」

「その通り、こんなエリートぶってる奴らを自然体に俺らみてーな自然体に戻してやってんだ「ふざけるな」…あぁ?」

 

 

 

男のその独白に───

「それこそふざけるな!!

彼女たちと他人を傷つけて平気でいられるお前たちを一緒にするな!!」

ハヤテ君の怒号が飛んだ。

「人を育てるのはその人の周囲の環境だ!!

彼女たちは恵まれている!!

だから、今いる場所から飛び立てる!!」

 

 

 

その言葉は、私たちの心に強く響いた。

それを言っているハヤテ君は、親の鎖に捕らわれて自分を見失っていたことがあったのだから。

 

 

「綾、崎君…」

だから、肩書きに、親の鎖に縛られていた神崎さんにはより強く響いたのだろう。

 

 

 

~~ここからは回想です~~

 

クラスの皆は、ハヤテ君の過去を聞いた時強い後悔があったが、おそらく…一番後悔していたのは私だろう。

 

 

 

2年程前、私はハヤテ君を見たことがあった。

 

 

 

女優の仕事をしていた時のことだ。

あんな私と同じくらいの子が道具の配置作業をしているのは、不思議だったけど…だけど、それ以上にその時遠目に見たこの世の絶望全てが混ざったような色の目が気になっていた。

仕事が終わってから話しかけようとしたが見つけることが出来ず、次の収録の時もいるだろうと思っていたが、いなかったのだ。

スタッフの方々に聞くと、彼はその日限りのバイトだったらしくあの日以降は来ないと言われてしまった。

都合のついた日に教えられた住所に向かったが…その家はすでに空き家となっていた。

そして、姉の復讐のためにやってきたこのE組でハヤテ君に入ってきたとき、あの時より目に絶望の色が乗っていたのに私は目を見開くところだった。

そして、この間の中間テスト…それまで聞きたかったハヤテ君の話を聞いたけど…

もっと早くハヤテ君のそばに行っていたら良かったかもしれない。

そう思えてならなかった。

 

 

 

~~回想終了~~

 

 

 

「なめやがって…エリート気取りで見下してんじゃねーよ。

そろそろ呼んどいたツレがくる頃だ。

これでこっちは10人…どんなに強くてもこれだけの人数に勝てねぇだろ。」

ッ!!そんな…。

まだ来るの…?

いやだ…ハヤテ君が傷だらけで倒れているところなんて見たくない!!

私ならどうなってもいいから───

 

 

 

 

「無理ですね。」

そう思っていると、ハヤテ君がそう断言した。

口調が元に戻ってる…?

 

 

 

「なんでそう断言出来るんだよ。」

「だって…今ドアの向こうには───」

 

 

その言葉が合図だったかのようにドアが開き、そこから───

 

 

 

「お待たせ、ハヤテ君。」

 

 

 

渚たち4班の皆が入ってきた。

 

 

 

 

「待ってましたよ、皆さん。」

「これでも急いで来た方なんだけどね~。

お、俺の取り分残しといてくれてるんだ~。」

 

 

 

 

「テメエらも…!!

何でここが分かった!?」

「それは…

このしおりの“拉致実行犯潜伏対策マップ”を使ったからだね。」

そのしおりそんなのあったんだ!?

「すごいな、この修学旅行のしおり!

完璧な拉致対策だ!!」

「いやー…やっぱ修学旅行のしおりは持っとくべきだわ。」

 

 

 

 

 

『ねーよ、そんなしおり!!』

 

 

 

 

ごもっともです。

 

 

 

「ツレはどうした!?

お前らみたいな奴らは見たことも無いような不良共のはずだ…中学生に負けるはずが───」

だが、ドアから入ってきたのは…綺麗な制服に身を包み丸メガネをかけた不良とは到底思えない男たちだった。

 

 

 

 

「不良なんていませんねぇ…

先生が全員手入れしてしまったので。」

「殺せんせー!!」

その言葉とともに、殺せんせーが入ってきた。

 

 

「…せ、先公だとぉ!?」

 

 

 

「その通り…

そして、これから君たちに修学旅行の基礎知識の補習を始めます。」

 

 

 

その言葉を合図に不良たちの後ろに回った5人が───

 

 

何のためらいもなくしおりを彼らの頭に叩きつけた。

…でもハヤテ君、いくら怒っていたからってしおりを叩きつけた後さらにかかと落とし(しかも両足で)をするのはやり過ぎだと思う…

 

 

 

 

 

 

~~~~

 

 

 

「何やってるの、ハヤテ君?」

全てが終わった後、ハヤテ君が不良の懐を漁っているのを見つけたので、聞いてみると…

「探し物といいますか…あ、あったあった。」

それはあのリュウキとかいうリーダー格の男が持っていたケータイだった。

「それがどうしたの?」

「いえ…これが神崎さんの知られたくない過去があって、そのせいで苦しんでいるというのなら───」

 

 

 

ベキッ

という快音が鳴り響いた。

ハヤテ君がそのケータイをへし折ったのだ。

 

 

 

「こうしてしまいましょう。」

その爽やかな笑顔の裏に憤怒の色があるように思えた。

 

 

 

「ありがとうね、綾崎君」

「え?あぁ今のことなら気にしないでください。

ただ僕がやりたかっただけなので…。」

「ううん、それだけじゃないよ。

さっきまでのこと、全部あわせてありがとうって言ってるんだよ。

それと、格好良かったよ。」




オリジナル設定ありのタグを付けたのは、正直言って茅野をハーレムメンバーに入れるためです。


必要かと思ったタグは追加していく予定です。



次回もお楽しみに!!

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