それだけ倉橋が人気ということでしょうか。
さて、今回でやっとE組の生徒全員が話すことになりますね。
それでは、本編スタート!!
▷ハヤテside
生徒全員が驚いたような表情で僕の隣を見ていた。
無理も無いでしょう。
なぜなら───
{庭の草木も、緑が深くなっていますね。
春も終わり、近付く初夏の香りがします。}
…昨日までとは全く違う様相の固定砲台さんがいるのですから…。
そこに───
「何騙されてんだよお前ら…。」
寺坂君の否定的な言葉が飛び込んできた。
「全部あのタコが作ったプログラムだろ?
愛想が良くても所詮機械は機械…どーせまた空気読まずに射撃すんだろ?
このポンコツ。」
その一言は流石に看過出来なかった。
「寺坂君!!それは流石に───」
{いえ、いいんですハヤテさん。}
言い過ぎですよ!!、と言おうとしたところで固定砲台さんに止められました。
「固定砲台さん…。」
{寺坂さんの気持ち、分かります。
だって…昨日までの私は寺坂さんが言っていたもので間違いありませんでしたから…。
なので、ポンコツと言われても…返す言葉がありません…。}
そう言って泣き出してしまいました。
「あーあ、泣かせた。」
「寺坂君が二次元の女の子を泣かせちゃった。」
「なんか誤解されるような言い方やめろ!!」
「いいじゃないか2D…。
Dを一つ失うところから…女は始まる。」
『…竹林!!
それお前の初ゼリフだぞ!!いいのか!?』
{でも皆さん、ご安心を。
昨日、ハヤテさんと殺せんせーに諭されて…協調の大切さを学習しました。
…なので、私のことを好きになっていただけるよう努力し…
皆さんの合意を得られるようになるまで…
単独での暗殺は控えることにしました。}
「…昨日綾崎が言ってた用事ってこれか。」
固定砲台さんの話を聞いていた千葉君が僕に言ってきた。
「ええ。
その…放っておく事が出来ませんでしたので…。」
「やっぱ優しいな、お前。」
「そ、そんなこと無いですよ…って速水さん、なんでそんな不満げな顔で僕を見るんですか?」
「な、なんでもないわよ!!…バカ。」
なんで罵倒されたんでしょう…。
「それはさておき…固定砲台さんと仲良くしてあげて下さいね。
それと…先生は彼女に様々な改良を施しましたが…殺意に関しては一切手をつけていません。
先生を殺したいなら…彼女はきっと、心強い仲間になるはずですよ…。」
~~~~
カンニングをさせて殺せんせーに怒られたりと、授業中もいろいろありましたが…固定砲台さんの人気はすごかったです…。
昼休み───
「へぇー。
こんなのまで作れるんだ。」
{はい。
特殊なプラスチックを体内で自在に成型できますので、データがあれば銃以外のものも作れますよ。}
「じゃあ、花とか作れる?」
{分かりました。
花のデータを学習しておきますね。
あ…王手ですね、千葉さん。}
「…三局目でもう勝てなくなった。
なんつー学習能力だ。」
思っていたよりも大人気だった。
{ハヤテさんも将棋、やります?}
「ええ、いいですよ。」
お誘いがあったので混ざることにしました。
~~~~
「王手です。」
{まいりました…。}
「お前…強いんだな。
どっかで将棋とかやってたのか?」
僕と固定砲台さんの対局を見ていた千葉君が聞いてきました。
「うーん…。
そういうのはないですね。
ただ───
一年程前に、麻雀の代打ちをしていましたので…その要領でやっただけですね。」
「サラッとすげぇ事言うな…。」
「あ、あのさ…!!
この子の呼び方決めない?
“自律思考固定砲台”っていくらなんでも長すぎるし、人の名前だと思えないから…。」
重くなった空気を払拭するかのように片岡さんがそう言った。
「じゃあ、一文字とって…
うーん…お、“律”なんてどう?」
「安直だな~。
お前はそれでいいか?」
{…うれしいです!!
では…“律”とお呼び下さい!!}
こうして、固定砲台さん改め律さんはクラスに溶け込んだが…それで終わる気がしませんでした。
▷固定砲台side改め律side
「何だこれは…。」
私に“律”という渾名がついた日の夜…前日の連絡を受けて来たと思しき私の開発者達がやってきました。
「…今すぐオーバーホールだ。
暗殺に不必要なものは全て取り去る。」
全…て…?
それじゃあ…
ハヤテさんへの想いも…?
それだけじゃない。
皆さんからもらったこの温かさも…?
嫌だ…。
だとしたら…私に…出来ることは…。
▷ハヤテside
{おはようございます、皆さん。}
次の日、律さんが元の状態に戻されていた。
開発者が戻してしまったそうだ。
しかも…改良行為と律さんを拘束することの禁止というおまけ付だ。
{…攻撃準備を始めます。
どうぞ授業に入って下さい、殺せんせー。}
また、周りの迷惑も考えない射撃が始まるのか…、と思っていたその時、律さんの側面が開き───
出てきたのは銃ではなく、色とりどりの花束だった。
どうやら、協調に関するソフトをメモリの隅に隠していたそうだ。
「素晴らしい!!
つまり律さん、あなたは…」
{…はい。
私の意志でマスターに逆らいました。
こういった行動を“反抗期”と言うのですよね?}
何はともあれ、律さんもこうしてE組のメンバーになりましたし…この29人なら出来ないことはないと思えてなりませんでした。
「やっと自覚したか、速水。」
「…?
何のこと?」
「…まだだったか。」
次回もお楽しみに!!