…文才の無さが恨めしい。
それでは、本編スタート!!
▷ハヤテside
放課後、教室に全員が残り来週に迫った球技大会の出場者を決めていた。
「球技大会、ですか…。
いいですね!!
梅雨も明けましたし、今まで思いっきり体を動かせなかったことで溜まったストレスをスポーツで解消出来ますしね!!」
バイトの時間が無くなるという理由で今までスポーツなんてろくにやっていなかったが、この教室に来たことでその価値観が変わっているからこそその言葉を口にすることが出来た。
だが…そんな僕とは違い、クラスの雰囲気は暗かった。
「あれ?
皆さん、どうかしました…?」
「どうしたもこうしたも…この学校の球技大会がそんな爽やかなものじゃ無いからだよ。」
菅谷君のその返しに疑問を抱いていると、殺せんせーがトーナメント表を見せてきた。
「このトーナメント表がどうか…あれ?
E組が無いですね…。」
「E組は1チーム余るって理由で本戦に出れないんだよ…。」
菅谷君の説明に納得してしまった僕はすでにこの学校の制度に慣れてしまったようだ。
「また平然とハブるんですね…。
って、エキシビジョン?」
「そ…全校生徒が見てる前でそれぞれの部活の選抜メンバーと戦わされて、見せ物にされるのさ。」
相変わらず本校舎の人達は性根が腐ってるなあ…。
殺せんせーもそれに呆れている。
「…でも心配しないで二人とも。
私たち皆、訓練で基礎体力ついてるし…いい試合して全校生徒をあっといわせるよ。」
片岡さんの言葉に賛同するように女子全員が拳を挙げる。
女子のやる気は十分だ。
(((MVPになって綾崎(ハヤテ)君に誉めてもらう!!)))
女子の大半のそんな思惑に僕が気づくはずもなかった。
だが…男子は全員がやる気というわけではない。
晒し者は勘弁だと寺坂君たちが教室から出て行く。
「ちょっ…村松君、吉田君!?」
「わりーな綾崎。
応援くらいはしといてやるからよ…許してくれや。」
「俺も応援してるからな…。」
…そう言って出て行った。
「応援するって言ってるし、ほっといていいだろ。
そんなことより…野球となりゃ頼れんのは杉野と、運動神経バツグンのハヤテぐらいか…。
お前ら、なんか勝つための秘策とかねーの?」
前原君が聞いてくる。
「仕返しの時間以降、前原君は綾崎君のことを名前呼びしてるんだよね。」
「…不破さん?」
「うーん…僕の方は無いですね。
というか…スポーツなんてあまりやってなかったので…
ただ、当日まで死ぬ気で特訓するくらいですね…。」
「俺も無い。
つーか…無理だ。
最低でも三年近く野球してきたあいつらとほとんどが野球未経験のE組。
勝負になるわけがねぇ。」
杉野君がいうには、今の主将“進藤一考”に至っては…その豪速球で高校からも注目を浴びているらしい。
「でもよ…
勝ちたいんだ。
好きな野球で負けたくない。
野球部追い出されて…E組に来て…ハヤテの過去を聞いて…その思いは強くなった。」
「杉野君…。」
僕が過去を話してから、それ以前よりも野球に誘うようになっていたのにはそんな背景があったのか…。
「…こいつらとチーム組んで勝ちたい!!
そのためには…何すりゃいいんだ、殺せんせー!?」
杉野君が期待を込めた眼差しで殺せんせーを見る。
それにつられて見てみると───
顔を野球ボールのような模様にした殺せんせーがいた。
「何をすればいいか、でしたね…。
それは先程、綾崎君が言っていたことを実行すればいいだけです。」
「ハヤテがってまさか…。」
「加減はしますので安心してください。
先生一度でいいからスポ根モノの熱血コーチをやりたかったんですよねぇ…。」
殺せんせーのキャラと180°違うという突っ込みはダメなんでしょうか…。
あと、殴れないから卓袱台って…どこの星○徹ですか…。
こうして、殺せんせー…いや殺監督の地獄の特訓が始まった。
~~~~
球技大会当日───
「ハヤテ君、どうしたの?」
体育館に行くと、それに気づいた茅野さんが僕に問いかけてきた。
「こちらのエキシビジョンマッチまで時間があるので、せめて頑張ってくださいの一言くらいは言わせてもらおうかと思いまして…。
そのくらいなら…と皆さんも許可してくれましたよ。」
時間になりそうなら呼びに来てくれるとも言っていたので、遅れる心配は無い。
「そうなんだ。
ありがとね。
その気遣いだけで全力で戦えるよ。
皆、ハヤテ君が頑張れだって!!」
茅野さんがそういうと、もともとあったやる気がさらに出てきたように女子の大半の士気が上がったように感じた。
そんな中、ちょっとした変化に気づいた。
「あれ?
速水さん…髪型変えました?」
そう、この間まで下ろしていた髪を今日は2つに束ねているのだ。
「まあね…。
あの髪型じゃビッチ先生とキャラ被ってるから…。
変…だった?」
「そんなこと無いですよ、似合ってます。」
「…そう。」
「…ちょっとした変化にも気づいて誉めてあげる…ホントモテるタイプだよね。」
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「お待たせしました!!」
グラウンドについて最初に言った言葉がこれだった。
「いや、ナイスタイミングだ。
もうすぐ決勝が終わるところだからな。
もうそろそろ呼びに行こうかって話をしていたところだ。
…と、そういってたら終わったな。」
どうやら、ちょうどいい時に来たようだ。
「殺監督はどこに…。」
「…あそこ。
目立つなって烏間先生に言われてるから、ああやって遠近法でボールに紛れて…時々顔色とかでサイン出すらしいよ。」
「なんでもありですね…。」
渚君の指差した先にいる殺せんせーに呆れていると…その顔色が三回変化した。
「“殺す気で勝て”ってさ。」
「言われなくとも…僕はそのつもりです!!」
『俺(僕)たちもな(ね)!!』
このチームなら…勝てる!!
次回もお楽しみに!!