暗殺者のごとく   作:aros

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それでは、本編スタート!!


第41話 訓練の時間

▷惟臣side

 

 

四ヶ月目に入るにあたり…ヤツを殺す“可能性”がありそうな生徒が増えてきた。

 

 

 

───磯貝悠馬、前原陽斗。

 

運動神経が良く、2人の仲も良好だ。

そのため、コンビネーションは抜群で…2人がかりで来た場合…俺にナイフが当たることが増えてきた。

 

 

今回も、俺の肩にナイフを掠めた。

「良!!

2人それぞれ加点1!!

次ッ!!」

 

 

 

次の2人が前に出てくる。

そのうち一人は全速力で俺の視角外に出たが…もう一人は気が乗らないかのような表情で俺に正面から迫って来る。

 

───赤羽業。

 

のらりくらりとしているように見えるが…その目には強い悪戯心が宿っている。

 

おそらく、どこかで決定的な一撃を加え…俺に赤っ恥をかかせようなどと考えているのだろう。

 

だが…そう上手くいくかな?

動きを見せるであろうタイミングで一歩下がる。

すると、舌打ちと共に彼も一歩引いた。

 

 

 

───そこで、背後から殺気を感じ取った。

 

 

 

「…ッ!!」

とっさに横に跳ぶ。

その直後、ナイフを自分の前に突き出した男子が俺の横を通過した。

 

 

 

───綾崎ハヤテ。

 

ろくでもない両親のもとで育ったからか、加入した時点で既に高い戦闘能力を持っている。

単独の場合、その半分でなんらかの不幸が降りかかるため、その成績はクラス内の中間となっているが…だれかとコンビを組んだ場合、彼かパートナーのナイフが確実に当たる。

一つ不審な点をあげるとしたら…ナイフを使う時の動きに微多少の違和感を感じることだろう。

 

 

 

奇襲に失敗した2人は戦法を変えたらしい。

今度は綾崎君が正面から突っ込んでた。

 

 

さっきも言った通り違和感はあるが…それでもナイフの振り方に無駄がない…。

少しでも体勢を崩そうものなら、その瞬間俺の体にナイフが当てられていることだろう。

 

 

 

 

しばらく回避に徹していると、彼の方から動きを変えてきた。

振り下ろしたナイフを素早い手首のスナップでこちらに投げたのだ。

 

 

上半身を後ろに反らし、この攻撃を回避する。

───直後、綾崎君の背中を踏み台にカルマ君が俺に飛びかかる。

今の体勢で後ろに跳べば…重心がずれ、倒れてしまうだろう。

そうすれば、起き上がる瞬間にナイフを当てられるだろう。

 

 

…と、そこで気づいた…。

 

 

 

カルマ君が…ナイフを持っていないことに…。

 

 

 

まさかと思い、綾崎君の方を見る。

 

 

 

そこには…───

 

 

 

どこかに隠していたのか…それとも、踏み台にされた時にカルマ君が渡していたのかは知らないが…───

 

 

 

左手で逆手に持ったナイフを俺に振りかざす彼の姿があった。

 

 

 

~~~~

 

女子では…体操部出身で、こちらの意表を突いた動きが出来る岡野ひなたと、男子並みのリーチと運動量を持つ片岡メグの2人がアタッカーとして非常に優秀だ。

 

 

 

───寺坂竜馬、村松拓哉、吉田大成の悪ガキ3人組。

 

 

リーダーの寺坂竜馬は訓練に積極的ではない。

だが…村松君と吉田君の2人は、綾崎君が過去を話した後から徐々にだが訓練に力を入れるようになった。

しかし…初めの1ヶ月で怠けていたため、訓練に体が追いついていない。

3人とも体格がいいだけに…全力を出せるようになれば戦力として申し分ないのだが…。

 

 

 

全体を見れば…生徒達の技術は格段に向上している。

綾崎君の加入とイトナ君の触手を見てよりいっそうヤツを殺したいという思いが強くなったことがいい成長をもたらしたと考えられる。

他に特筆すべき生徒はいないものの…。

 

 

 

───ぬるり…。

 

 

 

───ッ!!

得体の知れない気配を感じたためか、自己防衛本能で、それを強めに払いのけてしまった。

それにより…大きく吹き飛ばされたのは───

 

 

 

「…いった…」

渚君だった。

「…!!

すまん、ちょっと強く防ぎすぎた。

立てるか?」

「あ…へ、大丈夫です。」

 

 

───潮田渚。

小柄ゆえに多少はすばしこいが…それ以外に特筆すべき身体能力は無い温和な生徒だ。

 

 

…気のせいか?

先ほど感じた得体の知れない気配は…。

 

 

 

▷ハヤテside

 

今のは、いったい…?

烏間先生に吹き飛ばされた渚君を見てそう思っていた。

 

 

「そこまで!!

今日の体育はこれまで!!」

おっと、ぼーっとしてる場合じゃなかった。

 

 

『ありがとうございました!!』

授業終わりの挨拶を終え、教室に戻るべく歩を進める。

「しっかし…当たんねーな。」

その道中、木村君がつぶやく。

「ホントだぜ…。

綾崎と組んでねーとギリギリ掠らせるのが関の山だぜ…。

隙が無さすぎんだよ、烏間先生は!」

岡島君がそのつぶやきに同意した。

「烏間先生ってさ…私達との間に一定の距離を保ってるように思うんだよね…。

私達のことを大切にしてくれてるけど…それってやっぱり…任務のためだからかな?」

矢田さんが不安そうに言った。

その言葉に反論したのは、殺せんせーだった。

「そんなことはありません。

確かに彼は私の暗殺のために送り込まれた工作員ですが…それでも、ちゃんと素晴らしい教師の血が流れていますよ。」

殺せんせーがそういうのであれば…信じるほかないだろう。

 

 

 

 

───ゾワッ!!

 

 

 

「…ッ!!」

これは…いったい…!?

さっき渚君に感じた殺気は…純粋で、なおかつ綺麗なものだった。

だが…今校舎の方から感じた気配は…色々な感情が混ざった汚いものだった…。

 

 

 

▷渚side

 

大量の袋を腕に掛け、ダンボール箱を肩に担いだ大柄な男がこちらにやってくる。

 

「…?

誰だあの人?」

誰が言ったかは知らないけど…それは、ここにいる生徒全員が思っていることだろう。

 

 

 

「よう!!

俺の名前は鷹岡明!!」

鷹岡さんというらしいその人は、僕たちの注目が自分に集まったことを悟ると、持っていた荷物をその場に置き、自己紹介を開始した。

「今日から烏間の補佐としてここで働くことになった!!

よろしくな!!

お近づきの印としてケーキとか飲み物を買ってきた。

遠慮せずに食ってくれ!!」

持っていた荷物は全て飲食物だったのか…。

飲み物はともかくとして…ケーキはどう見ても安物じゃ───

 

 

「ッ!!

これ“ラ・ヘルメス”のエクレアじゃん!!」

「こっちは“モンチチ”のロールケーキだ!!」

 

 

 

…詳しいね、女子の皆さん。

 

 

「でも…いいんですか?

こんな高いの…。」

「おう!!

俺の財布を食うつもりで遠慮なく食え!!」

磯貝君が鷹岡先生を心配して言うが…その鷹岡先生は心配は無用とばかりに笑い飛ばした。

 

 

 

「モノで釣ってるなんて思わないでくれよ?

俺はお前らと早く仲良くなりたいんだ…そのためには…皆で囲んでメシ食うのが一番だろ!!」

なるほど…理にかなっている。

 

 

「鷹岡先生って…ものすごいいい人なんじゃないかなハヤテ君。

って…ハヤテ君?」

西沢さんがハヤテ君に声をかける。

 

 

 

…そこで漸く、ハヤテ君がこの輪の中にいないことに気づいた。

どこにいるのかと探していると…ハヤテ君は一人、校舎に向かって歩いていた。

 

 

「ハヤテくーん!!

一緒にケーキ食べようよ~!!」

西沢さんがハヤテ君を誘う。

 

 

 

だが、その返事は…

「すみませーん!!

僕は遠慮しておきます!!」

…誰がどう見ても“拒否”だった。

 

 

 

 

───この時、気づくべきだったのだろう。

 

 

 

普段は自分から人の輪に入っていくハヤテ君が…鷹岡先生との親睦を深めようとしないことに…。




arosのサンデーの目次コメントに漫画でもないのに答えてみた

Q.なくして一番ショックだったものを教えてください。

A.財布
無い無いと探し回って結局見つからずヘコんだことが小学生の頃2、3回ありました。


次回もお楽しみに!!

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