暗殺者のごとく   作:aros

50 / 84
投稿が遅れた理由は2つあります。
一つ目は、執筆のための時間が少なかったことです。
昼間は仕事でしたし、夜は執筆しようとしたときに親に呼ばれたり(実家暮らしです)、身内での集まりがあったりしたので書けませんでした。

2つ目は、執筆開始してから三日目くらいに今回の話に今まで感想への返信でプロトタイプ(妄想版)と言っているものの展開を使おうと考え、それを思い出しながら書いていたからです。
最初の竜馬sideより前と渚sideのプールのシーンより後以外のほとんどで使っています。

待たせてしまってすみません…。



それでは、本編スタート!!


第50話 ビジョンの時間

▷竜馬side

 

教室に薬をバラ撒いた日の夜…俺はプールの上流に来ていた。

 

 

 

理由は…協力者に頼まれたモンをプールに流し込むためだ。

 

 

 

どいつもこいつも地球の危機だからどうだとか…暗殺のための自分磨きだとか…落ちこぼれからの脱出だとか騒いでいるが…俺はそんなもんに興味はねぇ。

ただその日その日を楽して適当に生きたいだけだ。

 

 

 

だから───

 

 

 

~~~~

 

薬を流し終えた俺は、協力者…シロのもとを訪れた。

「ご苦労様。

あのタコは鼻が利くからね…そう易々と外部の者は動き回ることは出来ない。

だが寺坂君…君がいてくれたおかげで作る事が出来た。

イトナの性能をフルに活かす事の出来る舞台がね…。」

そう言うとシロは袖口から万札の束を取り出した。

「報酬として十万円を支払う約束だったからね…。

受け取ってくれ。

また次も頼むよ…。」

そういやそんな約束してたな。

そう思いながらその金を受け取った。

 

 

 

やっぱ…俺はこうやってる方が居心地がいいぜ。

 

 

 

と、そこでイトナのちょっとした変化に気づいた。

「…なんか、こいつの目と髪型が前と違わねーか?」

そうシロに聞いた。

 

 

 

「意外と繊細な所に目が行くじゃないか寺坂君…。」

なんか…バカにされてるような言い方だな…。

シロの独白は続く。

「その通り。

髪型が変わったということはつまり…触手が変わった事を意味している。

前回の反省を活かし…綿密な育成計画を立て、より強力に調整したんだ。

今回は…前回のような想定外の出来事が起こらないような作戦をたてている。」

前回…?

ああ、綾崎の妨害の事か。

と思っていると突然、イトナが俺の前に出てきた。

 

 

 

「な…何だよ!?」

「お前は…あのクラスの赤髪の奴や幸薄そうな方の青髪の奴より弱い。

あいつらよりお前の方が体格では上のはずなのに勝てない理由が分かるか…?

それは、お前の目にはビジョンというものが無いからだ…。

勝利への意志も手段も情熱も…お前の目には何一つ存在しない…。

ビジョンを持たない奴は喰われるのが世の常だ…。

だから…ビジョンさえあれば…それでいい。」

そう言ってイトナは去っていった。

…バカにしてることはよーく分かった。

「なんなんだあの野郎…!!

脳ミソまで触手なんじゃねーのか!?」

「…ごめんごめん。

私の躾が行き届いてなかったようだ。

責任は私にある…だから仲良くしてやってくれ。

なんせ我々は…大事な戦略的パートナーなんだからね…。」

そう言ってシロは俺の手を握り締め、次に自分の手を俺の肩に置いた。

 

 

 

「クラスで浮きかけてる今の君なら…どんな不自然な行動でも自然なものにすることが出来る。

我々の計画を実行するにあたって…君のような存在は必要なんだ。」

そう言われると怒れねーな…。

 

 

 

「チッ…分かったよ。

んじゃ、明日実行すりゃいいんだな…?

いや…時間的に今日って言った方がいいか…?」

「あぁ…放課後に頼むよ。

それと…作戦の最終確認がしたいから、実行前に一度私の所に来てくれ。

君の活躍次第で地球は救われるのだからね…。」

そう言ってシロは去っていった。

 

 

 

と、その時───

 

 

 

「そういう事でしたか…。」

 

 

 

そう言いながら俺の前に出て来た人影があった。

 

 

 

「テメェは…綾崎!!」

そいつの名は、綾崎ハヤテ…今のクラスの中でタコと同じく俺の気に入らねぇ奴だ…。

 

 

 

▷ハヤテside

 

いくらうるさかったからとは言え…何の考えも無しに殺虫剤なんてバラ撒くとは思えなかった僕は、寺坂君の後をつけていた。

やはりというか…寺坂君の裏にはシロがいた。

 

 

 

「な…テメェいつから居やがった!?」

シロが去ったところで姿を現した僕に寺坂君は驚きの表情を見せながらそう言ってきた。

「寺坂君が川に何かを流している時からですね。」

「ほとんど最初からじゃねーか…。

だったらもう…俺と奴らの関係は言わなくていいな?」

「ええ…。

教室で撒いた殺虫剤…あれもシロの指示なんでしょう?」

僕がそう問い詰めると───

 

 

 

「そこまで分かってるんなら教えてやるよ…。

あの薬はなぁ…タコの感覚を鈍らせる効果があるヤツなんだよ。

そんでもってタコをイトナがプールに突き落としたところをプールの中に入ってるクラスの奴らでメッタ刺しにする計画だ…。

あのタコは水が弱点みたいだからな…そいつを上手く利用した作戦だし、成功すりゃクラスの奴らにも賞金が行く…いい話じゃねーか。」

寺坂君は笑顔で作戦の内容を話してくれた。

だが───

 

 

 

「表面上はいい話のように見えるのは確かですが…本当にそれだけでしょうか?」

「んだと?

この作戦のどこが気に入らねぇってんだ…?」

僕が言っていることの意味が分からないのか…寺坂君は心底不思議そうな顔をしていた。

 

 

 

「分かりました。

ついて来て下さい…。」

僕の思い違いだといいが…シロが立てた作戦だ。

何か裏があると考えておいた方がいい。

 

 

 

▷竜馬side

 

「もう10分くらい経ったんじゃねーか?

綾崎め…連れてきておいて“待ってろ”なんてどういうことだよ…。」

綾崎に連れられやってきたのはプールだった。

プールについた瞬間…“ここで待っていて下さい”なんて言って自分だけプールに飛び込んだのだ。

なんで俺がこんなことを…なんて思っていると───

 

 

 

ザバァ!!

「プハッ…!!」

綾崎が水面から顔を出した。

 

 

 

「ずいぶん長いこと潜ってたな…。」

「おかげで目的の物は見つかりましたよ…。」

目的のモン…?

「何のことだ…?」

俺が聞くと、綾崎はプールの一角を指差した。

「僕としてはハズれていてほしかったんですが…あそこの壁面に爆弾と思しきモノが取り付けられていました。」

 

 

 

───ッ!?

なんだと…!?

「爆弾だと!?

って…あそこってダムじゃねーか!!

んなとこ爆破されたら…皆流されちまうだろーが!!」

 

 

 

「寺坂君。

君は…シロに利用されたんです。」

綾崎のその言葉に…俺は、膝から崩れ落ちた。

 

 

 

「殺せんせーに操られて仲良しこよしの僕たちが気に入らないなんていってましたけど…結局、他人に操られていたのは寺坂君もだった…そういうことです。」

言い返せねぇ自分が悔しい…。

 

 

 

そこでようやく…こいつがクラスの奴らから認められている理由が分かった気がした。

 

 

 

「綾崎…俺はずっと、お前のことが気に入らなかった。

何も知らねぇくせに他人から聞いた情報だけで人のことをバカにする奴だって最初は思ってたし…お前が自分の過去を明かしてからは俺らよりも重いもん背負っているくせに笑っていられることが…それでいて俺のツレと仲良くやってんのが気に入らなかった。」

 

 

 

俺の独白を綾崎はただ黙って聞いているだけだった。

 

 

 

「でもな…今やっと気付いた。

お前はただ能天気に笑ってたんじゃねぇってな。

失うばかりの人生を歩んで来たからこそ、ようやく手に入れた大切なモンを手放さねぇために笑ってたんだろ?」

そうじゃなきゃ…過去を明かしたあの日、泣いたりなんかしねぇもんな。

今なら…こいつの事を認められる気がする。

「なぁ綾崎…。

俺に出来ることはねぇか?

些細なことでもいいからやらせてくれ…。」

「そうですねぇ…。

とりあえずシロの作戦の真の目的を知らないふりをしていてください。」

はぁ…?

どういうことだよ…。

「作戦の決行は放課後…。

だったら…それまでの間に僕が爆弾の処理をしてみます。」

「なるほどな…。

それならやってやる!!

頼んだぜ綾崎…いや、ハヤテ!!」

「はい…そちらもよろしくお願いします寺坂君。」

それくらいでいいならいくらでもやってやらぁ!!

 

 

 

「ちなみに僕…爆弾処理なんてしたことありません。」

「不安でしかねぇぞ!!」

 

 

 

大丈夫か…これ?

 

 

 

▷渚side

 

寺坂君が暴走した日の翌日の昼休み…殺せんせーが涙を流していた。

 

 

 

…と思ったら鼻水らしい。

ややこしい体の構造をしているなぁ…。

 

 

 

でも…それ以上に気になっていることが一つ…。

 

 

 

「ハヤテ君…今日どうしちゃったのかな…?」

「渚、西沢…しつこいようだが聞くぞ。

本当にハヤテが今日来てねぇ理由知らねぇんだよな?」

杉野のその言葉に僕と西沢さんは縦に首を振った。

 

 

 

そう…ハヤテ君が来ていないんだ。

事情を知ってそうな律も…本体の画面は黒いままだし、モバイル律を呼び出しても出て来ない。

何かあったのかと心配していると、ガララッと扉が開く音がした。

 

 

 

『はぁ…。』

「露骨に溜め息ついてんじゃねぇ!!」

ハヤテ君がやっと来たのかと思いそちらを見たが…そこにいたのは寺坂君だった。

 

 

 

「寺坂君!!

今日は学校に来ないのかと心配してましたよ!!

皆さん、昨日君がキレたことは気にしていませんのでご心配無く!!」

昨日のことよりも…寺坂君の顔がすごいことになっていることの方が気になる…。

 

 

 

「おいタコ…テメェ水が弱点なんだってな…?

放課後プールに来やがれ…そろそろ本気でブッ殺してやるよ。」

寺坂君は、殺せんせーのネクタイで顔を拭くと…殺せんせーを指差してそう言った。

「てめーらも全員手伝え!!

俺がこいつを水の中に叩き落としてやるからよ!!」

すると今度は僕たちの方を向いてそう言ってきた。

 

 

 

『………』

教室内を静寂が包む。

 

 

 

「…寺坂。

お前ずっと皆の暗殺に協力してこなかったよな…?

なのにいきなりお前の都合だけで命令してんじゃねーよ。

そんなんでやるっていう奴がいると思うか…?」

前原君が皆の意見を代弁するように言った。

 

 

 

だが───

「ケッ…。

来なかったところで何も問題はねーよ。

そん時ゃ賞金の百億は俺た…俺が独り占めだ。」

寺坂君はそんなことを気にしてないかのように得意気な顔でそう言った後教室を出て行った。

その様子に気になることがあった僕は寺坂君を追いかけた。

 

 

 

「うわ!?

粘液で固められて逃げられねぇ!!」

教室の方から杉野の叫ぶ声が聞こえたが…今はそれを気にかけている場合じゃない。

 

 

 

~~~~

 

「寺坂君!」

校舎を出てすぐに見つけることが出来た。

僕が声をかけると、寺坂君はこちらを向いてくれた。

「本気で殺るつもりなの?」

「当たり前だろーが。

なんだ渚…ビビってんのか?」

「そういうことじゃないよ…。

ちゃんと皆に作戦の具体的な内容を話した方がいいって言ってるんだよ。

殺せんせーに同じ作戦はつかえないんだし…。」

得体の知れない作戦に賛同出来るわけが無い。

だからこそその内容が知りたいだけだ。

 

 

 

「うるせぇよ渚…てめーらは黙って俺に従ってりゃいいんだよ…。

あいつ…ちゃんと準備出来てんだろうな…。」

僕の申し出を一蹴した寺坂君はプールの方へと向かっていった。

でも…前半は聞こえたけど…後半、小声だったために何をいったのかが分からなかった。

 

 

 

───でも、気のせいかもしれないが…寺坂君の態度が昨日とは若干だが違うように思えた。

 

 

 

~~~~

 

放課後になり、水着に着替えた僕たちは皆寺坂君の指示通りにプール内に散らばった。

 

 

 

そこに、殺せんせーがやってきた。

 

 

 

「…覚悟は出来たかモンスター。」

「もちろん出来てますよ…鼻水も止まりましたしね。」

プールサイドに立つ寺坂君と殺せんせーが言い合う。

「俺はずっとテメェが嫌いだった…消えて欲しいって何度も思っていたよ。」

「ええ…知ってます。

この暗殺が終わった後で話し合いましょう。」

そう言った時の殺せんせーの顔は緑とオレンジの縞模様…つまり、寺坂君のことをナメているということだ。

その顔に怒りの表情を見せた寺坂君は手に持ったピストルの引き金を引いた。

 

 

 

───しかし…何も起こらない。

 

 

 

不審に思っていると…ダム手前の水中から浮き上がってきた人影があった。

あれは…ハヤテ君!?

今日は来てないなと思ってたけど…もしかして今日1日ずっとプールにいたの!?

 

 

 

「んだよ…ギリギリだったじゃねぇか。」

「そう言わないでくださいよ寺坂君!!

道具の準備とかに少々時間がかかったんですから!!」

「準備って…ものすごい勢いで自転車かっ飛ばして行ってたろーが!!」

「ことごとく信号が赤だったんですよ!!」

 

 

 

え…なんか寺坂君の態度が昨日までと全然違わない!?

 

 

 

「つーかお前そういう技術はねぇって言ってなかったか…?」

「律さんに教えてもらいました!!」

{ハヤテさんのお役に立てて嬉しいです!!}

なるほど…律が出て来なかったのはハヤテ君と一緒にいたからだったのか…。

 

 

 

▷シロside

 

{『にしてもよぉ…あいつらも俺に計画がバレたなんて思ってねぇだろうなぁ…。』}

{『ホントですねー!!』}

 

 

 

「悪いねぇ…。

全部知ってるんだ。」

 

 

 

念のため寺坂君に盗聴器を仕掛けておいた。

前回の時のように綾崎君の邪魔が入らないとも限らないからね…。

結果としては…やはり邪魔して来たなってところだね…。

 

 

 

だからこそ、私の作戦が失敗したと思わせるように寺坂君にはダムの“内側”の爆弾の起爆装置を渡しておいた。

 

 

 

「綾崎君が寺坂君を諭すことも…寺坂君が裏切ることも…全て想定の範囲内だ。」

私はそう言いながら裾の中に手を入れ、ダムの“外側”の爆弾の起爆装置を取り出し…スイッチを思いっきり押し込んだ。

 

 

 

▷ハヤテside

 

なんとか成功して安心していたのもつかの間───

 

 

 

ドグォォン!!

 

 

 

けたたましい音とともにダムが吹き飛んだ。

 

 

 

外側にも爆弾はあったのか!!

そう思っていた僕の目の前に───

 

 

 

───ダムの破片が…飛んできた。

 

 

 

直後…激しい痛みとともに僕は意識を失った。




次回もお楽しみに!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。