暗殺者のごとく   作:aros

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それでは、本編スタート!!


第51話 実行の時間

▷カルマside

 

「あー…暇だ。」

皆殺せんせーに強制されたとはいえ、寺坂の暗殺に協力するためにプールへと行ったが…寺坂に指図されたくなかった俺は、ただ一人校舎の近くで寝ころんでいた。

 

 

 

すると───

 

 

 

ドグォォン!!

 

 

 

何かが爆発したような音がプールの方から聞こえてきた。

 

 

 

「何…今の音…!?」

あいつらの身に何かあったのか!?

そう思った俺は、プールへと走っていった。

 

 

 

▷竜馬side

 

「皆さん!!」

ダムが爆破され、そこから流されていった奴らを救助するためにタコが大慌てで飛び出していった。

 

 

 

「何がどうなってんだよ…。」

目の前の状況に理解が追いついておらず、ただ呆然と立っていた俺の口からようやく出てきた言葉はそれだった。

 

 

 

ダムに仕掛けられていた爆弾はハヤテが解除したはずだ…。

それなのに…爆発は起こった。

ハヤテが嘘をついていたとは考えねぇ…。

なぜなら…あいつの表情が真剣そのものだったからだ。

…かといって今取り付けられたというのも考えにくい。

修学旅行の時にあいつが自分たちに近づいてくる不良の存在に気づいていたらしい、という噂を村松から聞いたからな。

 

 

 

だとすると───

 

 

 

「全部バレてたって事か…。

俺が裏切ってこっち側についた事が、あのシロ野郎に…。」

そういうことになる。

 

 

 

と、その時───

「なるほどねぇ…。」

いつの間にか俺の隣に立っていたカルマが俺を見ながら言ってきた。

「昨日のアレは、シロに唆されてやったことってワケか…。

で、どうやってかは知らないけど…寺坂はあいつらの真の計画に気づいて…計画通りにやると見せかけて裏切った。

そして…それがシロにバレてて今に至るってところか。」

「言っとくが分かってるからな!!

皆が流されてったのが…易々とあいつらを信じた俺のせいだってことくらいなぁ!!」

「そうだねぇ…。

マッハ20の奴がターゲットじゃなきゃ…今頃お前は、大量殺人の実行犯にされてたところだったね…ん?

寺坂、襟の裏になんか付いてるよ。」

俺が叫んでる間中ずっと黙って聞いていたカルマは、終わると同時にそう言った。

気になって襟を探ると…小さなマイクのようなものが出てきた。

「こいつは…?」

「みた感じ盗聴器みたいだけど…こんなのいつ仕掛けられたの?」

「知らねぇよ!!

こんなの付けられるようなタイミング───ッ!!」

 

 

 

───なんせ我々は…大事な戦略的パートナーなんだからね。

 

 

 

「あの時か…!!」

あの時…奴は俺の腕と肩に触れた。

その時に仕掛けられたとしたら───

 

 

 

「くそったれ!!

何が“戦略的パートナー”だ…全然信用しちゃいねぇじゃねぇか!!

じゃあアレか…俺がハヤテと一緒にあいつらを欺こうとしていたとこが全部あいつらに筒抜けだったわけかよ…!!」

俺は盗聴器を岩に叩きつけた後、何度も踏みつけながらそう言った。

「してやられたねぇ…。

で、寺坂はどーしたいの?」

と、カルマは聞いてきたが…答えなんて…もう決まってらぁ!!

「んなもん…聞くまでもねぇだろうが!!

こんな事やらせた落とし前…あいつらにきっちりとつけさせてやるぜ!!」

そう言いながら、俺は下流に向かって走っていった。

 

 

 

皆の所に行く途中…ダムの瓦礫の上で血塗れで横たわっていたハヤテを見つけ、背負っていくことにした。

 

 

 

▷渚side

 

プールの水をせき止めていたダムが破壊され、そこから流されていった僕たちを助け出したのは殺せんせーだった。

だが…吉田君を助け上げた後、殺せんせーの体が何かに引っ張られるように下に落ちていった。

 

 

 

「お前ら無事かぁ!!」

そこに…今回の一件の真相を知っていそうな寺坂君がカルマ君と一緒にやってきた。

寺坂君の背中には、血を出して気絶していると思われるハヤテ君が背負われている。

 

 

 

「…寺坂!!

何だったんだよあの爆発は!?」

磯貝君がプールが爆破された件について寺坂君に問いただした。

「その犯人なら今頃下にいるんだろうよ…。

さっさと行かねぇとタコが危ねぇぞ…。」

その問いにそう答えた寺坂君は、川の下流の方へ歩き出し、岩場の下を覗き込むように身を屈めた。

その後を追うように僕たちもそっちへ行き、寺坂君と同じように、下を覗き込んだ───

 

 

 

そこには…猛スピードで触手を殺せんせーの体に撃ち込むイトナ君の姿があった。

 

 

 

「あれは…!!

てことは…あの爆発はあの2人が仕組んだことだったのか…。」

下をみてすぐ、岡島君がそう言った。

「でも押されすぎな気がするわね…。

いくら殺せんせーが水に弱いからって言っても…あの程度だったらなんとかなるんじゃないの?」

片岡さんの言うことももっともだ。

普段の殺せんせーなら、あの程度の水のハンデなんてどうとでもなるような気がするのに…今は、イトナ君の触手をただ受けているだけのサンドバッグになっている。

明らかに不自然だ、と思ったその時───

 

 

 

「水だけのせいじゃねぇよ…。」

寺坂君がそう言い出した。

 

 

 

「水が原因なのは確かだけどな…なんせあのプールの水には、俺がシロに騙されて薬を流し込んでいたからな…。

水と一緒に吸ったあれで全力を出せねぇんだろうよ…。

昨日俺が教室でバラまいた薬…あれにタコの粘液を全部垂れ流しにする効果があるならなおさらだな。」

昨日の寺坂君の行動にはそんな意味があったのか!!

って…騙された…?

寺坂君…どうやって途中であの2人の本当の目的に気づけたの!?

 

 

 

「それだけじゃねぇって言ったろ…。

力を発揮出来ねーのは、お前らを助けたからだ。

タコの頭上を見てみな。」

寺坂君にそう言われ、皆殺せんせーの頭上を見た。

そこには───

 

 

 

「助け上げた所が触手の射程圏内に…!!」

あれじゃ…そっちが気になって殺せんせーは全力を出せない!!

「吉田と村松はイトナの動きさえ止まれば飛び降りれるだろうがよぉ…問題は原だ。

木に両手両足でしがみついてるからな…飛び降りるのもあそこまで助けに行くのも難しいだろうな。

唯一出来そうなハヤテは…俺なんかのために行動したせいでこのザマだしな…。」

確かに難しいかもしれないけど…あの木がものすごい撓んでるし…このまま放置してても、原さんが危ないよ!!

 

 

 

って…“ハヤテ”?

 

 

 

というか…寺坂君の口から、聞き捨てならない言葉が出てきたけど…。

 

 

 

「なるほどねぇ…さっきから寺坂がハヤテ君のことを名前で呼んでるのが気になってたけど…もしかして寺坂、お前がシロに利用されていたってのに気づかせてくれたのって…ハヤテ君でしょ。」

さっきの寺坂君の発言に気になる所があった僕たちを代表してカルマ君が寺坂君に問いかけた。

「あぁその通りだよ…所詮俺みてぇな目標もビジョンも何一つ持ってねぇ奴は…頭のいい奴の思うように操られて使い捨てられるだけ…それに気づかせてくれたのがこいつだったってわけだ。」

寺坂君はそう言って、背負っているハヤテ君を見た。

そういえば…昨日寺坂君が教室から出て行ってから少しして、ハヤテ君も用事が出来たって言って教室から出て行った。

あの時…ハヤテ君は寺坂君の行動に何か裏があるって気づいて寺坂君の後を追っていたんだ!!

ハヤテ君…また僕たちに相談の一つもしないで行動したのか…。

 

 

 

「そんな操られるだけの俺でもよ…自分を操る奴を選ぶ権利くらいあってもいいだろうがよ。

渚、西沢…ハヤテを頼む。」

寺坂君はそう言うと、僕と西沢さんに背負っていたハヤテ君を渡してきた。

 

 

 

「もうあいつらに操られるのだけはこりごりだ。

あんな卑怯者にタコを殺した時の賞金持って行かれんのだけは気に入らねぇ…。

だからカルマ…テメェが俺を操ってみろや!!

その狡猾なオツムから出て来た作戦…完璧に実行してあそこにいる奴らを助け出してやらァ!!」

僕たちがハヤテ君を受け取ったことを確認した寺坂君は、カルマ君に向けてそう言った。

「別にいいけどさぁ…ホントに実行出来んの、俺の作戦…。

下手すると…死ぬかもよ?」

「こちとら実行犯だぜ…んなもん気にしねぇよ。」

寺坂君がそう言って気合いを入れ、岩場を降り始めた。

 

 

 

「え…もう行くの?

まだ作戦決まってないけどいいの?」

「え…まだなの!?」

もう考えてあるような言い方だったのに決まってないんだ…。




次回もお楽しみに!!

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