それでは、本編スタート!!
▷ハヤテside
意識が…遠のいていく…。
シロへの蹴りに…残っていた力を全部使っていたんだから…無理も無いだろう…。
実際…その後も、立っているだけでせいいっぱいだった…。
でも…皆のために、出来ることをやったんだ。
だから…やり残したことなんて───
『ハヤテ君の生命保険のおかげで僕たちにお金が入ってきたよ。』
『これでまた、思う存分博打が出来るわね~。』
ことなんて───
『いや~ハヤテ君が死んでよかったね~。』
『ほんとね~。』
───あったなそういえば!!
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ガバッと勢いよく上半身を起こした僕の目に飛び込んできたのは…白い壁だった。
僕が倒れたのはE組の山の中のはず…ここはいったい…?
「起きたようだね…。
だが…あれほどの量の血を流したんだ…安静にしておいた方がいいよ。」
辺りを見回していた僕にそう声をかけたのは、出入り口らしき扉の横に立っていた竹林君だった。
「竹林君…ここはいったい…?」
「僕の家が経営している病院さ…。
綾崎が倒れた後…殺せんせーにある程度手当てしてもらってからここに連れてきたんだ。」
言われてみれば…病院特有の薬剤のようなツンとする臭いがしている。
「君は元々頑丈だし、殺せんせーの手当てもあったからね…怪我もほとんど回復してはいるが…大事をとって明日の昼までは入院してもらうからね。
烏間先生もその方がいいと言っていたよ。」
「はあ…分かりました。」
入院…かぁ。
「それはそうと…そろそろ彼女の方を気にかけた方がいいんじゃないかな?」
「え…?」
竹林君にそう言われ窓の方を見ると…椅子に座り、船を漕ぐ奥田さんの姿があった。
「君がなかなか起きないから心配になったんだろうね…一歩も動こうとしなかったんだ。
とっくに面会時間は過ぎているんだけどね…僕が頼み込んで特例措置をとらせてもらったんだ。
奥田さん…そろそろ起きたらどうだい?」
竹林君は奥田さんの横に移動すると、そう声をかけた。
「ううん…竹林君、今何時ですか…?」
「22時30分だ…。
綾崎も起きたし…話でもしたらどうだい?」
「そうなんですか…!?
ありがとうございます竹林君。」
「気にすることはないさ…では、僕は邪魔だろうから退散させてもらうよ。
分かっているとは思うが…ここは病院だからね…節度は守ってくれよ。」
そう言って竹林君は、部屋から出て行った。
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「よかったです…綾崎君が目を覚ましてくれて…。」
竹林君が出て行ってすぐ、奥田さんがそう言ってきた。
「心配をおかけしたみたいですね…。
すみませんでした。」
僕が、心配をかけてしまったことを奥田さんに謝った。
すると───
「その通りですよ!
綾崎君が倒れて…全然目を覚まさなかったので…このまま、目を覚まさないんじゃ…なんて思ったんですよ!」
奥田さんは、涙目でそう捲くし立ててきた。
「すみません…奥田さ「愛美…。」…え?」
先程よりも強い罪悪感を感じたため、謝ろうとしたとき…奥田さんがそう言ってきた。
「心配をかけて本当に…悪いと思っているんでしたら…これからは私のことを“愛美”と名前で呼んでください…いいですね?」
なるほど…そうきましたか…。
「分かりました…ではこれからは愛美さんと呼ばせていただきます。」
「はい…そうしてくださいハヤテ君。」
と、その時───
「2人の世界に入っているところ悪いんだが…ちょっといいかい?」
いつの間にか入ってきていた竹林君が声をかけてきた。
「た、竹林君…!?
さっき…出て行ったはずじゃぁ…!?」
「そのつもりだったんだけどね…綾崎が目覚めたら渡しておいてくれと頼まれたものがあったことを思い出してね…。」
愛美さんの問いにそう答えた竹林君は、僕に封筒を渡してきた。
誰からだろうと思いながら開けてみると───
中には…二つ折りにされた紙と一万円札が一枚ずつ入っていた。
こんなもの誰が…そう思い紙の方を開くとそこには───
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すまなかったなハヤテ…。
俺のせいで怪我なんかさせちまってよ…。
ちょっと少ねぇかもしれねぇが…その一万円…お前にくれてやらぁ。
シロからもらった金で悪りぃがな…。
いらねぇとか言って返してきたらぶっ飛ばすかんな!!
また、元気な姿を見せてくれよ。
寺坂竜馬
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寺坂君…。
僕にくれると書いてありますし…このお金はいただいておきましょうか。
では…明日までおとなしくしていることにしましょうか…。
窓の外の三日月を見ながら…僕はそう考えた。
次回もお楽しみに!!