これでやっと6巻の話が終わりましたね…。
まだ先は長いですが…頑張っていこうと思うので、これからもよろしくお願いします。
それでは、本編スタート!!
▷凛香side
「あ、速水さん…おはようございます。」
「あ…おはよう綾崎。」
殺せんせーが期末テストで頑張った時のご褒美を明かした日の翌日…E組の校舎までの道中で綾崎が挨拶をしてきたのでこちらも挨拶を返した。
その流れで校舎まで一緒に行こうと歩き出したその矢先───
「あ、そうだ。
速水さん…これを受け取ってください。」
そう言って綾崎は、カバンから小さな包みを取り出した。
「え?
私…あんたに誕生日教えなかったはずだけど…。」
そう…今日7月12日は私の誕生日だ。
でも…なんで綾崎がそれを知ってるの…?
修学旅行の時…皆(そういうのに興味がなかった原と狭間を除き)が自分の誕生日を教える中で、私は綾崎に誕生日がいつなのかを教えていないはずなのに…。
「千葉君が教えてくれました。
前もって殺せんせーから聞いておいた…覚えておいて損はない、と言ってましたね。」
その答えは…綾崎の口からあっさりと出てきた。
「千葉め…。
まぁいいか…じゃ、貰っておく…ありがと。」
「どういたしまして…お互い、テスト頑張りましょうね。」
「綾崎も…ね。」
そうやってお互いに檄を飛ばしあっていると、校舎が見えてきた。
▷ハヤテside
「───と、いうわけでな…。
悪い…迷惑かける。」
教室に入って早々、磯貝君ら6人が謝ってきた。
どうやら昨日、A組と期末テストで賭けをしてしまった事で僕たちに迷惑をかけてしまったと思っているようだ。
だが───
「迷惑だなんて僕は思ってません…だから、顔を上げてください。」
てっきり責められると思っていたのか、磯貝君達は驚いたような表情をしながら顔を上げた。
「もとより僕たちは…期末テストのそれぞれの教科で学年一位を狙っています。
なので…学年一位を取った数が多い方が勝ちというその賭けがあったとしても…たいして目標は変わりません。
だから気にすることなんて無いんですよ。」
「なるほど…ありがとなハヤテ!!
そう言ってくれると助かる。」
僕が言ったその言葉に、磯貝君から感謝の言葉が返ってきた。
「いえ…気にしないでください。
僕も…A組に勝つつもりでいますから。」
球技大会の時のヒナギクさんの言葉…僕はあれをヒナギクさんからの挑戦状だと思っている。
だから…期末テストでの僕の目標は…ヒナギクさんを超えることだ。
ヒナギクさんを超える───
それはつまり、A組を超えるということに繋がるのだから…。
この時は、そう思っていた───
▷ヒナギクside
「E組と賭けをしたそうじゃないか…5教科それぞれでトップをより多く取れた方が…負けたクラスにどんな事でも命令出来るらしいね…?」
「わ、悪い浅野…正直下らん賭けだとは思ったんだがよ…思いのほか奴らがつっかかって来るもんだから…。」
私の横で浅野君達5人がそんなやりとりをしている。
昨日の放課後、瀬尾君達がE組とそんな賭けをしたという噂は私も聞いたけど…浅野君がその噂に興味を示すなんて思っていなかった。
「いや…構わないよ。
むしろそっちの方がA組にも緊張感が出る。」
瀬尾君達の弁明を黙って聞いていた浅野君は、わずかに口角をあげるとそう言った。
「だが、後でゴネられるのは面倒だからね…ルールだけは明確化しておいた方がいいだろう。」
なるほど…浅野君の言うことももっともだ。
勝った後でそんなの聞いてない、なんて言われるのが一番困るからね…。
「じゃあこうしよう…勝った方が下せる命令は一つだけで、その命令はテスト後に発表する。
E組にもそう伝えておいてくれ。」
一つ…?
どうもイヤな予感がするわね…。
私がそう思っていると、浅野君は自分の机の上に置いたノートパソコンのキーボードを素早く打ち、エンターキーを打ち込んでからその画面を瀬尾君達に向けた。
「僕がE組に下したい命令は…“この協定書に同意する”というその一つだけだ。」
浅野君が見せた協定書を見た瀬尾君達が目を大きく見開いたので、どんな内容なのか気になったので私もその画面を見た。
なに…これ…!?
こんな…人を奴隷のように扱っていいと思ってるの!?
「皆も聞いてくれ。
僕がこれを通して言いたいのは…やるからには真剣勝負だということだ。
たとえE組であっても本気を出して向き合おう!!
それが…本校舎を照らす僕らA組の義務なのだから!!」
『おう!!』
浅野君のその宣言に周りを皆が頷いた。
浅野君は確かに皆をまとめられるカリスマ性がある。
だから…言葉の裏に黒いモノがあったとしても皆ついていく。
でも…だからこそ私は信用出来ない。
正直なところ気乗りはしないけど…前にE組の皆の前で“期末テストで勝つ”って言っちゃったし、それに…浅野君に負けるのは気に入らない。
やるからには全力で期末テストに挑むことにしよう。
この時はそう思っていた。
▷ハヤテside
「こらカルマ君少しは綾崎君を見習って真面目に勉強しなさい!!
君達二人なら…総合トップを狙えるでしょう!!」
真面目にテスト勉強をしようともしないカルマ君に殺せんせーのそんな言葉が飛んだ。
「言われなくてもちゃんと取るよ。
けどさぁ殺せんせー…最近“トップを取れ”て言ってばっかじゃん。
なんかさ…フツーの先生みたいでつまんないんだよね。」
カルマ君はそう返したが…これは…なにか大失敗しそうな雰囲気だ。
「それよりさぁ…A組が出した条件だけど…なーんか裏で企んでそうじゃない?」
条件というのはおそらく…A組との賭けでさっき提示されたルールについてだろう。
確かに…何でも一つと言い方に含みがあるように思えてならない。
命令をテスト後に発表するというのも相まってそう思えてくる。
「心配ねーよカルマ…俺たちが失うモノなんてありゃしねーんだからよ…。
綾崎も心配そうな顔してんじゃねーよ。」
岡島君がそう楽観的に言ってくる。
本当にそうだろうか…。
「勝ったら何でも一つかぁ…学食の使用権とか欲しいなぁ~。」
「倉橋さん…ここから学食までどうやって移動するんですか?
ヘタしたら食べる時間も無くお昼休み終わりますよ…。」
僕のそのツッコミに倉橋さんは少し考えるような仕草をした後、口を開いた。
「じゃあ…ハヤテちゃんに抱きついて!!」
「人を便利な移動手段にしないでください。
そもそも…食べた直後の過度の運動は体に毒です。」
「ヌルフフフ。
それについてですが…先生、今とっても欲しいものがあるのです。
この学校のパンフレットにあった“これ”をよこせと命令するのはどうでしょうか?」
殺せんせーの欲しいもの…?
いったい何を…そう思いながら殺せんせーが開いたページを見る。
なるほど…確かにこれはご褒美だ。
「君達は一度どん底を経験した…だからこそ期末テストでは…バチバチのトップ争いをしてほしいのです。
ご褒美も十分揃いましたしね…君たちも暗殺者なら、狙ってトップを殺るのです!!」
───いつも思う。
この先生は…人をやる気にさせるのが本当に上手い。
そんな殺せんせーにそこまで言われたら…何が何でも勝たなければと思う。
▷三人称side
仲間のため…自分のため───
それぞれの思いが交錯する期末テスト───
それに向けて、カルマを除く全校生徒が連日テスト勉強に励んでいた。
だが、負けられないからとはいえ…やり過ぎるのにも問題はあるわけで───
~~~~
桂家にて───
「ケホッ…。」
▷ハヤテside
「綾崎君、今回のテスト…自信ある?」
本校舎にあるE組用のテスト会場までの道中で片岡さんが僕に聞いてきた。
「やれるだけのことはやりました。
後は…このテストで全力を尽くすだけです。」
「そっか…じゃ、テスト頑張ってね。」
「ええ…片岡さんも頑張ってください。」
~~~~
誰だ───
テスト会場についてまず思ったのはそれだった。
当然だろう…本来なら律さんがいるはずの場所にできる限り本物に似せようとしたような誰かがいるのだから…。
「“律役”だ。」
そんな僕たちの疑問に答えるかのように烏間先生がそう言ってきた。
「理事長から人工知能の参加を認められなくてな…替え玉を使う事でなんとか決着をつけることが出来た。
交渉の時に理事長に…“大変だなコイツも”という哀れみの目を向けられた俺の気持ちが君たちに分かるか?」
いやほんと頭が下がります!!
皆もそう思ったのか僕を含め全員が烏間先生に頭を下げた。
「律と合わせて俺からも伝えさせてくれ…頑張れよ。」
『はい!!』
~~~~
キーンコーンカーンコーン───
テスト開始のチャイムという名のゴングが鳴り響いた。
どんな障害があっても関係ない。
僕は、僕の全力を出せばいいだけなのだから。
▷学秀side
桂さんが時間ギリギリに来るという珍しいことはあったが…関係ない。
今回こそ桂さんに勝って、正真正銘の頂点になってみせる。
arosの、サンデーの目次コメントに漫画家でもないのに答えてみた。
Q.今までで一番恐怖を感じた瞬間を教えてください。
A.高校時代にクラスメートに首を絞められた時。
少しの間意識がとんだらしい。
次回もお楽しみに!!