暗殺者のごとく   作:aros

60 / 84
まさか…前回の投稿から一週間以上間が開くとは…。



待たせてしまってすみません!!



書き忘れてましたが…今回で7月編終わりです。
次回から8月編です。



それでは、本編スタート!!


第60話 いきものの時間

▷渚side

 

夏休みが始まって一週間───

 

 

 

学校から解き放たれて完全にフリーダムな状態になれた…と、そう思っていたが───

 

 

 

「ねぇ杉野、なんで僕達学校に来てるのかな。

しかもこんな早朝に…。」

「いやぁ…いい歳してみんなの前で昆虫採集とか恥ずかしいだろ?

俺、街育ちだからさ…こういうのに憧れてたんだ。」

木の幹から出ていた樹液を舐めていたクワガタを捕まえた杉野がそう言ってきた。

昆虫採集がしたいから、と誘われ僕はE組のある山に来ていた。

確かに…それは、緑に囲まれたこの場所でしか出来ないことだ。

本来ならば忌み嫌うべき場所だったはずなのに…いつの間にかこんなにも居心地のいい場所になっていた。

 

 

 

「ところで渚、メールした時、ハヤテ呼ぶって言ってたけど…どうなったんだ?」

「あー…いちおう呼んだんだけどさ、“先約があるから”って断られちゃって…。」

そう言いながら、ハヤテ君から返ってきたメールの文面を杉野に見せた。

「なんか…絵文字多い上に長ぇな…。」

「あ、杉野もそう思う…?」

メールを見た杉野がそんな感想を漏らした。

無理もない。

僕だって、このメールを初めて見たときはびっくりしたのだから…。

「ま、何にせよ先約があるなら仕方ねーか…。

でもよ…前原が来るとは意外だったな。

こんな遊びに興味なんて無いと思ってたからさ。」

杉野は、ハヤテ君が来れない理由に納得したようにそう言うと、今度は前原君にそう言った。

実際のところ、僕もずっと杉野と同じ事を考えていた。

昆虫採集なんて子供っぽいからやらない、と前原君は言うだろう…そう思っていたのに僕達についてきたのは意外だった。

 

 

 

───と、そんな疑問に答えるように前原君が口を開いた。

「お前らがどう思ってようが構わねーけどよ…俺は俺で目的があるからついてきたんだよ。」

「目的?」

「おうよ。

次の暗殺は南国のリゾート島でやるわけじゃん。

そしたらよ…何か足りねーと思わねーか?」

「「…?」」

前原君の言っている事が理解出来ず、僕と杉野が揃って首を傾げていると、前原君は大きく息を吸い込み…───

 

 

 

「金さ!!

水着で泳ぐ綺麗なちゃんねーを落とすためには財力が不可欠!!」

大声でそう叫んだ。

「こんなノコギリクワガタとかじゃダメだろうけど…オオクワガタとかはけっこういい値段するらしいじゃん?

そういうのをネットオークションとかに出して大儲けするんだよ。

んでもって最低でも高級ディナー代とご休憩場所の予算までは確保してやるぜ!!」

「なんか…前原らしくて安心したところもあるけどよ…旅の目的忘れてねーか?」

「…うん。

とても15歳の旅行プランとは思えないよね。」

背を向けて走り出した前原君を見ながら、僕と杉野はそう言い合った。

もしかしたらこれ…ハヤテ君は来なくて正解だったんじゃないかな…と思う。

 

 

 

と、そこに───

「はたして…そう上手く行きますかね?」

「ダメダメ~。

オオクワはもう古いよ~。」

木の上から前原君に向けて二人分の声がかけられた。

 

 

 

て、あれ…?

今前原君に声をかけたうちの片方…先約があるからって断られた気がするんだけど…。

そう思いながら、声がした方を見るとそこには───

 

 

 

「おは~。

皆もおこづかい稼ぎに来たんだねっ。」

木の枝に腰掛け、朗らかに笑う倉橋さんと…その隣の枝で僕と杉野に向けて申しわけなさそうな顔をするハヤテ君がいた。

「ハヤテ君もいたんだ…。

というか…メールで言ってた先約って倉橋さんのことだったの?」

「その通りですね。

一昨日のお昼くらいにメールをいただきまして、以前の埋め合わせの件もありますし…その時から今日まで手伝わせてもらっています。」

木の上で立ったままハヤテ君がそう答えた。

なるほど…だったら断られてもしょうがないけど───

「埋め合わせって、1ヶ月ぐらい前のあれか…。」

ハヤテ君からの返答に前原君がツッコんだ。

埋め合わせというのは、律がE組に来た次の日のアレの事だろう。

ハヤテ君…大人気だったからしょうがないだろうけど…埋め合わせの方を優先しようよ…。

 

 

 

「まあ、ハヤテのことは置いとくとして…オオクワガタが古いってのはどういうことなんだ、倉橋?」

ハヤテ君の事から話を逸らそうと、杉野が倉橋さんにさっきの発言がどういうことなのかと問いかける。

「んっとね~。

確かに、私たちが生まれた頃はすごい値段だったらしいけどね…今は人工繁殖法が確立されちゃって、大量に出回りすぎたから値崩れしちゃったんだって。」

「ま…まさかのクワ大暴落かよ…。

俺てっきり1クワガタ=1ちゃんねーぐらいの相場だと思ってたのに…。」

「ないない。

今はちゃんねーの方が高いと思うよ~。」

「まあ…今の相場だとだいたい5千円くらいですからね。」

オオクワガタの相場が下がっていたことにガッカリしたような表情の前原君をよそに僕達は倉橋さんの説明に感心するしかなかった。

生き物に関する事ではハヤテ君と休み時間中ずっと語り合ってまだネタが残ってるだけはある。

 

 

 

そんな中、落ち込んでいた前原君に───

「もし、一獲千金を狙っているのでしたら…オオクワガタとは違って人工での繁殖が未だ確立していないミヤマクワガタの方がいいですよ。」

ハヤテ君がそんなアドバイスを送っていた。

「ちなみに…相場だといくらぐらいなんだ?」

「そうですね~。

サイズにもよりますが…2万はする事もありますね。」

『2万!?』

ハヤテ君の口から出てきた額に直接向けられた前原君だけではなく、僕と杉野も驚いた。

「せっかくだし多人数で数揃えるのが確実だから、皆で捕まえよっ!!」

───と、そこに…倉橋さんがそんな提案がをしてきた。

断る理由もなかったし…僕達はそのまま倉橋さんについていくことにした。

 

 

 

~~~~

 

二人についていった先には木に吊され、中に何か入れているのかパンパンに膨らんだストッキングに群がるカブトムシやカナブンがいた。

「昨日の夜につけておいたお手製のトラップです。

バナナやパイナップルに焼酎をかけて1日~2日置いて発酵させるんです。

虫取りのトラップとしては効果的ですよ。」

「へぇ~…これ、お前らが仕掛けておいたのか。」

ハヤテ君からの説明に、杉野が感心したように言った。

「ハヤテちゃんがいてくれて助かったよ~。

あと40ヶ所ぐらい仕掛けたから…上手くいけばけっこう稼げると思うよ~。

探してたアレが来てるといいな~。」

倉橋さんがそう言いながら歩き出したその時───

 

 

 

「フッフッフッ…ずいぶんと効率の悪いトラップだな。

それでもお前らE組か!!」

木の上から声が聞こえてきた。

嫌な予感がする中、声がした方を見るとそこには…やはりというべきか、岡島君がいた。

「ちまちまと千円単位で稼いでる場合かよ。

ついてこいよ。

俺がトラップで狙うのは…当然百億円だ!!」

岡島君は手に持っている本の表紙を見て、すぐ顔を真っ赤にして背けたハヤテ君以外の視線が自分に集まったことを確認すると、僕達に向けて自信満々にそう言ってきた。

 

 

 

岡島君が仕掛けたトラップ───

 

 

 

嫌な予感しかしないが…岡島君の自信に満ちた顔に興味が出てきた僕達は、岡島君の後について行った。

 

 

 

~~~~

 

「ねぇ岡島君。

さっき言ってた百億って…まさかとは思うけど───」

「そのまさかだ。」

トラップを仕掛けたという位置まで行く道中、僕は思いきって岡島君に聞くと、返ってきたのはそんな返答だった。

「南の島で暗殺を実行する予定だから…さすがの殺せんせーでも、それまでの間の暗殺は無いと油断するはずだと思ってな…俺はそこを狙ったんだ。」

岡島君がそう言いながら指差す方を見ると、そこには───

 

 

 

「にゅや~。」

 

 

 

カブトムシのコスプレのような服を着た殺せんせーが、そこら中に散乱した○○本を顔をピンクにして読みふけっていた。

「クックックッ…かかってるかかってる。

俺の仕掛けた○○本トラップに…。」

スピード自慢の殺せんせーが一切動くことなく読みふけるとは…よほど好みだったんだろうなぁ…。

なお、その光景を目にしたハヤテ君は…例のごとく顔を真っ赤にして明後日の方を向いていた。

「この一ヶ月間ずっと観察してたんだ。

ずいぶん苦労したぜ…あいつ好みの絵柄やシチュエーションを研究するのはよ…。

知っての通り俺は○○い…。

だがな…そんな俺だからこそ知ってることってのがあるんだ。

例えば、○○で…世界が救えるってこととかな…。」

その行動も言葉も…○○が関わっていなかったらカッコいいのに…。

あぁもう…片岡さんでも桂さんでもいいから誰か岡島君を止められる人を呼んできて…。

 

 

 

その時───

突然、殺せんせーの目が飛び出した。

岡島君も見たことが無かったのか、戸惑い始めた。

だが、次の瞬間…殺せんせーはマッハで触手を伸ばした。

 

 

 

「ヌルフフフ…見つけましたよ。

ミヤマクワガタ…しかもこの目の色!!」

殺せんせーのその言葉に反応したのは、倉橋さんとハヤテ君だった。

「「白(なの/なんですか)、殺せんせー!?」」

二人は茂みから飛び出すと…そう言いながら殺せんせーに駆け寄っていき…何が嬉しかったのか、エロ本の上で飛び跳ね始めた。

しばらくして…自分の下にあるものを認識して我に返った殺せんせーとハヤテ君はそれぞれ殺せんせーは恥ずかしそうに顔を手(触手)で覆い、ハヤテ君はまた顔を真っ赤にして背けた。

 

 

 

~~~~

 

「面目ない…。

教師としてあるまじき姿を君たちに見せてしまいました…。」

岡島君の暗殺は失敗したと判断し、茂みから出てきた僕達に殺せんせーはそう言ってきた。

「本の下に罠があるのは知っていましたが…どんどん先生好みになっていたので、つい誘惑に耐えきれず…。」

どうやら…岡島君の仕掛けたトラップはすんなりバレてたようだ。

これは…倉橋さんとハヤテ君が出て行かなくても失敗していたのかもしれないな…。

「さっきハヤテが言ってたよな…ミヤマクワガタはサイズによっては2万はいくこともあるって…。」

バレていたことが発覚したことでもうそっちに興味を無くしたのか、杉野が話題をミヤマクワガタへと変えた。

「通常の個体ではこのサイズで2万円はいきますが…この個体の価値は2万どころの話ではありませんよ。」

杉野の呟きに対するハヤテ君の返答に殺せんせーと倉橋さんを除くその場にいた皆がどういうことだろう、と思っていると、殺せんせーが口を開いた。

「このミヤマクワガタの目をよーく見てください。

本来なら黒いはずですが…この個体の目は白いでしょう?

以前、生物の授業でごく稀に全身真っ白で生まれてくる“アルビノ個体”について教えましたが…クワガタの場合、目だけが白くなります。

これは“ホワイトアイ”と呼ばれており…天然のミヤマクワガタのホワイトアイはとんでもなく希少です。」

なるほど…二人が飛び出していったのは、ものすごいレアなクワガタだったからなのか…。

「学術的な価値もあります。

売れば数十万はくだらないでしょう。」

『すっ…!!』

その価格に…僕達は息をのんだ。

そのミヤマクワガタを受け取った倉橋さんは、僕達に向かって───

 

 

 

「ゲスな皆~…これ、欲しい人手ー上げて♪」

『欲しい!!』

ハヤテ君以外の皆がそう言い、倉橋さんの持つミヤマクワガタを巡っての鬼ごっこになった。

 

 

 

▷三人称side

 

ハヤテ達が虫取りをしていた日の夜───

 

 

 

白皇学院の理事長室で、月を見上げる少女がいた…。

 

 

 

少女は、目に涙を浮かべながら───

 

 

 

「ハヤテ…。」

 

 

 

寂しそうに、そう呟くだけだった。




arosのサンデーの目次コメントに漫画家でもないのに答えてみた


Q.どんな動物でも飼えるとすれば、何を飼いたいですか?


A.猫
家にすでに三匹いるけど、猫好きだから。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。