暗殺者のごとく   作:aros

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今回からは渚たちに視点を置いて行きます。



あの後皆はどうなっていたのか…?



それでは、本編スタート!!


第72話 拘りの時間

⇒渚side

 

 

 

ハヤテ君のお陰で僕たちは4階まで来ることが出来た。

この階はもう階段を昇るだけでいい。

だけど───

 

 

 

「………。」

「ハァ………。」

「俺達だけで…この先大丈夫なのかよ…。」

 

 

 

僕を含めこの場のほとんどが落ち込んでいた。

それもそうだろう。

なぜなら───

 

 

 

───僕たちの隣からハヤテ君が居なくなってしまったからだ。

 

 

 

ハヤテ君が来てからと言うもの、これまでの困難で必ずと言っていいほど彼が解決のために最後まで居てくれた。

だから、烏間先生が動けなくなっても彼がいるだけでどうにかなると思っていた。

 

 

 

しかし、ハヤテ君はそう思っていた矢先に自分を犠牲にして僕たちを先に進ませてくれた。

だが、この先にも同レベルの殺し屋はいるだろう。

頼みの綱の桂さんも最近仲間になったばかりで不安な部分が多い。

 

 

 

───そんな相手に、僕たちは勝てるのだろうか…?

そう考えていたその時───

 

 

 

「ヌルフフフ…これで本格的に“夏休み”が始まりましたねぇ。」

 

 

 

───このシリアスなムードをぶち壊すような声が僕の手元から聞こえてきた。

 

 

 

「ふざけんなこのタコ!!」

「一人だけ安全だからってそんなお気楽な事言わないで!!」

「このムードでんなのんきな事言った罰だ!!

渚、それ思いきり振り回せ!!」

当然皆からブーイングが 飛んできた。

とりあえず、言われたとおり振り回そう。

「にゅやーッ!!」

 

 

 

───数秒後───

 

 

 

「ところで…なんでこれが夏休みになるの、殺せんせー」

腕が疲れてきたので回すのを止め、さっきの発言で気になった事を聞いた。

すると、殺せんせーは元の完全防御形態の時の通常の顔色に戻り───

「そして夏休みというのは、長い休暇期間でそれぞれがそれぞれの自立性を養い、次の自分へと大きな一歩を踏み出すための場と言っていいでしょう。」

そう言い出したと思えば今度は顔の表面に大きなバツ印を浮かべ───

「一学期の間だけで、君たちは教師や綾崎君を頼りすぎています。

その結果…君たちの注意力が散漫になっています。」

僕たちを叱るようにそう言った。

心当たりがある寺坂君と吉田君、岡野さんの三人はそっぽを向いたり、赤面しながら俯いたりしていた。

再び顔色を戻した殺せんせーはそんな彼らを無視して話を続ける。

「でも大丈夫。

君たちの能力は一学期中に大幅に向上している。

桂さんだけは加入が遅れたため大幅な能力値の変化はありませんが、元が高いため心配はありません。

君たちならクリアできると、私は信じていますよ。」

 

 

 

その殺せんせーの言葉は、僕たちの心に響いた。

「そこまで言うなら、やってやろうじゃねーか!!」

「そうね。

弱気になってたらなにも始まらないわね。」

「うん、僕たちだけで残り全て終わらせて後から来るハヤテ君をびっくりさせようよ!!」

『おー!!』

そうやって自信をつけた僕たちは五階へと進んで行った。

 

 

 

⇒カルマside

 

 

 

「ッ…!!」

5階と6階を繋ぐ階段は展望回路を進んだ先にある。

そのため、展望回路を慎重にだけど急いで進んでいく俺達の動きが止まる。

なぜなら…ガラスに寄りかかっている怪しい男を進行方向に見つけたからだ。

「マジかよ…メッチャ堂々と立ってるぜ。」

「あそこまで堂々とされてちゃ見なかったことにして進むなんて無理だぜ…。」

いやいやまずあれの前に出るなんて無理だって…。

「というか…あの人って…。」

十中八九殺し屋だろうね。

でも…先に進むにはあのおじさんを倒さないとダメみたいだね。

さーて、どうするかな?

そう考えていると───

 

 

 

───ビキィ!!

そんな音を立てておじさんの近くのガラスが割れた。

自然に割れたにしては突然すぎるし、なによりおじさんの手の位置で割れたのは不自然すぎる。

ということは…ガラスを握り潰したな。

どんな握力してんの…。

 

 

 

「足音を聞く限り…手強いと思えるのは一人だけしかおらぬ。

だがそいつも…呼吸の音からしてビビっているようだぬ。

それではつまらぬ…。

出てくるぬ…来ないなら、こっちが赴くまでだぬ。」

その握力に驚いていると、おじさんが突然話し始めた。

バレてるみたいだし、さっさと出ていかないとね。

「ふむ…その様子を見ると、精鋭部隊出身の教師は“スモッグ”のガスにやられたようだぬ。

それに“ブラック”が戦いたいと言っていた男もいないようだぬ。」

俺達を見定めるようにおじさんが言うけど───

 

 

 

「“ぬ”使いすぎじゃね、おじさん?」

それが気になって集中出来なかったため、指摘した。

 

 

 

⇒渚side

 

 

 

相手の外見を気にするあまり、僕たちが言えなかった事をカルマ君がさらっと言ってくれた。

こういうときにカルマ君がいてくれたのはありがたい。

「“ぬ”を入れて話せば侍のような口調になり、カッコよくなるとおもったからつけていたぬだが…そうか…違和感があるぬか…。」

そう考えていると、男が語りだした。

外国の人か…。

だったらそういうのに憧れるのもおかしくはないだろう。

そう思っていると───

 

 

 

「たとえそうだったとしても構わぬ。

この場にいる全員を始末してから“ぬ”を取ればいいだけの話なのだからぬ。」

『ヒィッ!?』

指をゴキゴキさせながらそんな事を言われたので、僕たちの大半はビビってそんな声を出してしまった。

「武器の類いを持っているようには見えませんね…。

となると、あなたの暗殺道具は素手ですね?」

「その通りぬ…だが、だからといって甘く見てはならぬ。

剣や銃、その他諸々の武器と違い空港などでの身体検査に時間を使わぬため他、たとえ正面戦闘になったとしてもターゲットの脛椎や頭蓋骨でも潰すだけでいいぬ。」

なるほど…殺せんせーのようなタイプには意味はないがそんな例外を除けば極めて有効な戦法だと言えるだろう。

「俺はこの武器だけを鍛えてあげてきたが…時にはそれを仕事道具以外のために使いたくなってくるぬ。

それが、強敵との命を賭けた戦闘ぬ。」

男はそのまま話を続けるけど…なんか、どこかで聞いた事のあるような言い方だなぁ…。

そう思っていると、男は携帯を取り出し───

 

 

 

「今のお前たちにそれが出来るとは思えぬ…。

だが俺一人で片付けるのも面倒なのでぬ…仲間を呼んで皆殺しぬ。」

そう言って操作し始めた。

マズい!!

早く止めないとハヤテ君や先生達の努力が無駄になる!!

だが───

 

 

 

───ヒュッ!!

───ガシャァン!!

 

 

 

カルマ君がその辺にあった観葉植物を植木鉢ごと持ち上げ、携帯に叩きつけることでその心配は杞憂になった。

「ガラスとか頭蓋骨ってさ…プロって意外とフツーなんだね、おじさんぬ。

言うならせめてダイヤモンドとか鋼玉みたいな物にしないとね。

ていうかさ、おじさんぬが言ってた事に似たことを下で仲間の真っ黒くろすけが言ってたけど…そいつと違って速攻仲間呼ぶって、ほんとに大したことないんじゃないの?」

そのまま挑発したカルマ君に僕たちは驚いた。

無謀、その二文字しか出てこなかった。

だけど───

 

 

 

「本気なのですね…カルマ君。

なら…油断しないようにだけはしてくださいね。」

殺せんせーだけは、カルマ君の背中を押すようにそう言った。

「殺せんせー、なんで!?

プロ相手に絶対に勝てるわけ…「あります。」」

僕の言葉に重ねるように殺せんせーが言う。

「ただ挑発しているだけのように見えますが、よく見てみると…アゴが引けています。

彼はすでに相手を警戒し、観察している。

以前のカルマ君とは違うと言うことです。

ならば勝ち目はあります。」

「まぁね。

油断して恥ずかしい思いをするのはもう嫌だからね。

それに…ハヤテ君が居なくて、烏間先生も桂さんも戦えるような状態じゃないってなったら俺がやるしかないじゃん?」

殺せんせーの考察に対してのカルマ君の言葉に僕たちは納得した。

ガラスを握りつぶす程の握力の相手なら、掴まれなければいいだけだ。

…とは言っても、 それが出来て尚且つ勝つとなると出来る人が限られて来る。

だが、烏間先生は毒ガスで動きを封じられて、ハヤテ君はこの場にすらいない。

場所的な理由で桂さんも全力で戦えない。

だからそれを補おうということなのだろう。

 

 

 

「そこまで言うなら試してやるぬ。

どこからでもかかってくるぬ。」

 

 

 

なら…任せたよ、カルマ君!!

 

 

 

そんな僕の心の叫びとともに、カルマ君はその手に持っている観葉植物を男の頭めがけて振り下ろした。




おじさんぬの口調難しいぬ…。



arosのサンデーの目次コメントに漫画家でもないのに答えてみた



Q.一番好きなインスタント食品はなんですか?



A.チキンラーメン
普通に作っても美味しいがぬ、袋から少しずつ出してバリバリ食べるのも大好きだぬ。



次回もお楽しみぬ!!

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