暗殺者のごとく   作:aros

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今回もヒナギクの活躍がちょっとだけあります。
…以前感想返信で活躍はほとんど無いと言ったのに、そこそこ活躍してますね…。



そして、前話の後書きで書きかけたとおり…これまでハヤテへの恋心を自覚していなかった方がやっと自覚します。
自分の推しキャラなので可能な限りの全力で書かせていただきました。



それでは、本編スタート!!


第76話 チャンスの時間

⇒ブラックside

 

 

 

「それで、こいつの仲間は今8階にいるんだな?」

{はい。

現在コンサートホールにて敵と交戦中です。}

6階のラウンジの入り口付近に来たオレは、ハヤテを一旦降ろし、彼の携帯にいる律と名乗る女とそんなやり取りをしていた。

すると───

 

 

 

「…う、うう…。」

 

 

 

そんなハヤテの呻き声が背中から聞こえて来た。

もしかして、と思いハヤテの方を見ると───

 

 

 

「…ここは…?」

そう言って辺りを見回すハヤテの姿があった。

「ハヤテ!!

良かった、気がついたんだな。」

「“ブラック”さん…?

そうか…僕はあなたとの勝負の後、気を失って───」

「で、そんなお前をオレが仲間のもとまで連れてってやってるってわけだ。」

そのハヤテに詰め寄ってそんな会話をしていると───

{ハヤテさん、いいタイミングで目覚めましたね!!}

大声で律がそう言ってきた。

「皆の身に何かあったんですか、律さん?」

「さっき交戦中だって言ってたな。

それと関係があるのか?」

そうハヤテとオレが問いつめると、律は{はい}と言った後一呼吸置き───

 

 

 

{速水さんを勇気づけるために…ハヤテさんの言葉が必要なんです!!}

 

 

 

───真剣な表情でそう言ってきた。

 

 

 

⇒凛香side

 

 

 

ま、眩しい…!!

ステージの照明が一斉に点き、相手の様子が見えなくなった。

それでも、相手の位置を把握しようと客席の間から顔を覗かせた次の瞬間───

 

 

 

───ズギュン!!

───カキィン!!

 

 

 

発砲音と何かを弾いたような音がの二つの音が私の前から聞こえた。

「こっちの様子は見えねぇはず…それなのに俺の弾を弾きやがっただと…?」

ステージの方からそんな悔しそうな声が聞こえてきた。

照明でステージは見えないけど…昇っていく硝煙の位置から考えると…今の狙撃は私を狙っていた、と考えていいだろう。

そして、一瞬だけ見えた髪飾りと長い髪…そして振り抜いた木刀から考えて弾いたのは桂だろう…元々反射神経がいいのか、それともあの木刀の力なのか…どっちにしても後でお礼を言わないと。

「まあいいこれで二人の居場所は分かった。

そいつらはもうそこから動けないと思っとけ。

さて、と…あと一人銃持ってる奴がいるはずだが…。」

まずい…千葉の場所がバレたら終わりだ…。

そう思っていると───

 

 

 

「速水さんはその場で待機!!

桂さんはその場で速水さんを守ってあげてください!!」

不意に殺せんせーの指示が聞こえてきた。

「千葉君、今撃たなかった君の判断は正しい!!

外したからといって焦る事に意味なんてありません!!

私が皆さんの目の代わりとなり、指示を出しますので…チャンスが来るのを待っていてください!!」

とは言っても、殺せんせーは今動けないはずなのに…いったいどこから…?

そう思っていた矢先───

「どっから声が…って、おいテメェ!!

何かぶり付きで見てやがんだ!!」

───そんな叫び声と発砲音、そして何かを弾く音が聞こえてきた。

そっか…完全防御形態でどんな攻撃も効かないから、最前列から堂々と見れるわけか…。

元の姿でも当たらないから出来ると思うけど…。

 

 

 

「では、行きましょうか。

木村君、5列左へダッシュ!!

寺坂君と吉田君はそれぞれ3列移動!!」

殺せんせーが指示するごとにそれぞれが居場所を変えていく。

鼻がいい殺せんせーだから私達の居場所が全て分かるわけか…味方としては頼もしすぎる。

でも…指示する時に名前を呼んでいるから意味がない、そう思っていると───

 

 

 

「出席番号13番…右に一つ移動して待機!!

次の指示までに準備を整えていてください!!」

殺せんせーが呼び方を変えてきた。

「4番と6番は客席の間から舞台を撮影、律さんはその様子を千葉君と速水さんに伝達してください!!」

上手い…“今の”出席番号なら、私達にしか分からないから秘密のメッセージとして使いやすい。

 

 

 

「敵が戸惑っているうちにさらに移動しましょう!!

イタズラ好きは左前列へ、プリン好きは右前列へそれぞれ前進!!

バイク好きは左前に、マンガ好きは右前にそれぞれ2列進めます!!」

そして、殺せんせーからの呼び方は特徴やその人の趣味に変わっていた。

「この前、竹林君イチオシのメイド喫茶に行ったけど、その前に偶然見つけて無理矢理連れていった綾崎君が“人手が足りないから手伝って”と言われて無理矢理メイド服を着せられた姿に男だと分かっていながらも竹林君共々萌えてしまった人、攪乱のために大きな音を立てる!!」

「テメェなんでそれ知ってやがんだ!!」

 

 

 

…待って、それどういう状況?

まあなんて言うか、綾崎は後で慰めてあげないと…。

その姿を見てみたくはあるけど…。

 

 

 

「誕生日に連れていってもらったケーキ屋にて、口元についたソースを綾崎君が取ってくれようとしたのをキスしようとしたと勘違いしてドキドキした人、左に3列!!」

「なんで知ってるのそれ!?

って…なんでこっちに殺気が集まるの!?」

よし…全部終わった後、矢田を問い詰めよう。

 

 

 

⇒ハヤテside

 

 

 

───ゾクッ!!

「どうしたハヤテ?」

「いえ、ちょっと知られたくなかった事が大々的に暴露されたような、そんな悪寒がするんです…。」

「そ、そうか…。」

{そろそろです!!

ハヤテさん、準備はいいですか?}

「はい、いつでもいいですよ!!」

 

 

 

⇒凛香side

 

 

 

「さて、移動はもう十分でしょう…攻撃に移ります。

次に先生が指示を出した後…千葉君、君がベストだと思えるタイミングで撃ちなさい。

速水さんは彼のフォローにまわってください。

この勝負は、いかに敵の行動を封じられるかが鍵となります。」

 

 

 

───ドクン!

 

 

 

ついに来た…。

 

 

 

───ドクン!

 

 

 

本当に、私達に出来るの…?

 

 

 

───ドクン!

 

 

 

緊張してるからか、さっきから自分の心臓の音が聞こえてくる。

でも、任されたからには…そう思っていると───

 

 

 

「───と、その前に…君たち二人にアドバイスをさせていただきます。」

不意に殺せんせーがそう言って話し始めた。

「君たちは今、とても緊張していると思います。

それはおそらく、先生への狙撃で失敗してしまった事による迷いからくるものでしょう…。

そして君たちは、性格上言い訳や弱音は絶対口にしない…だから勝手な信頼を押しつけられたり、自分に課せられた事の重責に苦悩していても気づいてもらえなかった事も一度や二度ではないはずです。」

そう…殺せんせーの言う通り、本校舎にいた頃の私は周りからいろいろ押しつけられた事があり、それがE組に落ちた原因になった。

そして…親ですら勝手な信頼を寄せてきて、成績が落ちたというだけで勝手に失望した。

 

 

 

「ですが…ここでは君たちだけがプレッシャーを抱える必要はありません。

なぜなら…ここにいる者は皆、君たちと同じ環境で訓練し、成功と失敗を繰り返した経験があるのですから…失敗したとしても、後は任せられると考え…安心してその引き金を引けばいい。

それが出来ると信じたから、綾崎君は君たちに後を託したのです。」

ありがとう、殺せんせー…おかげでちょっとは楽になった気がする。

「では…行きましょう。

出席番号13番、立って狙撃!!」

 

 

 

───バッ!!

───ズギュン!!

 

 

 

その指示と共に、立ち上がった影を男が狙撃した。

でも───

 

 

 

「に…人形だと!?」

撃ったのは菅谷が作った人形だった。

そう…出席番号13番は現在菅谷の番号になっている。

四月の時点で学校に籍を置いていた生徒はこれまでの出席番号の間に挟む形で出席簿の名前の欄に入れる事になったので、片岡と茅野の間に桂が入り、茅野以降の出席番号が一つずつずらした出席番号になっている。

…因みに未だに慣れていない。

と…男が人形に気をとられていると───

 

 

 

───ズギュゥン!!

 

 

 

菅谷がいる位置とは違う客席の裏から飛び出した千葉が発砲した

でも、男の身に何も変わった部分は見られない…。

まさか…外した!?

そう思っていると───

 

 

 

───ブォッ!!

───ドゴッ!!

 

 

 

そんな豪快に風を切る音を鳴らしながら吊り照明が男の背中に叩きつけられた。

そうか…律の指示かは知らないけど、吊り照明を使う事で、無力化しようとしたのか…。

でも、男はまだ銃をしっかりと握りしめている。

私がやらなきゃ…。

でも…出来るかどうか───

 

 

 

{『大丈夫です。』}

不意に、綾崎の声が聞こえてきた。

{『速水さんなら、どんな困難も乗り越えられます。

自信を持ってください。』}

ここにいるわけがないのは分かっているのに、綾崎の声を聞いただけで落ち着いて来ているのが分かる。

 

 

 

ああ…そういう事か───

 

 

 

ズギュゥン!!

 

 

 

私は、綾崎の事が───

 

 

 

ビシッ!!

カシャァン!!

 

 

 

───好き、なのだろう。

そう思うと…今までの自分の行動に納得がいった。

球技大会の時に髪型を変えたのに気づいてくれて、似合っている、と言ってくれたのを嬉しいと思ったのはそういう変化に気づいてくれたからだと思うし、綾崎が学校に残って律を諭した事を面白くないと思ったのも、このホテルに入ってすぐに片岡と矢田が綾崎に抱きついた時に出遅れたと思ったのも…羨ましかったからだろう。

 

 

 

ライバルは多い…でも、だからといって諦めるつもりはない。

私はスナイパーらしく綾崎の心を射止める、ただそれだけだから。

 

 

 

~~~

 

 

 

「さっきの綾崎の声って…あんたがやったんでしょ?」

皆が男を簀巻きにしている傍らで、私は律にそう問い詰めた。

すると───

{はい。

先ほどあのメッセージをハヤテさんからいただいて、それをバイノーラル機能で速水さんだけに聞こえるように流しました。}

「本当に何でもありね…でも、おかげで助かった。」

{その表情を見るに…速水さんもついに本格参戦、ということでいいんですね?}

「ええ。

この勝負は誰にも譲るつもりはないからね。

もちろん…あんたにも、ね?」

{望むところです!!}

 

 

 

そうこうしているうちに敵の無力化も終わり、私達は次の階へと足を向けた。




arosのサンデーの目次コメントに漫画家でもないのに答えてみた



A.これまでにあった、人生の分かれ道はいつですか?



Q.おそらく、アニメ『ハヤテのごとくCuties』を見た事だと思います。
見てなかったらたぶん今の自分はなかったと思います。



「ここでキャラが話すのひさびさだな。」
「そうね。
ところで千葉…あんた、気づいてたの?」
「その言い方からしてやっと気づいたのか…自分の気持ちに。
ま…教室での席の都合上、そういうのが分かりやすいんだよ。
あいつが来た時に、目線…というか頭の向きが動く方向に向いていってたからな。」
「そうだったの?」
「まあそれは後数話投稿した後に投稿する予定の短編集に書くつもりらしい。」
「ふーん。」

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