ガルパン日和   作:アセルヤバイジャン

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親しいからこそ恥ずかしい、そういう感情ってあるよね(´・ω・`)





レオポンさんウサギさん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「聖グロリアーナ…サンダース大付属…アンツィオ…プラウダ……継続に…黒森峰まで…?」

 

郵便で届いた連盟からの案内状入りの封筒。

 

そこには、やたら縁のある学校からの招待状が山のように入っていた。

 

いやまぁ、アンツィオとかサンダースとかは事ある毎に招待状送ってくるから別に良いんだが。

 

黒森峰からも来るとは思わなかったな…。

 

「……ん?」

 

黒森峰の招待状の後ろに、まだ一通……BC自由学園?

 

「なんでだ…」

 

縁も所縁も無いぞあそこ。

 

連盟には関わりのない学校からの話は、一度電話で連絡をしてからと伝えてあるのに。

 

それを言ったら黒森峰も縁が無いのだが、こちらはまほさんと親しいから送られてきたらしい。

 

はて、誰か知り合いでも進学したのだろうか、BC自由学園。

 

「まぁとりあえず…お世話になった学校位は顔を出すか…」

 

聖グロやサンダースは全部の試合応援に来てくれたし、黒森峰で一度まほさんと婚約者云々の話をなんとかしないとと思ってたし…。

 

継続は……気が重いが、行かないとあの人ふらりと大洗に現れそうだからなぁ。

 

みほちゃん達の前であの人に遭うのは…その……不安しかねぇ…!

 

「夏休み前までに巡る計画を立てるか…」

 

こういう時、連盟からの依頼という形なのはありがたい、何せ授業が公欠になる。

 

さて、先ずはどこから顔を出すかな…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レオポンさんの場合

 

 

 

 

 

 

 

 

戦車道で使用している広大な土地を、今朝届いたばかりの車両で疾走する。

 

唸りを上げるエンジン、土煙が上り、風を切る感覚。

 

戦車とは違う、剥き出しの疾走感とパワー。

 

キャタピラが地面を踏み締めながら前に突き進む、抜群の安定感。

 

「キャッホウ、最高だぜッ!」

 

思わず某蝶野師匠の様に叫ぶ、教官の事ではない、あまり乗り物には興味が無かったが、これは癖になる。

 

運転席が剥き出しなので戦車道では使えないが、まぁその為の物ではないので問題ない。

 

俺が戦車道の授業に参加する時は、戦車倉庫横の見張り台から双眼鏡で見るか、適当な車両の上に乗せてもらってとかで対応してきたが、こうして自分で自由に移動出来る車両が手に入ったので今後は楽になる。

 

監督用としてそれ専用の装備も搭載して貰った。

 

無線機一式に大学戦車道などで使われているタブレット端末を、運転席の前に設置。

 

これで状況確認を行いながら、各車両に指示が出せる。

 

「連盟からお勧めされた時はどうかと思ったが…乗ってみると良い車両じゃないか」

 

本当は自衛隊が使ってるようなオフロードバイクで良かったのだが、戦車道連盟ゆえのプライドと言うかこだわりなのか、この車両を猛烈プッシュされてしまった。

 

料金も勉強させてもらうから是非にと言われて購入してしまったが、これはいい買い物だった。

 

後日、これに乗った写真と映像を撮影させてくれと言われたが、まぁ良いか。

 

「と、そろそろ戻るか…」

 

一頻り走り回り、操作のコツも掴めたので戦車倉庫へと戻る。

 

一応俺の私物だが、学園にはもう許可を取ってあるのでこれを戦車倉庫で保管しても問題ない。

 

むしろこれで通学も可能だ、そう考えるといい買い物だな、後ろに冷泉さんを乗せて登校する事が出来るし。

 

「おやおやぁ、面白い乗り物に乗ってるねぇ」

 

「あぁ、ナカジマさん、おはようございます」

 

朝からツナギ姿で、もう整備に入っていたのかナカジマさんが工具片手に立っていた。

 

「おはよう、どうしたんだいそれ」

 

「臨時収入とまぁ取引で割り引いてもらったので、思い切って購入してみました」

 

「へー、戦車道の監督用にかな?前から足が欲しいって言ってたもんねぇ」

 

「えぇ、ですから今後はこれで指示が出せて楽になりますよ」

 

「なんて言う戦車なんだいこれ」

 

「いえ、戦車じゃなくて半装軌車と言うそうです。ケッテンクラートって言うんですよ」

 

そう言って、バイクの前方部と戦車のキャタピラが合体したような車両、ドイツのケッテンクラートを撫でる。

 

かなりマニアックな車両だが、性能は良かった。

 

「マニアックな車両だねぇ、いいねぇ大好きだよこういうの」

 

「見た目の割に使い勝手が良いですよ、走破性も戦車と同じで高いですから戦車道の授業にもついて行けますし……コラ」

 

工具を取り出して早速バラそうとするナカジマさんのツナギの襟を引っ張る。

 

「あちゃぁ、バレちゃった?」

 

「眼の前で作業始めようとしておいてバレちゃったは無いでしょう。来たばかりの新車で整備は必要ありませんから」

 

「分かってないなぁ、車も戦車も毎日の点検整備が大切なんだよ?」

 

「本当は?」

 

「珍しい車両を弄り回したい」

 

お、欲望に忠実ぅ!

 

「今日の授業で使うんですから!」

 

「大丈夫だって、それまでにちゃんと組み上げて動かせる様にしておくから」

 

「今日初めて見た車両でしょう!?」

 

…あ、自動車部ならそこは問題ないか、いきなり戦車の整備してちゃんと動かせるようにしちゃった人達だし。

 

「ね~お願い、ちょっとで良いからさ、整備させてよ」

 

「本当に整備だけで済むんでしょうね…」

 

この人達に任せると、安心ではあるけど何か余計な事をされてしまうのではという一抹の不安がある。

 

「大丈夫だって、ちょっとエンジンと足回り改造してスピード出せる様にするだけだから!戦車道の試合で使う訳じゃないからどんな無茶な改造しても大丈夫でしょ?」

 

お、自分に素直ぅ!

 

「俺の私物ですからねこれ!変な魔改造しようとするの止めてくれません!?」

 

「そう言わずに、勿論改造代は自動車部でやりくりするからさぁ~」

 

勝手に魔改造されて費用まで取られたら溜まったもんじゃないんですけど!

 

あーダメダメダメ、そんな可愛く上目使いしてもダメですー!

 

「おーいナカジマ、何してるのさ」

 

「ホシノ、ほら見てよ、長野くんが面白い車両持ってきたんだよ」

 

歩いてくるのはいつものタンクトップ姿のホシノさん。

 

そんな彼女に自慢げに俺のケッテンクラートを見せるナカジマさん。

 

「へぇー、これはまた面白そうな車両だね…どこまで弄って良いの?」

 

「駄目ですよ!?何弄るのが当たり前みたいな感じで聞いてくるんですか」

 

「え、ダメなの?」

 

駄目です。

 

……まぁ、整備位なら…俺も覚えないとだし。

 

「ん~、前輪は簡単に取り外し可能、元からそうやって運用する事も考えての設計かな?足回りはキャタピラだから問題なし、えーとエンジンは」

 

「ちょいちょいちょい、何ナチュラルに弄り始めてるんですかスズキさん」

 

いつの間にかケッテンクラートの前輪を外したりエンジンを見たりしているスズキさんがそこに居た。

 

油断ならねぇ…!

 

「諦めなって長野っち、私達に目を付けられたのが運の尽きって事で」

 

「何の慰めにもならないじゃないか!」

 

こちらもいつの間に来たのか、ツチヤに肩を叩かれ慰められたが、慰めになってない。

 

ヤメロォ!俺のケッテンクラートに、俺の新しい相棒に触れるんじゃない!

 

「まーまーまー、良いから良いからぁ、私達に任せて任せてー」

 

「そーそー、任せちゃいなって、見た目はちゃんと元に戻すから」

 

見た目“は”!?中身は保証してくれないの!?

 

ナカジマさんスズキさんホシノさん!!困ります!!あーっ!!!ツチヤ!!困ります!!あーっ!!!困ります!!あーっ!!!!困ります!自動車部!!困ります!!あーっ!!!あーっ自動車部様!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちゃんと車検とか通る仕様でお願いしますよ…」

 

「お、フリかい?」

 

フリじゃないですホシノさん。

 

結局自動車部4人に押し切られ、俺のケッテンクラートは自動車部の玩具になった。

 

あぁ…もうエンジンまでバラされてる…仕事無駄にハエーイ…。

 

「安心しなって、ちゃんと走るようにするから」

 

そっちの心配じゃなくてなツチヤ。

 

「どうする、ニトロとか行ってみる?」

 

「いいねぇ」

 

早速不穏な単語が聞こえたんですけど!?

 

「ホシノ~、暑いのは分かるけどちゃんと服着なよ?」

 

「ん~?別にいいじゃん!誰が見てる訳でもないし」

 

「長野っちが見てるよ~」

 

見てませんけど!?言い掛かりなんですけど!

 

「…………(サッ」

 

「だから見てませんよ!?」

 

と言うか、頬染めて胸元隠す位ならちゃんとツナギ着て下さいよ、ホシノさん一応共学になったって事分かってます!?

 

「あはは、ホシノも最初はちゃんとしてたんだけど、結局自動車部に男子が入らなくて、戦車道でも長野くんしか居ないから気が抜けちゃったんだよねぇ」

 

「う、うるさいな……そもそも、別に長野になら見られても問題ないし、別に気にする必要ないじゃん」

 

いや、気にして下さいよ何で俺なら問題ないんですか。

 

「今年も新入生が見学には来てくれたんだけど、私達の活動見てたらなんか『自信がないです…』とか『自分には無理そうなんで…』とか言って去ってっちゃったんだよねぇ」

 

「部員が増えれば部費も増額だったのになぁ」

 

そりゃ貴女達の作業スピード見たら誰だってそうなる、俺だってそうなる。

 

「ねぇ、後部座席の部分改造したらもっと大きな補助モーター積めるんじゃないかな」

 

「いいねぇ、やっちゃおうか!」

 

「良くない良くない良くない!見た目まで変える気ですか!?」

 

「スズキ、ツチヤ、流石にそこまでは長野くんが可哀想だから止めたげなって」

 

そう思うなら最初から改造とか止めてくれませんナカジマさん?

 

「カラーリングはどうする?軍用車なんだし迷彩とか行ってみる?」

 

「いや、別に今のままで……ホシノさん滅茶苦茶意識してるじゃないですか」

 

振り向いたらちゃんとツナギを着たホシノさんが居た、滅茶苦茶気にしてるじゃないですか貴女。

 

「意識したら結構恥ずかしかったんだろうねぇ」

 

「うるさいよナカジマ!」

 

「まぁ、私達にそんな視線を向ける男子なんて居ないだろうしね」

 

「女らしさとか欠片もないからねぇウチら」

 

肩を竦めるナカジマさんに、頬染めるホシノさん、苦笑するスズキさんにケラケラと笑うツチヤ。

 

この人達は本当にもう…。

 

「あのですね、皆ちゃんとした可愛い女の子なんですから、もうちょっと周りの目をですね…」

 

本当にもう、みほちゃん達とは別の意味で危機感が足りない。

 

まぁナカジマさん達は女子校だった時代に入学した人だからしょうがないのかもしれないが。

 

今では共学になり、少ないとは言え男子の目があるのだ、その辺をちゃんと意識して貰いたい。

 

「……………」

 

「……………」

 

「……………」

 

「……………」

 

「…ど、どうかしました?」

 

突然黙って俺の方を見つめてくる4人に、ちょっとビビる。

 

「いやぁ、改めて長野くんに女の子扱いされると、ちょっとなんか……クるね」

 

「なるほど、これが噂の無自覚誘い受けか…これはダメだね、うんダメだ反則だ」

 

「ちょっとイケるかもとか思っちゃうからね…魔性だね」

 

「長野っち、あんまり外でそういう態度取らない方が良いよ、また襲われちゃうよ」

 

「あれ、また俺が悪いって流れこれ?」

 

なんかツチヤにやれやれと肩を竦めながら肩を叩かれたんだけど。

 

なんで俺が真面目に注意しようとすると、俺が怒られるの?

 

理不尽だ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「凄く調子が良い上に何か性能が上がってる…どんな改造したんだあの人達…」

 

その日の戦車道の授業では、俺のケッテンクラートは快調なスピードで時速60キロをマークした。

 

あれ、連盟から聞いたスペックだと騒音が酷いから時速50キロが限度とか聞いたんだけど…。

 

自動車部、恐るべし…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウサギさんの場合

 

 

 

 

 

 

 

「せんぱい!なんで教えてくれなかったんですか!?」

 

「は?突然どうした阪口」

 

戦車道の授業を終え、戦車倉庫に戻ってきてお茶を飲んでいたら、阪口がやってきて何やらプンプンしている。

 

「せんぱいが仮面ライダーになったこむぐっ!」

 

「はーい阪口ちゃん、ちょっと向こうでお話しようねー」

 

素早く阪口の口を塞いで物陰に連れ込む、傍から見ると犯罪者だが構っていられん。

 

「むー!むー!むー!」

 

「静かにしろ阪口…ど、どこで知ったんだ…?」

 

「ぷはっ、番組を見たらせんぱいが出てました!なんで教えてくれなかったんですか!?」

 

あちゃー、そっかぁ、番組見てるのかぁ、そうだよね、なんか前にアニメとか特撮大好きって言ってたもんね…。

 

迂闊だった、元女子校とは言え、見てる生徒も居るよな、大人気子供番組だし…。

 

「ほら、ちゃんと持ってきましたよ!せんぱいが出てる『仮面ライダー対仮面ライダー 友情のトリプルライダー』の録画したDVD!」

 

そっかぁ、録画したのわざわざDVDに焼いて持ってきちゃったかぁ、そういうのは出来るんだね阪口ちゃん…。

 

「みんなにもちゃんと教えたんですよ!せんぱいのカッコいいシーン満載だって!」

 

そうかぁ、もう皆に教えちゃったのかぁ……ハハ、オワタ。

 

い、いや、まだだ、阪口の言う皆がウサギさんチームだけならまだ救いはある。

 

「阪口、皆ってウサギさんチームのメンバーだけかな…?」

 

「あい、今から他のチームの人にも教えて、鑑賞会をやろうと思ったんです!」

 

わぁ可愛い笑顔。

 

悪意含有量0%なのに的確に俺の精神を削ってくるよこの子。

 

鑑賞会、だからDVDなんて持ってきたのね…。

 

「そ、それは勘弁してくれないかなぁ、流石に俺も恥ずかしいからさ…お願いだ阪口」

 

「?……あい、じゃぁせんぱいも一緒に鑑賞会に出てくれたら言いません!」

 

まぁ、なんて綺麗な笑顔で脅しを掛けてくるんでしょうこの子ったら。

 

阪口に手を引かれて、戦車倉庫の2階へ。

 

作戦立案や休憩に使う部屋に入ると、既にそこにはウサギさんチームの姿が。

 

ハハ、もう鑑賞会の準備整えてやがる…こういう事だけは仕事早いね君達…。

 

「あ、先輩…あの、大丈夫ですか、なんか魂抜けてますけど…」

 

「ハハ…大丈夫、まだ大丈夫…」

 

澤君の気遣いが今は心地よい。

 

「センパイキターー、ほらほら座って座って!」

 

「特等席用意しときましたよー」

 

そう言って、テレビの正面のソファの中心に座らされる。

 

そして隣に山郷と大野が座り、右のソファに宇津木と澤君。

 

左の一人がけ用の椅子には既にちょこんと丸山が座っおり、DVDをセットしている阪口が座る場所が無い。

 

「席が足りないだろ、俺は折り畳み椅子で良いから…」

 

「まーまーまー!」

 

「大丈夫ですから座ってて下さい先輩!」

 

立ち上がろうとするが、大野と山郷に腕を掴まれ体重を掛けて引っ張られ座らされる。

 

「せんぱい、しつれいしますっ!」

 

「ちょ」

 

両手を掴まれた俺の膝の上に、ちょこんと座る阪口。

 

「や、やっぱり不味いよ、先輩に失礼だよ桂利奈!」

 

「大丈夫!せんぱいはプラウダの隊長とか会長とか膝に座らせてるって言ってたから!」

 

誰が!?ねぇ誰がそれ言い触らしてるの!?

 

別に俺が望んでそうしてる訳じゃないんだよ阪口!?

 

澤君の言葉も虚しく、阪口は楽しそうに俺の膝の上でリモコンを操作し始めた。

 

両手は相変わらず山郷と大野に掴まれたままだし……こんな姿、みほちゃんに見せられない…!

 

「本当は生徒会室借りようと思ったんですけど、梓に止められたのでここでやることになりました!」

 

「先輩が私達に何も言わずに出演したから、もしかしたら知られたくなかったのかもと思って…」

 

澤君!信じてたよ澤君!

 

ありがとう、後で美味しいもの奢ってあげるからね、お兄さん財布の紐解いちゃうよ!

 

「せんぱいのカッコいい姿が見られるんだから、全校放送しちゃおうよって言ったんですけどねぇ」

 

宇津木…うん、君ならそう言うだろうと思ったよ…やめてね天然なんだろうけど俺を精神的に殺しにかかるの…。

 

「お菓子も準備ばっちり~」

 

「飲み物もあるよー、はい先輩」

 

「この手の状態じゃ持てないんだが……」

 

「ストローあるよセンパイ」

 

炭酸飲料の缶にストローを刺され、差し出される。

 

この状態で飲めと申すか。

 

「ほらみんな始まるよ!」

 

CMが終わり、番組が始まる。

 

現在放送中の仮面ライダーの特別番組であり、一作前の仮面ライダーとの対決が描かれる一時間の番組。

 

勿論、対とか言ってるが、最後は共闘して終わるパターンである、特撮ヒーローのお約束だ。

 

番組の最初は、現在放送中のライダーが主役で、普段相手している怪人とは違う怪人、一作前の仮面ライダーの怪人が現れ、普段とは違う相手に苦戦しつつも勝利するという流れ。

 

そこに一作前のライダーが現れ、誤解の末に戦う事に。

 

「ねぇ、この神とか言ってる人面白いね、ブゥンとか言って変身してるし」

 

「こっちの人も面白いよね、今夜は焼き肉っしょだって~」

 

大野と山郷の感想、確かにキャラが濃い。

 

撮影現場で挨拶した時は凄く紳士的な人だったのに、いざ撮影に入るとこの演技である。

 

プロの俳優って凄い。

 

中盤、双方のライダーが入り混じり、敵も混ざって乱戦になる。

 

ここで誤解が解けて、共闘に入るライダー達。

 

そこへ現れる今回の話のラスボス。

 

その強大な力で吹き飛ばされ、変身が解けてしまうライダー達。

 

雑魚敵に囲まれ、絶体絶命のピンチ。

 

「あぁ、囲まれちゃった…!」

 

「とってもあぶなぁいぃ…!」

 

澤君と宇津木のハラハラとした様子、すっかりこの作品にのめり込んでいる。

 

膝の上の阪口は終始ハイテンションでライダーを応援している、既に一度見ているのに、本当に好きなんだな…。

 

丸山は…見てるのか見てないのか…この子テンポが独特だからなぁ、凄く良い子なんだけど。

 

確か台本だと……あぁ、来てしまった…。

 

「みんな来るよ!」

 

ラスボスが姿を消し、雑魚敵に囲まれピンチのライダー達。

 

そこに、足音を響かせて歩いてくる一人の影。

 

足元だけを映した映像や、手だけを映した場面、そして横顔だけを映した場面などがゆっくりと流れる。

 

無駄に凝った登場演出がされてる…!

 

『だ…誰だ…!?』

 

ライダーの一人の戸惑いの声、それに答えるようにカメラが正面からその人物を捉え、そして表情がアップになる。

 

『ただの…仮面ライダーさ』

 

ぐわあああああああああっ!?

 

「せんぱいきたーーーー!」

 

「きゃー!」

 

「超クール!」

 

膝の上で阪口が両手を突き上げて叫び、大野が黄色い声を上げ、山郷が俺の腕を揺すりながら感想を口にする。

 

恥ずかしかったから見てなかったけど、改めて出来上がった番組見ると恥ずかしいぃぃぃぃぃ!

 

画面の中の俺は、どこか軍服っぽく見える衣装を身に纏っている。

 

無駄に重厚でベルトとか多い衣装だ、改めて見るとなんて厨二病…!

 

『はッ!』

 

画面の中の俺は、襲ってくる雑魚敵を生身で往なしたり避けたりして戦い始める。

 

ここは祖父の訓練が役立ったな、生身なのでスタント無し、全部俺がやった。

 

「せんぱいカッコいいー!」

 

「センパイ超強いじゃん!」

 

「いけいけー!」

 

ノリノリな阪口達。

 

「わぁ……」

 

澤君!その反応はどっちなんだ澤君!?

 

「やっぱり全校放送しようよこれぇ…超しびれるぅ!」

 

宇津木、その考えは今すぐ捨てるんだ。

 

暫く雑魚敵相手に生身で格闘する俺、やがて雑魚敵が一度引いた所で、態勢を立て直した俺が懐から何かを取り出す。

 

「みんな見て、この番組の為にだけ作られた特別なベルトなんだよ!」

 

阪口が指差すのは、戦車側面の履帯をモチーフにし、その上に砲塔のようなパーツが付いた変身ベルト。

 

それを腹の前に翳すと、履帯のようなベルトが腰に周り、キュラキュラという音を立てて腰に装着される。

 

無駄に凝ってるな…。

 

そして次に取り出したのは、砲弾のような形のパーツ。

 

顔の横にそれを翳し、砲弾がアップになるとそこにはIV号の刻印。

 

それの弾底部分から飛び出したスイッチのような部分を親指で押し込むと、渋い声が響き渡る。

 

【IV号】

 

そしてベルトの砲塔部分の上、キューポラを模した部分の蓋を開ける。

 

『踏破するぜ……変身!』

 

意味のわからない言葉と共に変身と口にし、手を数回翳す動きをしてから、真上からキューポラの穴に砲弾状のパーツを装填。

 

【IV号 装填完了 パンツァー・フォー!】

 

渋い声と共に体の周りに装甲のような物が浮かび上がり、次々に身体に装着され、そして全身を黒いスーツが覆う。

 

黒いスーツの上から戦車の装甲を身に纏った、戦車を擬人化したようなその姿。

 

『仮面ライダー、パンツァー!どんな未来も、俺に通れぬ道はない!』

 

謎の台詞と共に、変身後のポーズを決める仮面ライダーパンツァー。

 

は、恥ずかしいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?

 

「パンツァーきたーーーーー!」

 

「キターーーーー!」

 

「きたーーーーー!」

 

大絶叫する阪口と、ノリに乗って叫ぶ大野と山郷。

 

君達ノリがアンツィオだよね、あっちの学校に居ても違和感ないよね。

 

「わぁ………」

 

澤君!だからそれはどっちの反応なんだい澤君!?

 

「先輩が変身したライダー、なんだか西住隊長達の戦車みたぁい」

 

正解だ宇津木、この仮面ライダーパンツァーのモチーフは戦車、それも大洗学園のあんこうことIV号戦車がモデルだ。

 

俺が大洗学園の戦車道部の監督をやっていると知った連盟が、特別にデザインを発注。

 

この特別番組に合わせて超特急で作成されたスーツである。

 

そう、この特別番組、日本戦車道連盟がスポンサーになって作成された番組。

 

二年後のプロリーグ発足や世界大会の誘致に先駆けて、低迷気味の戦車道を広く知ってもらう為に企画された物。

 

当初は戦車道の宣伝なのだからと、女性選手の有名な人にやってもらう計画だった。

 

すると高校戦車道大会で、無名だった学校がまさかの優勝、そこには数年前から姿を消していた俺の姿が。

 

昔散々戦車道のアイドルとして使ってきた長野叢真が居ると知った連盟は、電撃的にキャストを男性に変更。

 

出演料の代わりに戦車道の消耗品や材料を融通する事で俺の出演を取り付け、撮影。

 

出演するのが俺ということもあり、急遽生身での殺陣のシーンを大幅追加、本来は女性だったので生身での殺陣のシーンは無く、突然現れて変身して戦い消える謎の女性ライダーは、ガッツリ活躍していく今回限りの限定ライダーとなった。

 

『さぁ…突き進むぜ!パンツァー・フォー!』

 

台詞と共に走り出す仮面ライダーパンツァー。

 

よく見ると足の踵にはキャタピラ、右手は横から見ると砲身のように見えるデザインがされている。

 

「いけー!せんぱい、いけー!」

 

「ぶっころせー!」

 

「いけいけー!」

 

ノリノリの阪口達。

 

すまんな阪口、その仮面ライダーの中身、俺じゃなくてスーツアクターなんだ…。

 

『はぁッ!』

 

パンツァーの右手ストレートがヒットする度に、砲弾の着弾音が響く。

 

その攻撃に、次々とやられていく雑魚敵。

 

仮面ライダーパンツァーの右手の攻撃力は、IV号戦車の主砲に匹敵するという無茶苦茶な設定がされている。

 

なのでヒットすると砲弾の着弾音が響くという無駄に凝った設定だ。

 

まぁ…設定に関しては昭和ライダーの無茶苦茶加減を考えればまだマシ…なのだろうか。

 

『見ているだけか?仮面ライダーなら立ち上がれ…どんな障害も乗り越えていく、それが仮面ライダーだろう!』

 

見ているだけだった他の仮面ライダー達にそう告げる仮面ライダーパンツァー。

 

アテレコで台詞を言っている時は偉そうだなぁとか思ったが、演出で他のライダーを奮起させようとしている様に感じられた。

 

パンツァーの台詞に立ち上がった仮面ライダー達。

 

そして全員が並んで一斉に変身。

 

「音が混ざって聞きにくぅい…」

 

言うな宇津木、俺も思ったが同時変身の宿命なんだ…。

 

全員が変身し、残った雑魚を一掃すると、再びラスボスが現れる。

 

そして再び雑魚と、中ボスクラスを召喚。

 

激突するライダー軍団と敵軍団。

 

『ここは俺達に任せて、奴を…!』

 

『分かった…皆任せた!』

 

パンツァーの台詞に促され、ラスボスを追いかける主役ライダー2人。

 

残った雑魚は他のライダーが、そして中ボスを仮面ライダーパンツァーが。

 

『ここから先は行かせない…』

 

この時の身体の姿勢が、ちゃんと昼飯の角度な仮面ライダーパンツァー。

 

何でも、大洗対黒森峰戦を見た監督が、急遽演出に加えたらしい。

 

多分、レオポンチームの仁王立ちシーンのオマージュなのだろう。

 

中ボスと組み合うと、踵のキャタピラが高速回転。

 

地面を火花を上げながら進み、壁を破壊して中ボスごと廃工場の外へ飛び出す。

 

工場内に残った他の仮面ライダーが次々に最強フォームへ変身、雑魚をどんどん撃破していく。

 

ちゃんと全ライダーの見せ場を演出する辺り、脚本と監督は分かってる。

 

「うげぇ、このゾンビみたいな人こわぁい…」

 

「キャラ濃いよねぇ…」

 

神だからね、仕方ないね。

 

サブライダー達の活躍が終わると、ラスボスを追っていった主役ライダー2人とラスボスの対決。

 

しかし歯が立たない為、中盤フォームとも言われる二段階目の姿に変身する主役ライダー。

 

いきなり最強フォームにならない辺り、こだわってる。

 

劇場版みたいな豪華な脚本だ、連盟がガッツリお金を出したらしいからなぁ。

 

場面は代わり、工場の外へと飛び出した中ボスとパンツァー。

 

中ボスが地面を転がりながら吹き飛ばされ、立ち上がってパンツァーと対峙する。

 

『硬いな…なら浸透突破と行こうか』

 

そう言って右手を翳すパンツァーの右手には、変身に使用した砲弾とは別の色の砲弾。

 

親指でスイッチ部分を押し込むと、やはり渋い声が響いた。

 

【ティーガー!】

 

そしてキューポラ部分に同じ様にセットすると、IV号モチーフの装甲が消滅、代わりにより重厚な装甲が出現。

 

「パンツァーはね、2つのフォームを使って戦うライダーなんだよ!」

 

阪口の嬉しそうな解説。

 

彼女が言う通り、画面の中の仮面ライダーパンツァーは、ティーガーモチーフの姿に変わっていた。

 

これも監督が急遽考えた事であり、本来は一個だけだったフォームを増やした。

 

その理由は、大洗対黒森峰の戦車道優勝決定戦のあのみほちゃんとまほちゃんの熾烈な一騎打ち。

 

あれを見て、監督は脚本とスポンサーの戦車道連盟に準優勝である黒森峰のフラッグ車、ティーガーⅠをモチーフにした強化フォームを提案。

 

脚本とスポンサーの承諾を受け、急遽スーツを追加発注。

 

なんと撮影日の一週間前に完成したと言うのだから本当にギリギリだったらしい。

 

IV号フォームよりも装甲とパワーで勝るティーガーフォーム。

 

それに変身した仮面ライダーパンツァーは、IV号フォームの時とは異なり、悠然とした歩みで中ボスに近づく。

 

殴りかかる中ボス、その攻撃を装甲で受け止め、反撃の右ストレート。

 

「かたぁい…」

 

「まるで黒森峰の重戦車みたい…」

 

宇津木と澤君の感想、その通りである。

 

装甲とパワーが増した代わりに、細かい動きが苦手になるというデメリットも一応存在する。

 

だが一時間の特番でそこまで表現は出来ないので、中ボスを装甲とパワーで圧倒するシーンが描かれている。

 

ここで場面は移り変わり、ラスボス対主役ライダーの戦いに。

 

中盤フォームと連携で戦う主役ライダーだが、ラスボスが本気を出すと一蹴されてしまう。

 

しかし諦めないライダー達。

 

『どんな障害も…乗り越えていくのがライダーだ!』

 

パンツァーの台詞を口に、遂に最強フォームへ同時変身する主役ライダー2人。

 

ここで再び場面が移ると、吹き飛ばされて壁を突き破る中ボス。

 

そして現れたパンツァーは、IV号の姿に戻っていた。

 

「あれぇ、IV号に戻っちゃってるぅ…」

 

「そういう演出なんだよ!」

 

阪口が宇津木の残念そうな言葉に反応するが、まぁ間違っていない。

 

『トドメだ…!』

 

パンツァーが身体を斜めに構え、キューポラに刺さっている砲弾のスイッチを押し込む。

 

【装・填・完・了】

 

渋い声で区切った言葉が流れる。

 

するとパンツァーの視線にカメラが移り、そこに普段五十鈴さんが見慣れているだろう照準器の画面が映る。

 

ちゃんとIV号戦車の照準器と同じな辺り、監督のこだわりが感じられる。

 

照準器が狙いを合わせると、パンツァーが右の拳を大きく引いて構える。

 

するとパンツァーの後ろに戦車の幻影がCGで現れ、主砲をパンツァーの背中に向ける。

 

そして発射された砲弾型のエネルギーはパンツァーの背中を押し、その勢いで火花を散らして地面を滑るパンツァー。

 

『ハァァァァァ!!』

 

気合の入った声と共に拳が突き出され、中ボスの身体に当たると、主砲の発射音が鳴り響いて砲弾型のエネルギーが右の拳から中ボスの身体を貫いて飛んでいく。

 

爆発する中ボス、炎に巻き込まれるパンツァー。

 

だが、その炎の中から悠然と歩いて出てくるパンツァーの姿。

 

戦車に通れない場所は無いというのを表現しているらしい。

 

「かっこいぃぃぃ!」

 

「渋いー!」

 

「音がちゃんとIV号の主砲の音だったよねー」

 

大興奮の阪口と大野、山郷は砲手らしくちゃんと主砲の発射音がIV号戦車の物と気付いた。

 

『状況終了。後は任せたぞ、仮面ライダー…』

 

そう言って空を見上げるパンツァー。

 

視線の先では、ラスボスが召喚した巨大な岩の上で戦う主役ライダー2人。

 

この後は主役ライダー2人とラスボスの壮絶な戦いが描かれ、最後はダブルライダーキックでラスボスを撃破。

 

廃工場の広場で集合する仮面ライダー達。

 

そこに、登場した時と同じように現れるパンツァー。

 

『ありがとう、仮面ライダーパンツァー。君の言葉が、凄く響いたよ』

 

『言葉は時に砲撃の様に心を震わせる。奮い立つ力になったなら何よりだ』

 

握手を交わす主役ライダーとパンツァー。

 

その状態で変身が解除され、握手する俺の姿が映る。

 

恥ずかしさアゲイン!

 

『君は何処へ行くんだい?』

 

『歩いた道が俺の道になる…またいつか、道が交わる事があるさ…』

 

『そうだね…またね』

 

そして別れる仮面ライダー達。

 

エンディング曲が流れだし、それぞれの日常に戻ったライダー達の姿が描かれ、最後に道を歩く俺の姿が映る。

 

すると前から来る男性とすれ違い、一瞬だけパンツァーと、次の新ライダーの姿が現れ、そして消える。

 

『……道はいつか交わる…そう、いつの日か…』

 

そう言って歩き出す俺の背中をカメラが段々と離れて行き、最後に青空を映して終わった。

 

終わった…長い俺の羞恥拷問時間がやっと終わった…。

 

「終わっちゃった…」

 

「もうちょっと続けばいいのに」

 

「それじゃ映画になっちゃうよ」

 

残念そうな阪口と、素直な感想を口にする大野と突っ込む山郷。

 

「先輩、格好良かったですよ!」

 

「本当に俳優かアイドルみたぁい~」

 

ハハハハ…そう言って貰えるとちょっと気持ちが楽になる…。

 

演技してる時、ずっと演技下手だったらどうしようって考えてたしな…。

 

「もっかい見よう!」

 

「勘弁してくれ!?」

 

もう俺の羞恥心は限界よ!?

 

えぇい大野も山郷もいい加減HA・NA・SE!

 

「………………」

 

なんか言ってくれ丸山!

 

「………………えへ」

 

あら可愛い。

 

いやそうじゃない、それはどういう意味での微笑みなんだ丸山!?

 

「皆、今日は遅いし鑑賞会はまた今度にしよう?ほら、片付けて片付けて」

 

澤君!信じていたよ澤君!

 

「じゃぁ明日見よう!せんぱいも一緒に!」

 

「うん、先輩も一緒にね」

 

澤君!?信じてたのに澤君!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「酷い目に遭った…あれ、授業報告書出してなかったな…」

 

戦車道は必修選択授業だ、本来なら教師が必要なのだが、戦車道を教えられる教師が居ないので生徒会が代行、俺が監督として授業報告書を書いている。

 

蝶野教官が来る時はこれに教官の報告書もプラスされる。

 

阪口達に連れられて戦車倉庫2階に強制連行されたから、小山先輩に提出するのを忘れていた。

 

戦車倉庫には誰も、いつも遅くまで楽しく整備している自動車部すら居なかったので、もしかしたらもう生徒会も居ないかもなぁ。

 

「失礼します、小山先輩、授業報告書を『……道はいつか交わる…そう、いつの日か…』――へ?」

 

生徒会室の扉を開けて耳に入ってきた台詞に、ビキリと硬直する俺。

 

「やー長野ちゃ~ん、おつかれー」

 

「噂をすればなんとやらだな、話題の主役が来たぞ」

 

「お疲れ様~、書類預かるわね」

 

相変わらず干し芋食ってる会長と、やれやれと肩を竦める河嶋先輩。

 

そして俺が持つ報告書を受け取りにくる小山先輩。

 

ここまでは良い、生徒会のメンバーだから居て当たり前だ。

 

だが。

 

「あはは…お疲れ様、叢真さん…」

 

「見たよー、長野さん。もう、テレビ出るなら言ってくれれば良いのにぃ」

 

「恥ずかしかったんですよ、長野さんは照れ屋さんですから」

 

「長野殿、特別番組の監督と脚本家、かなりの戦車好きでありますな!いくつも戦車や戦車道をオマージュした演出が入っていて私感動したでありますよ!」

 

「………演技してるとヘタレ要素なくてただのイケメンだな長野さんは」

 

苦笑しているみほちゃん、イケメン俳優と知り合いになれるチャンスだったのにと悔しがる武部さん、相変わらず微笑んでいる五十鈴さん、興奮している秋山さんと、さらりと失礼な冷泉さん。

 

「コーチ、見事な格闘シーンでした!やはり根性ですね!」

 

「演技も格好良かったですよ、周りのイケメン俳優に全然引けを取らないです!」

 

「普段のコーチとは違った面が見れて良かったです」

 

「あぁいうコーチも素敵で良いですね~」

 

テレビの前でガッツポーズする磯辺に、元気づけるように言う近藤、しみじみと呟く河西に、おっとりと感想を口にする佐々木。

 

「見事な演技だった、やはり長野殿にはもう一人の自分を表現する力がある…」

 

「あぁ、変身シーンも決まっていたな」

 

「今回限りというのが惜しい位だな」

 

「勿体無いぜよ、次のライダーは長野殿が主役で良いくらいだ」

 

ソファにもたれ掛かる様にして並ぶ、カエサル、エルヴィン、左衛門佐、おりょう。

 

「これの出演料として戦車道の備品とか消耗品とか連盟から融通して貰ったそうだから、みんな感謝してね~、はい感謝」

 

「大洗戦車道の為に身を粉にして働く、見上げた精神だぞ長野」

 

「撮影期間中のお休みは、連盟からの依頼だから公欠になるから安心してね長野くん」

 

感謝してるのかいまいち分からない会長と、うんうんと頷く河嶋先輩、にっこりと何時も通り微笑む小山先輩。

 

「格好良かったけど、あの服装とか変身ベルトとか校則違反だからね!持ってきたら没収なんだから!」

 

「あれは撮影用の衣装と小物だから長野さんの私物じゃないよぅそど子~…」

 

「……長野さんなら本当に変身できそう…」

 

注意してくる園さん、やんわりとツッコむ後藤さんと、無茶な事を言う金春さん。

 

「放送後から、長野さんのスレが伸びに伸びてるにゃ~…これはお祭りですぞ」

 

「Blu-rayとDVDの発売も決まったって公式に書いてあるナリ、これは買わないとだモモ」

 

「ゲーム以外で予約するのは初めてぴよ、取扱店調べないとだっちゃ」

 

携帯を見ながら楽しそうなねこにゃー、同じく携帯で番組の公式HPを見ているらしいももがー、もう予約する気でいる気が早いぴよたん。

 

「仮面ライダーなんだから、バイクが必要だよね。長野くんのクラートを弄ってそれっぽくしてみる?」

 

「いいね、うちのIV号っぽくシュルツェンも装備させようか」

 

「公道をバイクみたいに走れる様に足回りもチューンしないとね」

 

「クラートならドリフトも出来るし、それで敵を轢殺!なんて出来るかもね!」

 

余計なアイディアを出すナカジマさん、それに乗るホシノさん、改造意欲を燃やすスズキさん、物騒な事を言ってるツチヤ。

 

1年生チームを除いた、大洗戦車道履修生が勢揃いしている生徒会室のテレビ前……狭い。

 

テレビに繋がれたDVDプレイヤーからは、表面に何も書かれていないDVDが吐き出されている。

 

「み、みほちゃん…さ、作戦会議だよね……戦車道の、勉強とかだよね…?」

 

一抹の望みにかけてみほちゃんに問い掛けるが、帰ってきたのはみほちゃんの苦笑い。

 

「実は…会長さんが、長野さんの出演する番組を録画してきたと聞いて…皆で拝見してました」

 

――――ジーザス。

 

「と言うか、戦車道連盟のHPに、長野叢真出演、仮面ライダー特別番組って大きく出てましたよ?長野殿」

 

――――オーマイゴット。

 

「長野ちゃんが撮影期間中休んでた時、連盟からちゃんと連絡来てたよ?その時放送日もちゃんと教えてもらったし~」

 

――――Я такой идиот.

 

「仮面ライダーとか男の子向けだと思ってたけど、イケメンいっぱいで話も凄く面白かったねぇ、長野さんが主演で出るなら毎週見るんだけどな~」

 

「止めてやれ沙織、長野さんがもう限界だ」

 

「へ?」

 

――――我、最早限界ナリ。

 

「実家に帰らせて頂きますッ!!」

 

「あっ、叢真さん!?叢真さーん!」

 

みほちゃんの声が聞こえるが、構わず走って生徒会室を飛び出す。

 

顔が真っ赤なのが分かる、ああああ恥ずかしいいいい!

 

よりにもよって、戦車道履修者全員に見られたああああ!

 

もう駄目だぁおしまいだぁ…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「会長さん、やっぱり叢真さんが秘密にしていた事を皆で見るなんて良くなかったんじゃ…」

 

「そう言いながら西住ちゃんが1番テレビの中の長野ちゃん応援してたじゃん、頑張れ叢真さーん!て」

 

「あぅ…それは…」

 

「まぁ恥ずかしがってるだけだから、落ち着いたら登校してくるって、大丈夫大丈夫」

 

「会長、今学園艦飛行場から、長野が飛行機をチャーターして他の学園艦に向かったと報告が…」

 

「え、えぇぇぇ!?」

 

「あちゃー…そんな他の学園に逃げちゃう位恥ずかしかったのか…格好良かったのにねぇ」

 

「むしろ、親しい我々に見られるのが恥ずかしいからこそ黙っていたのでは?あの通り、長野はヘタレの照れ屋ですから」

 

「かーしまにヘタレと言われちゃったらもうおしまいだよねぇ長野ちゃん。ま、そのうち帰ってくるでしょ、しばらく1人にさせてあげなよ」

 

「か、会長さんが原因なのに…放っておくんですか…?」

 

「今追いかけても逃げるだけだって、陸地じゃなくて他の学園艦に行ったんだよ?元々他の学園艦から招かれてるって言ってたからついでにそれを消化しに行ったんだろうし。小山~、長野ちゃんの欠席公欠にしておいてやって、連盟からの依頼だから」

 

「は~い」

 

「叢真さん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回から番組内容をぶらり主人公の学園艦放浪記に変更してお送りします(´・ω・`)


仮面ライダーの映画を見たからついやっちゃった(´・ω・`)


劇中の仮面ライダーがどれか分かっても内緒だよ?(´・ω・`)

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